東京・ハワイ・福岡で暮らしたウェブデザイナーが考える“自由で場所を選ばない働き方”

グローバルな時代になり、海外移住も以前に比べ身近となりましたが、それでもまだまだ国内移住に比べて“ハードル”は高く、憧れはあっても、実際にするのは厳しい……と思っている人も多いのではないでしょうか。

福岡市出身で現在市内に住むフリーウェブデザイナー、藤清貴さんはそんな海外移住を実現した1人。平成24(2012)年、30歳になる前に家族とともにハワイへ移住し、1年間、フリーランスとして仕事をこなしながら現地で生活を送りました。

藤さんはハワイに移住するまでの経緯について、こう振り返ります。

「地元・福岡の専門学校を卒業した後、東京のゲームソフトメーカーに就職したのですが、入って半年くらいで倒産しちゃったんですね(苦笑)。その会社は、長時間労働の割に給料はあまり高くなく、さらに僕自身、就職後すぐに結婚、子どももじきに生まれるタイミングだったこともあり、『次に入るのは“普通の会社”がいいな』と思っていました。そこで、一般企業に再就職。事務の仕事をしながらその会社のサイトづくりをしたのが、初めてのウェブデザインの仕事です。その後はウェブデザイナーとしてサイバーエージェントやカカクコムで働きながら、デザイン、コーディング(プログラミングの記述)のスキルを磨き、29歳で独立。フリーランスになり、ハワイへ移住することを決意しました」(藤さん、以下同)

独立するだけでも一念発起が必要ですが、同時にハワイへ移住してしまうというのもずいぶんと大胆な決断。なぜ、藤さんはこれらを一度にしてしまおうと考えたのでしょうか?

「そもそも、会社員や派遣社員としての働き方に疑問もありました。本来、社員になるということは最小限のリターン、すなわち給料をもらう代わりに、会社側にリスクをミニマム化してもらう『取引』だと思うんです。しかし最近は、リターンは低いままなのに、いつ首を切られるかわからない、給料をはるかに超える分の仕事が降ってくるなど、取引のバランスが崩れていると感じるケースも多い。そうであれば、思い切ってフリーランスとして自分で責任の取れる範囲のリスクを背負いながら、働く方がいい。ちょうど、クラウドソーシングサイトを利用しながら個人で受注していたウェブデザインの仕事で月10万円を超えたこともあり、独立すればさらに収入を伸ばせるな、とも考えていました。また、フリーになれば場所を選ばない働き方もできる。要は東京にいる必要性を感じなくなったんですよ。移住先にハワイを選んだのは、以前から憧れていたから。不安? 特になかったですよ」

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ハワイ滞在時も、フリーランスのウェブデザイナーとして、バリバリ、仕事をこなしていた藤さん。発注の多くは日本の企業から。しかし、業務の性質上、ほぼウェブ上で完結するため、ハワイにいても仕事上の大きな不都合を感じることはなかったとか。また、ハワイで活動するNPO団体のウェブサイトやロゴのデザインを行うなど、地元でつながった友人、知人から仕事を請け負うこともあったといいます。

「子どもが小さいうちは、やっぱり日本で子育てをしたいと思った」と1年間でハワイを後にし、福岡に移住した藤さんですが、お子さんが大きくなったらまた海外へ移住することも考えているとか。

このようにフットワーク軽く、拠点を変えられるのはフリーランスだからこそ。こうした自由な働き方が注目され、藤さんは今年3月、「Lancer of the Year 2015 新しい働き方大賞」(ランサーズ主催)でMVP賞と“フリー”ランサー賞を受賞しました。

ある意味で、フリーランスの「勝ち組」とも言える藤さんですが、自身をどう分析しているのでしょうか?

「僕はいたってマイペースです。一般的にフリーランサーって、名刺交換会やさまざまな飲み会に顔を出す社交性を持ち合わせていたり、寝る間を惜しんでバリバリ働いていたりしますよね。でも、僕はまったく正反対で、知らない人とお話するのも苦手ですし(苦笑)、なにより家族との時間を大切にしたい。なんだかんだ忙しいときもありますが、それでも子どもとの時間はなるべくとるようにしています。無理をしすぎても長続きしないですからね」

Uターン組として再び福岡に帰ってきた理由について、藤さんは「家族・親戚がいることも大きいですが、何よりもごはんがおいしい。食べ物が決め手で地元に戻ってきました(笑)」と、告白。また、独立後、ハワイ、福岡と移住をした経験をもとに「『この日までに必ず移住する』というターゲットを決めて、行動するのが大切。ターゲットを決めないと、いつまでも移住できないと思いますよ」と、語ります。

働いた分だけ報酬に反映されるフリーランサーは「東京や大阪でないと、仕事がないかも……」と考えがちかもしれませんが、藤さんのように海外や地方都市で活躍される方もいます。新しい働き方、生き方の参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

[プロフィール]
藤清貴(ふじ・きよたか)
昭和57年生まれ。福岡市出身。福岡市内の専門学校で3D-CGを学んだ後、ゲームソフトメーカーで制作、サイバーエージェント、カカクコムでウェブデザインの業務などを経て、2012年より独立。現在は、福岡市内の自宅兼事務所で妻と3人の子に囲まれながらフリーのウェブデザイナーとして活動する。

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