平成26(2014)年に国家戦略特区に指定されて以降、首都圏からの企業誘致が進む福岡市。今年に入って、さらなるビッグニュースが飛び込んできました。IT系サービスを展開する4社が、時を同じくして福岡に進出することが決定。2月14日(火)には記者会見が開かれ、それぞれの企業が福岡進出の意図と期待を語りました。
4社とは、さくらインターネット株式会社、株式会社アカツキ、ピクシブ株式会社、株式会社メルカリ。さくらインターネットはデータセンターを運営し、アカツキはスマートフォン向けゲームの企画、ピクシブはイラスト投稿サイトの運営、メルカリはフリーマーケットアプリの運営と、それぞれIT業界で独自の存在感を持つ企業です。
4社が同時期に進出となったのは“たまたま”とのことですが、その裏では福岡市の都市としての成長熱が高まっていることや、福岡市の熱心な誘致活動があったからに他なりません。福岡進出の決定打は何だったのか、記者からの質問に、メルカリ取締役の小泉文明さんは次のように答えました。
「(福岡への進出を検討していた頃)、とあるイベントで私がプレゼンテーションをしていると、最前列で聞いてくれていたのが高島市長で。終わるとすぐ『福岡に来てくれるんですよね!?』と握手をされて、検討の余地を与えてくれませんでした(笑)」
この日の記者会見でも、企業誘致の旗振り役である高島市長が自ら登壇。福岡市への観光客数や国際会議の数、開業率の高さなど、福岡市の成長をさまざまなデータとともに実証しました。
「福岡市では、短期的成長戦略として交流人口増、中期的戦略として知識創造型産業の振興を掲げてきました。そして、長期的戦略として支店経済からの脱却を図るために、本社機能の移転誘致だけでなく、スタートアップの育成にも力を入れ、さまざまな優遇措置を設けています。天神ビッグバンやFUKUOKA Smart EAST等、大規模なまちづくりも、スタートアップが持つテクノロジーを生かしながら進めていきます。新しい化学反応が次々と生まれる街・福岡にいらっしゃった皆さんを、心から歓迎します」
その後は、4社がそれぞれ福岡進出への理由と今後の戦略を説明。中でもさくらインターネットの代表取締役社長 ・田中邦裕氏は、「成長する都市へ身を置くことが、企業や人の成長につながる」と熱弁をふるいました。
「経営効率という観点で見れば、拠点を増やさず、一つの都市に集約するのが一番です。そのようにして、多くの企業が東京への一極集中を選択してきました。しかし、効率化によるコストカットで(限られた売上の中から)利益を出すことはできても、(そもそもの)売上増には至らない企業が多いのが現状です。私たちは今、効率化から創造性の発揮への転換が求められているのではないでしょうか」
「効率性を考えて東京に集中する時代は、もはや終わったと私たちは考えています。企業が持続的に利益を出すためには、コストカットをしたこの20年から、次の世紀に入らなければならない。その時、最も成長性を感じられる都市に身を置くことが大切です。それによって会社が成長し、納税額が増えることで街もさらに成長します。そして、自分を一番高められるのは、成長している街にいること。シリコンバレーなど海外に行くこともいいですが、国内にいてその実感を得られるのはまさしく福岡だと、力強く申し上げたいと思います」
さくらインターネットとピクシブは営業拠点と新規事業開発部門を福岡に置く予定。またメルカリは、博多駅前に200名規模のカスタマーサポートセンターを開設。アカツキもゲーム産業の強い福岡にオフィスを開設し、2年で60名の採用を見込んでゲームの開発などを行っていくとのこと。全国的にエンジニアの採用が過熱する中で、福岡やアジアの優秀なエンジニアや将来性のある学生を積極的に採用したいという各社の狙いがあるようです。
国内でも成長著しいITカンパニー群が、福岡の成長とさらなるポテンシャルをどう捉えているのかが垣間見えた、今回の会見。今後、各社が福岡を舞台にどんな活動をし、どんな波を街にもたらしてくれるのか、期待しましょう。