
こんにちは、東京から移住してきた田中ゆいです。
7月13日、いつものように勤め先の天神の本屋に来たら……
ちょっとみてください!
お尻が! あんなにお尻が! たくさん!!!
この日は、博多を代表するお祭り「博多祇園山笠」の行事の一つ、「集団山見せ」が行われていたのでした。「山笠」は博多エリアのお祭りですが、「集団山見せ」が行われるこの日だけは那珂川を越えて福岡エリアまで舁き山(かきやま)がやってくるのです。
いや~、噂には聞いていたけど目の当たりにすると圧倒されますね! 博多の男達がわらわらと現れて舁き山を担ぎながら「オイサッオイサッ」と通り過ぎていったと思ったら、また次の山が現れて「オイサッオイサッ」。いつもは整然とした二車線道路が、水法被(みずはっぴ)に締め込み姿の男達で溢れかえっています。これはすごい!
あくまでも今日は福岡・博多の知名士の台あがりが許される行事。本番の「追い山」はこれ以上の迫力になるとか! 楽しみ!
ということでやってきました! 15日、早朝4時過ぎの冷泉公園の横の土居通りです。
薄暗いなか雄々しい舁き山が鎮座し、その周囲には流ごとに揃いの山笠衣装を身にまとった博多の男達がわんさかいます。浴衣の見物客がいたり夜店もチラホラ出ていているんですけど、明らかに他のお祭りとは雰囲気が違います。浮かれてる感じがないというか、ピリッとしてて「出陣前」っていう感じ。単なるお祭りじゃなくて「神事」ならではの緊張感!
この日の昼間、上川端通の流の人と知り合ったので会いに行くことにしました。上川端通の山は「走る飾り山」と呼ばれ、他の7つの流の山とは違い大きくて装飾が派手なのですぐ見つかりました。もともとはすべての山が10メートル近くある大きなものだったそうですが、時代とともに電線に引っかからない高さの舁き山と、展示するための飾り山を別に作るようになったそう。電線の影響力……。
そして、この方!
人が多いので会えるか心配でしたが、見つけました! もともと福岡に勤めてたけど東京部署に転勤になったという福岡市役所の執行(しぎょう)さんです。ご家族とともに転勤してはや数年。山笠に参加するためだけに、LCCで木曜昼に博多に来て金曜朝に山笠に出て、そのまま午前の便で東京に帰るとか。なんという山のぼせ。
執行さんに私が感じた「山笠の不思議」を聞いてみました。
《不思議その1》
追い山ならし、集団山見せなど、平日の真っ昼間に行われる行事が多いですよね。働き盛りの男の人が大勢参加しているのを見かけましたけど、仕事はどうなっているんですか?
「仕事は休みます。日頃からしっかり仕事をこなして、山笠のためにスケジュールを調整するんです。僕は遠方を理由にあまり貢献できてなくて申し訳ないんですけど」(執行さん)
なるほど~、山笠のために休むんですね。それだけ山笠が地域に根付いているってことかあ。
《不思議その2》
みなさん締め込み姿がとても様になっててかっこいいですけど、「お尻出すの恥ずかしいな」って思うことはないんですか?
「それが締め込みをすると自然と身が引き締まるというか、笑ってたりできない雰囲気になるんですよ不思議なことに」(執行さん)
そういうもんなんですね~。でも本当にかっこいいです!
《不思議その3》
執行さんは法被や頭に巻いている「てのごい」の色が他の人と違ってますけど、どんな意味があるんですか?
(山笠では頭に巻くのはハチマキじゃなくて「てのごい」と呼ばれます。あと、締め込みのことをふんどしって呼ぶと訂正されます)
「流によって違いはありますが、法被やたすき、てのごい は、役割別で色が違います。僕は分不相応ですが上川端流の「役員法被」ということで紺色を着させてもらっています」
へ~! 役割で色が分かれているんですね。締め込みが白の人と紺の人がいるのも役割ですか?
「締め込みの色は好みですね」
それは好みでいいんだ。
「飾り山は見栄えもよくてみなさん注目されますけど、やっぱりメインは7つの舁き山です。そちらも紹介しますよ!」
ということで執行さんに、西流の偉い人を紹介してもらいました。
こちらの進藤さんは、子どもの頃から山を舁いていたという筋金入りの山男。山笠に出られる就職先を選んだんだとか。人生設計が山笠!
そんな進藤さんに、追い山のおすすめ見物場所を聞いてみました。
「“難所”が迫力あっていいでしょうね。狭い路地とか、曲がり角とか様々な難所があるんですが、西流の山小屋の下をくぐり抜けるところが一番よかですよ」(進藤さん)
山が動き出すのは4時59分。4時半過ぎに、西流の山小屋に到着しました。思ったよりは混んでない! もっと場所取りとかすごいと思ったけど、週末の渋谷より空いてます。
空が明るくなったころ、ついに追い山スタート!
子どもたちが先陣を切って登場し、そのあとを追って山が登場! 熱い!
オイサッオイサッの掛け声と手拍子、そして勢い水がビュンビュン飛び交います。ディズニーランドのスプラッシュマウンテンみたいだな~と思っていたら、近くの見物客から「USJみたかね」という声が聞こえて西日本を感じました。
写真で山笠を見ると山の装飾に目が行きがちなんですけど、実際見てみたら博多の男達の表情とか勢いに釘付け! 超かっこいい! 山笠は男の1000割り増し!
西流の山小屋の横に、東京海上日動の社員さんたちが勢い水をかける係をしていらっしゃいました。別にこれはお仕事ではないそうです。希望者は朝早くから集合して、山笠を応援して、そのままご出勤。本当、地域みんなの山笠なんですね。
それにしても超かける! かけすぎなんじゃない? と思うけど、縁起ものなのでたくさんかけます。
博多の人が全力で盛り上がる山笠。寝ずに見に行ってよかった! 「山笠が終わったら梅雨が明ける」と博多の人からよく聞きます。本当に山笠が終わったらすぐ梅雨が明けました! いよいよ本格的な夏ですね!