【女子大生スタートアップ取材ブログvol.7】 エストニア行き事前予習第二弾! 「持たざる者の強さ」で発展してきたエストニア

こんにちは、九州大学の上田りさこです。このブログでは福岡市のFukuoka Growth Nextという施設やスタートアップの動きを、イチ大学生の視点からわかりやすくお伝えしておりますが……前回より番外編! 卒業旅行でヨーロッパを周遊することが決まったので、前から興味のあったエストニアについて、福岡で事前予習をしています。前回(https://www.city.fukuoka.lg.jp/hash/fgn/archives/6)に続いて、昨年8月にFukuoka Growth Nextで行われたイベント「IT先進国家エストニアの生の雰囲気を知る1時間」の登壇者であり、エストニアにはこれまで10回ほど訪問されたという福岡市グローバルスタートアップセンターコンシェルジュの牧野瀬さん(通称ムームーさん)にお話を聞きました。

エストニアと日本のスタートアップが重視することの違い

上田  ムームーさん、お久しぶりです。私、卒業旅行で、1ヶ月くらいヨーロッパをぶら〜っと回りたいなぁと考えてて、その中でエストニアにも行ってみたいなと。もしよかったら、エストニアでおすすめのスポットを教えてもらえれば嬉しいです。そもそも、ムームーさんがエストニアに行かれたきっかけって何だったんですか?

ムームーさん  昔たまたま訪れたフィンランドで、かわいいバケツ型のパッケージに入った蜂蜜にハマったことがあったんです。海を挟んで向かいのエストニアにも、いい蜂蜜があるって聞いて、行ってみて。それが初めてのエストニア。今は結局、エストニアで蜂蜜ビジネスのお手伝いをしています。

上田  へ〜! その蜂蜜、日本で売ってるんですか?

ムームーさん  売ってますよ。私は蜂蜜のおかげで、エストニアに行く言い訳ができてるんです。もともとIoT関係の仕事をしていたので、「エンタープライズエストニア」や「Garage48」というコワーキングスペースには、福岡市が繋がる前から訪れていました。エンタープライズエストニアはエストニア政府の一部門であり、基本的にはエストニア企業の投資や海外進出を支援している組織です。Garage48は、Telliskiviってところにあります。

上田  てり、てれすきび…? エストニア語、発音が難しいです。

ムームーさん  テレシキビ。エストニア語で「レンガ」って意味ね。地域名なんだけど、もともとレール工場だったんです。その跡地に建物が残ってて、そこにスタートアップやデザインやアート系の人たちがオフィスを低価格で借りて入って、この街を構成しています。

上田  そんなところにスタートアップの人たちが入ってるんですか。安いから、そこに集まっているんですか?

ムームーさん  それが、ちょっと違うの。あの人たちが一番求めているのはコミュニティ、ネットワークなんですね。私が海外のコワーキングスペースと日本のコワーキングスペースが違うなと思うのは、日本のは安くて、自習室として使えるところがいいとされる。「安くて良いよね」ってよく言うけど、私はそこじゃないと思うんですよね。コワーキングスペースっていうのは、エンジニアが来て、「こういうの作りました、だから広告したい」って言ったら、そこにデザイナーがいて。お金のことが分かんなかったら、そこにいる詳しい人に聞く。そういうことができる、化学反応が起こるのが一番の価値だと思ってます。日本だと、仕事に集中できて安い空間が求められるけど、私は話をしてていいと思う。話しているとネタや情報がどんどん入ってくるから、そういうところでコミュニケーションとってるんです。

上田  日本と海外のコワーキングスペースの使われ方が違うんですね。

ムームーさん  もちろん会議の時や集中したい時はそれ専用の場所があって、オープンスペースと集中する空間が分けられてるということです。日本では、オープンな場所でも図書館みたいになって、ぼそぼそと話をすることになってしまうでしょう?

上田  なるほどー。Fukuoka Growth Nextもそういうのが理想なんでしょうか?

ムームーさん  私はそう思っています。どんどん話して、コミュニケーションして、ここがあったから自分たちの会社が育って、化学反応が起きた、というのがいいですね。

上田  Garage48、行ってみたいです。私も入れるといいな。

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(スタートアップカフェ内のエストニア関連本コーナー。上段真ん中のカラフルな本が、エストニアの電子政策に関する本。もちろん無料で読めます!)

 

エストニアと日本のスタートアップが重視することの違い

ムームーさん  あと、エストニアって実は農業国で、隣のラトビアは工業国。ところが、ラトビアは工業化が進んでるにも関わらず、それがレガシーになってるから、そこから新しいものは生まれなくて。

上田  それまで蓄積してきた財産に引っ張られて、革新的なことが起こりにくかったってことですか?

ムームーさん  そう。だから工場がたくさんあっても、時代遅れになってしまって。一方、エストニアは農業国だったから余計なものがなくて、逆に発展したんです。持たざる者の強さがあったということですね。

上田  面白い話ですね。

ムームーさん  何年か前、フィランドで「エストニアなんかのもの」って言葉を聞いたことがあって。フィンランドとエストニアって気候や文化が似ていて、エストニアは最初、フィンランドの下請けを多くしてたみたいです。ヨーロッパ全体の中でも、エストニアは下請けという扱いだったようで。でもそれは日本と中国の関係にも似ていて、私たちが「中国製のものなんて…」っていう時、どこかまだ中国を下に見ている感覚がある。でも実際、実力がどんどん抜かれているのを認めざるを得ない、っていう矛盾した状態になってきてますよね。それと同じことがエストニアでも起きているってことです。

上田  そう聞くと、なんだかドキッとします…。近隣の周辺国からは注目を受けてこなかった一方で、淡々と発展していってるんですね。

ムームーさん  エストニアのすごいところは、これまでいろいろな国に占領されながら、最後は独立を果たしたこと。たとえばエストニア料理っておいしいんですよ。彼らは他の国からいろいろと吸収してきたから。あと、エストニアっていうのは、世界で数少ない、性善説が強い国なんじゃないかなって感じてます。相手を信頼してから始めるから、エストニアの人と仕事するとやりやすいんです。オープンというのとはちょっと違って、いわゆる田舎のいい人みたいな感じで。

ちなみにムームーさんは過去にヨーロッパに住んでいたことがあるらしく、他の観光地についてもトータル2時間半くらい、ニッチなところまでご教授いただいちゃいました。おかげで無計画だった旅の予定も半分くらいできた! ありがとうございました。

ほかにも、エストニアに留学されている大学生とつながることができて、スタートアップに関する施設やエストニアの生活についても取材する予定です。さらになんと、エストニアで日本料理屋を営まれている福岡出身(しかも西新!)の方にもお話を聞けることになりました! なんだかいろいろラッキーすぎて、エストニアに勝手に運命を感じます。

次回の記事では、ほんとにエストニアに行って見たこと、聞いたことをレポートします! ではいよいよ、いってきまーす!

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