福岡の不動産投資事情をよく知る人物が語った、福岡の基準地価高騰のワケ

昨年(平成29年)、福岡市はさまざまな都市評価ランキングでランクインを果たし、地方都市の中でも特異な存在感を見せました。その中でも目立ったのが、基準地価の上昇です。

平成29(2017)年9月19日に九州・沖縄の8県が発表した平成29年の基準地価(7月1日時点)において、福岡市は住宅地、商業地ともに5年連続で地価が上昇しました。住宅地では、全国の上昇率トップ10に県内から4地点入り、うち3地点が福岡市内。「福岡市城南区鳥飼7の1の10」は対前年比が13.2%プラスとなり、上昇率で全国2位。商業地は9.6%と、三大都市圏や札幌、仙台、広島といった地方主要市の平均より高い上昇率となりました。

基準地価の決定プロセスは、不動産鑑定士が入手した売買取引の情報を参考に、あらかじめ定められた基準地点の地価の上昇・下落率を算出するというもの。そのため、基準地価の上昇は、土地の実際の取引価格の上昇を意味していると言えます。

では福岡の土地の取引価格が、なぜこれほど上昇しているのか。九州やアジアで投資家や投資ファンド向けの不動産仲介業を展開する九州レップ株式会社の代表取締役・白砂光規(しらすな・みつのり)さんに、住宅地と商業地それぞれの理由を分析していただきました。

◆住宅地:マンション分譲会社による高値での土地取得

――まずは住宅地の地価上昇の理由として考えられる要因を教えてください。

白砂 住宅地の地価上昇は、分譲マンションの販売単価が上昇したことで、分譲マンションデベロッパーによる土地購入の際の購入単価が大幅に上昇した結果と見ています。福岡に限らず、日本の主要都市の分譲マンション単価は近年、大幅に上昇しました。円建資産を求める海外投資家の追い風もあって、東京首都圏が先行して大きく上昇し、福岡などの地方主要都市については、東京ほどではなくとも、タイムラグを伴って急上昇しています。マンション価格の上昇は、競合選択としての戸建価格の上昇をもたらし、マンション建築に不向きなエリアについてもすでに地価上昇の流れは広がっています。

――地方都市の中でも、福岡の上昇率が高い理由は何なのでしょうか?

白砂 福岡は人口が増えており、家購入ニーズが高まることで価格があがるという、シンプルな実需増加要因がまずあります。それから、富裕層による長期投資目的での購入や、海外投資家が円建資産の保有のために購入するケースも増えています。資産保有が目的の場合、空室リスクも大きく考慮しなくていいですからね。福岡の場合、以前は坪200万円が高級マンションとしての目安でしたが、現在分譲されているマンションの多くが軽々と200万円を突破し、300万円に届きそうな展開になっています。

――しかし海外の投資家が、首都圏ではなくわざわざ福岡を選ぶメリットはあるのでしょうか?

白砂 知らない国で投資する場合は、一番栄えている都市に投資するのがセオリーですので、もっとも魅力的なマーケットが東京であることは今も変わりません。その上で、福岡の方が坪単価が安く、1物件あたりの投資予算が少なくて済むこと。また、香港・上海や台湾などの投資家にとってみれば、福岡は地理的に東京より近く、投資家によっては友人が住んでいたり個人的土地勘があるという点も影響しているかもしれませんね。

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◆商業地:ホテル建設を目的とした高値での土地購入とビル売買

――続いて、商業地における土地価格の上昇にはどんな要因が考えられますか。

白砂 これはもう、ホテル建設ニーズが価格上昇の要因とみて間違いないでしょう。現在、天神西通り沿いなど一部のSクラス商業立地を除き、市内一等地のまとまった区画の土地は、入札になればホテル建設予定者が一番高い値をつけて落札します。言い換えると、同じ面積の土地であれば、ホテルを建てるのがもっとも収益性が高いと言えます。次いで、解体して更地にできない既存のビルの売買価格の値上がりも、実は基準地価に直接的な影響を与えています。ビルが売買されると、鑑定士はその売買価格を一定の方法に基づいて土地と建物に割り振り、想定上の土地価格を算出して、それを推定の土地取引価格とみなし、基準地価の参考とするからです。ですから、旺盛な不動産投資マーケットを背景とする高値でのビル購入も、商業地の地価高騰に影響を与えていると言えます。

――個人投資家だけでなく投資ファンドにとっても、福岡への投資は人気が高いということなのでしょうか?

白砂 そうですね。福岡へのファンド投資はもともと人気が高く、その主たる理由はなんと言っても人口増です。東京23区を除き、政令指定都市上位でみても福岡の人口増加率は突出していて、この傾向は近年ずっと続いているため、投資ファンドが福岡にフォーカスする大きな要因となっています。福岡を知らない投資家に対して、人口増ほど説明しやすい要因はないですから。それに、隠れた要因もあります。

――それは何ですか?

白砂 「福岡に出張したい(旨い飯や中洲で遊ぶことを目的に)」ですよ(笑) これが隠れた投資インセンティブになっていると現場では感じます。ファンド担当者に直接インタビューしても絶対イエスとは言わないと思いますが(笑) 実際、私がファンドに在籍していた時に、沖縄で唯一保有していた物件を売ろうという稟議をあげた時に「ばかやろう、これ売ったら沖縄出張に行けなくなるだろ」と言われて却下されたことがあります。福岡への投資も同じで、それだけ多面的な魅力を持った都市だとも言えますね。あ、この話、記事で採用されます?まずいなあ(笑)

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白砂さんのお話にもあった通り、福岡市の人口は増え続けています。平成22(2010)年からの5年間で、政令指定都市中の人口増加数、増加率はともにナンバーワン。増加数は2位の川崎市を2万人以上も引き離しています。また、福岡から入国した外国人の数も増加の一途を続け、平成28(2016)年には250万人以上と、過去最高を更新しています。外国からたくさんのお客様が福岡を訪れているため、ホテル需要が高いのも頷けます。このたぐいまれな人口増とインバウンド需要を背景に、国内や世界の投資家、投資ファンドまでもが福岡に注目していることは、どうやら間違いないようです。 

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