福岡クリエイティブキャンプ2015始動  デジタルアーティスト・北田栄二氏が福岡永住を決めた理由とは

IT・デジタルクリエイター人材の福岡市移住をサポートする福岡クリエイティブキャンプ(以下FCC)。先日、9月4日(金)、東京・御茶ノ水のデジタルハリウッド東京本校にて、FCCが主催するデジタルクリエイター向けの講座「業界歴5年目からのプロダクションワークフロー講座」が開催されました。

これまでにもFCCは、福岡のIT企業や移住者によるイベントを開催してきましたが、今回は大阪出身、国内外の最先端で活躍するデジタルアーティストで、平成27(2015)年1月、福岡市内に「ModelingCafe」の福岡支社を設立した北田栄二さんが、業界の専門的な観点から「福岡」という環境について語りました。

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会場に集まったのは、未来のデジタルアーティストを目指す学生や、よりよい仕事環境を求める経験者など約100名。業界の最先端を走る北田さんの言葉に熱心に耳を傾けました。

まずは第一部、「プロダクションワークフロー講座」では、北田さんがシドニーやシンガポール、バンクーバーなど海外での豊富な経験から、海外と国内の制作環境の違いについて赤裸々に解説。

現在、海外では「スペシャリストではなく、ジェネラリストが求められている」と北田さん。海外ではワークフローがガチガチに設定されている分業制が当たり前だといいますが、自分の担当分だけを粛々とこなすスペシャリストより、その合間を柔軟に動き、手伝えるジェネラリストが必要とされているといいます。

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しかし、ジェネラリストな人材は求められているものの、「海外と日本では開発力に5~10年の差があると肌で感じる」と根本的な問題を指摘。日本は開発職にある人の割合が少なく、CGテクノロジーに対する理解力も圧倒的に遅れているといいます。その一方で、短期間低コストで、○○と同じようなものを作って欲しいとハイエンドなものを求めるクライアントは増加傾向に。

となればマネジメント力が必要になりますが、CG制作系の国内企業はアーティスト出身が多く、制作進行などのマネジメント力が不足しがちという問題があるそう。北田さんは「開発力に重きを置き、マネジメント力を強化して、国内のアーティストがパフォーマンスを発揮できる環境を作ること」がポイントだと語りました。

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そして続いては「ModelingCafe × 福岡市」と題し、福岡市役所で企業誘致を担当する山下龍二郎さんとのトークセッションへ。国内外で活躍するデジタルアーティストの北田さんがなぜ、福岡を選ばれたのか? 福岡の「生活環境」という点に焦点が当てられました。

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大阪出身の北田さんが、海外生活を経て福岡を選んだ理由は「ほぼ一目惚れ」。特に、都市と自然の近さが魅力だったそう。北田さんは「僕らのような仕事は、近くに海と山がないとストレスが溜まってしまう。海外にしかないだろうと思っていた環境が、福岡にはありました。休みの日には糸島で癒されています」と、生活者ならではの実感を明かしました。

もちろん、仕事の上でも福岡はメリットが多いと北田さん。「まずは空港が近いこと。シンガポールやオセアニアといった海外との取引を進める際、福岡がハブ的な都市になるのではと思った」といいます。山下さんによれば「福岡空港には、欧州のハブ空港であるアムステルダムとを結ぶKLM(オランダ航空)が定期就航しています。福岡市はアジア、欧州へのゲートウェイとなることを目指しており、福岡のデジタルコンテンツを直接世界に売りに行く取り組みも行っている」のだとか。北田さんをはじめ、IT・デジタル業界の有力企業が福岡に注目する背景には、こうした行政の思想との一致が理由にあるようです。

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そして話は、よりリアルな日々の生活環境について。コンパクトシティを掲げる福岡市。特に家賃と通勤時間の話題では、参加者の多くが身を乗り出して聞き入りました。山下さんが「福岡市内に勤めている人の通勤時間は、30分未満という人が全体の5割」と紹介。北田さんも「ModelingCafe福岡支社では近距離手当を出しているので、社員7名のうちほとんどは徒歩通勤」と話すと、東京在住の参加者たちからは羨ましげな声が漏れていました。

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また、コンパクトゆえに関連企業がギュッと集中しているのも魅力。逆に言えば、立地に非常にこだわりを持つ企業も多いようです。そんな中、北田さんは支社を設立するにあたり、福岡市役所からこの辺りにはこんな会社があるといった、オフィス選定の協力をいただいたとのこと。そのほか、福岡市役所では事務所の選定や住居についての情報も提供しており、土地勘のない人も安心して移住を考えられるといいます。

質疑応答のコーナーでは、福岡での子育て環境や教育レベルに関する踏み込んだ質問も飛び出し、クリエイターたちの福岡移住に対する“本気度”が伺える展開に。

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長男が小学校に入るタイミングで福岡市東区に移住したという北田さんは、まず子どもの多さに驚いたそう。また、家賃も東京に比べると格段に安く家族で住むにはピッタリ。「ただでさえ日本は海外に比べて労働時間が長い。もし東京にいれば通勤時間も長く、家族との時間が減っていたと思う。都市と自然が近く、教育の面では中高一貫の教育環境もある。ファミリー&ライフバランスを考えると福岡は魅力的です」と語りました。

山下さんも、「福岡市では、子どもを一時的に預かる保育サービスを提供したり、区役所には保育コンシェルジュを配置して相談からアフターフォローまで行うなど、子育てしやすい都市を目指して対策に取り組んでいます」と説明。

仕事環境、生活環境両方の面で魅力に溢れた福岡市ですが、中にはクライアントが集中する東京から離れてしまうことを不安視する参加者も。その点について北田さんは「デジタルコンテンツの部分で言えば、インターネットとパソコンさえあればどこでも仕事ができる。ある程度の人脈とスキルがあれば、東京でもそれ以外の場所でも関係ないと思います。自分の中でのプライオリティーを大切にしてほしい」と、国内外での生活経験に基づいてアドバイスしていました。

海外を渡り歩いてきた北田さんのフラットな意見は説得力があり、多くのクリエイターたちの心を動かしたよう。今回参加した30代の男性は、「福岡にはすでに優秀な人材が集まっているイメージだったが、実は人材不足というのが意外だった」と福岡での就職に意欲を見せました。また、先日FCCに登録したばかりという福岡市出身の男性は「北田さんのお話を聞いて、Uターン後のイメージがより固まった」とコメント。北田さんから、背中を押してもらったようです。イベント会場には福岡クリエイティブキャンプの相談ブースも設けられ、取り組みについての詳しい質問や、仕事・居住についての具体的な相談をする参加者も見られました。

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平成27年度の福岡クリエイティブキャンプには、北田さんが代表を務める「株式会社ModelingCafe」をはじめ、「妖怪ウォッチ」で知られるゲーム会社「株式会社 レベルファイブ」や「LINE Fukuoka株式会社」などの超有力企業が_新たに参加しています。

また、来月10月4日(日)には東京で、10月24日(土)には大阪で、福岡クリエイティブキャンプのイベント開催が決定。今年新たに福岡に拠点を開設したゲームソフト会社「フロムソフトウェア」、福岡の映像制作会社「KOO-KI 空気株式会社」による座談会などを予定しています。さらにイベント終了後には福岡で活躍中のクリエイターたちと直接話すことができる懇親会も。福岡での仕事や生活のイメージを固めるには、絶好の機会となりそうです。

業界のトップを走る北田さんが「永住する気で選んだ」と語る福岡。永住はともかく、少しでも移住、もしくは二拠点生活に興味が湧いたなら、福岡クリエイティブキャンプ2015に参加されてみてはいかがでしょうか?

 

[CGWORLD CREATIVE MEETING]
開催日:東京 10月4日(日)/大阪 10月24日(土)
時間:13:00〜18:30
会場:東京 デジタルハリウッド東京本校/大阪 大阪電気通信大学(寝屋川キャンパス)
参加費:無料
主催:CGWORLD/福岡クリエイティブキャンプ

 

[プロフィール]
北田 栄二 氏
1977年生、大阪府出身。2000年にコンピュータ総合学園HAL大阪校を卒業。大阪の映像プロダクションを経て上京、Modeler/Texture Artistとしてスクウェア・エニックス ヴィジュアルワークスへ移籍。2009年10月に同社を退社し、以降フリーランスのDigital Artistとして国内外で活動を開始。2010年から活動の場をオーストラリアに移し、シドニーのAnimal Logic、Dr. D StudiosでSurfacing Artistとして勤務。2011年11月よりシンガポールのDouble Negative Visual Effectsへ移籍し、2014年11月に帰国。2015年1月からModelingCafe福岡支社代表に就任。幸せな家庭を築くため、世界に通用するDigital Artistを目指して武者修行中。

 

[関連リンク]
福岡クリエイティブキャンプ2015 公式サイト
http://fcc.city.fukuoka.lg.jp/

 

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