
今日は福岡市のお隣、糸島市に行こうと思います。目的は、人気ブロブ『ちはるの森』を運営し、昨年には『わたし、解体はじめました ─狩猟女子の暮らしづくり─』(木楽舎)という本をリリースされた畠山千春さんに会いに行くためです。
千春さんは、「暮らしを自分でつくる」をテーマに半自給自足的生活を送る人物で、巷では「狩猟系女子」なんて呼ばれています。僕もいつも楽しくブログを拝読させてもらっているのですが、その度に「なるほど、こういう生活も楽しそう!」と刺激を受けます。
今回はせっかく福岡にいるので、こういったいわゆるエコな暮らしは、実際のところどうなのか? そして、千春さんはそもそもどうしてこういった暮らしをしようと思ったのか?というところ確認しに行ってみたいと思いました。
FB(フェイスブック)を経由して連絡をとると、「いいですよー」と気持ちいい回答が。しかも、大豆まきと梅干し作りも体験させてくれるといいます。古民家を改修した『糸島シェアハウス』に6人ほどで住んでいらっしゃるということなので、さっそく向かってみることにしました。
天神からは、地下鉄空港線とタクシーを乗り継いで1時間ほど。30分も電車に乗ると、豊かな自然に囲まれます。
ついに、糸島シェアハウスに到着です!
僕「(大きな声で)千春さーん!」
千春さん「はーい!」
いらっしゃいました、このキュートなお方が千春さんです! 第一印象としては、とても猟師をしているような女性とは思えませんでした。作業着姿でも隠しきれない、どこか洗練された雰囲気をヒシヒシと感じます。ただものではない感がハンパないです(笑)。
僕「本日はお世話になります!」
千春さん「いえいえ、こちらこそ。今は猟がオフシーズンで、主に畑と田んぼがメインです。我が家の暮らしぶりを体験してもらえたら嬉しいです」
僕「はい、よろしくお願いします!」
僕「ところで、さっきから虫がブンブンすごいんですが、やっぱり田舎は虫がすごいんすね」
千春さん「これ、ミツバチなんですよ。うちで養蜜してるんです、まだ初心者ですけど」
僕「え!? すごい大量にいるじゃないですか! 僕、ハチ苦手なんですけど!! 刺されません?」
千春さん「大丈夫ですよ(笑)。刺しません」
いきなり、田舎暮らしの洗礼を受けました。千春さんはニコニコ笑ってますけど、僕は全然笑えません。
こちらが、千春さんたちが暮らすシェアハウスです。都会暮らしの僕からすると、その大きさに圧倒されるばかり……。
中に入ると関係者の方々が、ちょうどお昼を終えていました。あれ、よく見るとビール瓶が食卓に並んでいるではないですか。僕もたまに「昼ビール」をやっちゃいますが、こちら方たちも。僕の経験からすると、昼からビール飲む人に悪い人はいません(笑)。それだけ、ゆとりある生活を送っている証拠です。あれ、そういえば…時計とかも掛かってないな。
僕「こちらは全部で何部屋あるんですか?」
千春さん「土間をのぞいて、8部屋ほどですね。屋根裏部屋もあるんですよ」
僕「8LDKですか~。ちなみにお家賃はいかほどなんでしょうか?」
千春さん「外の納屋とかも含めて、1ヶ月5万円です。改修費も含めて、1人2万円ほどの家賃を集めています」
納屋には農作業道具を収納するスペースや狩った動物の毛皮を干している場所などもありました。
なるほど、ひとまず2万円でこの暮らしを実現できるんですね。でも、半ば自給自足的な生活を送っている千春さんたちは、どうやって現金収入を得ているのでしょうか?
千春さん「たとえば、私はこの暮らしのことを伝える講演や原稿を書く仕事、ワークショップなどで現金を得ています。基本的に暮らしにそこまでお金がかからないので、お金のためにそんなに働かなくても大丈夫なんです。だからこそ、お金の心配をせずに自分のやりたい仕事をやっていける、というか。このシェアハウスはそれぞれ専門性のある仕事をもった人が集まっているんですよ」
僕は大きな勘違いをしていました。千春さんたちはてっきり田舎でまったり暮らそうという人たちなんだと思っていたのですが、実際は全然そんなことはなく、自分たちのやりたい仕事を高いレベルで実現するためにこうした暮らしをしていたんです。
千春さん「よく田舎はスローライフと思われがちなんですが、生活自体はスローではないんですよ。自然は自分たちでコントロールできないので、天気にあわせて家仕事をこなしていかないといけないのでなかなか忙しいです。心のあり方はスローになりましたけどね」
僕「ちなみに現在、食費は1人どれくらいかかっているんですか?」
千春さん「いま、自分たちの食べるお米も収穫できるようになったので、1ヶ月2000円から3000円ほどです。今後は大豆や塩も自分たちで作ろうとしていて、そうすれば調味料代もかからなくなるので、もう少し抑えることができそうです」
2000円……。東京ならば、夕食を1回食べれば終わってしまう金額です。それで1ヶ月暮らせるとはおどろきました。
僕「生活で不便なところはありますか?」
千春さん「特にないですけど…あえて言うのであれば携帯の電波が届かないところと、上下水道がないところでしょうか」
え、携帯で電波が届かない!? それじゃあ、仕事にならないのでは……と思ってしまうのは、以前、友人に指摘された「東京病」を患っている証拠で、周りに「あの人は携帯の電波の届かない場所に住んでいる人」と思わせれば、そういう対応をしてもらえるものです。うわー、そのブランディングありだな! それなら自分のペースで仕事ができそうですね。
実際こちらの家にはインターネットもあり、固定電話も引いているので仕事的にはそこまで問題ないのだとか。また、下水がないので洗剤はオーガニック系、水道がないので湧き水を利用しているそうです。ある意味、天然水を飲み放題。
千春さん「では、そろそろ作業に移りましょうか?」
僕「ぜひ!」
明日は、農作業をしながら、千春さんがこういった暮らしをすることになった理由について聞いてみたいと思います。
それでは、また明日!