もつ鍋や博多ラーメン、さらに玄界灘の魚をネタにした寿司など、福岡は数多くの美味しい料理が食べられる「グルメの街」でもあります。これから福岡で暮らしたいと考える人の中には、「どういう料理が食べられるの？」との期待もあるのではないでしょうか。

そこで、「おいしいものを知りつくす、福岡のグルメバイブル」がキャッチコピーのグルメ雑誌『ソワニエ』の弓削聞平編集長に、福岡ならではの料理やお店について、聞いてみました！

福岡らしさのあるお店は「小バコ」と「つながり」がキーワード

「福岡で創業したお店で特徴的だと感じるのが『小（こ）バコ』のお店が多い点。10〜25席程度のお店のことですが、店主とお客の距離が近いので、常連がつきやすくなるんですね。さらに物理的な距離感だけでなく、店主が閉店後、お客とほかの店へ飲みに行く、休みの日に一緒にでかける、など人的なつながりも深いようです」（弓削さん、以下同）

まず、「小バコ」「つながり」というキーワードを教えてくれた弓削さん。つながりの点では、本来はライバルであるはずのお店同士の交流もあり、お客を紹介しあう、共同でイベントを開く、といったこともあるそう。

一方、福岡の飲食店業界について次のような傾向を教えてくれました。

「かつて福岡は、東京や大阪の飲食店が進出しづらい街だといわれていました。なぜかというと、外から来る店舗は基本的に大型店の形態をとることが多く、ほかの都市でやっていたような（福岡に比べて）高い価格設定で出店していたからです。結果として、福岡の人から見ると、『この値段で、この味か』と見向きもされなくなっちゃう。地元のお店はレベルが高く、しかし価格は低めですから。運営する企業が福岡の市場に合わせるようになり、成功事例が見受けられるようになったのは、この5年くらいのことですかね」

「うどん居酒屋」「炊き餃子」「青魚」……料理も食事もユニークで、バラエティ豊か

ラーメンやもつ鍋といった“全国区”のもの以外に、福岡ならではのユニークな料理とは、どんなものがあるのでしょうか？

「ユニーク、という点でいうと、一部の焼き鳥店で提供されている独特の『とりかわ』、そして新鍋料理の『炊き餃子』あたりでしょうか。とりかわは、一般店のものと異なり、鶏の首の皮を串にぐるぐると巻き、4〜5日間、タレにつけて焼く作業を繰り返します。すると脂が落ち、お客に出すときにもう一度焼くと、外側はカリッとしていて内側はもちっとした食感に。一方の炊き餃子は、豚骨、鶏ガラなどのスープに餃子を入れて煮込んだもので、こちらは餃子を楽しんだ後にちゃんぽんでシメる、という食べ方が主流です」

また、近年、福岡では「うどん居酒屋」という業態が流行しているそう。

「昔ながらのコシのない博多うどんというよりは、讃岐の影響が見られ、うどんのメニューも豊富。ベースは居酒屋なのでおつまみの種類も多く、お酒を飲んで、最後のシメにうどんを食べるというのが、うどん居酒屋の楽しみ方です」

お酒を飲むときにもうどんが欠かせないのは、さすがは「うどん伝来の地」とされる福岡だけあります。もしかするとこうした楽しみ方は、今後、全国にも広がっていくかもしれません。

またお店だけでなく、市内や市外近郊で豊富な食材がとれるのも、福岡の魅力であるようです。

「個人的には白身魚も好きですが、サバやアジなどの青魚は、地元の人も外から来た人も、みんな『美味しい』と言いますね。特に、生のサバにタレとすり胡麻を和え、ネギ、ワサビなどの薬味を添えた『ごまさば』が郷土料理として有名です。ほかには、隣町である糸島市産の食材がブランド化に成功し、福岡市内でも糸島の野菜、魚、肉を使った飲食店が増えつつあります」

福岡のグルメについて豊富な情報を持っている弓削さんですが、その源は「足で稼いだ一次情報」なのだとか。毎日、さまざまなお店に足を運ぶと、店主や店員が「新しい店ができる」「あそこが流行っている」と教えてくれるといい、やはり冒頭で述べていた「つながり」が活きているようです。福岡で暮らすときには、飲食店で「オススメのお店ある？」と聞いてみると、魅力ある名店を教えてくれるかもしれません。

 

［プロフィール］
弓削聞平（ゆげ・ぶんぺい）さん
地元の出版社に16年半在籍し、広告営業、ムック制作を行った後、2001年よりフリー編集者に。2003年、福岡のグルメ情報を集めた雑誌『epi（エピ）』を創刊し、2010年にはその後身となる雑誌『ソワニエ』を創刊。現在も編集長を務めるほか、パンフレット制作、他雑誌への編集協力、うどん店「福岡麺通団」の運営に携わる。

 

［関連リンク］
聞平堂
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