あれから1年 「創業特区一周年サミット」で明らかになった、“創業特区第2ステージ”とは!?

平成27(2015)年5月21日、福岡市の創業特区一周年を記念するイベント「創業特区一周年サミット」が「博多百年蔵」にて開催されました。

同イベントは、創業支援拠点「福岡市スタートアップカフェ」を運営する株式会社TSUTAYA(東京都渋谷区) と、市内のIT企業と共同でクリエイティブ人材の育成を行うKaizen Platform(東京都新宿区)の主催によるもの。特区指定後の1年間でどのような成果が得られたのかを振り返るとともに、これからの展開に向けてのビジョンが語られました。

プログラム冒頭の「オープニングセッション」では、Kaizen PlatformのCEO須藤憲司(すどう・けんじ)さんと、株式会社TSUTAYA九州カンパニー社長の鎌浦慎一郎(かまうら・しんいちろう)さんが登壇。

マイクを握った須藤さんは、会場に詰めかけた約200名のイベント参加者に熱くこう語りかけます。

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(写真左:鎌浦慎一郎さん、右:須藤憲司さん)

「他の地方に比べて、福岡市は人材の質が高く、しかも若い。実際に、kaizen Platformに登録しているWebデザイナーのネットワーク1,400人のうち、400人が福岡在住です。福岡市という行政の主導でスタートした創業特区ですが、これを盛り上げて広げていくのはわれわれ民間の仕事。行政のリードではなく、自分たち民間の力で作っていくという意識でやっていこうと思います。起業家にとって、特区1年目はいわば“きっかけ”でした。2年目となるこれからは、“いかに広げるか、大きくしていくか”をサポートしていきたい」

続いて行われた「福岡市在住の起業家たちによるピッチ」では、「ウミーベ株式会社(umeebe Inc.)」CEOのカズワタベさん、株式会社セフリ YAMAP(ヤマップ)代表 春山慶彦(はるやま・よしひこ)さん、株式会社プリンシプル代表取締役原田宏人(はらだ・ひろと)さん、株式会社ウェルモ代表取締役CEO鹿野佑介(かの・ゆうすけ)さんなど、この1年間で、実際に福岡市内で起業した4社の代表が、各自のアイディアをプレゼンしました。

同セッションで、最後に登壇した鹿野さんは、自社プレゼンのほか、特区効果について自身の体験を元にこう語りました。

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「ベンチャー企業は、アイディアはありますが、ヒト・モノ・カネ、全部がない状態。今回の特区でありがたかったのは、“守り”の部分、つまり起業した後の、経営面を固める部分をサポートしていただいたことです。労働関係、法律関係を相談できるスタートアップカフェのような存在は本当にありがたく、月に何回も相談させていただきました」

さらに「起業家サポーターによるトークセッション」で、再び登壇した須藤さんは、「特区によって、より起業しやすくなった、いわば“起業の入り口”は広がったが、これからいかに大きくしていくか。キーワードは“スケール”と”グローバル”。一過性のブームに終わらせるのではなく、この先“スケール”を大きくしていくために、継続できるビジネスとして成功事例を作っていきたい。そして、より“グローバル”に攻めていく、ビジネスとして成立させてくかがポイント」と、今後の展望について語りました。

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最後の「市長講演」で登壇した髙島宗一郎(たかしま・そういちろう)福岡市長も、「行政はあくまで脇役」という従来のスタンスを強調しつつ、今後の創業特区の行方についてこう述べました。

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「街全体がコンパクトな福岡市は、新ビジネスのテストマーケティングに最適。ビジネスコストが抑えられ、トライ&エラーを繰り返すことができるので成功率が上がります。引き続き、行政として、ビジネスしやすい環境づくりを進めていきますが、あくまでも主役は民間のみなさん。今、スタートアップカフェを核として盛り上がっているこの福岡の“熱量”を全国に広げていきたい!!」

また、髙島市長は、福岡市発の民間主導の取り組み「Growth Hack for Women」にも言及。同プロジェクトは、就労意欲はあるがフルタイム勤務が難しい“子育てママ”をメインターゲットに、企業のWebサイト改善を担うクリエイティブ人材「グロースハッカー」として起業したり、キャリア獲得を支援する仕組み。平成29(2017)年末までに、Kaizen Platformに登録する女性グロースハッカーを100名以上増やすことを目標にしています。

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さらにイベントでは、天神地区のビルの高さ制限の特例承認や容積率の緩和などによって民間投資を呼び込む“天神ビッグバン”や、ICT(情報通信技術)分野の起業家にとって「足かせ」となっている電波法の規制緩和など、“創業特区第2ステージ”での実現を目指している様々なアイディアが披露されました。

福岡市はこのイベントも含め、現在「FUKUOKA INNOVATION WAVE」と銘打って、産学官民でいろいろな取り組みを生み出そうとしています。特区指定から1年、本当の勝負はこれから。第2ステージを迎える福岡市の今後のさらなる発展に期待したいところです。

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