いいことばかりじゃないけど悪いことばかりでもない…福岡移住ホントの話

主に首都圏で活躍しているIT・クリエイティブ人材の福岡市内企業へのU/Iターン転職をサポートするプロジェクト「福岡クリエイティブキャンプ(FCC)」。株式会社レベルファイブや空気株式会社といった、福岡を代表するクリエイティブ企業への転職者も生まれるなど、年を追うごとに注目度を高めています。

そして平成28(2016)年度のプロジェクトも始動。10月26日(水)にはヤフー株式会社東京本社にて、大規模なセミナーと交流会が行われます。

今回は、10月26日のイベントにモデレーターとして参加する「福岡移住計画」の代表・須賀大介さんにインタビュー。4年前、東京から縁もゆかりもない福岡に移住してきた須賀さんが語る、“福岡移住のリアル”。イベントへの参加を考えている人、福岡移住に興味がある人は必読のインタビューですよ!

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(目の前に海が広がる福岡・今宿のシェアオフィス「SALT」。こんな環境で働いてみたい!)

--須賀さんは茨城県出身で、東京・下北沢で長く働いた後に福岡へIターンをした移住者ですね。まずは、現在の福岡での仕事の展開について、教えてもらえますか。

須賀 僕が代表を務めている株式会社スマートデザインアソシエーションという会社は、東京時代に自分で立ち上げたWeb制作会社です。現在でも、東京に制作スタッフを置き、リモートワークで活動しています。それから、「福岡移住計画」の活動や関連イベントの開催などがあります。事業範囲が多岐にわたっていますが、毎日朝10時にはGoogle+ハングアウトでミーティングを行い、それぞれの1日のタスクを確認しながら進めています。どこにいてもできる仕事のスタイルを、僕ら自身が毎日の中で実践していますね。

--前回のインタビューでご自身の移住と「福岡移住計画」の立ち上げの話はすでに伺いましたが、それからまた年月が経ち、現在の移住の潮流をどのようにご覧になっていますか。

須賀 そうですね。FCCの活動実績にも表れているように、福岡への移住者は年々その数を増やしています。僕が移住してきた2012年前後は、震災や原発の影響などから、なかば勢いで移住を決める人も多かったように感じますが、最近はじっくりと検討し、移住後の仕事や生活の設計を考えてから移住してくる人が多いと感じます。

--なるほど。逆に言えば、よりシビアに福岡移住のメリットを比較検討しながら、移住してくるということでしょうか。

須賀 そう思います。福岡移住計画でも、当初は「大自然に包まれた田舎暮らし」とか「海の見える生活」といった、東京とは対極にある価値を強調していましたが、今は、移住者に「まずは沿線に住むべき」とアドバイスしていますからね。

--それは、どうしてなんですか?

須賀 結局、移住先のコミュニティにちゃんとアクセスできないと、生きていけないんですよね。僕の場合もそうでした。移住当初は、知り合いも全くいない中、東京を飛び出して糸島半島の入り口に住んで、「田舎で持続可能な暮らしを始めるんだ」と息巻いていたんです。ところが、田舎の平屋って冬にはすごく寒いですし、家族だけで他に知り合いがいない孤独感もあって、だんだん辛くなってきちゃって。仕事は、天神のシェアオフィスを拠点に活動を始めたんですが、思い描いていたほど人との繋がりも広がらず、仕事もうまく展開できなくて、「俺、こんなとこで何してるんだろ…」って思ったりして。

--そんな時期があったんですね。それから、どうやってコミュニティと繋がっていたんですか?

須賀 「Web Designing」という雑誌を読んでいた時に、Webエンジニアの下村晋一さんたちが立ち上げた「LONDO(現Litra)」というシェアオフィスの存在を知って、そこに拠点を移したんです。そこは、Webだけでなく、建築や内装・施工といった、さまざまな職種の人がそれぞれ個人事業主として席を借りながら、オフィス内で仕事をシェアして、質の高い仕事をしていました。ここで、自分と近い感覚を持つ同世代の人たちと繋がることができて、福岡へ移住してやりたかったことを、ようやく実現できるようになっていったんです。

--出会いに恵まれたわけですね。

須賀 ええ。その後、「RISE UP KEYA」や「SALT」、最近では「HOOD天神」といった福岡のシェアオフィスの立ち上げや運営を事業として手がけるようになったのも、LONDOのあり方やメンバーに刺激を受けたからなんです。僕が彼らから受け取ったものを、これから移住してくる人やコミュニティとうまく繋がれていない人に還元したくて。LONDOのメンバーとは今でも繋がっていて、実際に僕の手がけた全てのシェアオフィスの施工は、LONDOの中園直之さんに担当してもらってます。

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(「LONDO」立ち上げメンバーの一人、建築士の小嶺洋介さんと。次に須賀さんが手がけるシェアオフィスの設計について打ち合わせ中。仲が良さそう!)

--なるほど。単に移住するだけでなく、その先の出会いや展開がいかに大切かということを、身をもって体験したわけですね。

須賀 そうです。最近は「+Wander」という、一つの契約で国内の複数のシェアオフィスを利用できるサービスを立ち上げましたが、それも人との出会いをいかに広げて仕事を作っていくかを考えてできたサービスです。これまで単体で運営していたシェアオフィス間を利用者に回遊してもらい、その地域ごとに新しい人と出会う機会を広げ、ビジネスチャンスを増やすという試みです。

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(今後は佐賀・武雄のキャンプ場など、オフィス物件だけでなく、公共の「場」をワークスペースや合宿スペースとして活用していく計画もあるとのこと。)

--東京・下北沢で活躍し、東京の現場感を肌で知っている須賀さんから見て、東京のクリエイターが福岡に移住するメリットって何だと思いますか?

須賀 東京の働き方って、100mの短距離走だと思うんですよ。人と一緒に仕事を作り出すというよりは、いかに大きなクライアントと仕事をして、いかに独り勝ちするかを狙っていたところがありました。でも福岡だと、競争していては仕事が作れないんです。僕も1年ぐらいして、ようやくわかってきたことですけどね。コミュニティや人の繋がりが大事。東京では、代理店経由で大きな仕事をこなして、終わったら飲みに行って仕事のグチを言う(笑)。高い事務所家賃や維持費を払うために、全力疾走の短距離走を、バンバンこなしていくしかない。でも福岡では少し違います。飲みに行ったら、この街をいかに面白くするかという会話が、圧倒的に多いんですよ。クリエイターは、自分のクリエイティビティを使って街を盛り上げる方法を常に考えてるし、そうして実現した仕事は街の景色を変えていくから、達成感も大きいんです。自分の活動が街に与える影響を実感できる点が、東京とは大きく違うと思います。

--それはクリエイターにとって大きなやりがいになりそうですね。では最後に、今回のFCCのイベントについて、意気込みを聞かせてください。

須賀 FCCの参加企業は、福岡の主要なクリエイティブ企業が垣根を越えて集まっています。これ自体が、横の結びつきが強い福岡らしさだなと思います。特に去年は、株式会社レベルファイブや空気株式会社、株式会社ヌーラボといった、東京のクリエイターでもなかなか入れないようなトップランクのクリエイティブ企業に移住転職する人が出てきて、いよいよ成果が出てきていると感じますね。今回のセミナーも100名の参加が予定されていますし、登壇者も個性的で、本音が聞ける会になると思いますので、移住に関心がある人はぜひ参加いただければと思います。

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(+Wander とも連携している、福岡・糸島のコワーキングスペース「RISE UP KEYA」)

福岡移住後も数多くの失敗を重ねつつ、ゆっくりと前進してきたという須賀さん。10月26日のイベントでは、そんな須賀さんをモデレーターに迎え、福岡のWEB業界に精通する3名が、「福岡で働くこと」をテーマにトークセッションを行います。少しでも気になる方は、是非是非ご参加ください!


「FUKUOKA CREATIVE MEETING」
日時 10月26日(水)18:30〜20:30(交流会20:30〜21:30)
場所 ヤフー株式会社東京本社(東京都千代田区紀尾井町)
URL http://fcc.city.fukuoka.lg.jp/event/1583/


【関連リンク】
福岡クリエイティブキャンプ(FCC)2016
https://www.city.fukuoka.lg.jp/hash/fcc/index

福岡移住計画
http://fukuoka-ijyu.jp/2016/10/05/event1026/

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