ついに九州上陸! ゲームクリエイター待望の一大イベント「KYUSHU CEDEC 2015」がやってきた

レベルファイブ、サイバーコネクトツー、そしてガンバリオンなど、日本のゲーム業界を代表する企業が拠点を置く街、福岡。数々の“神ゲー”を生んできたこの土地で、10月17日、九州のゲームクリエイター待望のイベント「KYUSHU CEDEC 2015」が開催されました。

CEDEC(セデック=Computer Entertainment Developers Conference)とは、例年、神奈川県のパシフィコ横浜で開催されている日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けのカンファレンス。今年は8月26日~28日までの3日間開催され、総参加者数は6,564人という盛況ぶりでした。そのCEDECが、「KYUSHU CEDEC 2015」として、ついに九州に初上陸。今回は、この九州のゲーム業界における一大イベントの様子をダイジェストでお送りします。

名作『妖怪ウォッチ』のタイトルはこうして生まれた!

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午前9時45分。土曜日の午前中にもかかわらず、会場の九州大学・大橋キャンパスには目を見張るほどの人だかりができていました。参加者のお目当ては、今やゲーム界で知らない人はいないレベルファイブ・日野晃博社長の基調講演。今回は「日野流 企画立案術」と題し、日野社長が新しい作品の企画を立ち上げるとき、一体何を考えているのか、その秘密が明かされました。

「企画を考えるとき、ゲームのタイトルを取り敢えず“RPG(仮)”や“格闘ゲーム(仮)”としておかない。これは非常に重要なことです。僕は、タイトルとは物事のコンセプトの始まりを意味していると思っています。コンセプトとは、世界観であり空想の集合体です。ですから、仮に誰かに『一緒にこういうゲームを作ろう』と声をかけるとき、このタイトルが決まっていれば、相手はゲームの世界観にスッと入っていくことができます。だから、僕は仮タイトルにコンセプトデザイナーとしての“すべて”を注ぎ込むんです。タイトルが決まらない限り、基本的に企画は先に進めません」

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日野社長が明かしたタイトルづくりの大切さ。では、かの有名な『妖怪ウォッチ』というタイトルは、どのような理屈で誕生したのでしょうか。日野社長によれば、もともと妖怪を題材にすることは決まっていたとのこと。その上で、タイトルを聞いたときに「ん? これは一体どういうゲームなんだろう」と興味を引かれるような、何か引っかかりのあるタイトルにしたいと考えていたそうです。

「そこで思い浮かんだのが、名作『ドラゴンボール』。いまでは、誰もがこのタイトルを何気なく口にしていますが、“ドラゴン”と“ボール”という異質な二つの物を組み合わせることで、ファンタジー感と現代性を上手く表現していると思ったんです。そこで、『妖怪ウォッチ』も、妖怪となるべくかけ離れたイメージの言葉と組み合わせようと思いました」

そこで日野社長は、ドラゴンボールと同様に「妖怪」という言葉の持つ、古い、有機的、不気味、謎といったイメージとは反対の、新しい、無機質、クリア、よく知られている、といったキーワードに共通する「ウォッチ」を結び付け、このタイトルが完成したというのです。

どうして福岡のゲーム会社は成長できるのか?

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午後のセッション「クリエイティブ産業の一大クラスターを目指す福岡市の戦術と福岡に集うクリエイティブ企業の戦略とは?」では、福岡に支社を持つフロム・ソフトウェアの竹内将典さん、今年7月から福岡で本格的な人材育成、HRサービス展開をはじめたリンクトブレインの清水弘一さん、そして福岡クリエイティブキャンプの担当者で福岡市経済観光文化局企業誘致課の山下龍二郎さんが登壇。福岡のクリエイティブ環境について議論を交わしました。中でも盛り上がりを見せたのが「なぜ福岡に拠点を置くと、企業が成長するのか」というテーマ。

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まず竹内さんが、福岡で仕事をして実感していることとして、こう語ります。

「福岡は人も仕事もカバーできる領域が非常に広い。例えば東京に本社のある企業が、他のエリアをカバーするために地方に支社を構えるとしましょう。ここで札幌や大阪に支社を置くとなると、札幌は札幌エリア、大阪は大阪エリアにしか裾野を広げられない。一方で福岡に支社を置くと、九州各県、そして関西エリアから人材を集めたり、仕事のパートナーを探すことができます。つまり、福岡に支社を置けば日本の半分くらいのエリアをカバーできるんですよね。これは企業が将来に成長していく構造としては非常に魅力的だと思いますし、ここまで広い影響力を持つ特殊な経済圏は、福岡の他にないと思います」

一方、清水さんは福岡市のゲーム業界のポテンシャルについて言及。

「福岡にはゲーム業界だけでなく、他業界においても優秀なエンジニアがたくさんいます。これは非常に重要なことで、そういった人たちがこちら側の業界にジョブチェンジすれば、ゲーム業界やIoTの分野で一緒に成長できる。例えば福岡は映像のクリエイティブ企業も多いですが、そうした他業界で活躍していたクリエイターがゲーム業界にやってくると、ゲーム業界にも新たな知見が生まれます。そういった点では、ポテンシャルはまだまだ十分にあると思うんです」

さらに行政の立場から福岡のクリエイティブ産業を見てきた山下さんは、行政と民間、そして行政と教育機関の距離が非常に近い点を指摘。

「産学官、それぞれ顔が見える距離感にいて連携がしやすい。今回のKYUSHU CEDECもそうですが、市全体でひとつになって業界を盛り上げることができるのは大きなポイントだと思います」

現役のゲームクリエイターをはじめ、業界を目指す若者にとっても目から鱗が落ちるような話題が盛りだくさんだった、今回の「KYUSHU CEDEC 2015」。イベントに足を運んだ参加者数は、500人という当初の予想をはるか上回った800人で、うち100人は関東や関西、そして海外からもわざわざやってきたのだとか。今回の参加者から、未来の“神ゲー”クリエイターが登場する日も、そう遠くはないかもしれません。

 

[関連リンク]
KYUSHU CEDEC 2015
http://cedec-kyushu.jp/

 

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「福岡をゲームのハリウッドに」 レベルファイブ・日野社長が描く 福岡ゲーム産業の未来(2015.6.11)
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