家庭が第一…でも仕事も諦めない!  「ママグロースハッカーズ」メンバーが本音で語った ママの働き方の理想形

ママの目線で企業やサービスの成長を手助けする、福岡の働く母親たちの組織「ママグロースハッカーズ」。こちらの記事でもお伝えした通り、現在その活動に注目が集まっています。

ママグロースハッカーズが主に手がけるのは、企業のWebサイトのグロースハック(改善)活動。Webサイト内にある画像やキャッチコピー、コンテンツの位置等を変更し、利用者にとってよりわかりやすく、よりダイレクトに訴えかけるページへと作り変えることで、アクセス数やコンバージョン率(最終成果獲得率)を高めていきます。

メンバーのママさんは、平成27(2015)年9月より、デジタルハリウッド福岡校で「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」を受講。わずか5ヶ月で必要なスキルを身につけ、卒業生9名が平成28(2016)年2月より「ママグロースハッカーズ」として活動を始めています。

専門性が高く、高度なスキルが要求されるグロースハックの仕事。メンバーのママさんたちは、一体どんな人たちなのでしょうか? 今回は、ママグロースハッカーズのメンバーの中から4人に集まっていただき、座談会を開催。ごくごく普通のママから、ナショナルクライアントのWeb改善案件を手がけるようになるまでの、1年間を振り返っていただきました。

 ≪参加者≫

20160913_mamasayuri.JPG
本松さゆり(sayuri)さん
奄美大島生まれ。3歳から関東で過ごし、関東で就職。その後、福岡市に転勤。一旦東京に戻るも、結婚を機に福岡に移住。2歳女の子のママ。法人営業やエステティシャンを経験。チームのムードメーカー。

20160913_mamaremi.JPG
田中礼海(remi)さん
福岡生まれ、福岡育ち。3歳男の子のママ。高校在学中から、アメリカへダンス留学。ダンスレッスンの講師やご当地アイドルの振付師としても活動中。チーム最年少22歳のホープ。

20160913_mamamiki.JPG
堀尾みき(miki)さん
福岡生まれ、福岡育ち。9歳男の子のママ。銀行員・OA機器営業に携わり、出産後はライターを経てデザイナーに。UX視点のデザインが得意な、チームのエース。

20160913_mamaaiko.JPG 
高橋愛子(aiko)さん
大分生まれ。福岡で就職した後、結婚して関東へ。夫の転職に伴い、平成23(2011)年より福岡に戻る。10歳女の子・7歳男の子のママ。色彩検定1級、写真撮影、企業広報、Webディレクション、ブライダルプロデュースの経験あり。チームのリーダー的存在。

◆時給200円!? 主婦向け在宅ワークの、厳しい現実

--まずは、「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」を受講したきっかけを教えてください。

sayuri 私は、結婚する時に関東から福岡に引っ越してきて、エステティシャンの仕事を始めたんです。私を指名してくれるお客さんもできて、やりがいはあったけど、子供が生まれたらその働き方も難しくなっちゃって。子育てしながら働ける仕事を探しているうちに、この講座を見つけたのがきっかけです。みんなはどう?

aiko 私も似てる。関東でしていたブライダルの仕事も、福岡に来て始めた写真館のアシスタントの仕事も、結局週末が忙しいのよね。私は子供が学校に行ってる平日に働いて、週末は家族と過ごしたいと思ってたから、それで在宅の仕事を考え始めたの。

sayuri うん、わかる。二人目を生むことも考えたら、新しく企業に就職してキャリアを積んでいくというのも現実的じゃないから、在宅という働き方は魅力的よね。

miki 福岡は転勤族が多いでしょ? 実際、私の子供の幼稚園のママたちも、半数は旦那さんの転勤についてきた人だったし。男性は同じ会社で長くキャリアを積んでいくことができても、女性はそうはいかないのよね。私は転勤族ではないけど、出産でキャリアが分断されちゃったから、家でできる仕事をしようと思っていろいろと探したの。在宅ワークだったら、最近はクラウドソーシングで発注される仕事が多いけど、まともな仕事は少ないのよね。

一同 そうそう!

miki 私、スキルを身につけるために、在宅ワークの学校にも通ったの。主にライティングの仕事を紹介してもらっていたけど、最初のうちは文章力が必要とされない入力作業がほとんどで、一人前になるまでは全然稼げないのよね。計算したら、初めのうちは時給200円ぐらいで。

sayuri えー、ひどい! 厳しい世界なのはわかってるけど、それにしたって時給200円じゃ、続けられないよね。

miki もちろんずっとその金額なわけじゃなくて、経験を積んでちゃんと稼げるようになった人もいるよ。でも私はグロースハックの仕事の方が将来性あると思って、挑戦したくなったんだよね。

aiko うん、私も同じ。在宅の仕事って、ライターでもデザイナーでもすでにたくさんのプロがいて、私が今から勉強して若い人たちと競争するのかと思うと、ちょっと自信ないもの。でもグロースハッカーはまだ世間的にも注目され始めたばかりだし、ここで一期生としてスタートできたら、来年、再来年になっても少しは有利かなと。

remi みんな、ちゃんと考えて選んでてすごいですね……。私の場合は、企業で働いた経験がないから比べることもできないし、勢いで飛び込んでみたって感じなんですけど。

20160913_mamagrouth2.JPG

sayuri remiちゃんは、ずっとダンスのインストラクターをしてたのよね?

remi そうです。ダンスの仕事は楽しいけど、時間が不規則だから、しょっちゅう親に子供の面倒を見てもらってたんです。でも子供も大きくなってきて、いつまでも親に頼るわけにもいかないし、家でできる仕事を始めないとなと思って。知り合いのおじさんに紹介されて、この講座を見つけたんです。

--講座が始まってからの感想を聞かせてください。授業は楽しいものでしたか? それとも辛かったですか? 

miki 授業はすっごく楽しかったのですが、余裕は全然ありませんでした。週に2回は2時間半のクラス制授業があるし、それ以外に個別制授業もあって、課題もびっしりで、常に追われてた感じです。

remi 私、中学高校と全然勉強してなかったから、最初はちんぷんかんぷんで。しかもダンスのレッスンも続けてたから、レッスンと授業が重なっちゃって体力的にもキツかったです。だんだんついていけなくなって、「やばっ……わたしこのまま行ったら退学かも……」って。でもみんなが心配して、「あそこわかった?」「課題はできる?」って声をかけてくれたんですよ。それから質問もできるようになって、やる気が出てきたんです。

aiko remiちゃん、急にスイッチ入って、復活したもんね。

remi あ、やっぱわかりました? コーディングの授業なんて最初は意味がわからなすぎて泣きそうだったんですけど、Kaizen platformのエディター(専用編集ソフト)を触り始めた頃から、自分がやってることの意味がわかってきて。家で課題をやってる時なんか、親にびっくりされましたもん。「うちのレミちゃんが、すごい勢いで暗号書きよるー!」って(笑)。 

20160913_mamagrouth3.JPG

miki でも、みんなでチームになって意見を出し合って、仮説を組み立てていくのは、すごく楽しい作業よね。以前は誰ともしゃべらずにひたすらパソコンに向かっていたから、人と一緒に仕事をするのって、こんなに楽しいんだなって思ったよ。

sayuri ママって基本的にしゃべり好きだから(笑)。

miki 打ち合わせを効率化しようって話になった時も、「無駄口を叩かないようにしよう」とはならなかったもんね。

aiko  うん、雑談からいいアイデアが出てくるから。

sayuri バックグラウンドがみんな違うから、同じテーマを与えられても、考えることが違うでしょ。自分が考えつかなかったアイデアが出てきて、すごく面白い。

aiko  sayuriさんは研究熱心で、サイトに合うキャッチコピーとかキービジュアルの作り方が上手よね。remiちゃんは、誰も思いつかないようなアイデアで、大胆に削っていくタイプ。

remi 私の提案って、いっつもクライアントを驚かせてますもんね(苦笑)。クライアントが時間をかけて作りこんだコンテンツも、消費者目線で「これ見ないだろう」と思ったら、ざっくり削っちゃうんで。

aiko  こないだも、顧客情報を登録してもらうエントリーフォームを、バッサリ消してたね。

remi だって、エントリーフォームが大好きな人なんて、いるわけないですもん。

miki そうそう、その感覚が大事。結局、グロースハッカーの仕事は消費者に一番近い感性が必要だから。

sayuri ママって毎日何かしら買い物をするし、値段とか質とか、いろんな要素の中からベストなものを選ぶってことを毎日やってるから、選ぶことには慣れてる。それがグロースハックに向いている点よね。

◆ママであることが不利にならない、“フェア”な働き方

--課題をこなしていく中で、どんなことにやりがいを感じましたか?

aiko グロースハックって、改善率が数字ではっきりわかるのがいいんです。

miki そう。自分が作ったものの数字が、経験豊富なクリエイターよりも上だったりすると、めっちゃ嬉しい(笑)。

sayuri それに勉強し始めてわずか半年ぐらいの私たちが、日本中の誰もが知っているようなクライアントの仕事ができるってことも、すごいことよね。この道何十年というプロの人だって、なかなか担当できないようなクライアントだもの。

aiko そんなプロの人たちとママたちが同じフィールドで戦えて、案さえよければ私たちが選ばれることもあるなんて、これまでの在宅の仕事ではとてもなかったわ。

sayuri 私の案が採用されたある会社のトップページを、毎日何万人もの人が見ているのかと思うと、嬉しいですね。

miki そうよねえ。こっちから提案して、よりよいものを作っていけるし、自分の報酬もそれによって上げていけるし。徹底した成果主義だから、自分の力が至らない時も納得できるし。ママだってことが少しも不利にならない、素晴らしい働き方よね。

--講座が終わって、自分の中でどんな変化がありましたか?

aiko 私は、空いた時間を有効に使いたいから、在宅の仕事がしたいと常々思ってたんです。でも、“空いた時間”なんてなかなかなくて、時間は自分で作らないといけないってことがよくわかりました。仕事として担当する以上、納期もあるし、スケジュールを考えて作らないといけないから。責任感が増しましたね。

sayuri そうよね。主婦だから、家事はどうしてもやらなきゃいけないけど、その中でどう時間をやりくりするか、よね。最近はフライパンで野菜を炒めたり、洗濯物を干したりしながら、アイデアを考えてる(笑)。

miki わかる。アイデアに煮詰まったら、「さあ家事しよ」って。

remi 私は、変わったことといえば、ママ友が増えました。私、もともと人見知りだし、愛想もよくないから、ママ友が全然いなかったんですよ。でもテレビで紹介されてから、保育園のお母さんたちが声かけてくれるようになって。「あんな難しい事しよるんやね」「見た目とのギャップがすごい」って。仕事はやりがいもあるし、人間関係もいろいろとうまくいくようになって、1年前とは別人みたいになりました。

aiko それは本当に良かったわねぇ。

20160913_mamagrouth4.JPG

--最後に、子育てをしながらも充実感を持って働きたいと考えている全国のママたちへ、メッセージをお願いします。

miki 今の社会で、働きたくても働けない現状があって、自信を失ってるママってとても多いと思うんです。社会から必要とされていないんじゃないかって思ってしまったり。でも今は、グロースハッカーの仕事を通じて、すごく充実感を感じてます。ママでもいろんなことに挑戦できるってことを、他のママさんたちにも伝えたいですね。

remi 私も、めっちゃ自信つきましたからね。

sayuri 関東の友達から言われたよ。私の活動をFacebookで見て、羨ましいって。関東では、そうしたくても、まだないって。だから、これが全国に広がっていったら嬉しいよね。

aiko 普通のママでも、家庭を第一に考えながらちゃんと稼いだり、仕事のやりがいを得られるってことを示したいよね。だって、子育てをしながら家にいて、それでもちゃんと働いている。それって、ママにとってはひとつの理想形だから!

miki 私たちママグロースハッカーズも、メディアにもたくさん取り上げてもらって、みなさんから応援してもらってるから、その期待に応えないとね。まずは私たちがもっともっと、頑張らないと!

aiko そうね。ちゃんと実績を作っていくことが、全国のママたちの心に響く活動になると思うから、一緒に頑張っていきましょう!

現在ではさまざまな企業の改善案件を手がけ、実績を出しているママグロースハッカーズの皆さんも、一年前はごく普通のママたち。適切な教育と支援があれば、わずか半年で持てる力を大きく引き出すことができる­­­­――彼女たち自身の現在の活躍がそれを証明しています。

出産や子育てを理由に働きたくても働けない状態にあるママが約15,000人いると言われる福岡市では、グロースハッカーのようなママの感性を生かした仕事が今後発展する可能性が大きくあります。そんな福岡を拠点に、ママの働き方の先駆的なモデルが日本全国へと波及していく日も、近いのかもしれません。

【関連記事】
目標は「在宅で月収30万円」  ママグロースハッカーズに見る、福岡発の女性活躍の新しい可能性(2016.8.4)

アクセスランキング