このページは「女性の視点を活かした防災ミニブック」を文字情報だけで編集したテキスト版です。(令和5年3月、令和4年度改訂版に内容修正。)
ミニブックのPDFは、防災ミニブックPDF版(福岡市の男女共同参画サイト)をご覧ください。
<参考:令和4年度改訂版の主な修正内容>
・国の避難情報見直しの反映
・備蓄リストへ液体ミルクの記載の追加
・避難所レイアウト図の変更 等
災害は忘れる前にやってくる。だから日頃からの備えがとても大切です。また、災害に遭うと女性ならではの大変さや必要なものがあります。この本には、女性や子育て家庭に役立つ情報がたくさん詰まっています。ぜひ読んでください。
福岡市長 高島宗一郎
福岡市のみなさんはじめまして!! 宮城県在住の防災士でイラストレーターのアベナオミです!! 東日本大震災発生当時、宮城県の中部にある利府町という町で夫と息子の3人暮らし。当時1才7ヵ月の息子がいた私は、防災対策なんて日々の生活に追われてほとんどしていませんでした。
そしてあの日、大きな地鳴りを合図に東日本大震災が発生。私は運転中。夫は会社。息子は保育園。家族がバラバラの時に地震にあうなんて。あっ信号が止まっている!! 停電したのか!! 息子をお迎えに行き海の近くで働く夫をお迎えに行くも通行止め…帰宅途中のスーパーで30分外に並んでなんとかおにぎり2つを買って帰りました。
※おにぎりやパンだけが買えた
私たちを待っていたのはすべての家電が止まり体験したことのない静けさと暗さ…。遠くから聞こえるサイレンの音に海の方からうなるように聞こえる地鳴り。※ストーブなくてさむい!! ※唯一あったランタン
当日は水道が使えたので…。まあ2~3日でもとに戻るでしょなんて軽く考えていました。停電でテレビを観ていなかったので津波で大きな被害が出ていることも知らず眠ったのでした。※コート着たまま眠った
震災翌日。ど!!ど!!どうしよう!!水がでない!!断水している!! え…トイレとかどうするの!? ※小は流さず大の時だけ流して対応しました。ライフラインの停止、物流の停止で私たちの生活は激変してしまいました。※プロパンガスは使えました。水を求めて歩き(※今日は2リットルまでだった)、食料を手に入れるために並び(※すごい行列!!)、情報がほしくて走りました。 ※広報車が何か言っている!!よく聞こえない
大人だけならガマンできる生活も小さい息子が理解できる訳もなく(※こどもがテレビをたたいている)、私だって…まさか…乳幼児がいる時にこんな地震にあうなんて…おもってもみなかった!! 小さな息子をかかえてスーパーに早朝から並ぶことは難しくてやっと歩いて行ったスーパーが売れ切れで閉店していることも(泣)。
被災後の生活の中、私の心の中にあふれてきたのは後悔の嵐。もっと日持ちする食料品を買っておけばよかった。ガソリンをもっと早く入れておけばよかった。お風呂の水をためておけばよかった。ケータイ・スマホのバッテリーを買っておけばよかった。ランタンやライト、キャンドル…灯りをもっと多く用意するべきだった。ラジオやワンセグテレビを用意しておけばよかった。
被災生活中に必要だと感じたモノにすごく高価なモノはなく、毎日の生活でちょっと心がければ出来た事ばかり。※100均でも手に入るものも多いです!! 震災当時1才だった息子も今では小学2年生。もしまた大きな地震や災害が起きてもあわてない程度の防災対策を心がけています。難しいことはありません。ぜひみなさんも出来ることからはじめてみませんか?
現在、福岡の女性はどれくらい防災意識があるのか。育児に奮闘するお母さん、女子大学生とアベナオミさんによるトークセッションで福岡のリアルが浮かび上がりました。
<女子大学生>
福岡市内の大学に通う10人が参加。一人暮らしの家やアルバイト先で地震が起きたら…とトークは白熱。若い世代ならではの問題点ややるべきことが明確に。
【可愛いインテリアでいざに備える】
竹田:実家に防災リュックがあったけど一人暮らしになって何も…。
林田:レンジでチンできるカレーとか美味しいし、もしもの時のために家族で意識高めに備えています。
アベ:災害時は暗い時間が多く性犯罪に巻き込まれることが怖い。避難所には知らない人がくるのでリスクも。自宅避難を視野に入れて生活を。
吉村:家で避難生活を送るっていう考えがなかった。
管:家でできることをすれば良いんですね。
アベ:ソーラー式のイルミネーションライトやレトロなラジオなど好みのものを取り入れると部屋がオシャレになるし、非常時にも使えます。
梅林:取り入れやすいことがたくさんですね。
アベ:食料であれば、一週間病気で外出できなくても生きていける量が目安。鍋で米が炊けると色々できるし家事スキルもアップ!
井實:早速準備しなきゃと思います。
【命を守るために想像力を鍛えておく】
アベ:アルバイト先だとお客さんをどう誘導するかなども考えないとね。
竹田:災害時のマニュアルがないので必要だなと思いました。地震が起きた時、家の中で近寄っちゃいけない場所は?
アベ:割れると危険なので窓からは離れて。周りに背の高い家具や窓がなければ布団の中が安心。
田中:海の近くに住んでて、もし津波がきたらマンションの高いところに逃げるしかなくて…。
アベ:垂直避難で間違いはなし。時間がないって思ったらすぐに上に。日頃から高い建物を見つけておくのがベスト。
恒松:災害時、そこに留まるか地元に帰るかで悩みそう。
アベ:危険地帯から、一時退避するのもあり。都会でも地元でもコミュニケーションを普段からとって、自分のコミュニティーを作っておくのが一番。
高田:九州で震災もあるし他人事じゃない。
岩井:地域に高齢の方が多いので若い私たちがどう動くのか考えたいです。
<子育て中のママ>
福岡市内に在住のママ11人が参加。日々、家事や育児に追われ防災対策はあまりできていないのが現状。子どもを守るためにどう行動すべきかが話の焦点に。
【意識しなくても自然とできる習慣を】
アベ:子育て中は目が回るような生活。防災を続けるには日々の生活にどれだけ落とし込めるか、なんです。
田村:実際どう準備しておくべき?
アベ:例えばお母さんが一ヶ月入院するとしたら何を備えます?
横山:簡単に食べられるレトルトとか。
アベ:それが一つの入り口。子どもとパパでやっていく備えはあるか、そう考えると必要なものが見えてくるはず。あとローリングストックを身につけ、子どもにもその味に慣れさせておくんです。
岡本:災害時、離乳食はどうしたら?
アベ:ベビーフードがない場合、もらったおにぎりをどうアレンジするか。お母さんのアイデアが子どもを救います。
早田:停電すると保存がきかないですよね。
アベ:一番に生鮮食品、次に冷凍で溶け出したものなどを食べ非常食は最後のとりで。カセットコンロは重宝します。意外に役立つのが子どもの光るおもちゃ。小さくてもいいので、明かりは沢山持っている方が安心。あと、情報入手のためスマホのバッテリーを確保する準備を。
中野:簡単な対策からしていくことが大事ですね。
【コミュニケーションで防災力が上がる】
アベ:地域の交流は?
宮崎:毎年防災訓練などがあり比較的密です。
アベ:私は付き合いがなく、水をもらう際に「近所の人?」って聞かれて。やはり地域とつながっているほうが良いですね。
久賀:お風呂の水は溜めているけど、どれぐらいもつんだろう。
アベ:とにかく生活水がなくトイレが一番大変。浴槽満タンでも数回分なので、トイレの使用頻度などを家族で話し合っておくことが重要。マンションは揺れで溢れる可能性が高いので浴槽半分を目安に。川が近ければバケツで汲むことも。
山本:子どもと一緒にいない時に災害が起きたらどうしよう。
鍋倉:小学生と幼稚園児なのでどう対応して迎えに行ったら良いか…。
アベ:子どもが一人でも身を守れるように家の中の避難場所を決める、避難する基準を夫婦で話すなど事前に家族で共有を。一人ひとりが防災対策をして自力で過ごすことができれば、本当に危険な地域の人の命を守るお手伝いができるんです。
於保:被害が少ない人も意識をかえることが大事なんですね。
佐藤:被災者同士で助け合わなきゃいけないので、まずは自分が生活できる準備をしておきたいなと思います。
6月~10月にかけて起こりやすい災害「風水害・土砂災害」時の避難行動
台風や豪雨による「風水害・土砂災害」から命を守るには、事前の対策と、気象状況をこまめにチェックして、状況に応じた正しい避難行動をとりましょう。
「避難」って何をすればいいの?
小学校や公民館に行くことだけが避難ではありません。「避難」とは「難」を「避」けること。
下の4つの行動があります。
※雨・風がひどくなる前に、避難しましょう。また、事前に避難する場所までの経路を確認し、途中に危険な場所がないか調べておきましよう。
普段からどう行動するか決めておきましょう
1.行政が指定した避難場所への立退き避難
【自ら携行するもの】
・マスク ・消毒液 ・体温計 ・スリッパ 等
(基本の備蓄リストや防災ファッション&リュックの中身もご参照ください。)
2.安全な親戚・知人宅への立退き避難
普段から災害時に避難することを相談しておきましょう。
※ハザードマップで安全かどうかを確認しましょう。
3.安全なホテル・旅館への立退き避難
通常の宿泊料が必要です。事前に予約・確認しましょう。
※ハザードマップで安全かどうかを確認しましょう。
4.屋内安全確保
ハザードマップで次の「3つの条件」を確認し自宅にいても大丈夫かを確認することが必要です。
※土砂災害の危険がある区域では立退き避難が原則です。
「3つの条件」が確認できれば浸水の危険があっても自宅に留まり安全を確保することも可能です。
1.家屋倒壊等氾濫想定区域に入ってない
(入っていると…)流速が速いため、木造家屋は倒壊するおそれがあります。地面が削られ家屋は建物ごと崩壊するおそれがあります。
2.浸水深より居室は高い
3.水がひくまで我慢でき、水・食糧などの備えが十分
(十分じゃないと…)水、食糧、薬等の確保が困難になるほか、電気、ガス、水道、トイレ等の使用ができなくなるおそれがあります。
内閣府(防災担当)・消防庁「新たな避難情報に関するポスター・チラシ」より引用
豪雨時の屋外の移動は車も含め危険です。やむをえず車中泊する場合は、浸水しないよう周囲の状況等を十分に確認して下さい。
浸水や土砂災害が発生する恐れのある地域は福岡市総合ハザードマップで確認してください。
突然起こりうる予測不可能な災害「地震・津波」時の避難行動
平成17年3月に発生した福岡県西方沖地震では、市内で最大震度6弱を観測しました。いつ起こるか分からない地震や津波には、日頃からの心構えが重要です。
地震
まずは地震から自分の身を守る。地震は、揺れへの備えだけでは十分ではありません。発生から時間とともに変わっていく、注意すべき事柄を知っておきましょう。
STEP1:グラッときたら(地震発生0~3分)
机の下に入る、クッションで頭を保護するなどして、自分の身を守りましょう。
STEP2:大きな揺れが収まったら(地震発生3~5分)
避難する場合は、必ずブレーカーやガスの元栓を切って火災発生を阻止しましょう。
STEP3:状況を把握(地震発生5~10分)
家族の身の安全を確認し、災害情報、避難情報などを入手しましょう。
津波
津波の特性を理解しておく。これまで福岡市において被害を被る津波は発生していません。しかし、福岡県や国が行った津波の想定では、最大津波高3.4mとされています。
STEP1:すぐに高い場所へ
津波注意報が発表された場合は、速やかに海岸や河口から離れ、津波警報が発表された場合は、高台や高い建物に速やかに避難しましょう。
STEP2:危険箇所に戻らない
津波は時間をおいて繰り返し発生するため、一度収まっても油断しないでください。第1波で助かっても2波、3波で命を落とす危険性があります。
STEP3:川から離れる
津波は、海岸だけでなく、川を遡上(逆流)して川岸にも押し寄せてくるので、川からも速やかに離れましょう。
屋外に出て指定された避難所等へ移動(水平避難)することが危険と感じる場合や、その余裕がない場合は、自宅や隣接建物の2階以上へ避難(垂直避難)することが安全な場合もあります。
災害時、正確な情報を入手することは何よりも大事です。情報の取得方法や緊急時に発令される避難情報について紹介します。
知っておきたい情報入手法
インターネット:避難所開設状況など福岡市から発信する情報は、市ホームページ(防災情報)から入手できます。
福岡市防災情報
テレビ:最新の気象情報や避難情報、交通機関の状況などの情報入手に便利。リモコンのdボタンを押せば、防災情報を簡単に入手できます。ただし、停電時には使えないので注意が必要。
ラジオ:停電時でも使える電池式の携帯ラジオは防災アイテムの必需品!東日本大震災でも、地域に密着した情報を発信し続けたラジオの価値が、改めて見直されています。FMとAM両方が聞けるものがオススメ。予備の電池も忘れずに。
アベさん体験談:災害当時、停電のためにテレビは映らず、大津波が東日本をのみこんでいるなんてまったく知りませんでしした。スマホの充電もすぐになくなってしまい、ラジオは大切な情報源になりました。
市から発令される避難情報をチェック
警戒レベル3:避難に時間のかかる高齢者や障がいがある人は、危険な場所から避難を。「高齢者等避難」
避難に時間を要する人(ご高齢の方、障がいのある方、乳幼児等)とその支援者は、危険な場所から避難をしてください。 高齢者等以外の人も必要に応じ普段の行動を見合わせたり、避難の準備をしたり、危険を感じたら自主的に避難をするタイミングです。
警戒レベル4:危険な場所から全員避難!「避難指示」
速やかに避難場所に避難しましょう。外出することでかえって命に危険が及ぶような状況では、近くの安全な場所への避難や、自宅内のより安全な場所に避難をしましょう。
警戒レベル5:すでに安全な避難ができず命が危険な状況。命を守るための最善の行動を!「緊急安全確保」
必ず発令される情報ではありません。すでに安全な避難ができず命が危険な状況です。警戒レベル5緊急安全確保の発令を待ってはいけません。
いざという時に慌てずに行動できるよう「マイ・タイムライン」を作っておきましょう。
マイ・タイムラインを作ろう
知ってて安心、スマホで防災情報ゲット
今や生活に欠かせないスマートフォン。この最も身近な情報入手手段でも、メールやアプリなどさまざまな方法で防災情報を取得できます。今スグ、登録してみよう!
登録またはアプリをダウンロードすると情報が配信されるもの
福岡市LINE公式アカウント:「防災」「子育て」などから自分が欲しい情報を選択することで対象の情報だけが届きます。
福岡市防災メール:避難情報や注意報・警報、震度3以上の地震など、防災に関する情報のほか、防災気象情報や環境情報など、スマホやパソコンへ電子メールで配信します。
福岡市防災アプリ『ツナガル+』:災害時に付近の開設避難所を一覧、地図で表示するほか、避難所グループ内での情報共有ができます。また、福岡市からの災害に関するお知らせや支援情報も入手できます。
自分でアクセスして情報を入手するもの
福岡市防災・気象情報サイト(http://bousai.city.fukuoka.lg.jp/):警報・注意報、雨量などの気象情報、河川水位や河川の画像など、防災に関するさまざまな情報が見られます。
自動で情報が配信されるもの
緊急速報メール(エリアメール):気象庁が配信する「緊急地震速報」や、国・自治体が配信する「災害・避難情報」などが、対象エリアにいる人へ一斉に配信されます。アラームが鳴った場合は、ただちに身の安全を確保しましょう。
就寝中、運転中、家族と離れている時…災害はいつ、どんな状況の時に発生するかわかりません。日頃の小さな心がけが命を救い、避難生活の支えとなります。
1.家の中はできるだけシンプルに
通路にものを置くと避難の妨げに。不要なものは捨て、クローゼットの空いた部分に収納を。背の高い家具は倒れても問題ない場所へ設置し固定。寝室には落下しそうなものは置かないようにしましょう。
2.携帯・スマホのバッテリーを確保
電池式のバッテリーを1スマホに1つ、車にはシガーソケット充電器の準備を。災害時、電話がつながらない中、SNSやネットで安否確認ができたり、さまざまな情報を入手することが可能になります。
3.収納の重心は下へ
タンスや棚の下段に水のペットボトルや重い本を置き、転倒のリスクを軽減。
4.ガソリンが半分になったら給油
遠方への買い物や物資の補充など車は避難生活の大きな支えになること間違いなし。
5.外出する時は家族に行き先を伝えて
家族が今どこにいるのかを知っているだけで、災害時の不安が大きく解消されます。
6.日用品を一つ多く買っておく
普段の買い物で常にストックを買う習慣を。物資が滞っても自宅避難の支えに。
7.たまにはバーベキューで火起こししてみよう
電気が止まった際、火力は大事な熱源に。アウトドアを楽しみながら防災力アップ。
8.大切な書類やアルバムは2階or高いところへ
水害などの被害を免れる確率が高いため、重要書類の保管に適しています。
実際に試してみないと分からない防災キャンプ&ピクニックのススメ
防災力を高めながら楽しい時間を過ごせて一石二鳥、足りない備えに気付き、改善点を見つけることができます。
アウトドアに慣れる
まずはお弁当代わりに非常食を持ってキャンプやピクニックへ。デコボコの道を歩いたり、バーベキューや野外で調理体験をすると、子どもの現状を知ることができます。遊び感覚で学ぶことができ、大人数で行うと新たな発見も。子どもを和式トイレや野外のトイレに慣れさせておくのも大切です。
非常食を食べてみる
シリアルバーやゼリー飲料、発熱剤入りのご飯をはじめ、今ではふわふわのパンの缶詰などさまざま。しかし、いざ食べようとすると食べ方が分からなかったり、美味しくない、子どもが食べないといった事態も。実際に食べ、好みのものを用意しておきましょう。
非常用トイレを試す
女性にとって携帯トイレの使用は意外と難しいもの。家庭の事情に合った携帯用・非常用トイレを探し、目隠しや消臭スプレー、衛生用品なども併せて準備を。段ボールや凝固剤の代わりになるものを見つけ、非常用トイレを作ってみるのもおすすめ。
危険な場所を探す
いつもの散歩コースや通学・通勤コースに古い家屋、ブロック塀、狭い路地、小さな河川はありませんか?何気なく通っている道にも危険はいっぱい。実際に歩いて想像し、避難所や道路が塞がれた場合の避難ルート、一時避難できる場所の確認を。
最近注目を集める備蓄方法の一つが、ローリングストック。でも実際どうストックすれば良いのか、その方法を分かりやすく紹介します。
ローリングストックとは、非常食を大量に備えるより普段の買い物で少し多めに食材を少し多く買い足しして使い、使った分だけ買い足すストック法。日常の延長上にあるため、安定的に食料を備蓄でき無理なく続けられます。災害時に取り出せるか、棚から落ちてこないかなどを念頭に置き分散して収納しましょう。
ポイント1
菓子やレトルト食品を準備しておくなど、いつもより少し多めを意識。常温で保存のきくものが便利です。ウォ―ターサーバーも備蓄に有効。
ポイント2
ペットボトルの水など重いものは落下すると凶器に。キッチンのカウンター下や別室のクローゼットを有効活用。分散配置でストック全滅の危機回避に。
ポイント3
古いものは左、新しいものは右に置くなど保存の位置を決め、古いものから食卓へ。使ったものは次の買い物で買い足すクセをつけましょう。
おすすめ食料備蓄
すぐに食べられるもの
みかんやパイナップルなどのフルーツ缶詰、サバの味噌煮やツナの缶詰、温め不要のレトルトなど。調理なしで食べられます。
水だけで食べられるもの
乾燥わかめは比較的少ない水でも戻るので、野菜不足になりやすい被災後の生活に重宝。飽きてしまいがちな白ご飯などにプラスして。
お湯で調理できるもの
カップラーメンはもちろん、フリーズドライのスープがおすすめ。フリーズドライの野菜がたっぷり入ったものを選べば野菜備蓄にも。
いつもの「おやつ」
被災後は普段と違う生活で不安定に。お気に入りのおやつがあるだけでホッとできます。好きなものを「一つ多く」買っておくだけでオッケー。
「まごわやさしい」備蓄が非常時に役立つ!
「まごわやさしい」とは、健康な食生活に役立つ食材を分かりやすくまとめたもの。すぐれた栄養素を持つ昔ながらの食材で、保存がきくものばかり。栄養がとれてストックできる、これぞ非常時にあると役立つ備蓄です。
ま…豆類:豆の乾物や大豆の水煮、あずきの缶詰、高野豆腐など。タンパク質が豊富で食物繊維もとれる。
ご…ごま:ごまやアーモンド、ピーナツ、くるみなどの種子類。タンパク質・ミネラル・カルシウムなどを含む。
わ…わかめ(海藻類):乾燥したわかめや昆布、ひじき、のりなど。タンパク質・ビタミン・カルシウムなどのミネラルが豊富。
や…野菜:人参などの根菜やフリーズドライの野菜、水煮、野菜ジュース、青汁など。ビタミンやミネラル補給に。
さ…魚:さんま・サバ・ツナの缶詰、鰹節、あごだし、にぼしなど。不足しがちなタンパク質の補充、鉄分の摂取に。
し…しいたけ(キノコ類):干ししいたけ、乾燥まいたけ、マッシュルームの水煮など。ビタミンや食物繊維が豊富で低カロリー。
い…いも類:じゃがいもやさつまいも。日持ちがするので、週に1度買い足し常に1週間分をストックする習慣を。
消費期限を定期的にチェックしよう。1か月に1度など期間を決め、古いものから食べ、買い足すようにしましょう。
カセットコンロで栄養満点のお鍋。じゃがいも、玉ねぎ、しいたけ、トマトのホール缶など家にあるもので即席クッキング。
どんな災害時にもすぐ!に役に立つ、防災グッズをご紹介。実際に「あってよかった!」と実感できるものオススメ12選です。
1.水のいらないシャンプー:なかなかお風呂に入れない時でも清潔に保つために、水のいらないシャンプーは重宝します。
2.防臭袋・ビニール袋:おむつやゴミ、汚れたもの入れと何かと重宝。ゴミの収集日が少ないので、防臭袋は生ゴミ入れにも使えます。洗剤と一緒に下着を入れて、洗濯にも。
3.じょうご:タンクやバケツでくんできた水をペットボトルなどに小分けするのに必須。
4.カイロ:女性は特に体を冷やさないことが体調管理につながります。離乳食を温めることにも使えます。
5.ウェットティッシュ・おしりふき:何かと便利。特におしりふきは大判で肌触りがやさしいので、大人も体を拭くのに助かります。
6.マウスウォッシュ:水がなく、歯磨きができないことも。口腔ケアは被災地での病気予防にもつながります。デジタルフロスなどもあるとベター。
7.キャリーバッグ・キャリーカート:水など重いものを運んだり、離れた場所への移動に便利。
8.保温ポット:赤ちゃんがいるママにとっては最強のアイテム。お湯をもらうのに役立ちます。
9.マスク:ほこり対策や病気まん延の防止になるほか、お化粧ができない時にも大活躍。
10.化粧品など:化粧品、リップクリーム、ハンドクリーム、シートタイプのメイク落としやヘアゴムなど。
11.パンティライナー:下着をこまめに着替えることができません。ましてや洗濯も。下着の汚れ防止に。
12.生理用品:いつも利用しているもの、好きなもので準備を。避難場所によっては用意されていなかったり、数が足りないところもあります。
これだけはそろえたい基本の備蓄リスト
防災リュック
水、ウェットティッシュ、携帯食、スマホ・携帯バッテリー、ラジオ・電池、軍手・マスク、ビニール袋、救急セット、ライト・ランタン、保険証の控え、数日分の着替え、保温アルミシート
家のストック
水(飲用・生活用)、トイレットペーパー、ゴミ袋、保存のきく食品、レトルト・乾物、ラップ・アルミホイル、キッチンバサミ、バケツ・タライ、カセットコンロ
赤ちゃん・子どもがいたらプラスして
紙おむつ、おしりふき、おやつ、ミルク・ほ乳瓶・ベビーフード(そのまま飲める液体ミルクも市販されています)、おもちゃ(音が鳴らないものがベスト)、抱っこひも・おんぶひも、アレルギーがある子どもへの対応食品
毎年9月1日から9月7日は「福岡市備蓄促進ウィーク」です。災害に備えて備蓄をはじめましょう!
水や電気が止まる災害時は何をするにも不便なもの。家にあるものでグッズを作ったり、ちょっとした工夫をすることで避難生活の質が大きく変わります。
レジ袋&タオルで「オムツ」
1.レジ袋のサイドと取っ手の輪の部分を切る。
2.タテに開き、股部分に清潔なタオルを敷く。
3.股、お尻の部分にタオルをあてる。男の子はやや前、女の子はやや後ろにタオルを置こう。
4.両サイドを結んでしっかり固定。
5.大きい場合は外側にくるくる巻いてサイズ調整。
完成
ゴミ袋で「カッパ」
1.ゴミ袋の閉じている部分を点線のように切る。
2.袋を開き丸の部分を結ぶ。星の部分がフードに。
ストッキングで「止血バンド」
適度な着圧があるストッキングは簡易の止血に最適。お尻部分を頭に被せ、ももの部分で結ぶと頭の止血に。足を入れる部分に手を通すと、腕の止血に。つま先部分に指の穴を開けると手の止血に。
カセットコンロでできる!ご飯の炊き方
1.土鍋や鍋に白米2~3合を入れ、30分以上水に浸しておく。水加減は人さし指の第一関節。現在の精米技術であれば、無洗米でなくても洗わずに炊飯して問題はありません。
2.強火にかける
3.沸騰したら弱火で15分ことこと
4.火を止めて15分蒸らしたら完成。〈注意〉蒸らし終わるまで絶対にフタは開けないようにしましょう。
※しょうゆ、ツナ、ワカメなど、具や調味料を加えて炊き込みご飯も。
カセットボンベ1本で約60分使用可能!
1日30分使用で2日で1本、4~5本ストックがあると停電時に役立ちます。ご飯の他にも…冷蔵庫の食材を調理する。レトルト食品を温める・お湯を沸かしカップラーメンを作るなど。
水漬けパスタで加熱時間1分!節水&時短調理法
1.皿やペットボトルをカットした容器に水を入れパスタを4時間つける。
2.パスタを取り出し、パスタソースや加熱不要な具と一緒に1分炒める。
3.簡単に火が通って完成!
POINT:あえるソースは備蓄のレトルトでもオッケー。ラップを敷くと皿洗いが不要。水の節約に。
これも頭に入れておこう
食品を食べる順番
1.生もの
冷蔵庫の中にある肉、魚を一番に。夏場は停電した時点で冷凍庫へ移動を。
2.痛みの早い野菜
レタス、水菜など葉物野菜、もやしなどすぐに傷んでしまう野菜を二番めに。
3.溶け始めた冷凍食品
停電したら夏場は冷凍庫ですら一日も持ちません。溶けはじめたものから使いましょう。
4.レトルト・乾物・缶詰
レトルトカレーや海苔、ツナ缶など加熱や水がなくても食べられるものを。
5.非常食
缶に入ったふわふわのパンや発熱剤で温められる非常食、非常用のご飯(アルファ米)は最後に。本当に何もなくなった時に手を付けましょう。
水を使う順番
水道は復旧までに時間を要するため、生活に必要な水が不足します。使う順番を考えることで、最後の一滴まで無駄なく賢く利用できます。
まずは、洗濯・食器洗い・手洗い・沐浴。その後、トイレに使う。
少ないお湯でも家族みんなサッパリする入浴方法
基本アイテム:タライorベビーバス
用意するもの:沐浴剤or重曹
タライ・ベビーバスにお湯を入れ、赤ちゃん用の沐浴剤か重曹を入れる。
入浴の順番:まず小さな子どもを沐浴させる。大人は桶で体を少しずつお湯をかける。
POINT:ジャバジャバかけずに、体に沿うようにゆっくり少しずつお湯をかけること。(※重曹は普段の掃除にも使える)
普段使いできる、安くて便利なアイテムも活用しよう
常に新しいものが登場する100円ショップやホームセンターには、揃えておくと便利なアイテムがたくさん。少しずつ日々の生活に取り入れてみましょう。
すべり止めシート:電子レンジなどの家電、化粧品などの小物を入れたボックスなど、吹き飛ぶ可能性があるものはシートで固定を。
エアー枕:電車や飛行機の移動に便利なエアー枕は、車中泊をしなければならないときに疲れを和らげてくれます。
ソーラー式ライト:ベランダや庭においておくだけで夜や停電時に自動で点灯。電池が要らないのでとても便利で、防犯対策としても効果的。
給水タンク:釣りやキャンプなどに使えるタンクは災害時の飲み水の調達に。使わない時はコンパクトに折りたためるものも。
LEDのろうそくやおもちゃ:火を使わないろうそくや耳かき、子どものおもちゃなどLEDライトを備えたアイテムはたくさん。小さくても停電時の支えに。
スライサー:千切り・スライス・おろしなどに使える便利な調理器具。包丁とまな板を使わないため、貴重な水を節約することができます。
両手が自由に使えるリュックは災害時に大活躍。自分の生活になくてはならないものを含め、避難の際に必要なものを一日分用意しておきましょう。
【防災女子】
<防災ファッション>
肌の露出はなるべく少なく。災害時は何が起こるか予測不可能。ケガを防ぐためにもズボンは足首まであるもの、夏は半袖にアームカバーでも可。歩きやすい靴を職場に用意。交通網が止まると歩いて帰るしかありません。スニーカーなどヒール以外の歩きやすい靴を。
<今ドキ女子のリュックの中身>
必需品
スマホ・携帯バッテリー:電池式のものがおすすめ。
メイク落としとシート:化粧をいつでも落とせる状態に。
消毒ハンドジェル:ケガや断水時の衛生面をサポート
防犯ブザー:犯罪に遭わないよう常に携帯。夜は特に注意を。
予備品
タオル:汗を拭く、止血するなどマルチに使えて便利。
ドリンクボトル:給水所で水やお湯をもらいストック。
【防災親子】
<パパやママのリュックの中身>
必需品
スマホ・携帯バッテリー:数台分を準備。
ウエットティッシュ:食べこぼしや汚れ、体を拭くのに重宝。
大きめのストール:寒さ対策や着替えの際の目隠しにも。
ハンドクリーム:入浴できないときの体臭カバーや癒しに。
予備品
のど飴・お菓子:いつも食べている家族の好きな味のものを。
家族の保険証の控え:お薬手帳も一緒にあるとベター。
<子どもに家族の写真を持たせる>
子どもの持ち物で大切なのはハード面よりソフト面。身元の分かるものを携帯させ、次の事項の徹底を。
・親から勝手に離れない
・知らない人について行かない
・一人で行動しない
・家族の名前と住所を覚えておく
自分自身のケアを忘れずに
家族の用意に目が行きますが自分のケアも大切。心身ともに元気にいられるよう、リラックスできるアイテムも揃えましょう。
ワンポイントアドバイス
・羽織りものが1枚あると体温調節が可能
・子どもは自転車用のヘルメットでオッケー
・大人はヘルメットの代わりに帽子でも可。洗髪が難しい時期も頭が隠せて重宝
・子どものおもちゃは本やなるべく音のしないものをチョイス
このほか、基本の備蓄リストも参考に、自分に必要なものを準備しましょう。
災害時は、犯罪が増える傾向に。イヤな思いをしないためにも、災害時のリスクを理解し防犯対策を行いましょう。
ひとりで行動しない:給水所など自宅以外の場所へ行く際は家族や友達、近所の人と行動を。一人暮らしの女性は安全な家をシェルターにし、友達と共同生活をするとリスクを軽減できます。
オシャレよりも安全重視の服装を:災害現場は危険がいっぱい。オシャレよりも安全面を重視しましょう。マスクや帽子も活用して。
親切な誘いも一度信頼できる人に相談:災害時は不安な心理につけこみ悪いことを考える人も。犯罪やトラブルに巻き込まれないよう、どんな親切な申し出にも慎重に対応しましょう。
普段から持っておきたい防犯グッズ:防犯ブザーやホイッスルなど大きな音が簡単に出せるものは必需品。犯罪の抑止につながります。いざ危険が迫った時にすぐに使えるグッズを普段から携帯しておくようにしましょう。肌を隠せる膝かけなどもあるとベター。
災害時には、貴重品は肌身離さず持つ等、被害に遭わない意識と行動を心掛けましょう。
日頃から交流することで、いざという時の身近な助け合いの場になります。つながりをもつことが、防災の第一歩。
3つの助け合い
自助:自分で自分を助けること。部屋の片付けや日用品の買い足しなど、まずは出来ることから始め自分の命を守る準備を。
共助:家族や地域・企業のコミュニティで互いに助け合うこと。困った時こそ誰かの力が必要。普段の交流が大きな支え。
公助:市や警察・消防などによる支援や復旧対策活動のこと。水や食料の配給、遮断された道路の修繕など幅広く対応。
高齢の方と子どもたちとの親睦が図れる、校区の防災訓練
私が住む町内では、1年間の活動行事の中に防災への取り組みが組み込まれています。昨年は身近にあるものでの救助の仕方、今年は炊き出しでした。昔、諸岡川が氾濫したことがあり、防災の意識は高いと思います。高齢の方が多い地区ということもあり、子どもたちとの親睦も深く、「どこに行くとね?」と声をかけてくれるので、子どもの防犯にもつながっていますね。(博多区・三筑校区 宮崎 由江さん)
子どもたちとの交流で、地域のコミュニケーションの場を
大名校区の一角をお借りしてお米や花を育てています。地域の小学生1~5年生までが参加する交流の場を開いており、ペットボトルでものづくりやおやつづくり、育てているお米や花壇のお世話などをして、地域の子どもたちと交流を図っています。このつながりが助け合いにも結びついていますね。(子どもの居場所作りグランマキッチンカフェ代表大名フラワーボランティア代表中央区・大名 内林 美惠子さん)
乳幼児をもつ母親向けの防災講座を開催
一般社団法人「Smart Survival Proiect」の特別講師かもんまゆ氏を招いて、主に乳幼児をもつ母親向けの防災講座「防災ママカフェ」を福岡で主催しています。東日本大震災や熊本地震など、被災した母親たちのリアルな体験談に基づき、もしもの時わが子のいのちを守るためには日頃からどのように備えるとよいかを学べる内容です。チーム結成から1年ですが、講座参加者は100名を超え、福岡市全域で活動をしています。子連れでも気兼ねなく参加できますよ。(防災ママカフェ@福岡チーム代表 黒屋 文さん)
レイアウト例
避難所の開設・運営においては、男女双方の視点や、性的マイノリティ、高齢者、子育て家庭、障がいのある人または外国人など、様々な立場の人々への配慮が必要です。
避難所に避難した際は、男女を交えた多様な人々で話し合い、十分なコミュニケーションを取り、避難所での生活ルールを決めましょう。また、共同生活が難しい人のために「福祉避難室」を確保しましょう。
運営本部:見回りは男女混合で実施。特に死角になる場所や女性専用スペースは見回りの回数を増やす。
物資スペース:下着や生理用品など、様々な方に配慮した配布方法を検討。
居住スペース:通路や仕切りでプライバシーを確保。地域(町内)ごとや単身・子育て世帯などの配置。
トイレ(女性用):運営者の目が届く場所に設置し、防犯ブザーなどを配備。照明や生理用品も常備。
福祉避難室:障がいのある人、高齢者、乳幼児、妊産婦等の共同生活が難しい方のために確保。
女性更衣室:女性専用スペースには、ホイッスルや防犯ブザーを設置。
育児室(キッズスペース):子どもの遊び場を設置。夜泣きした時等にも使えるよう確保。
洗濯物干場(女性、だれでも使えるマルチスペース):外から見えないようにすると安心。
消毒液:出入口に消毒液を配置し、感染予防。
ゴミ集積場:分別して集積。
ペット用スペース:飼い主の責任で、飼育。
発熱・体調不良者等別室。
九州地方では近年、平成28年4月に熊本地震、平成29年7月に九州北部豪雨と災害が起きています。身近にいる被災体験者
に話を伺いました。
1.自分が災害に遭うとは、思ってもいなかった(平成29年九州北部豪雨で被災)今津 のどかさん 24歳 旅館勤務 福岡県朝倉市杷木平榎在住
あの日、車で久留米に出掛けていて夕方土砂降りの中戻ってきたら、甘木から大渋滞。私の家は杷木平榎地区の山手にあるのですが、既に通行止めになっていて、「朝倉」の交差点からそのまま避難所へと誘導されました。その避難所も次の日には災害で使えなくなり、隣の施設へ。祖父だけが自宅にいたのですが、家への道が寸断されていたので助けることができず、2日間孤立したのち、自衛隊の方に助けていただきました。同居していた家族とも、その日以来バラバラの生活です。家に帰れずそのまま避難所だったので、着替えやいつも使う化粧品や日用品はなく、特に着替えは避難所に世代にあったものがなかったので、隣の市まで買いに行きました。家に一時帰宅で行けたのは5日後。許可をもらい、地域の方々と一緒に向かいました。途中道は寸断され、川のようになった道にかけられたはしごを渡りながらたどり着きました。私の家は土砂が入ることもなく無事だったのですが、川に近い同じ集落の方の家は5、6軒土砂と共に流されていました。まわりの電柱はなぎ倒されていたので電気はつかず、懐中電灯で照らしながら必要なものだけをリュックに入れました。家に帰れないのが一番つらいです。友達からの励ましは、前向きな気持ちを起こさせてくれます。家族のことも今まで以上に想うようになりました。
ジーンズ・スキニーパンツの準備は必要:被災したら色々な作業をしなければいけないので、動きやすい服装でいなければなりません。ジーンズやスキニーパンツの必要性を感じました。
若い人向きの下着や着替えがなかった:用意されているものは、どうしても誰もが着れるものが多いので、世代ごとに合う大きさやデザイン、色、若い人が着るような下着がなかなかありません。洋服は結構気分転換になるので、世代ごとに分けた支援があるといいなと思いました。
生理用品がみんなの目に入るかたちで置かれているということ:避難所に生理用品が用意されてはいるのですが、誰もが目に付くように置かれていて、もらいにくそうでした。また、ナプキンはあってもサニタリーショーツはなかなかないので不安がられていました。
平成29年九州北部豪雨:平成29年7月5日から6日にかけて、福岡県・大分県を中心とする九州北部で発生した集中豪雨。福岡県朝倉市、東峰村、大分県日田市では川の氾濫、土砂災害と甚大な被害をもたらした。
2.今まで当たり前に存在していたものへの有難みをすごく感じるようになりました(平成28年熊本地震で被災)三嶋 和代さん 39歳 主婦 熊本県上益城郡益城町在住
前震は、娘二人を寝かしつけようと絵本の読み聞かせを始めた時でした。大きな揺れがきて一瞬のうちに停電、真っ暗になりました。家の中のものは何もかもが倒れ、何が起きたのか分からない状況でした。余震も続いているので動くこともできず、子どもたちは「ママ、いつまで揺れるの?」とずっと怖がっていて、子どもたちをかばう姿勢でじっとしていました。揺れがおさまってからは安全なところに連れていくことだけしか考えられませんでした。偶然にも住んでいる集合住宅の下の階の方が東日本大震災、阪神・淡路大震災を経験されていて落ち着いて行動をされていたので、すごく心強かったです。この日は夫が帰って来られなかったので、同世代の子どもがいるご家族と一緒に近所の施設に避難しました。翌日、夫と合流をして阿蘇の実家に避難。その日の夜に本震がきました。実家近くの小学校の運動場に避難し車の中で過ごしました。翌日の行政などの情報で、道が無くなり、JRも運行できず益城まで帰れないということが分かり、阿蘇から出られない状態に。益城に戻って来られたのはゴールデンウイークが明けた頃です。今まで当たり前に存在していたものへの有難みをすごく感じるようになりました。ただ一年以上経った今でも、子どもたちは夜に怯えたり、暗いところを怖がったり、地震が起きた時に読んでいた絵本を見ると、思い出してしまうようです。まだまだトラウマから抜け切れないのが正直なところです。
子どもと接する時は、笑顔で毅然とした態度で事実を伝える:どうしても子どもに心配かけないようにと親は不安を隠そうとしてしまいますが、子どもはちゃんと見抜いていて、逆に不安になってしまいます。あえて地震の話をしないのではなく、状況は全部言うようにすること。その時に大切なのは、自分自身が笑顔を忘れず毅然とした態度でいることですね。
地震があったから何かをやめるということは、極力しないように:幼稚園でPTAをさせてもらっていたんですが、行事など地震があったからやめるという話ではなく、保護者主催のものはとにかく全部やろうと、震災後にすぐバザーをしました。地震があったことで、何かがなくなるというのは子どもにとって実はとてもストレスになることなんです。
ママ友グループとのSNSに助けられた:災害時必ずしも夫がいてくれるとは限りません。普段から子どもを持つ同じ境遇のママ友とSNSのグループでつながっていれば、一人でいるときもすぐ状況を教えあったり、助け合ったりできます。直面する悩みなどがあれば、誰かに聞けば答えてくれる。心強く助けられました。
熊本地震:平成28年4月14日以降、熊本県と大分県で地震が発生。熊本県益城町では14日と16日に震度7を観測。益城町のほか、西原村、大分県地方に甚大な被害をもたらした。
職業や家族構成はもちろん、介護中、透析が必要、ペットがいる、祖父母と同居、川が近い、一人暮らし…などそれぞれの環境で備えるべきものは違います。状況に合わせ、オーダーメイドの防災準備をしましょう。
防災リュックのチェック項目
・貴重品はすぐに取り出せるところに保管している
・家族全員分の防災リュックを準備している
・薬・アレルギー対応食品など「これがないと困る」ものを入れている
・離乳食を食べさせるスプーンなど、使う場面を想像して必要なものは全て入れている
・家族一人ひとりが持ち運べる重さだ
備蓄品のチェック項目
・電気やガスが止まっても3日間は過ごせる食料・水がある
・簡易トイレを準備するなどトイレの水が流せなくても生活できるようにした
・非常食や簡易トイレを実際に使用し、味や使い方をチェックした
・常温で保存がきく食材を買い、その食材を使った料理を食卓に出している
・保存がきく食材や日用品をいつもより少し多めに買うようにしている
・ペットのエサやトイレが困らないよう準備している
その他のチェック項目
・不要なものの処分やタンス・棚の配置換えをし、ケガをしにくい部屋にした
・緊急時の家族の集合場所や連絡方法を家族で決めた
・一人ひとり違う場所にいる場合など、シチュエーションに応じて避難を想定した
・幼稚園や小学生の災害時の避難方法を確認し、家族で対応の仕方を決めた
・家の中の避難場所(一番安全な場所)を決め、子どもにも伝えている
・子どもに野外トイレや和式トイレを利用させ、慣れさせている
・キャンプやバーベキュー、ピクニックなどアウトドアのレジャーをしている
・地域の掃除や防災訓練など、近所の人と顔を合わせる行事に参加している
・家族や親戚、会社や学校の連絡先をアナログのアドレス帳に書いた
・預金通帳や保険、運転免許証などの、緊急時に必要な情報の控えをとった
東日本大震災から3日後、全国から集まった消防車が私の住んでいるアパートの前を津波被災地に向かって一列に走って行きました。九州ナンバーの消防車を目にした時、「なんて遠くから来てくれたんだ!」と感謝の気持ちで涙が溢れたのを今でも覚えております。いつか来るかもしれない災害に備えることは、ダイエットよりも難しいことかもしれません。それでもこのミニブックをきっかけに「ちょっと何か一つははじめてみようかな」と一人でも多くの方が思っていただければうれしいです。
あとがき
近年、九州各地でも大規模災害が発生しています。また、福岡市でもいつ災害が起きるかわかりません。慣れない避難所生活、慣れない食事、足りない生活用品。様々な困難が想定されます。実際に東日本大震災などの経験やデータから、災害時には、女性ならではの不安や困難が、たくさんあったことがわかっています。この「女性の視点を活かした防災ミニブック」を、一人でも多くの方に手に取っていただき、自分に必要な備えの参考にしていただければ幸いです。そして、この本を読まれた方には、ぜひ身の周りの方にも、備えの大切さを伝えていただきたいと思っています。市民一人ひとりの備えが福岡市の防災力をアップします。皆様のご協力を、どうぞよろしくお願いします。
福岡市
熊本地震や、九州豪雨をはじめ災害で被災されたすべての方に、心からお見舞い申し上げます。制作者一同
女性の視点を活かした 防災ミニブック 平成29年9月発行 令和5年3月改訂
発行:福岡市市民局 男女共同参画課
編集制作:株式会社サンマークNasse編集部
本冊子に掲載している情報は平成29年9月現在のものです。本冊子の記事・写真・イラスト・レイアウト等の無断転写、転載を禁じます。 Copylight 2017福岡市