ファザーリング・ジャパン九州(以下、FJQ)は、”新”九州男児なパパ達を支援するパパコミュニティです。
父親支援という考え方がまだ一般的ではなかった当時、育児や家庭のことで悩んでいる父親が多く存在していることを背景に、2006年にファザーリング・ジャパン(東京)が設立され、FJQは九州の支部として2010年に立ち上がりました。現在は全国約10か所にネットワークを広げています。
FJQの会員は現在およそ60名。「父親であることを楽しもう」「よい父親ではなく、笑っている父親を増やそう」をミッションに掲げ、若い世代の父親支援をはじめ、働き方の見直し、男性の育児休業取得推進、父子家庭支援などに取り組むほか、九州各地のパパネットワークを活かし、セミナーやイベントを通じた活動を展開しています。

森島代表(FJQ代表理事)
ファザーリング・ジャパンが設立されたのは、「イクメン」という言葉が出始めて流行語大賞などを取った頃ですが、その頃の父親支援は「男性も育児家事をやりなさい」、「育児をしない男性を父親とは呼ばない」といった雰囲気のものが多い印象でした。だから私たちはそうではなくて、せっかく父親になったんだから、「父親であることを楽しもう」という思いを「ファザーリング」という言葉に込め、活動をスタートしました。
(「父親になること」と「父親をすること」は別物)
森島代表より「男性の育児参加」や「パートナーシップ向上のヒント」、「働き方改革」などについて説明を受けました。

森島代表からは、父親が育児に参加することのメリットとして、夫婦や家族の絆が深まることで、本人のメンタルヘルスにも良い影響があること、また、夫の育児・家事時間が長いほど第2子以降の出生割合が高くなる傾向があることなどが紹介されました。さらに、育児を通じて身につく段取り力などが、仕事においても有用な能力となる点についても触れられました。
あわせて、パートナーシップ向上のヒントとして、「具体的に伝える・きちんと聞くこと」、また、働き方に関するアドバイスとして、育児休業(以下、育休)は「子育てのために仕事を休む期間」ではなく、「子育てをしながら働き続けるための準備期間」であるということについて話されました。
市長
「良い父親でなく、笑っている父親を増やそう」、まさに子育てにポジティブな形で参加する、参加することがむしろ楽しいと昇華させていくことが素晴らしいと思いました。
それに父親として、ということもあるけれど、人として育っているかというところも大きいなあと思いました。子育てやパートナーシップ向上のためには、自分の人間力的なところを磨いていくことも大事になってくるんですよね。
(男性の育児参加への課題)
市長
FJQへ参加しようと能動的に来る時点で、すでに関心が高い人ですよね。あまり関心がない層の人に来てもらう工夫はどのようにされているのでしょうか。
森島代表
まさに「多くの人に聞いてもらうには」というのが課題としてずっとあります。妻が夫を誘って参加されるケースも多く、最近はあまり使わないですけど、前は「夫をイクメンにするには」といったテーマなどで講座をやっていたこともあります。
関心が高い人に参加してもらい、その人たちが幼稚園や保育園で保護者会の会長をやったり、イベントをやってみたり、そこからどんどん波及させていくような形も効果があると考えています。
市長
自分の若い頃を振り返りながら至らない点がたくさんあったと感じました。若い頃は、外でさまざまな職種の人と出会い、話を聞くことで自分が成長しているように感じていたので、どんどん外に出て経験の幅を広げたいと考えていたんですよね。
市長
ぜひ、皆さんが活動を始めたきっかけや参加して良かったと思うエピソードがあれば教えてください。
森島代表
今はこんなふうに偉そうに話していますが、正直、全然できていませんでした。
16年程前、「イクメンブーム」の頃に広告の仕事で「イクメン」を扱い、仕事としてFJQのノウハウは知っていました。
その後病気で半年ほど入院した時、家族がお見舞いにあまり来てくれず、来ても子どもがすぐ帰りたがって、「家族なのに」とショックを受けました。そこでFJQの考え方を振り返り、学んだことを一から実践しました。今では家族ともとても良い関係です。
FJQでは自己紹介が、「子どもは何歳?」から始まります。そんな関係が心地よく、育児は大変でも仲間がいると思えるのが心強かった。だからこそ、この経験を若い世代にも伝えていきたいと思っています。

「失敗してきたからこそ、その経験を若い人に伝えたい」と語る、森島代表
樋口さん(FJQ理事)
私は九州経済産業局という国の行政機関で働いていますが、2009年に長男の育休を取った当時、職場には男性育休のロールモデルが一人もいませんでした。男性育休の情報を探す中でファザーリング・ジャパンの存在を知り、ノウハウを学びたいと思って参加したのがきっかけです。
当時30歳前後で、先ほど市長が言われたような、夜遅くまで働いて、飲み会で人脈を作るという働き方をしていました。でも育休を取ったら限られた時間をどう活かすかを考えるようになり、そこで段取り力が身につきました。上司にオンラインで報告するようにしたり、飲み会をランチ会に変えたりと、自分の中では大きな働き方改革でした。
また、FJQの活動を通じて企業や自治体のお父さんたちとのネットワークが広がり、それが仕事にも活きています。今は企業の働き手が本当に不足していて、本業の方でも色々な施策に取り組んでいるんですが、本来は会社の魅力や働きがいといったところにも力を入れないといけないと思っています。そういうところは、仕事とNPOの領域が重なりつつある状況ともいえるため、毎日ワクワクしています。
三根さん(FJQ理事)
私は個人で仕事を始めた当初、片付けの仕事をしていましたが、「ママが効率的に過ごすため」「ママが心地よく過ごすため」といった、女性向けの発信がとても多くて、「じゃあ男性は?」と少し違和感を覚えました。
そこで、女性向けだけでなく、夫婦に対して何かできることはないかと考えたことが、FJQに参加したきっかけです。
また、育休を取得して職場復帰した時、自分ばかり保育園から呼び出されるなど、思うように働けない状況に直面しました。初めて働き方について夫婦でしっかり話し合ったことで、コミュニケーションの大切さを痛感しました。FJQの活動を通じて、たくさんのお父さん方と知り合うことができました。
最近は、保育園のお迎えに来る男性も増えているように思います。男性・女性、お父さん・お母さんという区別ではなく、子育てに向き合う「同志」のような気持ちになります。
写真、左から
樋口さん「自分の経験を活かして企業側の意識を変えたい」
三根さん「自分の考えを大切にし、夫婦でよく話し合うことが大事」
早田さん(FJQ会員)
私は結婚当初から、子育てには積極的に関わるつもりで、「主夫になる」くらいの気持ちでしたので、育休もFJQを知る前から職場に相談して取りました。その後、知人から「FJQで料理教室をやるので、料理ができるお父さんを探している」と声をかけられたことがきっかけで参加することになりました。何かに困っていたわけでも、変わろうと思っていたわけでもなく、どちらかというと受動的な参加でした。
ただ、その料理教室を通じて、子どもたちが食べられなかったものを食べられるようになる姿を見て、「食に関わることの楽しさ」を強く感じるようになりました。そこから、料理教室を続けながら、子どもが下校する時間には家にいるという働き方をしています。
教室では、「食は人を良くする」をモットーに、身体に優しいものであるとか、子どもや家族へ思いを寄せながら料理してほしいと伝えています。参加者から「おいしかった」「また作ったよ」と言ってもらえることで、私自身の肯定感にもつながっています。
元々は大学職員でしたが、今は父親であることが、自分の人生やキャリアにつながっていると感じています。
内海さん(FJQ会員)
私は、次女が10万人に1人の難聴の障がいを持って産まれたことで2015年に7ヶ月育休を取りました。当時、周りは誰も育休を取ったことがない状況でした。私も35歳くらいで、仕事のキャリアも家庭も大切にしたい時期でしたので、妻と話し合い、1つ目は子どもを育てる「育児」、2つ目が次女の耳を育てる「育耳」、そして3つ目は自身のキャリアを育てる「育自」という3つの”イクジ”を大事にしようと決めました。
子どもと一緒にいない時間は、キャリアを磨くためにビジネスコミュニティに参加して、その中でFJQと出会い、父親として成長しようとする仲間が多いことに共感し、参加するようになりました。
FJQに参加してからは、娘の保育園でパパ会をゼロから立ち上げたり、小学校でPTA会長をやったり、イベントを行ったりもしました。自身のプロフィールにFJQの活動を掲載していると、興味を持ってくれるお父さんたちが少しずつ集まるようになって、結果として啓発活動にもつながっていきました。
写真、左から
早田さん「これからは『主夫』も自然な選択肢のひとつ」
内海さん「知らない姿にはなれない、多様な価値観が大事」
本間さん(FJQ会員)
10年ほど前、北海道で大学に通っていた頃に「ママの活動を応援するセミナー」といった講座に友人と参加し、そこでファザーリング・ジャパンの存在を知りました。現在は7カ月の子どもがいて、経営者として自宅で仕事をすることも多いので子どもと関わる時間を比較的長く取れています。元々育児や家事は平等にしたいと考えていたので、色々と調べていくうちにFJQへ参加するようになりました。参加後は、会員同士で子育ての情報交換をしたりしています。自分が集めてきた情報を妻に伝えると、「積極的に子育てに関わってくれている」と受け取ってくれて、夫婦の関係づくりにも役立っています。
写真、本間さん「育児も家事も50:50が信条」
市長
みなさんそれぞれに思いやきっかけがありますね。
福岡市では令和6年度に男性職員の育休取得率が100%に達しました。制度自体は以前からありましたが、自分が休むことで残っている同僚に負担がかかるのではないかと考えるとなかなか言い出せないというのが実情でした。
そこで、「基本は全員が取得する」という前提にし、取らない人がいれば、その理由をヒアリングする。本人が「休みたい」と申し出るのではなく、「基本は男女関わらず取るもの」というトーンに変えた方が、取りやすくなると思いました。
まずは休んでしっかり時間を確保して、復帰後も無理なく続けられる働き方を考える時間につながればいいなと思っています。
(FJQができること、行政ができること)
市長
私たち行政も、多くの方に向けて子育て支援を行っていますが、一方で、皆さんのような活動だからこそできる、きめ細やかなアプローチがあるとも感じています。
特に、楽しんで関わるような方向へ促す啓発などは、行政としてどういう形で発信するのが効果的だと思いますか。
早田さん
福岡市はとても住みやすくて、人口もどんどん増えてますよね。ですので若い世代のパパたちが子どもが小さい時期から地域で繋がるきっかけや場があるといいと思います。
もう13年ほど前のことですが、保健所の乳幼児健診に行った時、子どもと一緒に来ているのはお母さんばかりで、保健師の方が私への質問をためらう場面がありました。その時、お父さんだけでの行きづらさを感じたという記憶があります。
森島代表
男性向けの講座は、やはり人が集まりにくいですね。福岡市でも早良区や西区、城南区で行政と一緒に男性向けの講座をやっていますが、参加者が思うように集まらない時でも、なぜ男性に向けてこうした話を続ける必要があるのか、その背景を理解してもらい、行政としても継続して発信してほしいと思っています。ファザーリング・ジャパンも当初は数名でのスタートでしたが、継続していくうちに今では会員数が全国で500人以上になりました。
市長
人を動かすのはまさに、「楽しそう」と感じるかなんですよね。「行かなきゃいけない」を「行きたい」にどう変えていくかが大事ですよね。
内海さん
福岡市は、教育や子育てに本当に力を入れていて、ありがたいなと感じています。
10年ほど前に育休を取った時、その思いや育休中に行った活動を、小学校の「ぬくもり」という道徳教材に掲載していただいたんです。当時から10年経って、それを見た娘の友達から「お父さんの育休の話が教科書に載ってたね」と言われました。学校でそのような内容に触れる機会があると、子どもたちは自然と“インフルエンサー”の役割を果たしてくれます。市としても、子どもたちに伝え続ける取り組みを行っていただければ、10年後、20年後には、福岡市の中でそれが文化として根付いていくのではないかと思います。
森島代表
最近、福岡市のライフデザイン支援事業の中で、「父親の育児の関わり方」について、3つの大学で話したのですが、大学生にとって、ほとんどが初めて聞く内容だったようです。こうした若年層に向けたアプローチは、ぜひ私たちとしても続けていきたいですし、市としてもぜひ継続していただきたいと思っています。
(男性の意識、女性の意識、企業の意識)
市長
以前、あるご家庭で母親が食事中ずっと子どもを抱っこしていて、父親が自分が食べ終わってから代わるという場面に遭遇したことがありました。後で、知人女性に「先に代わってあげなくて良かったのかな・・」といった話をすると「もし、普段していないのにそういう場面だけ父親が張り切るのであればそれはあまり良くない場合もあるよ」と言われて、「もう正解が分からない!」と思いました。ですので、先ほどあったスライドにもっと色々なパターンの具体例があるとすごく勉強になると思います。

森島代表
やはり、「子育ては女性がするもの」という意識が、女性自身の中にも無意識に心の奥底にあるのではないかと思います。だからそこを若いうちから変えていかないといけないですね。
早田さん
私も「主夫」なので、娘の同級生から「お父さんは何でお家にいるの?」って言われます。
市長
自分の家の常識が、世の中全部の常識って思い込んでいる場合も多いですからね。
内海さん
仕事選びやキャリアの選択も同じで、身近にいる大人や周りで見てきた働き方しか知らないと、いざ就職活動になったときに、「たくさんの選択肢がある」ということ自体に気づけないですよね。家庭のあり方も同様で、色々な形があっていいんだということを、若いうちから知っているかどうかは、大きな違いだと思います。
樋口さん
企業経営者や特に中小企業の意識も変わって欲しいな。
市長
子育て支援に関わる中で、なぜここまで大変になっているのかを考えた時、三世代同居が減ってきたことも影響しているのではないかと思います。例えば、レスパイトケアや病児保育など、同居家族がいれば協力を得られる場面もあると思いますが、実際にはそのような家庭は限られており、だからこそ、行政による支援が必要だと感じています。
一方で、共働きが当たり前になる中で、夫婦が一緒に支え合うことの重要性もより増していると感じており、ぜひ、これからも皆さんと一緒に取り組んでいければと思います。本日はありがとうございました。

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