グリーンシティ福岡は、緑と環境の活動に取り組むNPO団体です。「緑を愛する人を増やす」ために様々な取組みを行っています。
身近な虫や季節の草花の観察、里山の手入れ、学びのためのワークショップなど、大人も子どもも楽しい体験の場や持ち寄った経験、 気持ちが活きる対話の場づくりを専門として活動しています。
「まちなか森のガイドウォーク」は、普段は気づかなかったり、見落としがちな「まちなかの緑」をじっくりと歩きながら散策するガイドツアーで毎月1回グリーンシティ福岡が開催しています。意外と森が多い福岡のまちなか、木々をじっくり見て歩くと、身近な自然、生きものたちの生きる工夫、まちの歴史などを感じることができます。
「まずは、身近な緑に興味を持ってもらい、みどり好きが増えると嬉しい」とグリーンシティ福岡の志賀さんは話します。当日は、許可を得て、アクロス福岡のステップガーデンを散策しました。
「まちなか森のガイドウォーク」の説明を受ける市長
向かって右からグリーンシティ福岡の「しおさん」こと伊東さんと、「ヒゲさん」こと志賀さん
写真左から、
まるで森のようなステップガーデン
神社で見る「しで(紙垂・四手)」に似ていることから、シデという名がついたと言われているイヌシデの種の部分
アメリカザイフリボク(6月頃に紫色の実が熟すことからジューンベリーとも言われる)の実
グリーンシティ福岡は、1999~2000年に福岡市と九州芸術工科大学で行った「鴻巣山森づくりワークショップ」に参加した大学院生、造園業者等の出会いがきっかけとなり、2003年に発足しました。
まずは、グリーンシティ福岡の転機となった活動について志賀さんから説明を受けました。
志賀さん(グリーンシティ福岡理事及び事務局スタッフ)
これまで色々な取組みをしてきましたが、その中で印象的な取組みが3つあります。
1つ目は「志賀島森林保全ボランティア」です。志賀島は魅力的な所がたくさんあるのに、木が生い茂って車が通りにくいなどの課題がありました。そこで、東区役所や造園業者の皆さん、地元のボランティアの方達と一緒に観光ルートを通ることができるよう活動を行いました。現在も様々な方の協力や応援をいただいて年2回続けています。
2つ目は「オンライン観察会」です。コロナ禍に学校などが自粛や休校になった時、私が現地からスマートフォンで虫を撮影して、それに伊東さん達リモートのスタッフが解説を加えるということをリアルタイムでオンライン配信しました。子ども達も「ヒゲさん(志賀さん)後ろにかたつむりいるよ」などコメントしたりしてとても面白かったです。
市長
オンライン観察会は新しい楽しみ方で面白いですね。例えば、志賀さんが360度カメラで中継して、それを高齢や病気などで外出できない人がVR(※)のゴーグルをつけるとまるで実際に行ったかのように体験できるっていうのも面白いかもですね。
※VR(バーチャルリアリティ)とは、コンピューターによって創りだされた仮想的な空間を現実であるかのように疑似体験できる仕組み
志賀さん
3つ目は「まちなか里山事業」です。緑は放置すると落ち葉などで迷惑に思われたりするので、人の手が入って愛される森になってほしくて、南公園などの緑地でボランティア体験イベントを何十回もやりました。それがきっかけで本日の参加者の1人である青柳さんは南公園で自主的な団体を立ち上げて今、代表をやっています。
これらを踏まえて、「緑を愛する人を増やしたい」という思いで令和6年度から始めたのが、「まちなか森のガイドウォーク」です。
(緑を増やすこと)
市長
今、全体で何人くらいメンバーがいるのですか。
志賀さん
正会員23人、準会員20人くらいです。事務局で職員として働いているのは、私と伊東さんのみですが、青柳さんがもうすぐ事務局職員になります。
市長
イベントはどれくらい人が集まるんですか。
志賀さん
規模が大きい時は、100人から200人などもありますが、「体験」にこだわっているので普段はそんなに多くないです。まちなか森のガイドウォークも歩道を歩いたり立ち止まったりして説明するので1回8人程度でやっています。
市長
今日のガイドウォークみたいに、これが何の木なのかとか葉っぱの先端とか、細かいところまで見る機会はあまりないので、ズームインするとすごく面白かったです。こういうことをきっかけにして、たくさんの人にみどりを知ってほしいですね。
志賀さん
身近なところから市民が緑に気付いたり、好きになったりするイベントやガイドを行ったりして、楽しんでやっています。
市長
市は、天神ビッグバンや博多コネクティッドなど色々なプロジェクトに取り組んでいますが、こういう「開発」は全部直線的というか。でも我々も生き物なのでより有機的なものや曲線的なもの、喜びや悩み、葛藤など人間ならではの部分を大事にしていきたいと思っています。だから今、花や緑、アートといった「開発」とはある意味真逆な部分にも力を入れています。
市役所もまず、西側広場側の壁面を、次は中央公園側の壁面を緑化していきます。中央公園側が緑化すると市役所やアクロス福岡一帯が緑の空間になるんですよ。あとは地下鉄駅の改札を出たところも緑化したり。
志賀さん
花や緑、アートに力を入れていると言われましたが、アートの話はすごく大事だと思いました。画廊や批評家などが語ることでアート自体の価値が上がることがあると思うのですが、みどりもみどりについて語るというか、楽しむというか、そういう人が増えるとどんどん価値が高まっていくだろうと思います。
天神中央公園から見た景観、写真向かって左が福岡市役所、右がアクロス福岡、数年後には一帯が緑の空間に
市長
これからどういう活動をしていきたいですか。
志賀さん
ガイドや生き物探しをできる人が少ないので、伝道者的な人を増やすために研修やガイド養成みたいなことができればと思っています。あとは、福岡のみどりや自然、野鳥、昆虫などの知識を支えてきた人達も年齢が上がってきました。そういう地道に活動してきた皆さんが長く活動できるように、また、知識を伝えていけるようにしたいです。
(それぞれの思い)
真武さん(理事)
私は、志賀島森林保全ボランティアに参加して、当時、志賀島の潮見展望台から景観が全く見えなかったので、景色が見えるように高い木の上の方を切ったりしました。その頃は、我々造園業といった専門業者しかできない状態だったので、たくさん技術者を呼んで最後は泊まり込みをして行いました。
その時、色々な方との関わりがありとても楽しくなって、今は、会社でもボランティア活動を行っています。最近だと植物園の展望台キッズテラスに壁面緑化を設置しました。今年の4月に市から「企業版公園愛護会」の第1号に認定され、やってきたことが市民の皆さんに喜ばれるというか、認められたと思うと嬉しく思います。
写真左から、真武さん、青柳さん
青柳さん(準会員)
私は、元々田舎で育ったので普段から裏山で遊ぶことが好きだったんですが、正直、その様な場所が周りに少ないと感じていました。そんな時、グリーンシティ福岡のイベントを通じて、車がなくても公共交通機関でちょっと足をのばしたところにこんな素晴らしい自然があるんだということを知りました。
今は、こういった活動を続けたいという同じ思いの方達と一緒に団体を立ち上げて、南公園で保全活動を行っています。地域のみどりを大切にしていけば、繋がりができて温かみのある都市になるんじゃないかと思います。
市長
南公園は広さがあるので大変ではないですか。
青柳さん
動力は使ってなくて、剪定ばさみとのこぎりで人間でできることをやっています。こつこつ地道に細く長く続けていけばきっともっと元気が出てくると思います。人が集える場所にしていきたいです。
市長
福岡市は3分の1が森林ですが、手入れしていかないと人がリフレッシュできるような森にはなっていかないから、そういう活動をしていただいて本当にありがたいです。
三宅さん(準会員・ボランティア)
私は、元々建設業界で働いていたのですが、定年退職後、全く畑違いの保育所でパートタイムを経験しました。子ども達の目の輝きが澄んでいて、何でも好奇心を持って見るところが非常に好きで、ボランティアとして携わっています。
アクロスができた当初、済生会病院に父が入院していたのですが、こんなに緑が茂ってなくて。市長が言われたように市役所まで緑化すると病院で療養している方にとってもとても和む空間になると思います。また、最近、近所に家が建ったのですが緑がほとんどないですね。土地が高いし狭い、メンテナンスも大変というのもあると思いますが、もう少し緑を植えてもらうと街の景観がより良くなるのではと思います。
市長
やっぱり、まずはみどりを好きになってもらうことですよね。みどりの癒し効果など、ぜひ皆さんの活動の中でも伝えていただけるとありがたいです。市でも今年度から一般のご家庭でベランダの緑化に取り組んでいただける方に補助金を出したりしています。消防法などをきちんと守りながらどう緑化していくかなど、取組みが広がっていくといいなと思います。
写真左から、三宅さん、伊東さん
伊東さん(スタッフ)
私は、もうすぐ4歳になる子どもがいます。母親目線で子ども達にぜひ自然体験をさせたい、子どもの頃の原体験をどんどん増やしてほしいという気持ちで生き物の観察会をやっています。
子ども達は、大人の言葉で「危ない」とか「汚い」などの先入観を持っていることが結構あるんです。例えば「カメムシ」、実際には匂ったことがなくても「くさい」といって逃げたりするんですね。でも実際匂ってみると「あれ?いい匂い?」って言ったりします。その時の子どもの衝撃を受けた顔、五感に訴えるような体験をした時の顔がすごくいいんですよ。目がキラキラして時間が止まったような顔をします。こういう体験を増やしていくことが私達の使命なのかなと思っています。
市長
今は、チャットGPTを使えば自分が知らない情報にもアクセスできますが、そうした時に残るのはやっぱり「体験」ですよね。先入観だけでなく、自分で経験して考える、判断するといった人をつくらないといけないですね。
緑についても、まず市が先導して取り組めば、取組みを全く知らない人にも「市が今、何かやってるな」と伝わって、次はそれをフックにどう好きになってもらうかだと思います。
これからもぜひ皆さんと一緒に活動させていただければと思います。今日はありがとうございました。