(一般社団法人)YOU MAKE ITの皆さんと高島市長が、「外国人の生活・就労支援」をテーマにFukuoka Growth Nextで意見交換を行いました。
YOU MAKE ITは、日本で働きたい外国人の就職や生活を支援するため、2020年4月に法人を設立し、現在までに、世界34(ベトナム、ネパール、インド、スリランカ、中国、台湾、韓国等)の国と地域の外国人から相談を受けています。
これまでに、福岡市の留学生を中心に年間300名以上の方と対面での就労相談を実施しており、オンライン上では、延べ5,000人以上の世界中の外国人を支援しています。
また、日本の社会システムや文化を解説しているプラットフォーム「つる」のサイトを運営しており、SNSのフォロワーは、アジアを中心に国内外14万人以上(2022年4月時点)います。
就職相談では、日本における就職活動に必要なスキルの習得に向け、履歴書の記載方法から面接トレーニングまで支援しているほか、生活資金・病院・在留資格などの生活全般に関する相談も受けています。
広聴課長
本日は、高島市長が皆さんの活動を見たり聞いたりして、市政の参考とさせていただくため、お集まりいただいております。先ほどまで、留学生の就職活動支援の様子を見学させていただきました。これから意見交換といたします。
市長
参加者名簿を見させていただいたのですが、みなさんはリクルート系にいらっしゃった人達で、一緒に辞めてこういうことやろうよという感じで始められたのですか。
楳木代表
創業の経緯といたしましては、私は会社勤めが苦手でして、転職を繰り返して、正直やりたいことや好きなことと呼べることもなく35歳の時に無職になりました。家族からの後押しもあり、何も決めずにフリーランスとして独立したのですが、最初は、グーグルのストリートビューの代理店などをしていました。
フリーランスとして3ヶ月ぐらいした時に、日本語学校の会長さんから、「現地で工業系の国立大学を出ているベトナム人留学生が、進学ではなく一刻も早く就職をしたいと考えているが、就職の支援ができないのでサポートして欲しい。」という依頼がありまして。
半年間、16名のベトナム人留学生に対して、履歴書の作成だったり、面接のトレーニングだったり、企業開拓をサポートしたりした結果、16人全員が、東証一部上場のエンジニアになれたんですね。
そのお礼として、ベトナム人留学生たちが、お金もないのに居酒屋に僕らを招待してくれて。その時、もう本当にうれしくて涙が出て。仕事ができなくて上司に泣かされたことはいっぱいあるんですけど、嬉しくて涙を流したことが初めてで。これだって思って。
市長
なるほど。
楳木代表
僕が彼らから夢をもらったので、これを人生かけてやりたいと思いました。お金を稼ぐことだけが目的ではなく、もう一つ何か好きなことを見つけるお手伝いをしたいと思い、やっております。
メンバー
私は、前職でITの営業や採用を担当していたのですが、その会社の中にも、外国人の方が、住居の困りごとや病院に行くときの不安などをすごく実体験として知っていたので、何か役に立てるのかなということで、手伝っています。
市長
そういう感じですか。何か突き動かされるものがあって、こういう活動をしているのだろうから。そこの体験や動機が何だったのかなと思いまして。
楳木代表
私は結構珍しいタイプでして、海外に留学したこともなければ、英検の準2級も落ちたぐらいで、英語も話せません。
市長
社会の中でスポッと抜け落ちている部分を、皆さんのような方々の動きによって、うまくサポートできているということは、本当にありがたいことですよね。
楳木代表
外国人専門の人材会社は、世の中にたくさん増えてきたと思うのですが、おそらく、1~2割の留学生を人材会社がサポートできていて、残りの8割は人材会社もサポートできていない方々なのかなと。そこが、我々が支援している留学生と思っております。
(日本で働くこと、留学すること)
市長
留学生ないしは海外から来た人にとって、コンビニで働くということは、どういう位置付けなのか教えていただけますか。
外国人就職相談者
就職前のアルバイトとして、コンビニや飲食やホテルを考えました。
楳木代表
現在、コンビニで働いている外国人の9割9分は、在留資格が留学だと思っています。留学の他に、特定技能という在留資格がありますが、外国人留学生がなかなかまだ敬遠する在留資格なのかなと思っております。その理由としては、留学生として来たからには、技術・人文知識・国際業務、いわゆる通常の就労ビザが欲しいと思っている留学生が大半だと思います。
もう一つは、この特定技能では家族を連れてくることができないので、日本と比べて若い年代で結婚することが多い国の方からすると、家族を連れてくることができないことが敬遠される理由かなと思います。
市長
8~9年前に、外国人を積極採用している企業の人を講師に招いてセミナーを開催したのですが、一番の課題はキャリア形成の仕方でした。
例えば、新人は寿司屋に入ったら寿司を握らせてもらえなくて、まずは掃除からとか。日本はそういうキャリアアップの仕方ですが、海外から来た人は早くスキルを身につけて、自分の母国とのかけ橋になりたいと思っていたりしているので、いつまでも仕事をやっている実感が得られない働き手とのギャップがあって。当時は、これをどう埋めていくかといった日本の根本的な課題にぶつかったのですが、今の各企業の理解やキャリアの作り方はどうなったのでしょうね。
楳木代表
福岡市内の地場企業で働き出したインドの方がいらっしゃったのですが、1年前に同じ企業に入社したインドの先輩が、自分が今日からスタートしている仕事をまだしているということで、入社3日後ぐらいにもう辞めたいと。やはり、キャリアパスの提示だったり、キャリアパスが会社に無かったりっていうところで、今も起きていることだと思っております。
市長
そのあたりのイメージギャップは、日本がガラパゴスで進化をしてきた日本の歴史なのでしょうね。
楳木代表
先日のニュースで見たのですが、ベトナムとオーストラリアが協定を結んで、オーストラリアが毎年1,000名の農業従事者を受け入れるということで、給与を見たら約30万円なんですね。お金を稼ぐことが目的であれば、そっちに行きますよね。
市長
そうですね。正直、日本に来てお金稼ぐことは、今はなかなか難しい。昔の日本は、家電、商社、いろんな部分ですごく強かったのですが、今はいろんな規制によってイノベーションが阻害されていて、モノを変えにくい仕組み。日本は、70年前の社会の前提でいろんなことが決まっていますので、そこからアップデートされてない状況ですね。
楳木代表
毎週、海外で日本就職を目指すインドやネパールの方と交流会をしていますが、日本がどのようなイメージか尋ねると、ナルトやワンピースなどのアニメばかりで。パナソニックやトヨタは、出てこないんですよね。
市長
(外国人就職相談者は、)なぜ日本に来たのですか。
外国人就職相談者
そうですね。私はドイツか日本と考えていましたが、ドイツでは奨学金がもらえなかったので、日本に行こうと思いました。日本で奨学金はもらってないですが、アメリカやドイツと比べると、日本の方が学費が安いです。
市長
日本は、円も安く、物価も低いですしね。昔は、日本から東南アジアなどに旅行に行ったら、すごく安くて、レストランでもたくさん注文ができたというイメージがありましたが、今は逆ですしね。
楳木代表
そのほかには、安心・安全な国と言ってくれますね。
(将来について)
楳木代表
国際交流イベントを無料でやりますと言っても、我々のもとに来る留学生というのが、その日のアルバイトでお金稼ぐことが大事で、なかなか日本人のコミュニティの中に入れなかったり、入ろうとしないっていう現状もあります。そこに歩み寄る方法が、彼らからの相談も多い仕事だと思っていて。仕事を通じて、同じ目標にいろんな国籍の方が関わることによって、歩み寄れる社会をつくれるかなと。
市長
これからたくさん海外の人が住んでいくうえで、みなさんがコミュニティで助け合うことは素晴らしいことですが、その地域との接点が無ければ、話したことがない人たちのコミュニティは、少し怖く見えたりするところがありますよね。ですから、少しずつ地域に馴染むようなことを丁寧にしながら、うまく地域との共生を作っていくことが必要かなと思っています。
コロナの2年間もありましたが、例えば、いろんなお祭りやそれぞれの国の料理を作る体験などを通じて、挨拶できる関係になれば、見え方も変わってくると思いますね。
楳木代表
昔の醤油の貸し借りができるような日本人の知り合いがいれば、救われる方もいらっしゃるのかなと思うので、そういう歩み寄りが必要だと思います。
市長
そうですね。そういう中で、行政にできていないところを、みなさんのような活動で補っていただき、本当にありがとうございます。ですが、そこの善意だけにお任せできないわけですので、自治体も考えて、日本が魅力的な国にならないといけないですね。
楳木代表
そうですね。
市長
本当に日本に来たいと言って、来るというような国に日本がなっていかないといけないですね。
楳木代表
そう思います。
市長
ぜひこれからもよろしくお願いいたします。