福岡ITコミュニティの“パイオニア”が語る仕事観 「大事なことは、おもしろいかどうか、です」

橋本正徳さんが、主にソフトウェアを開発する株式会社ヌーラボを福岡市内に設立したのは今から11年前の平成16(2004)年のこと。以来、平成18(2006)年に東京、平成22(2010)年に京都、平成23(2011)年にシンガポール、平成26(2014)年にはニューヨークに支店を構えるなど活動の範囲を広げてきました。

今や全世界にユーザーを抱えるまでの「グローバル企業」を経営する橋本さんですが、昨年11月に大阪で開催された、福岡移住計画と京都移住計画のコラボイベント「ぼくらの移住計画」にゲストスピーカーとして登壇。福岡市と京都市の違いについて大いに語られました。

そんな橋本さんは、ビジネスの傍ら、両都市のITコミュニティを活性化させるため、さまざまなイベントも開催しているそうです。今回は、そんなバイタリティ溢れる橋本さんに話を伺いました。

――「働く」ことに限った場合、福岡と京都に違いはありますか?

橋本 実は、僕自身、違いはあまり感じてないんですよ(笑)。正直、働く場所はどこでも一緒だと思っています。ただ、強いていえば、どちらもサークル活動のような「コミュニティ活動」が盛んなのですが、IT界隈コミュニティの盛り上がり方は違う印象がありますね。福岡は全体的にバカ騒ぎする雰囲気があって、“ノリ”が良い反面、冷めやすい(苦笑)。一方、京都は……これは現地の人が仰っていたのですが、何につけても最初は遠くから見て、だんだん近づいてくるイメージなんですよ。初対面の人と会うとなると、事前にその人のことをFacebookか何かで調べてから話しにいくそうです。

――なるほど。それって土地柄なんでしょうか。

橋本 そうだと思います。反対に、どちらも常に対東京の意識がある点は共通しています。また、街の中心地に高い建物がなく変な圧迫感がないことも共通点。福岡市は中心部に近い場所に空港があるため、また、京都市は景観保護のため、高い建物がつくれません。結果、両都市とも圧迫感が少ない分、通勤や移動などで街を歩く際、東京や大阪に比べてストレスを感じる人は少ないのではないかと思います。

――先ほど、働く場所はどこでも一緒と話されていましたが、その真意は?

橋本 仕事をするうえで大事なことは、それがおもしろいかどうか、自分が楽しめるかどうかだと僕は考えています。なので、福岡でも京都でも、どこにいても同じかなと。

――仕事に限らず、大事にしていることは「おもしろさ」でしょうか?

橋本 そうですね。ヌーラボや、僕自身は今、福岡や京都で様々なイベントを開催したり参加したりしているのですが、仕事とかプライベートとか関係なく、そこでいろいろな人たちと楽しく交流しています。

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――これまでにどのようなイベントを?

橋本 例えば昨年、京都で町屋を改修するイベントを何回かに分けて開催しました。実はその建物は、今の僕たちのオフィス……ちょうど前のオフィスから移転するタイミングだったので、イベント化して、みんなで改修しようと思ったんです(笑)。イベントには、ヌーラボ社員や社員の家族のほか、地元の方々も集まりました。中には初対面の人もいましたが、コミュニケーションを取り合って楽しみながら改修作業をしました。

――自分たちのオフィスの改修もイベントにしちゃったんですね(苦笑)。

橋本 おもしろいでしょ(笑)。もちろん福岡でもいろんなイベントをやってますよ。年末には毎年、会社や組織の垣根を越えた忘年会のようなものも。きっかけは何年か前、ツイッター上で「いろんなコミュニティーが忘年会を別々にしているから、一緒にやってしまったらいい」という趣旨のことを誰かがつぶやいたのを見かけたこと。それ、おもしろいと思い、すぐにイベントサイトをつくり、みんなで場所をとってコンテンツを決めて開催したんですよ。ちなみに昨年末は、僕は参加できませんでしたが、株式会社ブランコ(https://bulan.co/)代表の山田泰弘さんなどが中心となって160人くらい集まったようです(https://www.city.fukuoka.lg.jp/hash/news/archives/36)。福岡の人は飲み会好きが多く、みんなで楽しくワイワイやっています。

――160人の酒好きが集まると圧巻でしょうね(笑)。

橋本 そうそう、福岡と京都合同でイベントを開いたこともありますよ。福岡のコワーキングスペース「AIPカフェ」と、京都のコワーキングスペース「おいない烏丸(からすま)」を動画チャットでつないでの、オンラインの交流イベント。あの時、京都側には京都移住計画(https://kyoto-iju.com/)代表の田村篤史さんがいて、福岡側には福岡移住計画(https://fukuoka-ijyu.jp/)の立ち上げメンバーの須賀大介さんがいました。当時、福岡移住計画はまだ設立されていませんでしたが、あのイベントがきっかけで田村さんと須賀さんは出会い、福岡移住計画が誕生したんですよね。

――イベントは「おもしろい」だけでなく、そうした形ある「結果」も生んでいるわけですね。

橋本 ええ。そもそもイベント開催の目的は、大きく3つあります。スタッフ同士のつながりを強めること、スタッフとその地域で働く人をつなげること、参加者同士に交流が生まれること、この3つを意識しています。あとは参加する人たちみんなが楽しんでもらいたいと常々思っています。

――イベントを通じて楽しくネットワークを構築していこうというわけですね。橋本さんご自身、今後はどのような活動を考えているのでしょうか。

橋本 もっと外国にいる方々と交流していきたい、と考えています。うちの会社は、現在、シンガポールとニューヨークに支社を置いていますが、ロンドンも好きなので、将来的にはロンドンにも支社があったらいいな、と考えています。

――ロンドン支社!!!!ステキな響きです。

橋本 ええ、「言うは易し」ですから(笑)。とにかく単純におもしろい人と一緒に仕事をしたいと思っているんです。よく「何をやっていくかよりも誰と働くかが重要だ」って言うじゃないですか。僕もそう思っていて。だから、普段から意識して外に出る機会を増やしていって人脈をつくっています。それで、世界中からいろんな人を採用して、年に1回福岡に集まってみんなで屋形船に乗れたら楽しそう……そんなことを考えたりしています(笑)。

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[プロフィール]
橋本正徳(はしもと・まさのり)さん
1976年生まれ、福岡県出身。株式会社ヌーラボ代表取締役。高校卒業後、演劇の専門学校に通うため上京。家業を手伝うために3年で福岡に戻り、その後3年間家業を手伝う。その後、八百屋の営業を始めるが、24歳のときに伝手を頼り、派遣社員としてプログラミングを行う会社に入社。3年間働いたのちに同僚と意気投合し独立、株式会社ヌーラボを設立する。

 

[関連リンク]
株式会社ヌーラボ https://nulab.com/ja/

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