『放課後ミッドナイターズ』などのオリジナル作品を制作するモンブラン・ピクチャーズ。新たな表現への試みに積極的に挑戦できる会社と語る吉田 真也氏に話を聞いた。

福岡ドームの球場内映像から、世界7カ国で劇場公開されたオリジナル作品『放課後ミッドナイターズ』など、映像の企画制作を請け負うスタジオという側面を持つ傍ら、スタッフによるオリジナルコンテンツをも意欲的に制作する映像制作会社が福岡市に拠点を置くモンブラン・ピクチャーズだ。

今回はテクニカルエンジニアとして活躍する吉田真也氏に、自身の仕事内容や福岡で働く魅力についてお伺いした。

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CGWORLD(以下、CGW):モンブラン・ピクチャーズはどんな会社ですか?

吉田真也氏(以下、吉田):モンブラン・ピクチャーズは一言でいうと「映像の企画制作スタジオ」です。映像制作を請け負う映像スタジオという側面とは別に、自分たちでコンテンツを創って売り出していく、という事も事業としてやっています。設立は2012年で、設立年に『放課後ミッドナイターズ』という映画を制作して世界7カ国で公開しました。

監督は弊社の代表取締役の竹清で、この映画こそがオリジナル企画です。このように、映像制作の仕事を請け負いながら自分たちの企画を世の中に送り出していこう、ということをやっているのがモンブラン・ピクチャーズですね。

弊社でずっと請け負っている仕事としては、ソフトバンクホークス球場内映像があります。今年は試みとして新しいチャレンジをしています(CGWORLD203号P86参照)。

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吉田:その他CMなどのテレビメディアで流れるもの以外の仕事としては、イベントでのプロジェクションマッピングなどもやっています。
また、我々のコンテンツがお客さんになるべく直接届くように、つい最近オンラインショップをオープンしました。そこでモンブラン・ピクチャーズのグッズを販売しています。

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「放課後ミッドナイターズ」のグッズを中心としたONLINE SHOPを開店

CGW:九州に根付いた仕事が多いですか?

吉田:それが案外そうでもなくて、ローカルのお仕事は2割程度で、それ以外は全国展開の仕事です。規模の大きなお仕事は全国展開のお仕事が多いですね。

CGW:吉田さんの職種、テクニカルエンジニア(以下、TD)とはどのような職種なのか教えていただけますか?

吉田:一般的に『TD』と呼ばれているジャンルの仕事で、CG映像制作を行うための制作支援ツールの開発だったり、映像制作の工程がスムーズに進むためのプロダクションパイプラインの構築をしたりします。

それに加えて、私の場合はインタラクティブアプリケーションの開発も行っています。特にCG描画系のプログラミングが得意なので、体験型のプロジェクションマッピングなどでは最終的に投影される映像自体をプログラミングで開発するということも行っています。ちなみに弊社は15名の会社ですが、TDは僕一人です。

CGW:最近吉田さんが携わった仕事で印象的なものはありますか?

吉田:最近だとJR大分駅開業イベントでのプロジェクションマッピングなどが、印象に残っている仕事です。

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CGW:東京で働こうと思ったことはありますか?

吉田:実は新卒採用で東京で働いてたんですよ。でも、特に東京に行きたかったというわけではなく、福岡にはやりたい仕事がないと思っていたんです。業界の事情をあまり知らなかったというのもあるんですが(笑)。

学生時代にCGの技術開発を専攻していたのですが、CGの研究開発部門を持っているスタジオがまず少なかったんです。今業界に入って見渡してみると案外あるんですが、当時は仕事としている人たちはいたものの、R&Dみたいな部署で募集しているところがなくて。

そんな僕が新卒でCG業界に入るのは福岡ではむずかしく、とくにプログラマーとなると、本当にほとんどみつけられませんでした。なので、東京の前職の会社が技術部を持っているというので、そこに入社して7年近くリアルタイムCGの仕事をしていました。

CGW:福岡で働くきっかけは?

吉田:僕は宮崎県出身で大学は九州芸術工科大学(現:九州大学)を卒業したのですが、大学を出て東京で生活をしはじめたときから、将来的に福岡で生活をしたいな、という長期目標みたいなものがありました。

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吉田:東京の職場も7年近くいて一通り経験をしたので、このあたりで仕事面で何か変えたいな、という気持ちになったんです。そして、転職を考えたときに、元々福岡で働いてみたかったということと、奥さんが福岡の人で彼女も将来的には福岡で生活をしたいというのもあって。じゃあもう転職先を福岡にしよう、ということにしてモンブラン・ピクチャーズに入社しました。

モンブラン・ピクチャーズに入社して今年で二年弱になりますが、生活面では福岡は概ね満足です。ただ、物足りないなと感じるのは東京と比べると、仕事の情報がどうしても少ないですね。自分でちゃんと繋がりを作っていかないといけない。何が今流行っているのかとかいうネットの情報ではく、”こういう仕事がどこで動いている”といった生の情報はやっぱり自分で取りにいかないと得にくい環境です。

CGW:福岡で働いていて良かったと思うことは?

吉田:仕事面では福岡市内での同業種の人との繋がりが非常に強いことですね。3DCGのセミナーや勉強会が多かったりしますし、福岡市が開いてくれる会合もあったりして、市の強力なバックアップが心強いですね。

とにかく、同業種であれば紹介を通じて友達になり易い環境なので本当に良いところだと思います。それこそ「知り合いの知り合いが知り合い」だったり(笑)。地域的に狭い分、繋がるのが早いんですよね。そしてそこから仕事に発展したり。知っていると声をかけやすいですからね。

同業種でライバルなんだけど仲間意識が強いのが福岡の3DCG業界の特徴でしょうか。あと生活面では非常に生活しやすいです。とにかく通勤が楽なんですよ。自分の生活圏から福岡の中心部まで自転車で通勤できるので、生活する上で気持ちがすごく楽です。

“おもしろいこと”を生み出すことにかけてひときわ敏感な福岡の3DCG業界。東京から福岡に仕事の拠点を移した吉田氏は、新たな表現への試みに積極的に挑戦できるチャンスに溢れている社内環境だという。作品制作に対して常にポジティブな姿勢を貫くモンブラン・ピクチャーズは、現在新たなオリジナル作品を制作中とのこと。完成が楽しみだ。

【プロフィール】
吉田 真也 / Shinya Yoshida
宮崎県延岡市生まれ。
九州芸術工科大学卒業後東京のCG制作会社に7年間勤め、2013年にモンブラン・ピクチャーズへ入社。CGプログラマーとして、オリジナル映像コンテンツ制作やインタラクティブコンテンツ制作に携わる。

【関連リンク】
福岡クリエイティブキャンプ2015 公式サイト
http://fcc.city.fukuoka.lg.jp/

U/Iターン経験者に聞く福岡のここが魅力!

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テクニカルエンジニア
吉田 真也

東京からのUターン

東京から福岡に移住するとき、福岡の3DCG業界がとても盛り上がっているように見えました。仕事面でプラスな面がたくさんあるなと感じました。『放課後ミッドナイターズ』もそうですが、福岡の会社の作品がどれもおもしろかったり。面白い事をしないと仕事がとれない、というモチベーションを高く保てる危機感と制作に対する積極性のバランスがとても良い環境ですね。