京都=閉鎖的な町は勘違い? 京都移住計画代表が語る「京都の暮らしやすさ」とは

東京に住んでいる若者の中で“脱東京志向”が高まりを見せているのかもしれません。NTTアドが、20~40代の東京で働くビジネスパーソンを対象にした調査によると、約30%が「脱東京志向」であることがわかったといいます。そうした中、全国各都市で官民一体の移住受け入れ策が進められています。

京都市を拠点としている「京都移住計画」は平成23(2011)年に京都府長岡京市出身の田村篤史さんにより立ち上げられました。福岡市をはじめ出雲市、札幌市など全国規模の取り組みになっている「移住計画」ですが、同プロジェクトの始まりは京都から。今回は、大学時代まで京都で過ごし、卒業後は東京で就職、その後自らが京都に戻るために「京都移住計画」を立ち上げたという田村さんにお話を伺いしました。

――なぜ京都に戻ろうと思ったのですか。

田村 そもそも、東京で就職することになったときも「5年で京都に戻る」と決めていたんです。東京では、一緒に上京した大学時代の友人らとシェアハウス暮らしをしていたんですが、彼らと自分たちのキャリアについて考える際、「いつまで東京で働くの?」というような話をしていました。そこにいた何人かは関西などの地元に帰りたいという意識が強くって(苦笑)。で、京都出身の友人と一緒になって、仕事先や居住先など京都に関する情報を集めるようになり、上京4年目(平成22年)の5月に「京都移住計画」を立ち上げ、私自身も、翌年3月に京都に戻ることになりました。

――「京都移住計画」では、具体的にどんな活動を行っているのでしょうか。

田村 大雑把に説明すると、「居」「職」「住」の3つをテーマにした活動を行っております。「居」とは“コミュニティづくり”のことで、主にイベントを開催し、移住してきた人が仲間をつくりやすい環境を整備しています。「職」では主に働き口を、「住」では移住者の住む場所を紹介しています。

――「居」「職」「住」、どれも移住者にとって大切なことばかりですが、中でも京都移住計画が力を入れている活動はなんでしょうか?

田村 もちろんどれも重要ですが、あえて選ぶなら「居」――コミュニティづくりです。移住してきた人が仕事と住む場所を見つけられても、友達や仲間がいないとなかなかその地に馴染みにくいものですよね。そこで私たちは、月に1回くらい京都市内のコワーキングスペースなどを使って、京都市内に移住してきた人や移住検討中の人が交流できるように、30名規模のイベント「移住茶論(さろん)」を開催しています。参加者は6:4の割合で女性の方が多いですね。

――「移住茶論」はいつから始めたのでしょうか?

田村 2年くらい前です。私は「移住茶論」を通じて、これまで150人くらいの方々と知り合いました。そのほとんどが、ここ5年の間に移住してきた人でしたが、やはり6:4くらいの割合で女性の方が多いです。また、年齢層は20代半ばから30代半ばの方が多く、職種はばらばらで、会社員の方やフリーランスの方などさまざまいます。ちなみに、単身の方は積極的に「移住茶論」の場を利用していると思われますが、家族で移住された方はそういった場には消極的になってしまう傾向があるようです。家族で移住された方々が、地元の人とつながりを持てるようにすることが、今後の課題だと思っています。

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――そのほかに課題として取り組んでいることなどはありますか?

田村 京都に対するある種の偏見や誤解を解くことでしょうかね。京都は「日本の伝統が根付いていて、ほかの地域の人々にとってハードルが高い」といったイメージを持たれる方は少なからずいます。しかし実際には、とても“ライト”な街で移住者を受け入れる土壌もある。

――京都は“ライト”な街なのでしょうか?

田村 京都には古風な歴史があるということもあって、「中に入りにくい」と思われるのは仕方ないと思います。事実、そういう側面もありますから。以前、私の知り合いのカメラマンが、とあるお寺の撮影の仕事を受注できそうだったのですが、「付き合いの深いカメラマンに任せたい」と言われ断わられてしまった。人によっては、これも「排他的」と思われるかもしれないけど、もう少し深く見るとそうではないんです。これってこれまでのお付き合いのある人間を優先したり、横のつながりを大切にしている表れでもある。もちろん、たとえよその人でも移住して、ひとたび“京都の人”になると、その人は大事に受け入れられますよ。決して「京都生まれじゃないと認めない」とかではない。その部分で、京都ってとても誤解されていると思います。

――なるほど。福岡市同様、京都も地元意識が強く、横のつながりが強い街なんですね。

田村 そうですね。京都が、とてもコンパクトな街だということも関係していると思います。結局、物理的な距離が近いと、すぐ「会おう」という話になりますし、自然とつながりも強くなる。しかも、プライベートも仕事もその場限りで終わらないですし、広がりがあるんですよ。特にそれを感じるのは、「祇園祭り」をはじめとする地域の祭りの時ですかね。祭りの最中だけでなく、準備から祭りに参加していくことで、新たな交流が生まれていくんです。

――それでは最後に、移住者が京都でうまくやっていく秘訣を教えてください。

田村 京都の伝統文化というのはとても根強いものです。そういった輪の中に、積極的に興味関心を持って「入っていく」ことこそがうまくやっていける秘訣だと思います。京都で行われているお祭りなどの行事に参加したり、その地域の自治体活動に参加したり……その方法は様々ありますが、それは京都に限らない「移住者の基本」ではないでしょうか。その土地には、必ず独自の文化・風習があります。そこに積極的に足を踏み入れていくことが一番大事だと思います。

 

[プロフィール]
田村篤史(たむら・あつし)さん
昭和59年生まれ、京都府長岡京市出身。立命館大学卒業後、東京の人材紹介会社に務める傍ら、自らが京都に戻るため、平成23年「京都移住計画」を立ち上げる。平成24年に同社退職後、京都に戻って本格的に活動開始。現在はフリーランスとして活動している。

 

[関連リンク]
京都移住計画 https://kyoto-iju.com/
平成23年5月、京都で暮らしたい人を支援する目的として設立。「居」「職」「住」の3つをテーマから、コワーキングスペースなどを利用して交流イベントや京都の企業の求人記事作成、不動産の仲介やDIYのサポートなどを行う。現在のスタッフ数は10名(平成26年12月現在)。

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