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更新日: 2024年4月3日
 

市政だよりコラム
~優しさを伝えるケア技法 ユマニチュード(R)~


 「ユマニチュード」はフランスの体育学の専門家イヴ・ジネストさんとロゼット・マレスコッティさんの40年以上におよぶ病院、施設や家庭での経験から生まれたケアの技法です。これは「あなたのことを大切に思っています」ということを相手が理解できるように伝えるための技術と、その技術を使うときに考えておくべき考え方(これを「ケアの哲学」と呼びます)とでできています。「ユマニチュード」とは「人間らしくある」ことを意味するフランス語の造語です。
 ※日本ユマニチュード学会 優しさを伝えるケア技法 ユマニチュードより引用
 
 福岡市では認知症の人が認知症とともに、住み慣れた地域で安心して自分らしく暮らせるまち「認知症フレンドリーシティ」を目指し、ユマニチュードの普及・促進を行っています。
 令和3年度には、市政だよりにてユマニチュードに関する連載を行いました。このページでは、市政だよりに掲載した連載を紹介します。



4月1日号 相手に気持ちを届けるための技術


介護をしている人の優しい気持ちを相手に受け取ってもらうには、こつがあります。
「見る」「話す」などのコミュニケーションの技術を連載で紹介します。

4月15日号 正面から近づく



認知症の方は、視野の外から声をかけても自分に向けられていることに気がつきません。
「私がここにいますよ」と伝えるために、まず正面から近づいて相手の視線をとらえます。

5月1日号 正面から、水平に、近く、長く見る


「見る」ことで相手に届くメッセージがあります。正面から見ることで正直さを、水平に見ることで平等であることを、近く・長く見ることで親密さを伝えることができます。

5月15日号 返事を3秒待つ


認知症になると、情報を脳で分析して理解するまでに時間がかかるようになります。
何か質問した時には、 3 秒くらい返事を待ちましょう。待つことも、とても 大切 な介護の技術です。

6月1日号 いつもより3倍会話を増やす


介護するときはついつい無言で、てきぱきと作業を進めがちですが、「あなたのことを大切に思っている」と伝えるためには、
たくさん話しかけることがとても有効です。

6月15日号 触れる手は相手にメッセージを伝えている


触れ方で、相手に届くメッセージがあります。そんなつもりがなくても、つかんでしまうと「この人は私の自由を奪っている」と相手に感じさせてしまいます。触れるときには下から支えて、触れている面積をできるだけ広くするようにしましょう。

7月1日号 1日に20分立つ時間をつくれば、寝たきりは防げる


1日20分立つ時間をつくれば、生涯「立つ力」を保ち、寝たきりを予防できます。歯磨きや着替えは立って行う、食卓まで歩くなど、
少しずつ立つ時間をつくって合計20分間をめざします。

7月15日号 会いに行くときは、どこでも、必ずノック


会いに行くときは必ずノックをしてください。「私がこれから会いに行きますよ」と音で予告をすることが、良い時間を共に過ごす幕開けになります。「あなたの空間と時間を尊重しています」と伝えるための技術です。障子でも、ふすまでも同じです。ノックをしたら、返事を待ちましょう。

8月1日号 いきなり用件を切り出さない


介護をするときには、いきなり用件を切り出さないようにしましょう。まずは「あなたを大切に思っている」ことを伝えて、良い関係を結びます。そうすることで、用件を受け入れてもらいやすくなります。

8月15日号 「見る」「話す」「触れる」が伝えるメッセージを一致させる


 介護をするときには、私たちの言動に矛盾がないようにしなければなりません。「あなたのことを大切に思っている」と伝わるように瞳を見ながら、話しながら、触れましょう。

9月1日号 楽しい時間を過ごした記憶を残す


ケアが終わった後は、それがとても心地よかったことを相手の記憶に残します。細かい内容は覚えていなくても「楽しかった」という感情が残れば、次のケアをより受け入れてもらいやすくなります。

9月15日号 次回の約束をして、書き留める


誰かと良い時間を過ごすと「また会いたい」という気持ちが生まれますが、これは介護においても同じです。「また会おうね」という次回の約束をすることで、次のケアを受け入れてもらいやすくなります。

10月1日号 その人が持っている力を奪わない


介護で大切なのは、何でもやってあげるのではなく、ご本人ができることは自分でやってもらうことです。「持っている力を奪わない」ことも介護の大切な技術です。

10月15日号 相手の世界に入り込む


認知症の人が現実とかけ離れたことをするとき、本人にとってはそれが真実なのです。そんなときには、思い切って相手の世界に入り込んでみると安心してもらえます。

11月1日号 何度も尋ねるときは、楽しい気分に切り替える


何度も同じことを尋ねるときには、実は不安な気持ちを質問で表現しているかもしれません。そんなときには質問と関連がある、別の楽しいことを提案してみることも解決策になります。

11月15日号 良い思い出を知っておくことも大切な技術


ご本人のうれしかった出来事、仕事の功績などの「良い思い出」は、不安になったときの特効薬です。困ったときにはそのことについて語り合うことで、ご本人の気持ちが落ち着き、安心します。

12月1日号 お願いするときはひとつずつ


認知症の人は、一度にたくさんのことを言われると混乱してしまいます。何かをお願いするときには、ひとつずつ頼むと落ち着いて取り組んでもらえます。

12月15日号 自信を持ってできることを提案する


不安な気持ちがさまざまな症状を引き起こすことが認知症の特徴です。本人が自信をもってできることを提案することで不安な気持ちを解消させることができます。

1月1日号 食事が進まないときは、香辛料を工夫する


年齢を重ねると味覚が変化して、これまでの味付けでは物足りなく感じるようになります。 そんなときには、香辛料や薬味を使うことで食欲を取り戻すことができます。

2月1日号 どこかへ行ってしまおうとするのは、不安の表現

認知症の人がどこかへ行ってしまおうとするときには、今いる場所に不安を感じていることが多いです。「ここにいて大丈夫だ」と本人が安心できる、好きなことや興味のあることを提案してみてください。これも重要な介護の技術です。

2月15日号 嫌だという気持ちを受け止める

介護を受け入れてもらえないときには、押し問答せずに、一旦相手の嫌だという気持ちを受け止めましょう。タイミングをずらして、この連載でご紹介した本人が安心できるような工夫や、自信を持ってできることを提案するなどの技術を使ってもう一度試してみてください。

3月1日号 愛情の表現をためらわない

家族に「大好き」というのは照れますが、思い切って伝えてみてください。認知症が進行しても最後まで働いている「感情」に働きかけることで、本人はきっと介護を受け入れてくれ、共に良い時間が過ごせます。

3月15日号(最終回) 一人で頑張りすぎない

介護をするときは、一人で頑張り過ぎないでください。周囲に助けを求めることも、大切な「技術」です。
ユマニチュードを実践して、相手に理解してもらえるよう優しさを伝えていきましょう。


ユマニチュードについての情報