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更新日:2026年10月16日

認知症の人にもやさしいサイン

 福岡市では、認知症の人にも伝わりやすいサインの傾向や適切な表現方法を確認するため、2019年と2025年に認知症の人約360人を対象とし、理解度調査を実施しました。調査から導き出された「サインの基本原則」と「認知症の人にもやさしいサイン」をご紹介します。建物や空間の種類に合わせたサイン計画にお役立てください。

 

・サインの基本原則はこちら

・伝わりやすいピクトグラムの表現要素はこちら

・認知症の人にもやさしいサインの一覧はこちら

・「認知症の人にもやさしいデザインの手引き」はこちら

認知症の人特有の「サインの見え方・捉え方」

1.ピクトグラムの全体像よりも部分を見ている

例SOSとエレベーター

回答例

・「非常ボタン」→認知症の人:「女の人の手」

・「エレベーター」→認知症の人:「3人のヒト」、「3人乗り」

 

2.ピクトグラムを見た形だけで理解する

例レストランとトイレ

回答例

・「レストラン」→認知症の人:「ナイフとフォーク」

・「トイレ」→認知症の人:「男と女」

 

3.学習が必要なサインは伝わりにくい

図柄と意味が同一ではなく、理解に事前の学習が必要な記号は伝わりにくい。

 

ジスマーク、トイレ、非常口、レストラン、進入禁止、シャワー室、エレベーター

回答例

・「トイレ」→一般的な理解度:92点、認知症の人の理解度:35点

〈認知症の人のご回答の例〉

男女では話をするところ、出入口、食事するところ、男と女、応接室、背広

 

属性別正答率のグラフ

4.色彩の意味は伝わりやすい

赤背景にトイレの文字

(正答)女性トイレ:50.2点

(誤回答例)男性トイレ:22点

 

5.文字は伝わりやすい

文字表記のサインは概ね良好に理解されており、同時に内容を正確に理解できている。

 

 
moji_shokudou 理解度95.1%
文字で風呂 理解度90.2%

 

6.「モノと人の行為」の組み合わせが伝わりやすい

トイレ モノと人の行為 モノと人の行為:理解度80.3%
トイレ モノと人 モノと人:理解度75.4%
トイレ 人のみ 人のみ:理解度35.4点

 

7.抽象度が低い表現は伝わりやすい

同一の図像でも、抽象度が低いほうが、理解度が高い。

トイレ 抽象度低い 抽象度が低い、理解度80.3%
トイレ 抽象度高い 抽象度が高い、理解度58.5%

 

8.下向き、上向き矢印は伝わりにくい

みぎむき矢印

〈正答〉右に進む、理解度60.7%

〈誤回答例〉矢印

矢印 上

〈正答〉まっすく進む、理解度36.1%

〈誤回答例〉上にのぼる

 

矢印ひきかえす

〈正答〉引き返す、理解度8.2%

〈誤回答例〉下におりる

 

9.立入禁止は「×(バツ)」の理解度が高い

斜め線(斜線)の禁止記号より、人の動作を直接「×(バツ)」とした具体的表現が伝わりやすい

立入禁止斜め線 斜め線の禁止記号、理解度8.4%
立入禁止ばつ 人の動作に「 × (バツ)」、理解度81.9%

 

10.非常口のピクトグラムは伝わりにくい

非常口

〈正答〉非常口マーク、理解度28.9点

〈誤回答例〉人が走っている

 

11.進入禁止の記号は逆の行為を誘導する可能性が高い

理解度は比較的高いが、「ここから入ってください」「近道」等と正反対の意味に誤認され、危険な行為につながる因子が見受けられる。

 

改札進入禁止 〈正答〉改札進入禁止、理解度70.8% 〈誤回答〉危険な意味、理解度15.4%

危険な意味の回答

・ここからはいってください

・近道があります

標識進入禁止 〈正答〉進入禁止、理解度73.8% 〈誤回答〉危険な意味、理解度15.4%

危険な意味の回答

・まっすぐ進んでください

・車だけが進入できる

サインの基本原則

原則1.文字とピクトグラムを併記する

認知症の人は「食堂(95.1%)」や、「お風呂(90.2%)」など、文字が示す意味をほぼ完全に理解できていることがわかりました。そのため、サインは文字とピクトグラムを併記することが有効です。

 

・ピクトグラムの役割:

 遠方からでも直感的に意味を理解するための「主表示」

・文字の役割:

生活に意味を伝えるための「副表示」

・文字サイズの重要性:

文字が小さいと伝わりにくいため、「利用者が読む位置からサインまでの距離を考慮して適切なサインにしましょう。

 

サインの構成

 

また、特に以下のピクトグラムは、単体では伝わりにくいため、文字の併記が不可欠です。

 

・動作を指示する記号:「ドアを手前に引く」「手をかざす」「トイレに水を流す」など

・人の向きで区別する記号:「バスのりば」と「バス降車場」など

・意味が複雑な記号:ごみの分別など、複雑なルールやマナーを示すもの

 

原則2.緊急時サインや規制系サインは誤解を防ぐ工夫が必要

「非常口」や「非常用呼び出しボタン」など、緊急時に必要なピクトグラムは認知症の人に特に伝わりやすいという傾向が明らかになっています。また、「進入禁止」などを表す「横線」や「斜め線」は、「まっすぐ進む」など本来の意味とは逆の指示として受け入れられる危険性が15%の割合で確認されました。

 

理解度一覧

 

・「立入禁止」を示す際は、部屋に入る人に「×(バツ)」を重ねた具体的な表現を用いることが有効です。

・ピクトグラム自体を変えられない場合や緊急時のサインについては、「進入禁止」「非常口」等の文字を併記することが望まれます。

 

原則3.矢印は「左右」を基本とし、「上下」は文字の併記を必須とする

方向を示す際、「直進(↑上向き矢印)」や引き返す「↓(下向き矢印)」といった「上下」の矢印は、認知症の人にとって理解度が低い傾向にあります。

 

矢印の理解度一覧

 

・方向を示す際は、「左・右」の矢印を優先して使用します。

・上下の矢印が必要な場合は、記号単体ではなく「まっすぐ進む」「引き返す」といった文字の併記が必須です。

・「引き返す」ことを伝える場合には、「↓(下向き矢印)」よりも、「Uターン矢印)を使用する方が効果的です。

伝わりやすいピクトグラムの表現要素

1.「対象物(モノ)」と「人の動作(ヒト)」の組み合わせ

記憶や学習に頼らず、直感的に意味を理解できることが重要です。

 

・「物のみ」や「人のみ(A)」の表現よりも、「物と人の動作(又は人)を組み合わせた表現(B~D)」の方が、理解度が高い傾向が見られました。

 

トイレピクトの理解度一覧

 

2.色彩の記号的意味の活用

色による情報は、形の理解を助ける重要な手がかりとなります。

 

・青を男性トイレ、赤を女性トイレと正しく回答した人の数は、間違って回答した人を大きく上回っており、男・女の青・赤に限り、色彩の記号的意味は伝わりやすいと考えられます。

※色彩の記号化はジェンダーに配慮し慎重に行う必要があります。

 

認知症の人にもやさしいサイン

2025年の理解度調査では、公共施設向けの標準ピクトグラム(JISスタイル)と、レストランや店舗等商業施設向けのユニバーサルピクトグラム(カジュアルスタイル)の2系統のピクトグラムを作成しました。施設利用者(認知症当事者の自立度)や、施設の種類、目的に応じてピクトグラムを選定してください。

 

〈サインのデザインの特徴〉

1.記憶や学習に限らず、直感的に意味を理解できる

2.モノと人の動作を組み合わせて、意味が正確に伝わる

 

例 従来のJIS(日本産業規格)と今回作成した「標準ピクトグラム(JISスタイル)」「ユニバーサルピクトグラム(カジュアルスタイル)」

 

JISピクト、認知症ピクト、認知症カジュアルピクト

認知症の人にもやさしいサイン一覧

標準ピクトグラム(JISスタイル):公共施設向け

 

Aグループ:ピクトグラム単独では表示せず、必ず文字を併記してサインとして使用する。

標準ピクトグラム一覧

 

活用事例

標準ピクトJISスタイルA使用例

 

 

 

Bグループ:ピクトグラムの枠内に文字を組み込んでおり、ピクトグラムをそのままサインとして表示できる。

ピクトBグループ

活用事例

標準ピクトJISスタイルB使用例

 

 

Cグループ:ピクトグラムの枠内に文字を組み込んでいるが、さらに施設名称の文字を併記してサインとする。

 

標準ピクトグラムJISスタイルCグループ一覧

 

活用事例

 

Cグループの活用事例その1C活用事例その2

 

 

標準ピクトグラムの一覧 ダウンロードはこちらから→AI、EPS、PDF

 

ユニバーサルピクトグラム(カジュアルスタイル):レストラン等商業施設向け

Aグループ:ピクトグラム単独では表示せず、必ず文字を併記してサインとして使用する。

カジュアルピクト グループA

 

Bグループ:ピクトグラムの枠内に文字を組み込んでおり、ピクトグラムをそのままサインとして表示できる。

 

カジュアルスタイルBグループ

 

付録 自宅で使える 認知症の人にもやさしいトイレサイン

トイレの扉に表示してください。

床から120㎝程度が見やすい高さです。

 

トイレサイン 使用方法自宅用トイレサイン

 

参考資料:調査概要

1.2019年:ピクトグラム理解度調査
  1. 目的:認知症の人に伝わりやすいサインの傾向を確認するもの
  2. 調査対象及び認知症高齢者の日常生活自立度別人数:認知症の人97人、I/17名、Ⅱ/45名、Ⅲ以上/25名、記載なし/10名
  3. 調査・評価方法:調査評価方法は、ISO9186-2000(図記号の作成と試験の手順)及びISO/SO20003-2000(消費者用警告図記号試験の手順)を準用し、理解度は、評価計算式によって集計された点数(100点満点)で表示。質問者が被験者に調査シートを示し、被験者の口頭による回答を記録して実施。

 

2.2025年:新規ピクトグラム理解度調査
  1. 目的:認知症の人にとって、文字やサイン、矢印、現在地表示などがどのように理解されているか把握し、安全でわかりやすい案内表示のあり方を検討するもの
  2. 調査対象及び認知症高齢者の日常生活自立度別人数
  • a.予備調査(既存サインや基礎確認):認知症の人65名(市内高齢者施設8施設)、I/5名、 Ⅱ /17名、 Ⅲ /27名、 Ⅳ /8名、M/3名、不明/5名
  •  b.標準ピクトグラム(JISスタイル)調査:認知症の人72名(市内高齢者施設7施設)、一般市民107名、 I/3名、 Ⅱ /31名、 Ⅲ /26名、Ⅳ/5名、M/4名、不明/3名
  •  c.ユニバーサルピクトグラム(カジュアルスタイル)調査:認知症の人130名(県内高齢者施設2、I/21名、 Ⅱ /65名、 Ⅲ /32名、Ⅳ/9名、M/1名、不明/2名
  • 調査・評価方法調査対象及び認知症高齢者の日常生活自立度別人数::ピクトグラムの理解度調査は、JIS   Z   8212〈図記号の理解度試験方法〉の評価計算式によって集計された正答率(全回答数のうち、正しい回答の割合)で表示。