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更新日:2018年7月26日

避難生活ハンドブック ~大規模災害を生き抜くために~(テキスト版)

 このページは「避難生活ハンドブック」を文字情報だけで編集したテキスト版です。ハンドブックのPDFは,避難生活ハンドブックをご覧ください。


はじめに

 2016年に発生した熊本地震では、避難生活で体調が悪くなり亡くなった震災関連死の方が、建物の倒壊などの地震による直接的な被害で亡くなった方の4倍にものぼりました。

 自然災害を人間の力で食い止めることはできませんが、災害が発生した時に何が起こるのかを想像し、どうやって身を守るのかを考え、準備しておくことで、被害を小さくすることはできます。

 このハンドブックは、過去の災害を経験された住民の皆さんや被災者を献身的に支えた関係者の声をもとに、過酷な避難生活を生き抜いていくための術を伝えるために作ったものです。

 身近に置いて、日常生活の中で防災を意識していただくとともに、避難生活に備えていただけたら幸いです。

福岡市長 高島宗一郎


目次

まずはチェック

  • 避難所へ行く前に必ず確認したいこと
  • 必ず持参してほしいお薬手帳 ~災害時に携帯する利点とは~

避難所づくり

  • 女性の視点を活かした避難所運営
  • トイレの衛生環境
  • ペットの避難 ~飼い主の責任とやるべきこと~

避難生活

  • 在宅避難のすすめ
  • 正しい車中泊 ~安全・快適に過ごすポイント~

気をつけよう

  • エコノミークラス症候群 ~予防ストレッチ~
  • 防犯対策

避難生活レポート

  • 避難生活の実態をインタビュー
  • 東日本大震災編
  • 熊本地震編

学ぼう

  • 避難所運営ワークショップ ~避難所を円滑に運営するために~
  • 博多あん・あん塾 ~防災リーダーの養成~

備えよう

  • 事前登録おすすめ情報 ~福岡市防災アプリなど~
  • メモしておこう
  • 電話がつながりにくい時の安否確認


まずはチェック

1 避難所へ行く前に必ず確認したいこと

避難所へ行く=家をしばらく留守にすること。二次災害を防ぐためにも、最低限の確認をしてから移動しましょう。


チェック1 ブレイカーを落とす(通電火災で多くの命が奪われた)

阪神・淡路大震災では、停電が復旧した後に電化製品が原因となって起こる火災=通電火災が多発。多くの命を奪いました。この事例を活かして開発された感電ブレーカーが(地震の強い揺れでブレーカーが自動的に落ちるブレーカー)の設置も効果的。


チェック2 ガスの元栓を閉める(臭いもなく人を襲うガスの恐怖)

過去の震災では、ガス漏れによる爆発やガス中毒で命を落とした方も。ガスの臭いがなく「気づかなかった」そうです。現在はほとんどの場合、震度5以上の揺れを感知するとガスの供給がストップするようになっていますが、閉めておくと安全です。


チェック3 戸締まりをする(災害時を狙う卑劣な空き巣行為)

捕まるリスクが少ない災害時は、空き巣被害が多発しやすいと言います。「同じ場所をうろうろする、県外ナンバーの不審車両がいた」「一時帰宅する度に少しずつものが無くなっていた」という声が聞かれました。


手書きメモなどで安否を伝える

「○○公民館に避難していますと書いた紙をポストに残した」「マグネットを玄関のドアに貼ることで生存を確認しようと、事前に住人同士で決めている」との声も。アナログ手段を活用すれば、電話が通じない状況でも無事を伝えることができます。


リュックの中身も忘れずにチェック! あなたの生活に欠かせないものを忘れないようにしましょう。被災体験者が実感「これがあって良かった!」

安心できたもの:SNSで連絡できる!スマホの充電バッテリー,ホッとしたもの:いつも食べている好きなおやつ,癒されたもの:アロマや香り付きハンドクリーム,心の支えになったもの:スッピン対策で利用したマスク・帽子



2 必ず持参してほしいお薬手帳

お薬手帳は病気やどんな薬を使用中なのかがわかるカルテです。普段の生活でも災害時でも、お薬手帳があなたの命を守ります。不測の事態に備えてお薬手帳を携帯しておきましょう。


災害時にお薬手帳を携帯することによる利点

災害時には、かかりつけ病院・薬局が被災するなどして医療を受けることができない可能性があります。こんな時、お薬手帳を持っていると、次の利点があります。

  • 薬の使用歴がわかるので診察・調剤等の医療を円滑に受けられる。
  • 薬の重複、飲み合わせによる副作用のリスクが軽減できる。
  • 治療中の病気が推測できるので、特定の疾患に使えない薬を回避できる。
  • 意識が無い場合、本人に代わり救急隊員や医師に必要な情報を伝えてくれる。
  • 大災害時には、医師の処方せんに準じるものとして扱ってもらえることがある。

特にお薬手帳が必要な方

アレルギー体質の方,糖尿病や緑内障、下部尿路疾患、脳血管障害、心疾患など慢性疾患を抱える方,複数の薬を服用している方


お薬手帳に自分で記載していただきたい事項

緊急連絡先・住所・氏名・生年月日・血液型・既往歴,食べ物のアレルギー、副作用が出たことのあるお薬,使用中の市販薬、サプリメント


普段の利点

上記以外にも、多くの薬局において6か月以内に同じ薬局で薬を調剤してもらうと、医療費が安くなるという利点があります。


お薬手帳についてお話を伺ったのは 薬剤師 宮岡 恵美子さん

お薬手帳は、あなたの体調やお薬の情報を記載した手帳です。例えば突然倒れて意識がない状態でも、どんな持病があり普段どんな薬を飲んでいるのかをあなたの代わりに伝えてくれます。そうすれば「なぜ倒れたのか」を推測しやすく少しでも早く適切な病院へ搬送してもらうことが出来るのです。さらに普段元気な方もお薬手帳を持つことで「お薬を飲んでいない」という意思表示にもなります。



避難所づくり

1 女性の視点を活かした避難所運営

避難所生活では、「まず食べ物」というニーズが強いことから女性への配慮が後回しになる傾向にあります。熊本地震の教訓を踏まえ、性別によるニーズの違いなど、様々な立場の人々に配慮し、男女共同参画の視点にたった運営を検討していきましょう。


熊本地震の教訓

熊本地震では、過去の震災での経験や報告書を参考に、内閣府の避難所チェックシートを活用した「避難所キャラバン」が実施されました(実施主体:熊本市男女共同参画センターはあもにい)

ヒアリングの結果

女性用品(女性用下着、生理用品等)が届いても、男性が配布していたため、もらいにくかった。避難所に授乳や着替えの場所、女性専用の物干し場がなく、プライバシーが確保されていない。避難所のリーダーに女性が少なかったため、女性が必要とする物資の要望が出しにくかった。


環境改善の取り組み例

熊本地震では、過去の震災での経験や報告書を参考に、内閣府の避難所チェックシートを活用した「避難所キャラバン」が実施されました(実施主体:熊本市男女共同参画センターはあもにい)

1 性暴力・DV防止啓発活動(熊本市)

発災の翌日から地震後の混乱に乗じた性被害を未然に防ぐため、啓発ポスター・チラシが作成され、避難所に掲示のうえ注意喚起が促された。

2 女性用品の配布方法の工夫(熊本市)

被災者の女性が,気兼ねなく女性用品を手に入れることができるよう、女性トイレの手洗い場や個室の中に常備。

3 女性による自主運営の避難所(熊本県益城町)

女性リーダーを中心に、自主運営が行われていた避難所。昼間は間仕切り用のカーテンはすべて開かれており、風通しがよく明るい雰囲気だった。避難所の中心に、カフェスペースや子どもスペースが確保されていた。


対応策

1 避難所ワークショップ

福岡市では、平成29年度から各校区で避難所運営ワークショップを開催しています。この中で以下の観点から男女共同参画の視点にたった避難所運営について、話し合いを行いましょう。

男女共同参画の視点にたった内閣府の避難所チェックシート(抜粋)

  • 管理責任者への男女両方の配置
  • 女性用品(生理用品、下着等)の女性担当者による配布
  • 異性の目線が気にならない物干し場、更衣室、授乳室、休養スペース等
  • 安全で行きやすい場所の男女別トイレ
  • 避難所の巡回警備、暴力を許さない環境づくり

2 博多あん・あん塾

福岡市では、地域や企業の防災力の向上を目的に、平成17年度から防災リーダー(防災士)を養成しています。これまで約1,000名の方が受講され、この中から246名の女性防災士が誕生しています(平成30年3月末時点)


届けたい思いは一つ みんなで防災について考えよう

男女共同参画の視点から防災活動を行っている2名の女性。環境や立場は異なりますが、その胸には同じ思いが刻まれていました。


「男女共同参画の視点」は,災害から自分や大切な人々を守る大切な備えです。


熊本男女共同参画センターはあもにい 館長 藤井 宥貴子さん

まさかの発災はありません!だからこそ、自分の命を自分で守るための日頃の備えが大切です。ご自身の日常を、「もしも今、災害が起きたら」という視点で見直してみましょう。「地域のイベントに参加する」、「非常用持ち出し袋を職場にも用意する」、「家族や職場の連絡網を作っておく」、「健康に留意する」等々、きっとご自身に必要な備えに気づいていただけると思います。

気づいたら実践!そしてもう一点、熊本地震からの教訓としてお伝えしたいのは、「多様な立場の人々が互いに尊重し合い、思いやることのできる男女共同参画の視点」は、私たちにとって最も大切な備えであるということ。熊本の真の復興にも、この視点は不可欠であると思っています。


防災士 小幡 嘉代さん

大切な人を守りたいという思いは、誰もが同じはず。防災は物の備えだけでなく知識の備えも必要です。知ることで防げることもあるのです。そして想像力。もしも…を想像し何が必要か、どう行動すべきかを考える。日常に起こることは非常時にはもっとリスクが高まります。その中で生き抜き、守り抜く。災害は突然起こります。もう他人事ではないのです。


2 トイレの衛生環境

災害時はトイレが利用できなくなるもの。実情を把握し、特に高齢者や女性の対策を考えておきましょう。


災害時のトイレの実態

益城町では、下水道の損傷や断水によりトイレが利用できない避難所に発災直後から仮設トイレが配備されました。また、下水道が利用できる施設では、プール等から汲み置きした水を使ってトイレを流していました。


仮設トイレ こんな問題や悩みが…

照明が暗くて夜間利用が怖い,トイレの臭いが気になる,高齢者は段差がある和式トイレは使いづらい,人が大勢いるところのトイレは入りづらい,男女のトイレを分けて別の場所に配置してもらいたい,汚物で汚れたトイレの掃除が大変,トイレを我慢することによるエコノミークラス症候群の発症の恐れ


学校等のトイレ

ノロウイルスなどの感染症:バケツにくんだ水を使い水冷式のトイレを使用する場合、水圧で排泄物の一部が周囲に飛び散り感染症を引き起こす恐れがあるので、便器に水を入れるときには十分注意してください。


福岡市のトイレ対策

避難所のトイレが利用できないときは、仮設トイレを配備します。建設現場での利用を主目的とする仮設トイレは、和式が多く、足腰が弱い高齢者にとって使いづらいものとなっています。また、臭いの問題で避難所から少し離れた場所に配置されています。

福岡市では、非常時にすべての避難者が利用できるトイレ環境を確保するため、仮設トイレの配備に加え、携帯トイレや簡易トイレの備蓄、マンホールトイレの整備を行っています。


携帯トイレ

トイレの便座と便器の間に袋をはさみ,便座を下ろしてそのまま用を足します。使用後に凝固剤を投入するタイプと凝固剤が給水シートの袋に圧着されたタイプがあります。オムツと同様に一般ごみとして廃棄できるため、在宅避難に備えて家庭でも備蓄しておきましょう。(各避難所,自治体の指示に従い,処分しましょう)


簡易トイレ(ラップポン)

熊本地震では水を使わず、特殊フィルムで排泄物の臭いや菌を密封する簡易トイレが重宝されました。福岡市では、この簡易トイレを備蓄しています。

<特徴>水を使わず、排泄物を1回毎にラップで密封,毎回、個包装にして切り離すので常に清潔,特殊フィルムで臭いや菌を外に漏らさない,ラップされた袋はオムツと同様の一般廃棄物としての処理が可能,ラップすることで汚物や吐しゃ物による二次感染を予防


マンホールトイレ

マンホールトイレは、災害時に下水道管路にあるマンホールの上に洋式トイレや上屋を設けて使用します。福岡市では、一部の小・中学校、公民館、公園、体育館でマンホールトイレの整備を行っています。



3 ペットの避難

ペットに対する備えは基本的に飼い主の責任になります。熊本地震の事例をもとに飼い主がやるべきことを学びましょう。


災害時におけるペットの避難について

福岡市の地域防災計画では、飼い主の責任により避難所へのペットとの「同行避難」を原則としています。「同行避難」とは、飼い主がペットを連れて一緒に避難することで、避難所内の同じスペースで一緒に避難生活をを送ることを意味するものではありません。


避難所での飼育場所

避難所間のトラブルを防止するためペットの飼育場所は、(1)避難所の居室と隔離した雨風や暑さ寒さをしのげる場所、(2)避難所の動線と重ならない場所などの確保が望まれます。ペットの受け入れが可能かどうかは、施設の規模や構造によって異なりますので、日頃から避難所ごとに検討しておきましょう。


自宅での飼育のすすめ

屋外で飼育されているペットは、飼育場所が安全であれば必ずしも同行避難する必要はありません。また、人にとってもペットにとっても避難所は決して快適なところではないため、親戚や知人宅等で預かってもらうことができれば、ペットのストレスも軽減されるでしょう。


ペットの一時預かりについて

熊本地震では、被災したペットの救護や飼い主支援のため、被災自治体や獣医師会等との連携のもと、ペット救護本部が設置されました。同本部の支援のもと動物病院のほか、(一社)九州動物福祉協会が運営する熊本地震ペット救援センター(大分県九重町)で被災ペットの一時預かりが行われました。


飼い主の責任とやるべきこと

ペットを救えるのは飼い主!災害に備えておきましょう。

  • 基本的な手続きをしておく
    飼い犬登録、狂犬病予防接種を必ず実施。
  • 健康管理をする
    避難所ではペットにも大きなストレスがかかります。普段から健康状態に注意し、予防接種やノミ・ダニの駆除,去勢、避妊手術を。
  • しつけをしておく
    ゲージやキャリーバッグに慣らしておく、「待て」などの基本的なしつけ等。
  • 身元を示すものをつけておく
    鑑札や狂犬病予防注射済票、迷子札をつけましょう。これらは取れる可能性もあるためマイクロチップとの併用が有効です。
  • ペット用の防災用品を準備する
    餌や水(5日分以上)、予備の首輪、ケージやシーツ、予防注射の記録やペットの写真等。
  • 飼い主仲間や近所の人との連携
    普段から人に慣れさせておく、緊急時に預かってくれる人を決めておく等。

ペット事情についてお話を伺ったのは,熊本県健康危機管理課 江川 佳理子さん

行政は、災害時は人命救助が最優先です。避難所でペットの受け入れはできても、発災直後はそれ以上の支援はできないのが現状です。遠方で預かってくれる人を家族で話し合ったり、いざというときに備えて準備できることはたくさんあります。一人ひとりが自助(自分のことを自分で守ること)に努めましょう。



避難生活

1 在宅避難のすすめ

避難所は家屋の倒壊などにより、自宅で生活することが困難な方々が一時的に身を寄せる場として開設するものです。避難所生活で健康を害される方もいるため、建物が安全であれば、無理して避難所生活を送る必要はありません。住み慣れた我が家で在宅生活が送れるよう日頃から備えを行っておきましょう。


家具の転倒及びガラスの飛散防止対策

建物が耐震化されていても家具の転倒及びガラスの飛散防止の対策を怠ると身の安全は守れず、在宅生活も出来ません。最低限、寝室として使う部屋の安全対策を行っておきましょう。


食料やライフラインの停止に備えた備蓄

インスタント食品など非常食となる食料を少し多めに買っておいて、使用した分を随時、買い足していくローリングストックという備蓄方法があります。ぜひ実践してみましょう。また、食料があっても、電気・ガス・水道がストップしていたら生活ができません。ライフラインの停止に備えた物資の備蓄を行っておきましょう。


被災者の体験談:在宅避難でもっとも役に立ったもの

飲料水,カセットコンロ,ランタン等の照明器具,簡易トイレの備蓄


隣近所との顔の見える関係づくり

いざ、災害が発生したときに頼りになるのは隣近所の存在です。一人ではできないことも、近所の方と力を合わせれば苦難を乗り越えることができることを過去の災害が証明しています。まずは、挨拶から。できることから始めましょう。


最寄りの避難所での食料等の調達

断水や流通の麻痺などで水や食料が調達できない場合は、最寄りの避難所で食料等の配給を受けることができます。各避難所では、避難者名簿をもとに物資の補給を行っているため、あらかじめ自治会などを通して必要数量等を伝えましょう。


番外編:テント避難(軒先避難)

熊本地震では多くの方がテント避難(軒先避難)を経験されました。

ポイント:安全面や健康面に配慮する,アウトドア用品を活用する,雨風による劣化に注意


2 正しい車中泊

熊本地震では車の中で避難生活を送る、いわゆる車中泊避難者が多数いらっしゃいました。車中泊では、同じ姿勢をとり続けることによるエコノミークラス症候群の危険性が指摘されていますが、足を伸ばして寝ることができる車種であれば、工夫次第で安全に避難生活を送ることができます。このページでは、車中泊を行ううえでの留意点をご紹介します。


車中泊を選んだ理由

1 屋内が怖いから,2 プライバシーが保たれているから,3 子どもやペットがいるから


車中泊を行うための絶対条件

1 フルフラットのシートアレンジができること,2 暑さ、寒さ対策が考えられていること,3 防犯対策が考えられていること


車中泊で安全・快適に過ごす4つのポイント

1 室内のフラット化

バスタオルや服などを重ねて、シートの凸凹を解消します。この上にマットを敷けば、さらに快適性が増します。


2 暑さ対策

窓にウインドーネットを取り付けれえば、外気を取り込むことができます。窓が解放状態なので、ひとけのない場所での利用は避けましょう。


3 寒さ対策

コンパクトに収納できる寝袋が防寒対策として最適なアイテムです。


4 防犯対策

鍵をかけて、窓に銀マッドを張り付けておけば、寒さ対策としても有効。


防災キャンプ

福岡市では、野外生活の知識や経験を活かすという考えのもと、備蓄促進ウイーク(9月1日~9月7日)の期間中に防災キャンプを開催しています。

テントや寝袋などのアウトドア用品は最高の防災グッズです。電気や水道がない野外生活などでの知識や経験は、災害時の避難生活にも大いに役立ちます。遊びの中で防災を考える機会をもうけましょう。


車中泊の心得

心得1 寝るときにエンジンをかけっぱなしにしない

一酸化炭素中毒に陥り命を落とす危険性があります。寒いときは着込む,断熱素材のシートで覆うなど対策をとりましょう。


心得2 座席にそのまま寝るのはNG! とにかくフラット(水平)に

エコノミークラス症候群を発病する可能性があります。車内が狭い場合は、隙間をタオルで埋めるなどして、寝る場所が水平になるよう工夫を。


心得3 周りに誰もいない場所には極力停めない

車内で寝ているときは無防備な状態。車中泊で車上渡しやイタズラにあう可能性は否定できません。ひとけのない暗い場所での駐車は避けた方が良いでしょう。


心得4 やむを得ず傾斜地や駐車場に停める際は細心の注意を

傾斜地への駐車はご法度。やむを得ず駐車する場合はタイヤに踏み板をし、忘れずにサイドブレーキをかけましょう。また、駐車場に停める場所は進入路を避けるとベター。


心得5 近くのお店やガソリンスタンドの場所を把握しておく

必要なものをすぐに買いに行くことができます。また、ガス欠に怯える心配もありません。


心得6 車中泊をしている者同士、マナーを守る

車中泊の車が押し寄せた場所では、騒音トラブルやペットボトルを置いて場所取りをする方もいたそうです。


車中泊で約1か月間被災生活を送った熊本震災復興応援誌 編集者 米原 正則さん

熊本地震では前震で避難したものの、その後の本震で自宅に戻っていた人が被害に遭ったことで、建物への信頼性がなくなり、その不安から車中泊を選ぶ人が多くいました。健康面での危険性がある反面、倒壊の心配はなく,プライベート空間が確保できるなどメリットがあります。防災のためと考えるのではなく、アウトドアの延長のような気持ちで日頃から備えておけば、いつのまにか防災力が磨かれると思います。


実際に使っていた車中泊避難に役立つアイテム

車内加湿器,カーテン・タオルやブランケット,ミニテーブル・食用ラップ(食器にかぶせる),LEDランタン

これもあると便利:ハンガー,ゴミ袋やビニール袋,折りたたみ式水タンク,ヘッドランプ,耳栓・アイマスク,クーラーボックス,除菌シートや汗拭きシート



気をつけよう

1 エコノミークラス症候群

避難生活や車中泊の際に気をつけたいのが、エコノミークラス症候群です。熊本地震では、多くの方が病院に搬送され治療を受けていましたが、その8割が女性でした。


発病の原因と危険性

長時間同じ態勢で足を動かさずにいると足の静脈に血栓ができる→動き始めたときに血栓の一部がはがれ、肺の血管をつまらせる→呼吸困難、胸の痛み、心肺停止を引き起こす危険あり!


予防するポイント

  • 足の運動
    簡単なストレッチや運動で足の筋肉を動かしましょう。
  • 水分補給
    カフェインやアルコール飲料は脱水を引き起こす可能性があるため控えること。
  • 弾性ストッキングの使用
    閉塞性動脈硬化症の方、ケガや炎症がある方などは使用NG。糖尿病、心臓病の方は医師に相談を。

エコノミークラス症候群になりやすい方

高齢者,車中泊の方,肥満の方,中高年(女性),妊婦,悪性疾患のある方


予防におすすめ簡単ストレッチ(膝下の筋肉を動かすことが大事)

  • 足首の体操
    足の指でぐーを作ったり開いたりする(10回)
    つま先・かかとの上げ下ろし(10回、イスに座り行っても可)
    膝を両手で抱えて、足首を回す(内回し・外回し5回ずつ)
  • ふくらはぎのマッサージ
    片足の甲で反対のふくらはぎを叩く(イスに座り行っても可)
    心臓に向かって、骨に沿ってさする
    心臓に向かって、ふくらはぎを揉む
  • 足踏み・お尻上げ
    大きく腕を振りながら足踏みする(片手をイスや壁についても可)
    仰向けに寝て両膝を立てる
    ゆっくりお尻を持ち上げ、5秒とめて戻す(5回)


2 防犯対策

災害時は困っている女性や子供を狙った性被害、空き巣などの窃盗が増加。みんなで協力して犯罪を防ぎましょう。


防犯意識を高めよう

トイレや避難所から離れた暗い場所は、痴漢やいたずらなどの犯罪リスクが高まります。女性や女の子だけでなく、小さな男の子も犯罪の対象になりうることを意識し、油断しないことが大切です。また、「充電していたら携帯を盗まれた」など窃盗事件も。避難所は守られているところではないという意識を持ち、行動しましょう。


熊本地震では

阪神・淡路大震災や東日本大震災では子どもや女性を狙った犯罪が多発したと言います。熊本地震では避難所が開設されてすぐ、女性や子供に向けた防犯ポスターを避難所に提示。犯罪の抑止として大きな役割を果たしました。


災害は防げないが人災は防ぐことができる!
  • ひとりの時間をつくらない
  • 夜は極力出歩かない
  • オシャレより安全重視
  • 長い髪は帽子で隠す

空き巣被害を未然に防ぐ

混沌とする被災地において、ひとりで犯罪を防ぐことはできません。地域全体で防犯に取り組みましょう。


被災者の声

見慣れない車がずっと回っていることがあった。校区の住人みんなが知り合いなので、不審者にすぐ気づくことができた。それから消防団が防犯活動を実施。車両を使って、当番制で巡回した。

地域のつながりを強め防犯を強化しよう


ボランティアの方が見回りをしてくれたが、ある家ではたくさんの骨董品が盗難にあった。片付けに帰る日時、見回りの日時もほぼ決まっていたので、犯人はその時間帯を把握して行動していたと思う。

抜き打ちで見回りをし犯人に危機感を与えよう



避難生活レポート

東日本大震災 避難生活レポート

平成23年3月11日、最大震度7を記録した東北地方太平洋沖地震により大津波が発生。一瞬にして多くの街をのみ込みました。壊滅的な被害を受けた女川町、多賀城市において、支援者として活動した2人の声をお届けします。


多賀城市職員 菊池 賢一さん

自助・共助・公助の連携で避難所運営を

多賀城市の最大震度は5強でしたが、市の3分の1が津波で浸水。堤防が決壊して川からも海からも津波がくる、都市型津波の典型でした。避難所は人でごった返し、仕切りもなく決して理想的な状況ではなかったです。役所だけでは避難所運営ができないことも学び、震災後の防災訓練は地区単位で実施。コミュニティもできやすいし、要望の解決も市民目線でできます。また震災を教訓に分散備蓄にし、避難所ごとに倉庫を設置。備蓄の使い方を地区の方と共有し誰でも使えるようにしています。


行政でルール化せずみんなでジャッジ

1,500人いる避難所に10食程度しか届かないものもあり、そのときは「皆さんで考えて分けてください」と渡すようにしました。そうすると上手く分けてくれる。だんだんと秩序が守られるようになり、避難所や地区ごとに防犯の見回りなども始まりました。住民の皆さんを信じることも重要な視点の一つで、大切なことだと思います。


ボランティアとして活動した 伊藤 恵悟さん

二次災害で命を落とす悲しい現実

当時は関東に住んでいたのですが、ボランティアとして女川にきました。看護師の仕事をしていたこともあり、医療に従事する仕事をしていたこともあり、医療に従事する仕事をその日ごとにもらいつつ、途中、在宅避難者のケアに当たっていました。というのも、家が残っているために物資がもらいにくく、健康状態の把握も難しい状況だったんです。 自宅が残っている方が同じ地区で家を失くされた方20名ほどを受け入れたものの、負担がかかってしまい、命を落とされたケースもありました。


日に日に変わるやるべきこと

暖かくなるととにかく衛生面に気をつけようと、消毒液を撒き、大量発生したハエやウジ虫を徹底的にに退治しました。病気が一番心配でしたね。窃盗も発生していて、自宅避難者に欲しいものを聞くと「金属バット」と言う方がいたのも衝撃でした。物資の受け取り方など知り合いだからこそ見たくない部分もあったようですが、顔見知りが多い女川という地域だったからこそ情報伝達の統率が取れていたのだと思います。



熊本地震 避難生活レポート

平成28年4月14日以降、熊本県と大分県で地震が発生。益城町では14日と16日に震度7を観測しました。その益城町で、小学校でも避難所運営に携わった奥村さんと、地区全体でのテント避難を成功させた三村さんに話を伺いました。


益城町役場職員 奥村 啓介さん

子どもたちと一緒に避難所を運営

4月15日から約2ヶ月間、益城町の小学校避難所を担当しました。災害対応経験もなく、食料の手配などすべてが手探り状態。800人の避難者に対して、配属された職員が6名程度だったため、全く人手が足りませんでした。しかし、地元の子どもたちが、おにぎりを握ったり、食事の配布を手伝ってくれたおかげで、それを見た大人たちも協力態勢に。被災者ボランティアの方や、学校の先生、各種支援団体の方と連携して、良い雰囲気の避難所運営ができたと思います。


心と体がゆっくり休まる時間をつくる

仮設トイレを男女別にわけたり、洗濯機・乾燥機を設置するなど日々環境は整っていきましたが、避難所生活が長期化すると疲れやストレスも溜まります。支援制度を利用して、1泊バス旅行に行ってもらい、その間に、避難所内の大掃除と毛布の入れ替えをしたり。避難所を出たあとも、大変な生活は続くと思っていたので少しでも元気に、笑顔で避難所から送り出したいという思いで取り組みました。


益城町東無田地区 三村 一誠さん

希望者みんなでテント避難をスタート

地震で家が全壊。もともとアウトドアが好きでキャンプ用品を持ち合わせていたので、安全な場所でテント避難を初めました。その後、僕たちの様子を見た近所の方から「テント避難をしたい」という声があり、SNSで物資の支援を依頼。届き次第、希望する方の敷地にテントをはっていきました。最終的に70張りのテントを設営。公民館に集まってみんなで食事をすることもあったのですが、そのときに行政の重要な書類を提示して、情報を共有していました。


近所の付き合いがあれば被災生活も耐えられる

普段から近所づきあいが盛んだったので、遠方へ買い物に行く人がついでに買い出しをしてくれたり、炊き出しの残りで翌朝の料理を作ってくれる人がいたり…と、みんなで不安な被災生活を乗り切りました。自衛隊やボランティアの方に必要な支援はお願いしましたが、自分たちでできることはやる、この意識も必要だと思います。



九州北部豪雨 避難生活レポート

平成29年7月5日から6日にかけて、福岡県・大分県を中心とする九州北部で発生した九州北部豪雨。大きな被害を受けた福岡県朝倉市で、自宅を離れている最中に被災した2名の方に話を伺いました。


朝倉市杷木寒水地区 岩下 清美さん

早急な支援と遠い再建への道

自宅は杷木ICのすぐそばにあり床上浸水。災害発生時は勤務中で家には戻れず、片付けを始めたのは13日からでした。ボランティアの方の協力で最低限の生活ができるまでになりましたが、半年以上経った今もどこから手をつけようかという状態です。中学校に避難していましたが、お風呂は早い段階から自衛隊が用意してくれ、旅館が温泉を無料開放してくれたのも嬉しかったです。トイレ問題が一番大変で、役所からもらったビニールの簡易トイレを使いました。年配の方は使い方がわからないこともあってか,あまり使わず我慢していたように思います。


共同生活だからこそ生まれた思い

避難所はクーラーが効いているため、1日中過ごしている人は「寒い」と言い、仕事などから戻った人は「心地いい」。それぞれが色々な思いを抱えていたと思います。支援ばかりに頼るのは…と思い、農家の方からいただいた野菜などで朝食だけはみんなで作ったんです。そこで団結力ができたと思います。大変な部分はありますが、連携プレイや思いやる気持ちが生まれ、良い部分もいっぱいありました。


朝倉市山田 渡邉 孝子さん

災害はいつ、どこで起こるかわからない

私が外出中に災害が発生。義父だけが自宅にいて、家の一階で水に流されそうになりました。1時間かけなんとか2階へ避難しましたが、ケガで1ヵ月ほど入院せざるをえなくて。「もし水害が発生したら」と家族で話し持ち出し袋を用意していましたが、実際に起きたのはほぼ全員が家にいないとき。災害はどんな状況で起こるかわからないと痛感しています。息子が熊本地震を体験していて、女性用品や拭く物(デオドラント系)などをすぐ揃えた方が良いと教えてくれ、心強かったです。


人もペットも心のケアが必要

避難所は家族ごとの仕切りというより、知り合い同士で部屋や区画で分けられていたので安心できました。また、失ったものは大きいですが品物は買うことが出来ます。人の優しさなどお金で買えないものを沢山得ることができました。あと自宅の庭で犬を飼っていたのですが、水に流されたのが怖かったみたいで、家族から離れると不安がる状態です。避難所に連れていけなかった猫などに会いに、自宅に定期的に帰っていた被災者の方もいらしゃいました。



学ぼう

1 避難所運営ワークショップ

大規模災害時、被災自治体である福岡市は、市民の身体・生命を守るため様々な災害対策を行う必要があります。こうした状況のもと、避難所を円滑に運営していくためには、住民の皆さんにも支援される側から支援する側に回っていただくことが必要なことから、平成29年度から避難所運営を学ぶワークショップを開催しています。


ワークショップの特徴

実務を通じて避難所運営に精通した講師を招き、避難所の中で起きる様々な事例の紹介やその対処方法など地域が求める諸課題に応じて、研修プログラムを組み立てるオーダーメイド方式。校区の地図を使って災害上の危険個所を拾い出すDIGや避難所運営で生じる様々な問題への解決策を考えるHUGなど、参加者が主体的に関わる全員参加型。


ワークショップのテーマ

避難所のレイアウト計画について,避難所運営のそれぞれの役割について,女性の視点を活かした避難所運営について,避難所でのペット対策について,避難所運営訓練の実施内容について など


ワークショップについてお話を伺ったのは,別府市役所 防災推進専門員 村野 淳子さん

これまでの被災地では、被災した地元行政職員等は直ぐに避難所に駆けつけることは出来ませんでした。自分たちの『命と暮らしを守る』ために、避難した住民自らが、避難所の環境等を確認して、最善は何かを協議し、優先順位を決めて、協力しながら運営することが必要です。そのための準備と覚悟をワークショップで学びます。



2 博多あん・あん塾

福岡市では、地域や企業における防災リーダーの養成を目的として、平成17年度から博多あん(安全)・あん(安心)塾を開催しています。これまで約1,000名の方々が受講され、地域や職場で活躍されています。

本講座を修了した方は、「防災士」の受験資格が与えられます。※防災士とは,NPO法人日本防災士機構(東京都千代田区)が、防災に関する一定の意識、知識、技能を持った人を認証する民間資格です。

開講時期:8~10月に開催(8回程度)

講座内容:大学教授、マスコミ関係者、行政職員、民間の有識者など、防災に関するエキスパートによる各種講座

募集方法:市政だより、市のホームページなどで案内


『博多あん(安全)・あん(安心)塾』修了生の活動事例

修了生の多くは防災士資格を取得し、居住する地域や勤務先などで防災リーダーとして活躍しています。地域の自主防災組織メンバーとして防災訓練や防災講習会を行ったり、修了生有志でつくるボランティア団体に参加し、市内各地域や学校などで講習会を実施するなど普及啓発を行っています。


博多あん・あんリーダー会副会長・城南支部長 防災士 上野 直美さん

私が防災士になったきっかけは、地図を使って防災を考える「災害図上演習(DIG)」を体験し、防災に興味を持ったことです。地域や学校でDIGやクロスロードゲーム・非常持ち出し品ゲーム・災害食クッキングなどを楽しく体験し、防災を身近に感じてもらえた時はうれしいです。「みんなで楽しく防災・減災」をモットーにこれからも活動したいと思います。



備えよう

事前登録おすすめ情報

災害時に役立つ情報を取得・発信するためのアプリやメールをスマートフォンや携帯電話に登録しておきましょう!


無料防災アプリ『ツナガルプラス』

福岡市では、災害時における指定外避難所の把握などのため、(株)富士通九州システムズとともに、防災アプリを開発。アプリをインストールすることで、普段は地域の情報交換ツールとして利用できます。(平成30年4月より利用開始)


平常時モード

自治会や地域サークル等で双方向の情報交換ができます。
情報を素早く、広く共有することができます。
お店のオープンやセールなどの情報発信も可能です。


災害時モード

近くの避難所を経路とともに一覧や地図で表示します。
指定外避難所(車中泊)に避難されている方々からの情報提供により、支援につなげることができます。
被災者間で被災状況や物資支援などの情報共有ができます。


福岡市防災メール

避難情報や注意報・警報、震度3以上の地震など、防災に関する情報をスマホやパソコンへ電子メールで配信します。


福岡市防災ホームページ

警報・注意報、雨量などの気象情報、河川水位や河川の画像など、防災に関するさまざまな情報が見られます。スマホやパソコン、タブレット端末からアクセスしましょう。


緊急速報メール(エリアメール)

気象庁が配信する「緊急地震速報」や、国・自治体が配信する「災害・避難情報」などが、対象エリアにいる人へ一斉に配信されます。アラームが鳴った場合は、ただちに身の安全を確保しましょう。


携帯ラジオ

電池式の携帯ラジオは防災アイテムの必需品です。停電時でも使え、地域に密着した情報を取得することができます。FMとAM両方が聞けるものがオススメ。


備えておきたい

スマホ用の電池式バッテリー(1スマホに1つ),ラジオ用の電池の予備



メモしておこう

家族や親戚の連絡先,家族の安否が不明なときに連絡する場所,家族の常備薬・アレルギー,その他大切なこと



電話がつながりにくい時の安否確認(災害用伝言ダイヤル「171」)

録音方法

171にダイヤルする
音声ガイダンスに従い1を押す
自宅などの電話番号(市外局番から)
伝言を入れる


再生方法

171にダイヤルする
音声ガイダンスに従い2を押す
自宅などの電話番号(市外局番から)
伝言を聞く



各携帯電話事業者がインターネット上で提供するサービスも活用ください。災害発生時にインターネット上に開設されます。



書名等

避難生活ハンドブック ~大規模災害を生き抜くために~ (平成30年4月発行)

発行:福岡市市民局防災・危機管理部防災・危機管理課 電話:092-711-4056
編集制作:株式会社サンマーク Nasse編集部
イラスト:アベナオミ

本冊子に掲載している情報は平成30年3月現在のものです。本冊子の記事・写真・イラスト・レイアウト等の無断転写、転載を禁じます。