現在位置: 福岡市ホーム の中のくらし・手続き の中の地域の活動・NPO・ボランティア の中のNPOとの共働推進 の中の共働事例インタビュー「NPOと小中学校」
更新日:2024年8月30日

共働事例インタビュー「NPOと小中学校」

ココットの山本さんと永松さん

上から Coco音 山本さん、永松さん

教室でがん教育を受ける子ども達の様子

がん教育「生きることの授業」の様子

 

インタビューした方のご紹介

 

  • NPO法人 Coco音(ここっと)代表理事 山本さん
  • NPO法人 Coco音(ここっと)事務局長 永松さん

がんや難病経験者が語り部となり、小中高校生向けにがん教育「生きることの授業」を行っているNPO法人Coco音の山本さんと永松さんに、「小中学校との共働」について伺いました。
(令和6年2月22日 オンラインでインタビュー実施)

Q学校との共働のきっかけを教えてください。

 

山本さん
・最初は全然依頼がなくて、こちらから積極的にアプローチしました。教育委員会に説明に行ったり、校長先生が集まる会で挨拶させてもらったり、学校を1校1校回ってチラシを配りました

永松さん
・私が、宇美町の小学校のPTA会長をしていたことがあったので当時の先生方が今どこにおられるか調べたら、校長や教頭、教育長になっておられました。各々に説明をさせていただいて、少しずつ口コミもあって広がっていったという感じです。

山本さん
・あとは、古賀市長に、Facebookを使って、がん教育をしていますと連絡したところ話をする機会をいただき市長室でお話しました。
・それと、永松さんが「Coco音新聞」というのを作って、見てくださっていたかは分からないですが、各学校にFAXで送信していました。

永松さん
・功を奏したか分からないけど、努力だけは多くしましたね。

Q実際に学校から依頼が来るようになるまでは、どのくらいかかりましたか。

 

山本さん
・活動を始めたのが2019年だったのですぐコロナ禍になり、学校はお休みになってしまいました。

永松さん
2020年2月にぜひやってもらいたいと依頼は来ましたが、実施が3月だったので、コロナで休校になってしまいました。そこから先は依頼がないまま過ぎたんですが、2022年2月に同校から依頼がありました。
・古賀市の養護教諭の先生方の集まりでお話をさせていただいたのが、古賀市で活動が広がったきっかけです。養護教諭の先生方が、がん教育にすごく力を入れていて、ぜひ生徒に聞かせたいと古賀市内の学校に広がっていきました。
・今では、古賀市の小中学校全11校中10校で授業を行っています。

山本さん
・なかなか、こういうことやりますっていうだけでは伝わりませんが、養護教諭の先生などに、実際の授業の短縮バージョンを見ていただくと、これはやってほしいと前向きに話が進みます。

永松さん
・学習指導要領の中でがん教育は、中学校、高校に関しては必須カリキュラムなので、学校は、できたら外部講師に依頼したいという気持ちはあっても、外部講師を入れるのは先生方の負担になるようです。
・ちょうど学習指導要領の変わる時だったので、無下に断られることはなかったのですが、外部講師としてがんの当事者を呼んだ時に、子どもたちがどんな風に反応するのかを想像ができないので、がんの生々しい体験を聞かせたくないと思う先生方がいるんです。
・模擬授業をちょっと見てもらうだけで先生方の反応は変わっていきますが、その時間をいただくのが大変でした。
 

 

Q共働の価値をどこに見出していますか

山本さん
・学校に打ち合わせに行った時に、学校が私たちに求めることを聞き、それに合わせた授業をする感じです。同じ授業はなかなかなくて、子どもたちに送るメッセージが学校によってそれぞれ違い、がんと日々向き合っている子どもたちが学校にいるんだとか、私たちもどういうメッセージ伝えようかという学びにもなり、学校が抱えている子どもたちの問題を解決まではいかないと思うんですけど、学校と一緒に考えられるのはすごくいい機会でした。

永松さん
・外部講師に任せたら丸投げっていうことも、よくあるんですが、私たちの場合は、打ち合わせの時間を大切にしています。打ち合わせは、学校まで行って対面で必ず行うようにしてます。
・がん教育は、ものすごく配慮が必要なんです。例えば、「家族にがんと向き合ってる子がいますか」と学校に聞くと、学校側もはっとなります。事前アンケートを取って、病気と向き合っている家庭があることに気づき、そういう子への配慮を先生方は依頼してくる。私たちもそれを分かった上で、授業の内容を決めていきます。
・最終的に子どもたちの感想を聞くと授業前のアンケートでは分からなかったこと、例えば、実はおじいちゃんが去年がんで亡くなりましたとか、結構赤裸々に書いてくれる子もいて、先生方もびっくりするんですよね。そういうところは、一方的に私たちがやるのではなくて、学校と共働する中で分かってきたことです。

 

山本さん

・普段見られない児童生徒の姿を見ることができるので、先生方もすごく喜ばれます。

Q Coco音としては、学校と共働することで、どういう面がよいと思いますか

 

山本さん
・子どもたちの今抱えている想いとか、学びたいことについて知ることができるのはすごく学びになりますね。
・アンケートにはいろんなこと書いてくれて、NPOで働いている私たちの背景を知りたがる子が多いです。それはちょっと驚いています。

永松さん
・学校を対象にしている私たちからすれば、先生方から生徒の対応の仕方を直に教えてもらえるのはありがたいです。
・例えば、小学校で机をキーボードのように叩いている子がいたのですが、私が行ってぽんと肩を叩いて注意しようかなと思っていたら、先生はその子の横に何もしないで立っているんです。それを気にする前の子が見るけれど、そっとしてあげてと目配せをしてそのままにしている。子どもたちへの対応の仕方は、私たちはプロではないので、先生方から学んでいます。共働でなかったら学べないことです。

Q学校とすれ違いを生まないコツはありますか

 

山本さん
・授業が終わってからでは遅いので、打ち合わせですれ違いを防いでいます。学校との打ち合わせを密にして、子どもたちを傷つけないことがすごく大切だなと思います。
・それと、子どもたちにアンケートを取り、事情のある子どもがいることをお互いに把握したうえで授業を作るのが一番だと思います。
・保護者にも学校から手紙を出していただいているので、いろんな声が届くことがあります。それを学校が把握して、私たちに伝える流れを作っておけば、後で問題になることは少ないと思います。

永松さん
・先生方の時間が取れず、なかなか打ち合わせができない時がありますが、めげずに日程調整を何度もして準備を進めています。また、学校の負担が増えないよう配慮をしています。例えば、アンケートはデータで提供して先生たちは確認すればいいようにし、レターパックを提供して投函していただければ、私たちが集計しますと言っています。アンケートが学校の負担にならないようにしているのと、A4サイズ2枚の打ち合わせ用紙を持って行き、レジメに沿って打ち合わせをします。
 

Q共働を行っていく中での苦労話、大変だったなと感じたことはありますか。

 

永松さん
・学校との共働という意味では、先生方がお忙しくて、私たちもみんな働きながらなのでお互い時間を作るのが大変です。

・共働するためには、お互いの想いをぶつける時間が10分でも20分でもいいので、対面ですることが必要だと思っています。どんな学校なのか、どんな子どもがいるのか、私たちがそれに対してどう答えられるのか、子どもたちにどう配慮するのかっていう部分は、対面でやるべきものだと思っています。

・それと、先生方と私たちの想いを一致させるのが大変です。せっかく想いが一致しても、学校なので人事異動があり、去年の先生がいるだろうと思ったら異動になっています。そうなると、またゼロからのスタートなので、想いを一致させる部分で苦労します。

Q事業を行う上でのモチベーションを維持するポイントはありますか

 

山本さん
・交通費は出ますが、講師料が出る訳ではないので、子どもたちが書いてくれた感想や反応は、私たちのモチベーションにすごくなっていると思います。
・私たちは子どもたちの感想を見て、子どもたちがそういう想いで聞いてくれたんだと気づきがいっぱいあるんです。病気を持っている私たちは子どもたちの感想を読んで、自分も頑張ろうっていう気持ちになります。
・「親に検診に行くように伝えます」と授業を受けた子が言ってくれた時に、伝えることで救える命があったと思っています。「生きるのがしんどい」とアンケートに書いている子もいますが、そういう子が、「20歳までは頑張って生きます」や、「前向いて生きていこうと思います」と書いてくれた時に、そこで一つの命を救えたと思えます。


永松さん
・特に疾患を持っている方が子どもたちと語る時間って、普通に生活していたら生み出せないのと、自分の体験が教育に活かされるなんていうのは、想像もしてなかったです。

Q共働をこれからやっていきたいと考えている団体さんに向けてひとこと。

 

永松さん
・同じ目的を持っている団体同士が共働すると、ものすごく効果があると思います。私たちのがん教育と、子どもに接している先生方や学校の教育現場との共働は、相乗効果がものすごくあると思います。ぜひ、そういうところがあったら、コンタクトを取ってもらいたいなと思います。