平成26（2014）年10月11日、福岡市天神にスタートアップ（起業・創業）支援拠点として「スタートアップカフェ」が誕生し、連日大賑わいを見せています。

若者の流行の発信地・天神のメインストリート沿いに建つ「TSUTAYA BOOK STORE TENJIN」の3Fにオープンした同カフェは、無料で使用できるほか、1Fのスターバックスコーヒーで購入した飲み物や食べ物を持ち込むことも可能。

運営事業者はCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)。CCCといえば、館内にスターバックスコーヒーを併設して話題になった佐賀県・武雄市図書館の指定管理者としても有名です。

「ものづくりを喚起させる空間」をコンセプトに、無垢材と鉄による書棚、照明や椅子にはアンティークを多く用いるなどじっくりと時間をかけて作られたこだわりのカフェ内には、無料Wi-Fi、電源などの“ビジネスインフラ”が整っているほか、3Fフロアではビジネス書を中心に30,000冊の書籍を自由に読むことができます。約100㎡の空間には、あえて椅子を置かないスペースを作り、利用するテーブルをシェアできる仕組み。テーブルを共有することで、利用者同士の新たな出会いのきっかけにもなります。実際、東京などでよくあるコワーキンググペースのようにシーンとした空間で黙々と仕事をするのとは異なり、BGMが流れるカフェ空間で会話を楽しみながら過ごしている利用者も多いようです。

平成26（2014）年11月29日には、全国の特区の中でも初めて「雇用労働相談センター」が同カフェ内に設置されました。同センターのオープンによって、起業したての会社が、弁護士などの専門家に雇用ルール等に関するアドバイスをもらえる体制も整っています。

同カフェの設立に関わった、福岡市経済観光文化局創業・大学連携課の池田和浩（いけだ・かずひろ）さんはこう言います。


「このカフェは『1人でも多くの人に起業に関心を持って頂き、裾野を広げる』というコンセプトがあります。起業意欲に燃える人はもちろんですが、起業に興味のない学生さんでも、誰でも入れる空間を意識しています。たとえば、カフェで隣のテーブルで打ち合わせしているのが聞こえてきて『商売でつながりが持てそうだな、面白そうだな』と思ったら、どんどん声をかけて、ネットワークを作って頂きたいですね」

ネットワーク作りにも活用できるという同カフェ。ただ、知らない人に声をかけるのも勇気がいるものです。そんな時の心強い味方が、同カフェに毎日10時から22時まで常駐している「コンシェルジュ」のみなさん。訪れた人の、起業に関するあらゆる相談に乗ってくれます。また、コンシェルジュの方から利用者に声をかけることもあります。

CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社）の社員で、同カフェのコンシェルジュを務める阿南　喜房（あなん・よしふさ）さんは、いつもカフェ内に目を配り、“初めて”の利用者を見つけると声をかけているのだとか。

そんな阿南さんが、こんなエピソードを披露してくれました。

「先日、偶然にも同じ業界の人が続けざまに3人も来訪されたことがありました。『東京から移住してきたのですが、福岡の○○がわからない』と相談されたので、『今ちょうど、詳しい人が来ているから』と『この3人で話してみて』とお引き合わせたところ、その場で意気投合して、2時間も話し合って、しまいには福岡における同業界の課題点抽出を行ってましたよ（笑）」

コンシェルジュから起業のアドバイスを受けられ、そして思わぬ出会いの“ビジネスチャンス”をつかめるのが、同カフェの特色と言えます。また、同カフェでは週3、4回セミナーやトークイベントも開催しているので、そういった場所に顔を出すことでビジネスチャンスが広がる可能性もあります。

土日は買物帰りの方やの中高校生も立ち寄ることもあるなど、職種・年代を問わず幅広い利用者がいるスタートアップカフェ。気軽な打ち合わせやミーティングの場所として、ぜひ1度、訪れてみてはいかがでしょうか。

［プロフィール］
池田和浩（いけだ・かずひろ）さん
福岡市出身。大学時代は京都で過ごすが、もともと地元愛が強く、地元福岡の金融機関で働いたのち『福岡の経済発展のために貢献したい、企業をもっと広くサポートしたい』との思いから、3年前に市役所に転職。現職・福岡市経済観光文化局創業・大学連携課。

阿南喜房（あなん・よしふさ）さん
CCC（カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社）
北九州市出身で、九州に戻って2年目。 Tポイント事業部で、九州・沖縄のＴポイント事業に関わったのち、現職・福岡市スタートアップカフェ　コンシェルジュ

［関連リンク］
スタートアップカフェ公式HP
http://www.startupcafe.jp/
※コンシェルジュは、阿南さん含めCCCからは2名、そして、九州を中心とした中小企業の投資育成やM&Aあっせんおよび人材紹介をサービスとして紹介している地元の株式会社ドーガンからは藤見哲郎さん含め2名。そのほか、地元で実際にネットワークを持っている非常勤のアンバサダー・コンシェルジュを加え運営をおこなっており、そのうち2～3人が毎日常駐。