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更新日: 2018年7月31日

大地震に備えよう! マンション防災・減災マニュアル(テキスト版)

 このページは「大地震に備えよう! マンション防災・減災マニュアル」を文字情報だけで編集したテキスト版です。ハンドブックのPDFは,大地震に備えよう! マンション防災・減災マニュアルをご覧ください。


はじめに

 福岡市には,「警固断層」という,全国的に見ても発生確率が高い活断層が陸域部をはしっており, 断層の直近部にはマンシヨン等の多くの集合住宅が立地しています。マンションは,耐震・耐火性や保安性に優れた建物です。その反面,ひとたび大規模な地震が発生すると, 停電でエレベーターが停止したり,断水や配水管の破損でトイレが使えなくなったり,玄関ドアが開かなくなったり,孤立化した室内の様子がわかりづらいなど,マンション特有の問題も抱えています。いつ発生するかわからない災害への備えとして,まずは自分の身は自分で守る「自助」が最も重要です。また,電気,水道,ガスの供給がストップしているマンションでは,個人の力では解決が難しい問題もあリます。そのような時でも,互いに助け合う「互助」の精神で,居住者同士が協力して災害に立ち向かっていけば,一人ひとりでは解決が難しい問題への対応が可能になります。このマニュアルでは,日常生活の中での地震への備えや,大規模地震発生時にマンション内で起こる様々な問題や主な対応策を,具体的な事例を交えながら解説しています。居住者の皆さんが,それぞれのマンションの特性にあった活動に取りくんでいただく一助となれば幸いです。


福岡市長 高島宗一郎


目次



熊本地震でのマンションの被災状況

 (一社)マンション管理業協会が調査した熊本地震における熊本県内のマンション被災状況(平成 28年6月14日現在)をみると,回答のあった566棟のうち,大破1棟,中破48棟,小破348棟,軽微130棟,被害無しは39棟となっています。また,熊本市が実施した分譲マンション実態調査によると,り災証明の判定結果(全176棟)の割合は,全壊2%,大規模半壊5%,半壊22% ,一部損壊が63%となっています。


被害程度と被害内容の概略
大破以上:倒壊や建て替えが必要な致命的被害
中破:大規模な補強・補修が必要
小破:タイル剥離,ひび割れ等補修が必要
軽微:外見上殆ど損傷なし
出典:(一社)マンション管理業協会「九州地方会員受託マンションの被災状況概要について(第2報)」


熊本市内の分譲マンションり災証明判定結果
被害程度と判定内容
全壊:損害が50%以上
大規模半壊:損害が40%以上50%未満
半壊:損害が20%以上40%未満
一部損壊:損害が20%未満
出典:熊本市「平成29年度分譲マンション実態調査報告書」



マンション防災の心得

1.できることから始めましょう

 東日本大震災や熊本地震のような大規模地震が起きた時,自助はもとよりマンション入居者が全員で力を合わせて支えあう共助の取り組みがとても大切です。本マニュアルは,市内で地震が発生した時,皆さんがお住いのマンションでいかなる被害が起こり,それにいかに対応していくかを,福岡県西方沖地震や熊本地震の実例を交えながら示しています。マンションには,中高層型や低層型,タワー型などの建築タイプや管理の方法(管理委託・自主管理),年齢構成,入居者数,建築年次の違いなどがあり,それぞれの特性に応じたマンション防災の取り組み方があります。本マニュアルを通して,入居者の皆さんがお住いのマンションの震災対策の必要性についての認識を一つにしていただき,大切な生命や財産を守るため,まずは,できることから始めの一歩を踏み出しましょう。


2.一人ひとりが防災の主役です

 大規模地震が発生した際には,入居者の安否確認や避難支援,建物等の安全点検,情報の収集・伝達など様々な活動が必要となります。災害は時と場所を選びません。災害時になすべき役割を決めていても,決められた方がその場にいらっしゃるとは限りません。一刻を争う非常事態の中,手をこまねいていては救える命を救うことはできません。大規模地震が発生した時,まず,行っていただきたいことは,入居者の生命と安全を守るための安否確認と,建物や設備の安全点検です。身の安全が確保された誰もがこれらの行動がとれるよう,入居者全員の意識づけを行っておきましょう。また,マンションには様々な知識や技能をお持ちの方々がいらっしゃいます。災害時に,これらの方々が適材適所での活動ができるよう入居者聞の相互理解を深めておきましょう。


3.楽しみながら防災を考える

 過去の災害の教訓から,向う三軒両隣の支え合いが 非常事態を乗り切るうえで大きな役割を果たしたとされています。東日本大震災では,同じフロアーの方のお宅に集まって励ましあって余震をしのいだという話もあります。近隣が自然にあいさつを交わし,さりげなく気を配り,世間話が行える人間関係をつくっていくことが,マンション防災の第一歩です。入居者の懇親を深めるための餅つき大会やクリスマス会なども,共助の力を高める活動の一つですので,これらのイベン卜と組み合わせた防災訓練の実施を検討されてみてはいかがでしょうか。



自助の備え

 「自分の身は自分で守る」ことが災害対策の基本です。物流やライフラインが途絶えた時の食料,物資等の確保や,家具の転倒防止など身の安全を守るための対策をしっかり行っておきましょう。


1.ローリングスットク法で備える

 日頃,利用している食料品や生活必需品を少し多めに購入しておいて,使用した分を随時,買い足していくローリングストック法という備蓄方法があります。食料等を一定量に保ちながら,消費と購入を繰り返すことで,備蓄品の鮮度を保ち,いざという時にも日常生活に近い食生活を送ることができます。過去の被災者の多く は,災害後の避難生活の際"に温かい物が食べたかったと語っています。ライフラインが途絶えた時のため に,力セットコン口も備えておきましょう。(フリーズドライ食品,レトルト食品,缶詰食品)

【被災生活を経験した方が重宝したという物品】
水,簡易トイレ(携帯トイレ),充電式などのラジオ,力セッ卜コンロ・ガスボンベ,ビニール袋,懐中電灯,常備薬,乾電池,食品包装用ラップ


2.身の安全を確保する

 近年発生した大規模地震での負傷原因を調べると,30~50%が家具等の転倒・落下によるものでした。「大規模地震では,家具は必ず倒れるもの」と考えて,お部屋の総点検を行い,家具等の転倒防止対策を行いましょう。


【近年発生した地震における家具類の転倒・落下・移動が原因のけが人の割合】
岩手・宮城内陸地震:44.6%
新潟県中越沖地震:40.7%
能登半島沖地震:29.4%
福岡県西方沖地震:36.0%
新潟県中越地震:41.2%
十勝沖地震:36.3%
宮城県北部地震:49.4%
出典:東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」


【家具等の固定・ガラスの飛散防止】
固定金具1:L型金具,ベルト式固定具
ポイン卜:壁の中にある芯材(さん)に固定します。芯材(さん)の位置を正確に知るためには,設計図を見たり,施工会社に問い合わせてみてください。石膏ボードの壁には芯材(さん)が入っていないものもあります。この場合は,取り付けができません。

固定金具2:ポール式耐震器具,木の天井では補助板を挟んで強度を向上,ストッパー式耐震器具
ポイント:ポール式耐震器具は,単純にポールをかませて固定しただけのものですので,地震の揺れの方向や規模によっては外れてしまうことがあります。ストッパ一式耐震器具と必ず併用し,耐震効果を高めましょう。
 和室の木の天井は強度が十分ではないのて,天井と家具の天板に,それぞれ1枚ずつ板を挟んで固定しましょう。
 手前や中央部に設置してしまうと十分な耐震効果が得られないので,なるべく壁側に設置しましょう。

固定金具3:L型金具,ガラス飛散防止フィルム,滑り止めシート,止め金
ポイント:観音開きの食器棚は,扉が開かないように止め金を付けたり,ガラス飛散防止フィルムを貼ったりして,ガラスや食器が飛び散らないようにしましょう。


<室内でここだけは安全!という安全エリアを設ける>

 家具等の転倒防止は重要ですが,いざ,取り組むとなると,コツが必要だったり,費用がかかったりなどで,なかなか進まないという方もいらっしゃると思います。そのような時は,室内に安全エリアを設けてみましょう。これならば,家具等の移動だけで済みます。安全エリアを設ける場合は,以下の点に注意しましょう。

(安全エリアで守ること)背の高い家具は極力置かない。背の高い家具を置く場合は,固定金具等で転倒防止対策を行う。入り口付近に家具等を置かない。転倒防止対策を行っていないテレビの下に頭を向けて寝ない。ガラス類などの割れ物を置いていない,または飛散防止フィルムが貼ってある。


3.火元の確認・通電火災を防ぐ

火の始末:「グラッと来たら火の始末」,「地震だ!火を消せ!」は過去の常識になりつつあります。大きな揺れの最中に慌てて火を消そうとして、てんぷら鍋や,やかんがひっくり返って火傷や怪我を負う危険があります。まずは,頭部を保護するなど,身の安全を守るための行動を最優先してください。都市ガスには,震度5相当以上の揺れでガスを自動的にストップさせる「マイコンメーター」が取り付けられています。また,対震自動消火装置が付いた暖房器具などが販売されていますので,ご自宅のガス器具の確認や火災を起こさないための対策をしっかり行っておきましょう。

通電火災対策:「通電火災」は,地震で起きた停電が復旧した後に,電気器具が倒れたままになっていたり,破損した電気器具や,損傷や断線した電気コードに電気が流れることによって起きる火災のことです。平成7年1月の早朝に発生した阪神・淡路大震災では,暖房や朝食,弁当の準備で,火や電気を使っている家が多い時間帯であったこともあり,地震直後から各地で火災が発生しました。

通電火災を防ぐには:通電火災を防ぐ対策としては,ブレーカーを落とすことが効果的です。しかしながら,地震が起きた時にブレー力ーにまで気を回すことができるとは限りません。そこで,阪神・淡路大震災のあとに開発されたのが「感震ブレーカ-」です。感震ブレーカーは,地震の強い揺れを感知すると,ブレーカーが自動的に落ちて建物内の電気を元から遮断する装置です。

【感震ブレーカーの例】

分電盤タイプ(内蔵型):分電盤に内蔵されたセンサーが揺れを感知し、ブレーカーを切って電気を遮断します。費用:約5~8万円(標準的なもの)※電気工事が必要

コンセントタイプ:コンセントに内蔵されたセンサーが揺れを感知し、コンセン卜から電気を適断します。埋込型:壁画などに取り付けて使うもの ※電気工事が必要。タップ型:既存のコンセントに差し込んで使うもの ※電気工事が不要

分電盤タイプ(後付型):分電盤に感震機能を外付けするタイプで、センサーが揺れを感知し、ブレーカーを切って電気を遮断します。※漏電ブレーカーが設置されている場合に設置可能。費用2万円 ※電気工事が必要

簡易タイプ:ばねの作動や重りの落下などによりブレーカーを切って電気を適断します。おもり玉式,パネ式があり,費用:約2~4千円 ※ホームセンターや家電量販店で踊入可能,※電気工事不要

参考:経済産業省「感震ブレーカー普及啓発チラシ(平成29年2月更新)」


4.出口を確保する

 揺れが収まったら,玄関などの逃げ道を確保しましょう。地震によって柱や壁が損壊し,ドアが圧迫されて開かない場合があります。その時は,バルコ二ーなどから避難しましょう。揺れの最中に,あわてて共用廊下やバルコ二ーなどに飛び出すと,窓ガラスや照明器具,壁などの破損・落下により,怪我をする場合があります。余震の大揺れもあるので,ドアを開けたままにしておきましょう。また,マンションの場合は,出入口が少ないため,避難経路の確保が重要となります。出口となる玄関,バルコニーまわりは,日頃から整理整頓し,避難経路の妨げになるものはないか確認しましょう。



震災時の活動フロー

 これから,震災時にマンション居住者同士で協力して取り組んでいただきたいことを4つの段階に分けてご紹介します。ここに記載している内容の中には,震災時だけでなく,今からすぐにでも取りかかれることがあります。まずは,取りかかれるところから進めていきましょう。


1.地震発生直後(揺れが少し落ち着いて)に行う行動

1-1 災害対策本部の立ち上げ

 対策本部は,マンションの人的・物的被害の情報を集約化し,関係先への連絡や災害対策の実施にかかる意思決定を行う役割を担います。対策本部を立ち上げ,円滑に運営するためにも,平時にできること,有事にできることについて,話し合っておきましょう。

チェックシート 
(平時)本部の設置場所をどこにするか決めておく。
(平時)本部長,副本部長は誰にするか決めておく。
(平時)本部長,副本部長が不在の場合,代行者を誰にするか決めておく。
(平時)区分所有者名簿,入居者名簿,要支援者名簿を作成しておく。
(平時)名簿の作成に当たっては,個人情報保護の観点から,その保管や利用方法について,明確なルールを決めておく。
(平時)発電機・灯光器,ランタン,コードリール,ホワイトボード,ブルーシートなどの資機材を備えておく。
(平時)電気・水道・ガス・電話などのライフラインやエレベーターが停止した場合の連絡先を明らかにしておく。
(有事)対策本部を立ち上げ,居住者に館内放送や掲示板等でお知らせする。
(有事)漏電火災や漏水の発生など二次被害を防止するため,避難時に電気ブレーカーを落とすことや,トイレ使用の禁止を入居者に徹底する。
(有事)各班からの情報を整理し,対策を検討の上,活動を指示する。

ポイント
対策本部の設置場所はわかりやすい場所に。集会室を利用するマンションは,そこを対策本部として活用することができますが,共有スペースがないマンションについては,管理人室や正面玄関などの1階部分を本部として活用することを検討しておきましょう。
不在に備えよう。災害はいつ何時起こるかわかりません。本部長,副本部長を決めていても不在の場合もありますので,いかなる場合でも臨機応変な対応が取れる体制づくりを行っておきましょう。
個人情報保護法のルールを守ろう。個人情報保護法が改正され,施行日である平成29年5月30日以降は,自治会町内会を含むすべての事業者は,個人情報保護法のルールに沿った取扱いが求められます。名簿づくりを行う時は,以下の点に留意してください。主な留意点。使用目的を掲示・回覧・各戸配付などに方法であらかじめ公表する必要がある。個人情報は,決めた目的以外のことには使わない。個人情報を第三者に渡すときは,本人の同意を得ること。※生命等の保護の必要があるときは,本人の同意は不要。取得した個人情報は安全に管理すること。

自主防災組織の災害時の体制例。自主防災組織は,地震災害が起こった際には,直ちに 災害時の体制を構築します。自主防災組織の災害時体制 としては,次のような体制が考えられます。

大規模マンシヨンなどで編成される体制例。戸数・人数も多いので、各階ごとに班を殴置するなど細分化された組織の編成が可能です。本部長,副本部長,消火班,避難誘導班,救護班,物資班,情報班など

中・小規模マンションなどで編成される体制例。規模が小さく個別組織編制が困難な渇合は、町内会・自治会の防災組織と連携しましょう。本部長,救護班,物資班,情報班など

災害対策本部の様子。熊本市中央区のAマンションでは,1階の玄関口ビーにある集会所に本部を設置。対策本部前で,今後についての話し合いの場を持ったり,ライフラインの復旧状況やごみ出 しルールなどの情報を貼り出し周知を図ったりしました。


1-2 安否確認・要支援者の避難誘導

1 安否確認
 マンションは,鉄の扉で仕切られていて,外部から住戸の中をうかがい知ることができません。通信遮断により外部との連絡が取れない状況の中,部屋の中には,自力で避難行動がとれない方や家具の下敷きになって身動きが取れない方など,一刻を争う事態も想定されることから,直接各戸をまわって安否確認を行いましょう。

チェックシート
(平時)救援を呼ぶための笛(ホイッスル)を配布したり,外部との連絡手段を確認するなど,各自で備えておく。
(平時)安否確認のルール(誰がどのような方法で行うかなど)を決めておく。
(平時)玄関ドアに張り付けて安否を知らせるためのマグネットシートを各戸に配布する。
(平時)年に1回,安否確認訓練を実施する。
(有事)安否確認を行う班(情報班)を組織し,チェックリストやチェックボードを使って直接各戸をまわり,入居者の安否情報を全員で共有する。
(有事)特に配慮を要する方については,改めて戸別訪問により安否状況を確認する。

ポイント
誰もが安否確認出来るように。あらかじめマニュアルで,安否確認は誰が行うのか役割を定めておくことも一つの方法ですが,誰が被災するかわからないのが災害です。安全が確保された誰もが隣近所の安否確認が行えるよう意識の啓発を図っておきましょう。
安否確認の対象は各マンションの特性に応じて検討。安否確認の対象を誰にするか,それをどう行うかについては,マンションの規模や日頃の住民相互のつながりが深いか薄いかによって異なってくるものと思われます。各マンションで,最も適した安否確認や情報伝達の方法について話し合っておきましょう。
情報流出防止の徹底。入居者の連絡リストを作成するに当たっては,その目的を明らかにし,情報流出を防止するため細心の注意を払うことが重要です。
日頃からの声かけ・挨拶で顔見知りに。顔見知りになっておけば,安否確認もスムーズです。日頃からの声かけ・挨拶で,お隣さん同士,顔見知りになりましょう。

2 要支援者の避難誘導避〈避難誘導班もしくは救護班〉
 マンションには,自力で避難行動がとれない要支援者の方がお住まいになっている可能性があります。災害発生時に要支援者の方の避難誘導を円滑に行うためには,ご本人の了解のもと名簿を作成しておくことがとても大切です。また,災害発生時は停電によりエレベーターが使えないことが想定されますので,この場合の避難誘導の方法や避難先についても話し合っておきましょう。

チェックシート
(平時)自力もしくは同居者の介助で避難行動がとれない要支援者の名簿を作成する。
(平時)エレベーター停電時の要支援者の避難方法を検討しておく。
(平時)要支援者の避難誘導訓練を実施する。
(平時)居住者に,医師や看護師,介護経験者等(以下,医師等)がいないか,把握しておく。
(有事)要支援者や負傷者を安全な場所に避難誘導する。

ポイント
避離イコール自宅外ではない。在宅避離も選択肢。要支援者の方々の生命・身体を守るため,自宅外に避難することだけが唯一の選択肢ではありません。在宅での生活が可能な方については,住民相互の支えあいによる在宅避難も選択肢の一つとして考えておきましょう。
安否確認ができない場合の対応を考える。安否確認ができない要支援者の方がいらっしゃる場合の玄関ドアの開錠方法について,管理組合で話し合いを行っておきましょう。
校区の自治協議会との連携による要支援者の把握。市では,災害時にお一人では避難行動がとれない方をリスト化した「避難行動要支援者名簿」を作成しています。名簿登載者のうち,提供に同意された方の名簿については,校区の自治協議会並びに社会福祉協議会,民生委員・児童委員にお渡ししています。マンションが一つの自治会・町内会になっている場合は,そこにお住いの会長が名簿をお持ちですが,そうでない揚合は,マンションにお住まいでない会長が名簿を持たれていることもあります。自治会長・町内会長がお住まいでないマンションについては,校区の自治協議会等との連携のもと要支援者の所在を確認しておきましょう。

要支援者の避難方法の例。マンションの非常階段では,担架や人力での搬送は肉体的な負担や危険が伴います。負傷者や高齢者,体の不自由な方を安全に階段から避難させることができる避難階段車やハンディー担架が市販されていますので,参考にしてください。

事例紹介:シャルマンコーポ博多
【マンション概要]シャルマンコーポ博多(福岡市博多区千代5丁目),竣工:昭和49年10月,世帯数:364戸(うち約100戸が賃貸),構造:鉄骨鉄筋コンクリート造11階 管理方式:管理会社ヘ委託

平成17年の福岡県西方沖地震では,マンションに大きな被害はなかった。平成21年にボランティアグループ「絆会(きずなかい)」が発足。災害時における要援護者の支援体制がなかったことに着目し,まずは,メンバーと援護を希望する方々との交流会がはじまる。平成22年から管理組合主催の防災訓練の中で要援護者の安否確認が行われる。平成23年からの防災訓練では,建物,設備の点検は管理組合,安否確認は対象を全住戸に広げ,自治会,防災ボランティアが共同で行うこととなった。訓練は各戸の扉にあらかじめ配布しているマグネット式の安否確認シートを貼ってもらい,各階の幹事(組長)が「絆会」のメンバーと一緒に点検して回るもの。安否確認シートが貼られてない場合はチャイムを鳴らし,在宅者には直接安否確認を行い,不在の場合は各階の幹事(組長)に連絡することを記した連絡票を投函。平成29年度の訓練参加率は7割を超え,約3割が賃貨入居者であることを考えると高い参加率であった。毎年,管理組合で居住者名簿を作成し,市が提供する避難行動要支援者名簿とは別に,マンション独自の取り組みとして避難の手助けが必要な方を把握している。


1-3 建物,敷地内,設備の安全点検

 地震の大きな揺れで建物本体,屋外にある貯水槽などの付帯設備の損傷やエレベーターが停止して中に人が閉じ込められている恐れがあります。現状では大丈夫でも余震により壁等が落下する恐れがありますので,その恐れがある箇所を目視で点検して,はり紙や立ち入り禁止の口一プを張るなどして住民が近づかないよう安全確保を図りましょう。

チェックシート
(平時)バール,ハンマー,ヘルメット,ロープ,大型懐中電灯などの資機材を備えておく。
(平時)エレベーター会社に,地震発生時の動きと復旧方法について確認しておく。
(有事)地震による建物や附帯設備の被害状況を確認する。貯水槽や高置水槽が破損している場合は,ポンプ再稼動による漏水を防ぐため,ポンプの電源を切る。
(有事)二次災害を防止するため落下物等の有無を確認する。危険な箇所は,ロープ等を用いて立入禁止の措置を行う。
(有事)各階のエレベーター扉を確認する。閉じ込められた人がいたら,エレベーター管理会社に連絡するとともに,消防に連絡して救出を求める。
(有事)建物内を巡回し,住戸に閉じ込められた住人が確認された場合は,本部の指示のもとバールなどを使って玄関ドアをこじ開け救出する。状況によっては,窓や隣戸のバルコニーから侵入する方法等も検討する。

ポイント
身近な専門家を把握しておく。甚大な被害では,すぐに管理会社のサポートが受けられないことも予想されます。居住者の中には様々な技能をお持ちの方がいらっしゃいますので,日ごろのお付き合いの中で人材把握を行っておきましょう。
資機材は優先順位の高いものからそろえる。資機材は保管スペースの有無など,マンションの実情に合わせ,優先順位をつけて揃えましょう。また,普段から行事等で使用し,使い方等を覚えましょう。

2次被害防止の例。2次災害防止のため,崩落しそうなタイルや壁をハンマーで落としましょう。亀裂が入った壁に応急の仮囲いをしましょう。

コラム:大地震が発生した時,エレベーターはどうなるか
地震時管制運転装置等がついているエレベーター。地震感知器が揺れを感知すると,エレベーターは最寄り階に自動停止し,着床後,自動的に卜ピラが開きます。また,停電時自動着床装置が付いている場合は,停電が発生すると,自動的に専用バッテリーに切り変わり,1:室内表示灯が点灯,2:最寄階に停止,3:トビラが開き,4:復電するまで休止させます。万が一,エレベーターに閉じ込められた場合は,無理に内側からドアを開けようとするのは大変危険ですので,非常ボタンを押して外部に通報し,救助を待ちましょう。運転休止後は,専門技術者が点検して異常なしと確認した場合に,初めて平常運転を再開します。
地震時管制運転装置等がついていないエレベーター。全ての行先階ボタンを押してください。エレベーターが着床してトビラが聞いたら,速やかに降りましょう。万が一,エレベーターに閉じ込められた場合は,無理に内側から卜ビラを聞けようとするのは大変危険ですので,非常ボタンを押して外部に通報し,救助を待ちましょう。運転休止後は,専門技術者が点検して異常なしと確認した場合に,初めて平常運転を再開します。エレベーターの閉じ込めを想定して,エレベーター内に食料の備蓄を行っているマンションもあります。【例:サングレー卜長丘】


1-4 排水管の通水点検

 大規模地震の際には,宅内の排水管が破損する恐れがあります。水漏れを防ぐために ,損傷確認ができるまではできる限り水を使わないようにしましょう。応急的に確認するには,下の階から順番に水を流し,最上階まで確認していきます。水が流れ,マンション 敷地内にある汚水ます等にも水が溜まっていないか,確認しましょう。応急的な確認であるため,なるべく早い時期に排水設備業者に点検をしてもらいましょう。

チェックシート
(平時)建物内の排水管,敷地内の汚水ますやマンホールの位置を確認しておく。
(有事)水を流し,排水管が破損していないか確認する。水が流れ,汚水ます等にも水が溜まったままでなければ使用する。
(有事)水が流れなかったり,汚水ます等に水が溜まっていたりするようであれば,使用せずに福岡市排水設備指定工事店や福岡市管工事組合/給排水メンテナンスセンター (電話番号:0120-1132-55)に連絡し,点検をお願いする。【福岡市排水設備指定工事店一覧】
(有事)排水管の使用可否について周知を図る。

コラム:大地震が発生した時,下水の排水管はどうなるか
 マンションのトイレや台所の流し,浴槽は,一本の排水管でつながっています。排水管が破損して詰まると,1階などの下層階で汚水が逆流することがあります。排水管の損傷確認ができるまでは,トイレ等の水は,できる限リ流さないようにしましょう。



2.地震発生後2~3日目に行う行動

2-1 関係先(インフラ・設備等)への連絡

 地震発生から2~3日目となると,余震も安定してきます。余震が安定し,建物に大きな被害がなければ,在宅での生活が可能になります。在宅生活に向けて,安全点検の結果を踏まえ,復旧が必要な場合は,関係先に連絡し,復旧工事を依頼しましよう。また,居住者で行う安全点検では,不具合を見落とし ている可能性があります。必ず,専門の工事業者に点検を依頼しましょう。

チェックシート
(平時)専門の工事業者に来てもらい点検方法・点検状況などを確認しておく。
(有事)安全点検の結果を踏まえ,専門の工事業者に連絡し,復旧工事や点検を依頼する。
(有事)復旧予定時期や点検時期を把握し,居住者に周知を図る。


2-2 入居者の所在把握

 避難所に避難していて留守にされていたり,発災時に不在であった方が,外出先から戻ってこられたりするこ とがありますので,随時,入居者の所在把握を行っておきましょう。また,特に要支援者の方は,心身の状態に変化がないか,戸別訪問により安否を確認するようにしましょう。

チェックシート
(有事)安否確認できなかった住戸の再調査を行い,居住者全員の安否・避難状況を確認する。
(有事)入居者全員の安否・避難状況リストを随時更新する。
(有事)要支援者の方は,引き続き,戸別訪問により安否を確認する。
(有事)避難等で長期不在にされる方の連絡票を作成する。


2-3 防火・防犯活動

 停電によるオートロックや防犯カメラの機能停止,また,建物の損壊により玄関ドアの錠がかけられないことで,犯罪目的の外部からの侵入者が想定されます。そこで,防犯・安全班を組織し,建物内の見回りなどの防犯活動を行いましょう。

チェックシート
(平時)地域の防災・防犯活動に参加する。
(平時)マンション内の死角となる場所を確認する。
(有事)玄関のエントランス部分は防犯対策のため,夜間は灯りを点けておく。
(有事)玄関ドアが壊れて施錠ができないお宅は,ドアが開かないよう応急対策を講じる。
(有事)防犯・安全班を組織し,マンション内の巡回警備を行う。



3.地震発生後4日目以降に行う行動

3-1 ごみ出しルールの周知徹底

 大規模地震が発生した場合でも,通常の市のごみ出しルールに則ったごみ出しをしましょう。
 燃えるごみとそれ以外のごみ(燃えないごみ,空きびん・ペットボトル,粗大ごみ)を混ぜないことが重要です。ごみ出しのルールに変更が生じる場合は,市のホームページや新聞等のメディアを通じて情報提供がありますので,市からの広報に合わせたごみ出しをしましょう。

チェックシート
(平時)ごみ出しルールの周知・徹底を図る。特に,燃えるごみとそれ以外のごみとが混ざらないようにする。
(平時)災害時における携帯トイレの使用に備え,汚物の保管方法や消臭,衛生対策についてルールづくりを行う。
(有事)ごみ出しルールの徹底を図る班(環境班)を組織する。
(有事)屋外にごみを積み上げておくと,他の人がごみを捨てにくることもあるので,ごみ出し日以外には,屋外に持ち出さないことを対策本部から居住者へ通知する。
(有事)ごみ捨て場がいっぱいになりそうな場合は,ベランダ等に一時保管をお願いする。
(有事)市からのごみ出しに関する情報に注意し,ルールの変更があれば,その内容について周知を図る。

ポイント
家具等の転倒防止対策を行う。燃えないごみや粗大ごみを極力出さないようにするため,日頃から家具等の転倒防止やガラスの飛散防止の徹底を図りましょう。
普段のごみ出しルールを守る。燃えるごみと燃えないごみとを混ぜてしまうと,その分別等に手間がかかってしまい,結果として,収集に時間がかかる恐れがあります。大規模地震の時であっても,まずは,普段の市のごみ出しルールを守りましょう。

コラム:熊本市中央区のAマンション管理組合のお話
 熊本市中央区のマンションごみ置き場では,生ごみや割れた食器,家具等が無秩序に積み上げられ,ごみ収集車による回収を行ってもらえなかった。理事会ではごみ出しを停止し,有志を集めて分別し,市に連絡してまずは腐敗する生ごみを回収してもらった。 市が示したごみの持ち出しルールに従うこと,また,ベランダでの一時保管を住民に徹底したことで,ごみ捨て場がオーバーフローすることが無くなった。※福岡市と熊本市では,ごみ出しルールが異なります。福岡市においては,まずは,通常のごみ出しルールの遵守をお願いします。


3-2 要支援者の生活実態の把握・支援

 震災という普段とは異なる生活環境の中で,特に要支援者の方は環境の変化やストレス等により体調を崩しがちです。要支援者がお住まいになっている場合は,定期的に訪問することで生活実態を把握し,必要な支援を行うようにしましょう。

チェックシート
(平時)どのような支援が必要か,要支援者と話し合っておく。
(平時)校区の社会福祉協議会や民生委員・児童委員を通じて,要支援者との関わり方などについての知識を得る。
(有事)定期的に訪問し,体調等の変化がないか確認する。普段と様子が異なる場合は,親族や関係機関に連絡する。
(有事)転倒家具等で困っている場合,家具引き起こしを手伝う。


3-3 生活用水,物資の確保

 ライフラインが途絶えた時,もっとも困るのが水がない生活です。中でもトイレの水の確保は,在宅生活を送るうえで必要不可欠なものであり,マンション全体としての水の確保や上層階への運搬方法について話し合っておきましょう。また、トイレは日常生活に必要不可欠な生活機器ですので,配水(排水)管の損傷やライフラインが途切れた時の対応を考えておきましょう。さらに,物流が麻痺して物資の調達ができないときの対応についても話し合っておきましょう。

チェックシート
(平時)折りたたみ式の給水袋を備蓄する。
(平時)貯水槽の水利用について話し合いを行い,使用方法(飲料水,生活用水)についてルールを定めておく。
(平時)風呂のため水や携帯トイレの必要性について入居者に周知を図る。
(有事)貯水槽の水を生活用水として活用する。
(有事)移動が困難な要支援者への生活用水の宅配を行う。
(有事)各家庭に食材の持ち寄りを呼びかけ,炊き出しを行う。
(有事)最寄りの指定避難所等で物資を調達する。
(有事)集会所等のトイレを,共用トイレとして使用する場合は,感染症や健康被害を予防するため,定期的に清掃し,清潔を保つ。

ポイント
管理組合の備蓄の基本は入居者の安全確保。水や食料を備蓄されている管理組合もありますが,これから備蓄をはじめようとお考えの組合では,まずは断水に備えた給水袋や玄関ドアが破損した時に使うバールなど,入居者の安全確保を図るための物品の備えをご検討ください。
地域コミュニティとの良好な関係の構築。熊本地震では,地域との良好な関係を築いていたマンションに,地域の働きかけで支援物資が届けられたという事例があります。有事に備え,地域コミュニティと良好な関係を築いておきましょう。
汚物の密封は注意する。汚物が入ったトイレ袋は,ガスで膨張して破れることがあるので,余裕を持って密封する必要があります。また,ゴミ収集がすぐに開始されない時に備えて,トイレ袋を保管するポリバケツのような容器も準備しておきましょう。

事例紹介:貯水槽を活用する
 大規模地震発生時は,水道管の破損などにより,上水道の給水が止まります。また,地震災害時には広域で断水が発生するため,給水車の不足が予想されます。貯水槽を給水車の代わりに使用すれば,一時的に多量の飲料水や生活用水が確保できます。断水時において貯水槽の水を使用する場合は,その使用方法(飲料水,生活用水)についてルールを定めておきましょう。
水抜き配管に災害用給水じゃ口を設置した事例:災害用給水じゃ口は脱着方式で地震災害時のみ装着。 
水抜き配管から給水じゃ口を分離した事例:既存の貯水槽に多く見られる配管工事例で工事も簡単。
水槽側面に給水じゃ口を設置した事例:新しく設置した貯水槽によく見られる。
参考:エコ環境ネットHP

コラム:断水時の給水はどうなるか
マンションの給水方式は大きく3種類の方法があります。お住まいのマンションがどの方法かを把握し,その特徴を知っておきましょう。
直結増圧式給水(水道直結方式),特徴:停電時でも水圧の力で3階くらいまでは水が出る。地震で給水管が破損した場合は,給水が絶たれる。
貯水槽式給水(ポンプ直送方式),特徴:停電時は,給水が絶たれる。地震で給水管が破損した場合,給水が絶たれる。
貯水槽式給水(高置水槽方式),停電時は,給水が絶たれる。地震で給水管が破損したり,停電したりしても高置水槽に貯水されている分の水は一時的に使用できる。屋上の高置水槽が破損した場合,電気が回復しても高置水槽を修理しなければ使用できない。

事例紹介:マンホールトイレ
 マンホールトイレは,建物内の下水配管が地震の揺れで損傷してトイレが利用できなくなった場合に,マンション敷地内に設けられている管理用の汚水ますに直接,糞尿を流し込む仮設のトイレです。通常は,マンホールトイレ用の下水管や汚水ますを新設す る方法がとられていますが,既設の下水管を使ってマンホールトイレとされているところもあります。マンション敷地内にある汚水ますを使ってマンホールトイレとすることについて,行政の許可は不要ですが,管のつまりや悪臭などの問題が発生する恐れがあるので,平時において管理組合が利用にかかる検証を十分行っておく必要があります。なお,震災時のマンホールトイレの利用に当たっては,敷地外の公共下水道が損傷していないこと,糞尿を流すための十分な水が確保されていることが絶対条件です。
マンホールトイレの設置に必要となる備品:マンホールを開ける道具(バール等),洋式便器一式,トイレを囲う上屋(テント、パネル等)

事例紹介:簡易トイレ(便袋)
使用方法:1 洋式トイレに便袋をかぶせ,固定する。2 用をたした後,凝固剤をふりかけて,尿,糞をゼリー状に固める。3 便袋をはずし空気を適度に抜き,結束バンドで開口部を結んで閉じる。4 使用済みの便袋をベランダ等に一時保管し,ゴミ出し日に一般廃棄物として廃棄する。


3-4 各種生活関連情報の収集・配信

 大規模地震発生時は,建物内外の被害程度,トイレの使用可否,水道,ガス等のライフラインやエレベーターの復旧見通しなど,在宅生活を送るうえで必要な情報を入居者に提供することが大切です。また,停電による混乱や通信手段の途絶により,正確な情報の入手が困難になりますので,このような場合の対策を考えておきましょう。

チェックシート
(平時)停電に備え,携帯ラジオ等を揃える。
(有事)入居者・避難者の連絡リスト(携帯電話,メールアドレス)を作成・更新する。
(有事)市のホームページや携帯ラジオ,最寄りの指定避難場所の掲示板等で 正確な情報を入手する。
(有事)収集した情報を分類し,掲示板やホワイトボードなどを活用して,常に最新の情報提供を心がける。
(有事)エレベーター停止時において,階段の上り下りが難しい世帯に対しては,直接お知らせするなどの対応を行う。

コラム:熊本市中央区のAマンション管理組合のお話
 正面玄関の壁にライフライン,建物などの被害状況,復旧計画,復旧状況等を掲示し,住民への情報発信の場とすることで住民の不安を取り隙くと同時に,住民からの地域情報,各戸の状態,避難状況などが収集できるようになりました。正面玄関横の対策本部にはほとんどの方が立ち寄るので,安否確認リスト,連絡リスト(携帯電話,メールアドレス,避難先等)はすぐに整備できました。特に携帯電話とメールアドレスを収集出来たことで,全員に迅速な情報展開をすることが出来るようになり,全体説明会も3か月で4回も実施できました。このように復旧に対する様々な情報を共通化できたことが,スピーディーな合意形成の実現につながったと考えています。



4.余震安定期以降に行う行動

復旧委員会の立ち上げ

 ライフラインの復旧の目途がたつと,いよいよ建物の復旧を推進する段階に入ります。復旧委員会では,玄関や共用廊下,ベランダ,バルコニー,エレベーター,電気・給排水設備などマンションの共用部分の修繕方法や資金計画などの話し合いが行われます。復旧委員会は,建築,土木の専門的な知識や業者の選定,復旧費用の調達,入居者の合意形成など多種多様な問題を解決していかなければならないので,その時の理事会にこれらの役割をすべて担わせるのは負担が大きい場合があります。特に被災の規模が大きいマンションは,意思決定がスムーズに行われるよう復旧委員会の人選に工夫を凝らしましょう。


チェックシート
(平時)災害時の予算を伴う応急措置について規約で定めておく。
(平時)地震保険(共用・専用部分)に加入しておく。
(有事)総会の承認のもと,復旧委員会を立ち上げ,マンション内の被災箇所を把握し,記録・整理する。
(有事)被災箇所の復旧に向けた修繕方法,資金計画などを話し合う。
(有事)復旧委員会で話し合った内容は,文章化し,全世帯に行き渡るようにする。

ポイント
緊急時の決議方法を検討しておく。災害時は,総会はもとより,理事会さえも規約どおり開催できずに,緊急対応を決めなければならない場面にも遭遇します。理事長や理事会が対応に躊躇するようなことがないよう,緊急時の決議についてあらかじめ規約に定めることが望ましいでしょう。
地震保障に加入しておく。建物の災害復旧には多額の資金が必要になることもあります。この場合,これまで積み立ててきた修繕積立金を取り崩したり,これが不足する場合は金融機関等からの融資を受けなければならない事態も想定されます。修繕積立金の取り崩しが極力少なくてすむよ う地震保険への加入を検討しましょう。
当事者意識を持って会を運営する。全入居者が均等の便益を受ける大規模修繕と遣い,震災による被害は,分棟式の場合,階数や棟によって被災の程度が違っていたりしますので,合意形成に多大な時間と労力を要することが予想されます。建物の復旧のための管理組合の組織のあり方としては,災害発生時の理事会や管理会社だけに依存するのではなく,住民一人ひとりが当事者意識をもって会の運営に積極的に参画していくことがとても重要です。

コラム:建物の被災判定には三つの調査があります
1  建物の応急危険度判定(無料)。応急危険度判定は,余震などによる倒壊の危険性や 外壁・窓ガラスの落下,付属設備の転倒など,人命にかかわる二次的災害を防止するために地震直後に実施され,建物に赤「危険」,黄「要注意」,緑「調査済(安全)」 のステッカーが貼られます。倒壊の恐れがないマンションでも壁のタイルがはがれかかっていたり,ご自分のマンションには被害がなくても,隣地の電信柱が傾いていて余震で倒れる恐れがある場合には,危険(赤)判定になることがあります。危険(赤)判定でも,危険防止の対策が講じられれば,建物内に入ることもできますので,市の窓口にご相談ください。
2 り災証明書(無料)。り災証明書は,税の減免や各種見舞金の支給,保険金の請求,融資などを申請するうえで必要とされる住家の被害状況を市長が証明するもので,「全壊」,「大規模半壊」,「半壊」,「半壊に至らない」の四つの区分があります。
3 被災度区分判定(有料)。被災度区分判定は,地震により被災した建築物を対象に,建築構造技術者が建物の内部に立ち入り,建物の沈下,傾斜の程度,柱,梁など主要な構造躯体の損傷から建物に残存する耐震耐力を調査し,そのまま使い続けてよいか,損傷した箇所に対して補修をすれば問題はないか,解体せざるをえないかの判断をするための目安を示すことを目的として実施されるものです。

コラム:ライフラインの復旧までどれくらいかかるか
 熊本市では,熊本地震で被災したライフラインが復旧するまでに要した月数を調査しています。電気,給排水,ガス,エレベーターの4項目の調査結果をみると,概ね1ヶ月後の平成28年5月までに復旧しています。しかし,マンションによっては平成29年3月までかかったところもあります。早期復旧に向けては,次頁の事例にあるように合意形成を知何にスムーズにできるかがポイン卜と言えるのではないでしょうか。

事例紹介:熊本市中央区のAマンション
【マンション概要】熊本市中央区のAマンション,竣工:平成3年10月,世帯数:73戸,構造:鉄骨鉄筋コンクリート造高層棟14階,低層棟5階,管理方式:平成13年から自主管理ヘ移行
 平成28年の熊本地震では,高層棟の7,8階の中間階で玄関やベランダの雑壁にせん断亀裂が発生。別棟の5階建ての低層棟はほとんど無傷。14階の屋上にある高架水槽が転倒し,約1か月の断水。エレベーターのガイドシューの湾曲により1週間使用不能。地中のガス配管から都市ガスが漏洩し,2週間使用停止。地震保険の査定では,半損の認定を受ける。復旧委員会の立ち上げに当たっては,出来るだけ多くの人を当事者にするために区分所有者3分の1の方を復旧委員に指名。(特に,発言力のある方を優先的に指名)。総会での承認に至るまで紡余曲折はあったが,この組織づくりにより合意形成がスムーズに進んだと考えている。正面玄関の壁にライフライン,建物などの被害状況,復旧計画,復旧状況等を掲示し,住民への情報発信の場とすることで住民の不安を取り除くと同時に,住民からの地域情報,各戸の状態,避難状況などが収集できるようになった。

事例紹介:福岡市のBマンション
【マンション概要】竣工:平成10年4月,世帯数:108戸,構造:鉄骨鉄筋コンクリー卜造15階,管理方式:管理会社ヘ委託
 平成17年の福岡県西方沖地震では,2~7階に被害が集中し,玄関側の雑壁のせん断亀裂により25戸の扉が開かなくなった。柱や梁も破損し,地震保険の査定では,半損の認定を受ける。建物の復旧に当たっては,入居者の中から1級建築士・弁護士・警察官・損保会社OB・大学教授など様々な技能を持つ22人の有志と理事会役員8人の計30人で構成するマンション復興委員会で建物の復旧に向けた話し合いが行われた。復興委員会の会議は,約2ヶ月聞にわたり連日連夜行われ,会議の内容は全て文書にして,全世帯に配布された。会議の開催回数は100回を超え,配布文書は300種類以上にものぼった。苦情や不安,部屋の状況を玄関にも掲示した。補修費約2.6億円のうち,約半額を修繕積立金と地震保険で捻出し,残額の約1億円は各戸で負担した。損壊箇所の修復に加え,耐震ブレースや耐震壁などを5ケ所に設置し ,震度7の地震にも耐えられる工事も合わせて行った。



参考

 大規模地震に備えて,管理組合としてまず取り組んでいただきたいこと,知っておいていただきたいことを掲載しています。


1 耐震診断の実施

 耐震診断は,地震による損壊や倒壊を未然に防ぐため,既存の建築物の構造的強度を調べ,想定される地震に対する安全性(耐震性)や受ける被害の程度を把握する目的で行われるものです。お住まいのマンションの耐震性能を把握するための公的助成もありますので,まずは,耐震診断を行いましょう。


耐震診断に閲する支援事業
出前講座:市職員が耐震対策の方法や助成制度などについて講座を行います。
耐震診断費補助事業:
補助対象:昭和56年5月31日以前に建築確認をえて着工した3階建以上かつ延べ面積1,000平方メートル以上のもの,補助額:耐震診断に要する費用に3分の2を乗じた額(床面積に応じた上限あり)
耐震改修工事費補助事業:
補助対象:昭和56年5月31日以前に建築確認をえて着工した3階建以上かつ延べ面積1,000平方メートル以上のもの,補助額:耐震改修工事に要する額の23%に相当する額(床面積に応じた上限あり,上限額は一戸あたり40万円)

耐震診断費補助事業と耐震改修工事費補助事業に関する問い合わせ先
部署:住宅都市局建築指導部建築物安全推進課
住所:福岡市中央区天神1丁目8-1
電話番号:092-711-4580
FAX番号:092-733-5584
E-mail: kenchiku-anzen.HUPB@city.fukuoka.lg.jp



2 地震保険への加入を!!

 地震による火災・損壊などは,火災保険では補償されませんので,地震による損害に備えるためには地震保険が必要です。地震保険は単独で契約することができませんので,火災保険とセットでの加入となります。管理組合は共用部分,個人は専有部分の火災保険に加入して,それぞれセットで地震保険に加入することになります。既に火災保険に加入されていれば,契約期間の中途でも地震保険に加入できます。地震保険の対象は,個人の場合は専有部分と家財(それぞれ別契約),管理組合の場合は建物の共用部分です。契約金額は法律により火災保険の契約金額の30%~50%の範囲内と決まっています。地震保険の基本的な考え方は,「被災後,家を元通り再建するための補償」ではなく,「被災後の当面の支出を補い,生活の再建を助けるための補償」です。よって,地震保険に加入してい ても,地震災害による損害額が全額カバーされるわけではありません。
なお,地震保険では,建物の場合,主要構造部のうち「柱・はり」等に着目して損害を調査します。

【建物の損害の状況と支払われる保険金】
全損(主要構造部の損害額が時価の50%以上):契約金額の100%(時価が限度)
大半損(主要構造部の損害額が時価の40%以上50%未満):契約金額の60%(時価の60%が限度)
小半損(主要構造部の損害額が時価の20%以上40%未満):契約金額の30%(時価の30%が限度)
一部損(主要構造部の損害額が時価の3%以上20%未満):契約金額の5%(時価の5%が限度)
※従来,損害の認定区分は,全損,半損,一部損の3つの区分でしたが,2017年1月1日以降始期の契約から,半損は「大半損」と「小半損」の2つの区分に変更されています。

コラム:熊本市中央区のAマンション管理組合のお話
 工事費用の見積り額が通常の大規模修繕工事費用の約3倍であることが分かった時には悩みました。1回目の地震保険判定は「一部損壊」,5%の保険金ではほとんど足しになりません。理事全員で審査官から採点対象部位(柱と梁)や判定基準を聞き出し,半損判定の20ポイン卜を確保するための戦略を検討しました。理事が全戸に訪問し,部屋内,ベランダ等のチェックを行い,最も被災度の大きい部屋,破損部位,フロアーを特定して2回目の判定に臨みました。結果は「半損」となり,50%の保険適用となりました。これで復旧工事費をかなり賄えることとなり,手出しを少なくすることが出来ました。諦めずに,みんなで協力して必死に審査対応したことが結果に結びついたと自負しています。



3 マンションの標準管理規約の改正(平成28年3月)

 分譲マンションでは,「管理規約」で個々のマンションの実状に応じたルールが定められています。国土交通省は,管理組合が,管理規約を制定,変更する際の参考として「マンション標準管理規約」を定めていますが,災害時における意思決定ルールの明確化を図るため,同規約の改正が行われています。万が一の災害に備えて,本規約を参考として,災害時に慌てず管理組合が行動できる準備をしておくことがとても大切です。

【災害時に関連する主な改正事項】
保存行為:理事長(理事会)は,災害等の緊急時においては,総会又は理事会の決議によらずに,敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。 ※災害時の保存行為とは,(例)給水,排水,電気,ガス,通信等生命・生活維持のための緊急対応の必要なライフライン等の応急的な更新等,エレベーター付属設備の更新,応急的な耐震補強など。
専有部分への立ち入り:理事長(理事会)は,災害,事故等が発生した場合であって,緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは,専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り,又は委任した者に立ち入らせることができる。
理事会による修繕積立金等の使用:災害等により総会の開催が困難で,緊急の応急復旧などに緊急修繕等が有効と思われる場合,理事長の決議により,応急的な修繕工事の実施に充てるための資金の借り入れ及び修繕積立金の取り崩しをすることができる。
管理費の支出項目の追加:マンション管理費の支出項目に,新たに「地震保険料」が追加された。



防災マニュアルを作成しよう!

 本マニュアルでは,地震発災直後から余震安定期までに想定されるマンション住民が行う災害対策をチェックシート方式で示しています。まずは,チェックシートでお住いのマンションの災害への備えをご確認ください。本チェックシートは,災害が起こる前の平時と災害が起こった後の有事の活動を示していますが,災害の被害を最小限にとどめる減災を実現するためには,平時の備えがとても重要です。そこで,チェックシートの中から平時に是非行っていただきたい必要最低限の災害への備えを右記のとおり抽出していますので,これを参考にお住いのマンションの防災マニュアルを作成されてはいかがでょしうか。 ※マニュアルには特に定まった記載上のルールはありませんので,それぞれのマンションで自由に作成してください。

対策本部の立ち上げ:本部の設置場所をどこにするか決めておく。本部長,副本部長が不在の場合,代行者を誰にするか決めておく。電気・水道・ガス・電話などのライフラインやエレベーターが停止した場合の連絡先を明らかにしておく。
安否確認:保管のルールを決めて,入居者の名簿づくりを行う。安否確認のルール(誰がどのような方法で行うか)を決めておく。年に1回,安否確認訓練を実施する。
設備の安全点検:エレベーター会社に,地震発生時の動きと復旧方法について確認しておく。建物内の排水管,敷地内の汚水ますやマンホールの位置を確認しておく。
備蓄:バール,ハンマー,ヘルメッ卜,ロープ,大型懐中電灯などの資機材を備えておく。折りたたみ式の給水袋を備蓄する。
トイレ:貯水槽の水が利用できる場合は,その利用を検討しておく。


本マニュアルの作成にあたり,関係者の皆さんからいただいた知見や経験の中で最も重要な事柄を「マンション防災七箇条」にまとめました。ぜひ,この七箇条をお住まいのマンションの防災・減災の取り組みに役立ててください。
マンション防災七箇条
1.家具等の固定やガラスの飛散防止対策を行っておきましょう。
2.電気,ガス,水道が止まることを想定した対策を考えておきましょう。
3.地震発生直後は,まず,入居者の安否確認と建物の安全点検を行いましょう。
4.避難支援を要する要支援者の把握を行っておきましょう。
5.地震保険に加入しておきましょう。
6.日頃から入居者同士の顔の見える関係づくりを行っておきましょう。
7.マンション管理は管理会社に任せきりにせず,理事会・管理組合が主体となって管理に関わっていきましょう。


書名等

平成30年2月作成 大地震に備えよう!マンション防災・減災マニュアル
発行:福岡市市民局防災・危機管理部防災・危機管理課
住所:福岡市中央区天神1丁目8-1
電話番号:092-711-4056,FAX番号:092-733-5861
Mail:bousai.CAB@city.fukuoka.lg.jp
編集:株式会社よかネット