福岡の高級住宅街として知られる中央区の浄水通り。緑が多く落ち着いた街並は、多くの市民の憧れです。浄水通りという名称は、通りの先にあった福岡市初の平尾浄水場に由来しています。平尾浄水場は1923(大正12)年に完成し、1976(昭和51)年まで稼働していました。その場所は現在、福岡市植物園になっていて、園内には浄水場の記念碑や遺構などが残されています。
この浄水通りが位置する薬院は、奈良時代に吉備真備が太宰府に赴任した際に、この辺りに薬草園を開き、施薬院(薬草を使って治療をするところ)をつくったことに由来する地名です。当時から数えて1300年の歴史があり、江戸時代には多くの医師が住んでいました。また、幕末に勤王派の志士に影響を与えた女流歌人・野村望東尼が住んでいた「平尾山荘」もあります。
ゆるやかな坂が続く浄水通り周辺には、教会やレストラン、洋菓子店やフラワーショップなどがあり、散策にはぴったりです。中でもおすすめのスポットが松風園。四季折々に表情を変える日本庭園に、昭和初期に造られた茶室が建っています。ここでは実際に茶道を体験することができ、季節に合わせた行事や茶会が行なわれ、気軽に日本文化にふれることができます。
松風園は、福岡を代表する百貨店だった福岡玉屋の創業者・田中丸善八氏の邸宅「松風荘」があった場所。その跡地を整備して文化施設にしましたが、2007年に公開されるまでは個人宅として使われていたそうです。樹齢100年を超えるイロハモミジ、庭に点在する古びた燈籠の数々、京都から数寄屋師を呼んで建てられた住居など、個人宅とは思えないほどの広さと見事さです。
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