以下に説明する制度は現在、存在しない制度です。すでに廃止された制度であることに留意してご覧ください。
既存宅地制度(別称:既存宅地確認制度)とは、市街化調整区域における建築等の制限を緩めて、一定の条件を満たせば、一部の建築行為については許可を不要とする制度でした。一定の条件とは、市街化区域に準ずる区域であること、線引きの日の際にすでに宅地とされていた土地であることなどの条件です。法律では、旧都市計画法第43条第1項第6号(廃止)に規定されていました。
昭和49年の都市計画法改正(昭和50年[1975年]4月1日施行)から平成12年の都市計画法改正(平成13年[2001年]5月18日施行)までは、線引きの日の際すでに宅地であった土地であって、その旨の都道府県知事(福岡市では福岡市長)の確認を受けたものは「既存宅地」と呼ばれ、既存宅地における建築行為については許可不要とされていました。
なお、よく似た言葉に「既存権利」というものがありますが、「既存宅地」とは別物です。「既存権利」は都市計画法第34条第13号の規定に基づいており、許可の対象となる者は線引きの日の時点で土地の所有者等である者に限られますが、既存宅地ではそれに限られません。つまり、既存権利の規定によって建てられた建築物等にはいわゆる「属人性」がありますが、既存宅地制度の場合には属人性がないことになります。
昭和50年に既存宅地制度が創設されて以来、26年あまりのあいだ運用されてきましたが、次のようなの問題が顕在化し、既存宅地制度は法改正で平成13年に廃止されました。
次に既存宅地制度の創設から廃止に至る経緯を挙げておきます。
なお、平成13年の廃止に伴い、施行日(平成13年5月18日)までに既存宅地である旨の確認を受けた土地については施行日から5年間、施行日までに既存宅地の確認の申請を行い、その後都道府県知事(福岡市では福岡市長)の確認を受けた土地については確認を受けた日から5年間は、「自己の居住の用」又は「自己の業務の用」に供することを目的とする建築行為であれば、従前どおり一定の地域において許可不要で建築できることとされました。この経過措置は平成12年改正法の附則第6条において定められました。
一方で、上記の経過措置とは別に、福岡市独自の経過措置として、従前の既存宅地制度の要件を満たしながら、手続きを行っていなかった土地などについて、都市計画法第43条第1項の規定による許可(「建築許可」)を行うという取扱いを行っておりました。従前の既存宅地制度では許可を要しませんでしたが、経過措置では許可を要することとなりました。この経過措置は平成13年5月18日改正の福岡市開発審査会提案基準第19号「既存宅地の確認の廃止に伴う経過措置としての建築行為(包括承認案件)」において定められました。
第43条 何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、第29条第1項第2号若しくは第3号に規定する建築物以外の建築物を新築し、又は第一種特定工作物を新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して第29条第2号若しくは第3号に規定する建築物以外の建築物としてはならない。ただし、次に掲げる建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設については、この限りでない。
(中略)
六 次に掲げる要件に該当する土地において行う建築物の新築、改築又は用途の変更
イ 市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね五十以上の建築物が連たんしている地域内に存する土地であること。
ロ 市街化調整区域に関する都市計画が決定され、又は当該都市計画を変更してその区域が拡張された際すでに宅地であった土地であつて、その旨の都道府県知事の確認を受けたものであること。
(平成12年5月19日法律第73号、平成13年4月1日施行)
第6条 施行日前に旧都市計画法第43条第1項第6号ロの規定による都道府県知事の確認(以下この条において単に「確認」という。)を受けた土地(次項の規定に基づきなお従前の例により施行日以後に確認を受けた土地を含む。)において行う自己の居住又は業務の用に供する建築物の新築、改築又は用途の変更については、施行日(次項の規定に基づきなお従前の例により施行日以後に確認を受けた土地において行うものにあっては、当該確認の日)から起算して5年を経過する日までの間は、同号の規定は、なおその効力を有する。
2 この法律の施行の際現にされている確認の申請については、都道府県知事は、なお従前の例により確認を行うものとする。
3 施行日前にされた確認(前項の規定に基づきなお従前の例により施行日以後にされた確認を含む。)についての違反を是正するため必要な措置については、なお従前の例による。
(平成13年5月18日改正)
第19号 既存宅地の確認の廃止に伴う経過措置としての建築行為(包括承認)
申請内容が次の各項に該当する土地において行う建築物の新築、改築又は用途の変更
1 市街化区域に隣接又は近接し自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域、又は、既存集落及び指定既存集落であって、おおむね50以上の建築物が連たんしている地域内に存する土地であること。
2 市街化調整区域に関する都市計画が決定され、又は当該都市計画を変更してその区域が拡張された際すでに宅地であった土地であること。
3 当該土地の現状が区画形質の変更を行わずに宅地として利用できること。
4 予定建築物の用途、規模等が、次のいずれかに該当するもの。
イ 当該土地の存する市街化調整区域の集落の土地利用の現況と整合すること。
ロ 当該土地に隣接又は近接する市街化区域の用途地域(当該土地が市街化区域に隣接又は近接しない場合は、原則として第一種低層住居専用地域)と整合すること。ただし、この場合、当該土地の存する集落の土地利用の現況に十分配慮すること。
5 この提案基準の適用については、平成18年5月17日までの間とする。ただし、都市計画法第34条第1項第8号の3の規定により、条例で定める区域が施行されるときは、この提案基準は廃止するものとする。
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