サイバーコネクトツー、KOO-KI……福岡の現役クリエイターが明かす、CGクリエイターに求められる人材とは?

平成27(2015)年10月24日(土)、大阪・大阪電気通信大学において、IT・デジタルクリエイター人材の転職と移住を応援するイベント「CGWORLD CREATIVE MEETING CGWORLD×FUKUOKA CREATIVE CAMP」が開催されました。

10月4日(日)にも、東京・御茶ノ水のデジタルハリウッド東京本校で開催され、開催告知後瞬く間に満席となるほど注目を集めた本イベントは、福岡市の「福岡クリエイティブキャンプ(以下FCC)」が、CG・映像専門誌『CGWORLD』と共同で開催したもの。

会場に詰めかけたのは、約150名の参加者。ゲーム業界への転職を希望する社会人のほかにも、関西近郊の大学生や会場となった大阪電気通信大学の在学生など、現役の学生の割合が高かったようです。

トップランナー2人が語る、クリエイター論とは?

竹内さんと松山さん

前半は、代表作「DARK SOULS(ダークソウル)」シリーズや「Bloodborne(ブラッドボーン)」「アーマードコア」で知られ、先ごろ福岡スタジオの開設を発表したばかりのゲーム制作会社「株式会社フロム・ソフトウェア」の竹内将典さん(写真左)と、最新作「NARUTO -ナルト-疾風伝 ナルティメットストームレボリューション」で知られる、福岡と東京に拠点を置く「株式会社サイバーコネクトツー」代表取締役の松山洋さん(写真右)という、ゲーム業界のトップランナー2人の対談。

今回は、ゲームジャーナリストの小野憲史さんを司会に迎え「消えるクリエイターと伸びるクリエイター」と題し、“クリエイターとして活躍できる人材”をテーマに語りました。

“消える”という言葉から、ゲーム業界の過酷さ、ゼロからモノを生み出して常に新しいものを世に出し続けるクリエイターのモノづくりに懸ける厳しさが伝わってきますが、司会の小野さんはテーマ設定についてこう語ります。

「あえて“消える”という言葉を使いましたが、ゲーム業界から飛び出して他の業界で活躍する人がいてもいいはずですし、ポジティブな意味も込めています。また、今現在、クリエイターとして壁にぶち当たっているような“伸び悩んでいる”人の参考になればと思い、このテーマにしました」(小野さん)

小野さんは、数々のタイトルを世に送り出してきたおふたりに、ゲーム業界を志望する人なら誰もが知りたいであろう業界の本音を直撃。「伸びないクリエイターの特徴は?」「求める人材像は?」など、さまざまな質問が飛び交います。

竹内さん

これに対し竹内さんは、伸びないクリエイターと伸びるクリエイターの違いを説明。

「私の経験上、人の意見に耳を傾けない人は99%伸びません。また、自分の頭で考えられない人はあまり伸びないようです。たとえば、どうやったら改善できるか、どうやったら幸せになるかなど、自分自身のことを考えられない人です。もし、ゲーム作りを単純に仕事としてこなすのではなく、自分の命を懸けるほどつぎ込んでみたい!と思えたら、そこにこの仕事の面白さがあると思います。そういう思いを心に秘めている人なら、きっとクリエイターとしても伸びる」(竹内さん)

一方、松山さんは、自身の経験を笑いも交えて語ります。

「ゲーム業界は、本当に好きな人しか生き残れない世界なのは確かです。この業界を目指して来る人の中には、たいしてゲームが好きでもなく、やる気もないという中途半端な人もいますが、そういう人に対しては、当社では『お前はこの世界に向いていない』とハッキリ言います。それは中途半端な状態で続けるのはお互いに良くないから。結果を出せるかどうかは、結局好きかどうかにかかっています。やる人はやるし、アレコレ理由をつけてやらない人はやらないまま。本当にゲームが好きでしょうがないような人だったら、クリエイターになれるでしょう」(松山さん)

現場で数多くのクリエイターと一緒に働いているおふたりは、自社で“伸び悩むクリエイター”を見かけたとき、どのように対応されているのでしょうか。

「プログラマーやアーティスト、クリエイターに限らず、ものづくりをする人というのは、それぞれ種類は違っても悩みを持っています。当社では、食事や面談などの時間を作り、ひとりひとりに時間を割いています。悩みを“聞く”というよりは、本人の中でもうまく説明できないようなモヤモヤ状態を整理して、自分が何をやりたいのか引き出してあげる、言語化してクリアにさせる意味合いが強いですね」(竹内さん)

「当社でも、意識して“ガス抜き”のような時間は作っています。伸び悩んでいる時期はピンチですが、それは大きなチャンスでもあります。ピンチとチャンスは平等に与えますが、それを生かせるかどうかは、自分自身です。『黙っていても会社がなんでもやってくれる』という意識では、難しいでしょう」(松山さん)

松山さん

さらに松山さんが、参加者にこう熱く語りかける一幕も。

「ゲームは総合エンターテインメントで、私たちゲーム業界の仕事はいわば“娯楽ビジネス”です。衣食住のように、生きていくために必ず必要なものではありません。それでも私たちは、娯楽が持っている力を信じています。人間が辛いときに『よし、明日からまたがんばろう!』と思える希望や勇気を与えられるのは、エンターテインメントだけなんです。クリエイターになるという覚悟を決めたら、悩まずに、自分の選択を信じてください」

この松山さんの言葉に、思わず身を乗り出して聞き入る参加者も多く見られました。その後の質疑応答では、ゲーム業界への就職を希望する大学生からも多くの質問があり、業界に対する関心の高さがうかがえました。

真剣に話を聞く大学生たち

続いては、ゲームソフトなどの制作を手掛ける映像制作会社exsa株式会社と、株式会社サイバーコネクトツーが、それぞれ自社の作品を用いてのセッション。各セッション後の質疑応答では、専門的な質問も多く参加者の意識の高さが伝わってきました。

KOO-KI流CGとは?『餃子の王国』CM制作秘話!

池田さんとVito La Mannaさん

最後のセッションを担当したのは、福岡拠点の映像制作会社「空気株式会社(以下、KOO-KI)」。同社からは、映像ディレクターの池田一貴さん(写真左)、ドイツ出身のアニメーションディレクターVito La Manna(写真右)さんが登壇し、自社のCM制作について舞台裏を話してくれました。

“ローカルにも関わらずハイクオリティ”と話題になった「餃子の王国」(熊本・双和食品工業株式会社)のテレビCM。クライアントのニーズをくみ取って映像作品に活かしたことなど、興味深い話が続きます。

スクリーンに映し出される「餃子の王国」CM

KOO-KIと言えば、東京オリンピックの招致映像が有名ですが、実は「餃子の王国」CM制作も招致映像が発端。その映像を目にした双和食品の社長から直接、KOO-KIに制作依頼が舞い込んだそうです。制作を開始する前にスタッフで餃子工場へ見学に行くなど、クライアントの製品の世界観を共有し、双方が膝を突き合わせて考えていく中で“餃子が好きでたまらない小人が、大きな餃子を作っている”“餃子の手作り感を表現”などのコンセプトが決まったのだとか。

最近KOO-KIが手掛けた百貨店マルイのCM「マルコとマルオの7日間」も、広告代理店などを介在させずに、クライアントとダイレクトにやりとりしたケース。KOO-KIでは、これらの例のようにクライアントから直接依頼されるケースが最近増えているそうです。

セッション会場の隣の展示会場には、参加企業のブースやFCCのブースが設置され、企業ブースで専門的な質問をする人や、FCCのブースで転職・移住の相談をする人も。全プログラム終了後の懇親会も多くの参加者が出席し、交流を深めるなど大充実のイベントとなりました。

デジタルコンテンツ・IT関連企業の振興に力を入れている福岡市では、市内への転職および移住を希望するデジタルクリエイターに対し、応援金40万円の交付をはじめ、移住後のサポートを実施する転職支援プログラム「福岡クリエイティブキャンプ 2015」を実施中です。今回のイベントで、興味を持たれた方は、ぜひ本制度を利用してみてはいかがでしょうか。

 

[関連リンク]
福岡クリエイティブキャンプ2015
http://fcc.city.fukuoka.lg.jp/

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