
世界各地から起業家が集まり、開放的な風土の中から世界を変えるイノベーティブなサービスが続々と誕生する、米サンフランシスコの街。福岡市は、福岡の今後のあり方を示唆するモデル都市のひとつとして注目し、現地視察を行ってきました。国家戦略特区の中でも「グローバル創業・雇用創出特区」に指定されている福岡市は、起業の裾野が広がる中、次なる課題を「グローバル」と「スケール」ととらえています。
そこで今年度、福岡市は起業家・起業志望者向けにサンフランシスコ・シリコンバレーでの海外派遣研修プログラム『Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA』を立ち上げ、大々的に参加者を募集。応募者は150名以上と当初の想定を大幅に上回り、福岡市は、この応募者の意欲に応えるかたちで、全員の参加を決定しました。去る10月8日(土)、参加者を集めた第一回目の事前研修が、ももち浜SRPホールにて開催されました。
当日はまず、プログラムの趣旨確認と概要説明があり、続いて、昨年福岡市のサンフランシスコ・シリコンバレーミッションに参加し、事業を加速させている株式会社トルビズオンのCEO増本衛さんがプレゼンテーション。現地への訪問が自らのその後をいかに変えたか、熱を込めたプレゼンテーションが行われました。
「昨年の訪問でスタートアップの聖地をリアルに体験し、何よりも重要だと感じたのは、“行動すること”です。GoogleやFacebookなど雲の上の存在のような企業があり、何か特別だと感じるかもしれませんが、その中の人はいたって普通の人です。自分もできるとポジティブな勘違いをし、面白いと感じたら飛び込んでください。私はそこから新たなヒントを得ることが出来ました。」(増本さん)
また、サンフランシスコのコワーキング・スペース「D.Haus」を運営し、今回の海外派遣研修プログラムの運営を引き受けるbtrax Inc.(ビートラックス)のCEOブランドン・ヒルさんと、ブランドンさんのもとでインターンシップを経験した後に日本で起業し、現在は100名のメンバーを率いて活躍する株式会社グッドパッチのCEO土屋尚史さんも登壇。ブランドンさんとの対談では、起業家の心構えや現地での交流の様子を、実体験を交えて詳細に語りました。
「日本語を話せる人口は、世界に置き換えるとわずか2%に過ぎません。日本国内で80%のシェアを獲得したとしても、世界では1.6%程度。その点、世界中からエンジニアが集まっているサンフランシスコでは、初めから世界共通のサービス開発しか考えていません。ここに、ビジネスがスケールするかどうかの歴然とした差があるんです」(ブランドンさん)
「日本の会社は製品に機能を詰め込みたがりますが、サンフランシスコではユーザー体験を第一に考えて設計します。私は、そこから、機器とユーザーのつながりをデザインするUIデザインにフォーカスした今のビジネスモデルのヒントを得て起業しました」(土屋さん)
参加者がサンフランシスコとシリコンバレーへのイメージを十分に膨らませ、期待に胸を踊らせた後、隣接会場に場所を移して交流会へ。高島宗一郎福岡市長も駆けつけ、参加者にエールを送りました。
「当初は50人程度の参加者を見込んで準備を進めていましたが、蓋を開けてみれば150名を超える応募があり、嬉しい悲鳴という状態でした。しかし、自腹を切ってでもプログラムに参加したいという高いモチベーションの人に落選の連絡をするのは、今後の福岡にとって大変な損失です。そこで皆さんの強い意欲に応えるべく、急遽、応募者全員が参加できるよう体制を整えました」(高島市長)
高島市長がこのように語ると、会場からは大きな拍手が起こりました。
この日は、参加者が一堂に会す初めての機会だったこともあり、交流会では参加者同士で名刺交換をしたり、ビジネスのアイデアを意見交換する姿が多く見られました。
参加者の一人、福岡市の起業家でありECサイトの企画や運営を行う松木泰憲さんは、参加の目的を次のように語ります。
「最新のITやIoT技術を使って、どのように自分のビジネスを効率化できるか知りたくて、参加を決めました。現地の企業訪問など、個人では実現できないプログラムがとても魅力的です」
また、平成24年に自らの着物ブランドを立ち上げたデザイナーの井上智子さん(写真左)と、ファッションコンサルタントの藤原純子さん(写真右)は、研修の抱負をこう語ります。
「たくさんの人と関わって、人脈を広げたいですね。英語ですか!? 得意とは言えないけど、度胸があれば大丈夫でしょ!」(井上さん)
「今後、ファッションコンサルタントとしてアジア展開を考えているので、そのヒントを掴んで帰れればと思っています」(藤原さん)
事前研修プログラムは、海外進出におけるビジネスアイデアの検討やピッチワークショップなど、今後も充実した内容が用意されています。150名を超える参加者は、サンフランシスコの風に吹かれて何を学び、何を福岡に持ち帰ってくれるのでしょうか。今後の展開を楽しみに待ちましょう。
【関連リンク】
Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA
http://www.fukuokastartup.com/