CONTENTS(主な内容)
人権問題を身近に感じて考えていただくためのセミナーを、年6回開催しています。前期(7月・8月・9月)の開催が決まりましたので、受講者を募集します。
詳細については、令和7年度人権総合講座(ココロンセミナー)のページをご覧ください。
令和6年度に実施したココロンセミナー後期(1月・2月・3月)の実施内容についてまとめています。受講された方の感想も掲載しておりますので、参考にされてください。
詳細は、令和6年度人権総合講座(ココロンセミナー)後期実施報告のページをご覧ください。
本センターでは、約3,000冊の蔵書、DVDを約300点を取り揃え、毎年定期的に購入もしています。一方で、時々、こういうお問い合わせをいただきます。
「…について学びたいのですが、どの本がおすすめですか?」
「…という目的でDVDを借りたいんですが、どのDVDがおすすめですか?」
そこで、今回、令和6年度の貸し出しランキングを作ってみました。さて、どんな本・DVDがランクインしたのでしょうか?
順位 | ジャンル | タイトル | 出版年 出版社 著者名 |
概要 |
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1位 | 人権全般 | ファスト&スロー(上)(下) あなたの意思はどのように決まるか |
2014年 早川書房 著:ダニエルカーネマン 訳:村井章子 |
タイトルの「ファスト」とは直感(システム1)を、「スロー」とは時間をかけて熟慮する知的活動(システム2)を指します。 本書では人が判断エラーに陥るパターンや理由を、行動経済学・認知心理学的実験で徹底解明しています。 |
1位 | 人権全般 | あなたにもある無意識の偏見 アンコンシャスバイアス |
2021年 KAWADE夢新書 著:北村英哉 |
自分が気付かないうちに人間関係を蝕んでしまう「アンコンシャスバイアス」。 「歪んだ思い込み」から起きた失言や放言を例示しながらその心理を分析。対処法を教えています。 |
3位 | 同和問題 | 差別する人の研究 ―変容する部落差別と現代のレイシズム― |
2023年 旬報社 著:阿久澤麻理子 |
差別は差別する人がいるから起こります。差別をなくすためには、「する人」の意識や行動、そしてそれを許容し続ける社会の構造を研究する必要があります。 筆者は部落差別が、この半世紀でどう変化したのか述べています。 |
4位 | 人権全般 | すべての企業人のためのビジネスと人権入門 | 2022年 日経BP 著:羽生田慶介 |
児童労働・差別表現・ハラスメント…企業の人権リスクへの対策を解説した本。 有名企業の大失敗から学ぶ人権対応も取り上げられています。 |
5位 | インターネット | 中学校の授業でネット中傷を考えた 指先一つで加害者にならないために |
2023年 講談社 著:宇田川はるか |
東京都の私立開成中学校の国語の授業で取り上げられたテーマは「ネットの誹謗中傷」。 スマイリーキクチ氏の「突然僕は殺人犯にされた」を課題図書に全6回の授業を展開。 中学生が思考を巡らせ、人権への気づきを深めていくプロセスが描かれています。 |
順位 | ジャンル | タイトル | 出版年 出版社 |
上映時間 | 概要 |
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1位 | 人権全般 | アンコンシャス・バイアスをなくそう | 2022年 自己啓発協会 |
33分 | 無意識の偏見・思い込みを意味する「アンコンシャスバイアス」。 このDVDでは、なぜ、私たちは知らず知らずのうちに偏見や思い込みを持ってしまうのか、アンコンシャスバイアスを取り除くためにできることは何かポイントを紹介しています。(人権全般) |
2位 | 人権全般 | 人権のヒント・地域編 「思い込み」から「思いやり」へ |
2010年 博映 |
22分 | ドラマ仕立て 街の喫茶店「カフェ・ヒューマンライツ」のママのところに集まる様々な思いを抱いた人々の交流の中から「人権のヒント」を考え、それぞれを思いやる心の大切さを理解できるようになっています。 |
3位 | 同和問題 | 大切なひと | 2023 東映株式会社 |
34分 | ドラマ仕立て 主人公の大学の友人が被差別部落のネット動画、在日コリアン集落のネット動画を投稿サイトにアップし、増え続ける再生回数に喜びます。コメント欄には差別を煽る書き込みが…。 |
4位 | 同和問題 | ともに生きる私たちの未来 「部落差別解消推進法」がめざすもの |
2017年 世界人権宣言大阪連絡会議 |
38分 | 現代に残る部落差別と闘う人々を取り上げています。内容は次のとおりです。 「ネット上の部落問題:さらし差別」 「土地差別」 「結婚差別」 「若者のリーダー:和太鼓衆当為」 「部落の伝統食を作ってみんなで食べるMURA’s kitchen」 「部落差別と闘う家族」 「教育の視点から、部落差別を考え伝える」 「部落差別解消推進法について:箕面市北芝の取組」 |
5位 | 同和問題 | 同和問題 ~過去からの証言 未来への提言~ |
2015年 東映株式会社 |
54分 | 同和問題に焦点をあて、行政や企業の研修啓発に関わる職員が身に付けておくべき歴史的経緯、社会情勢などを貴重な証言をもとに分かりやすい解説でまとめています。 |
5位 | 同和問題 | シリーズ映像で見る人権の歴史(第7巻) 水平社を立ち上げた人々 |
2020年 東映株式会社 |
38分 | 小学校の歴史学習にも活用できます。内容は次のとおりです。 プロローグ 第1章:「差別ではなく尊敬を」と訴えた人々 西光万吉の生い立ちを中心に、創立大会をめざした人たちについて語られます。福岡の田中松月の映像も収録されています。 第2章:子どもたちの訴え―差別も戦争もいやだ― 山田孝野次郎の訴えを中心に、少年少女水平社の創立について語られます。山田孝野次郎の映像が豊富です。 エピローグ:―よき日のために― |
5位 | 様々な人権 | 人権のすすめ (ハラスメント編・いろいろな性編・障害者編) |
2022年 東映株式会社 |
25分 | ドラマ仕立て それぞれ独立したミニドラマでの「気づき」を通して多角的に人権問題を学んでいきます。 |
ココロンセンターでは、人権問題に関する書籍、まんが、絵本、DVDの貸出を行っています。ぜひ、ご利用ください。
出版年:2024年
出版社:新潮文庫
著者:ブレイディみかこ
著者は福岡市出身、英国ブライトン在住の作家。前作は2019年の夏に発売され、大ヒット。11もの賞を受けています。今回の「2」では、前作の続編で、ブレイディさんとアイルランド人の夫の間に生まれた息子「ぼく」が中学2年生になった日常を描いています。
その中で、移民一家への近所の人の冷たい視線、身近にある格差、ホームレスへの差別的な見方、自身が性的マイノリティであることを公表している教員、人種差別、大人が総選挙で投票するのと同じ日に生徒たちが公約を読んで投票するスクール総選挙などが描かれています。
人権という観点から見ると、外国人やホームレス、性的マイノリティ、こどもの人権と関連があり、イギリスの話なのに、日本の状況とどこか似ていたり、イギリスの方が進んでいたりすることを感じます。それらの問題を親子で語りあい、「ぼく」が成長していく姿をユーモアを交えて描かれています。
出版年:2023年
出版社:株式会社アスパクリエイト
監修:影山摩子弥(横浜市立大学都市社会文化研究科教授)
「ビジネスと人権」とは何か、どうして注目されているのかを、背景となる歴史や世界の事情から見ていきます。具体例もとてもわかりやすく、SDGsとの関係や「ビジネスと人権」に取り組むメリットや「攻め」の人権配慮にも言及しています。
ビジネスと人権への取り組みは、きまった専門部署だけに求められているのではありません。もし自分の仕事の中で気になることに遭遇した時、どのように考えて行動すればよいのかを「児童労働」・「過剰・不正な労働時間」・「ジェンダーに関する人権問題」の3つの事例を通して考えていきます。
外国人観光客が街中にあふれている。私たちが普段使いするような飲食店でもよく見かけるし、その景色が日常になり、もはや驚かなくなった。
某日の居酒屋。韓国の青年がポツンと一人寂しげに隣席にいた。気になり拙い英語で話しかけると、「英語は苦手」と言い、彼が取り出したのは携帯の翻訳機。交互に会話を翻訳させながら、ひとしきり旅の話に花が咲いた。
海外からの旅人はこの青年のようにエトランゼ、つまり通り過ぎる人だが、日本に住めば当然、この社会の一員となり、私たちの生活にも関わる隣人となりうる。福岡市在住の外国人は過去最高の5万人を超え市人口全体の約3%。今後さらに増え続けるはずだ。
加速する少子高齢化により慢性的な労働力不足が懸念されるなか、外国人は貴重な人材として今以上に存在感を増すし、より身近な人権の当事者にもなるだろう。
世界を見渡すと、欧米では移民排除の不穏な動きがあり、時代の空気は次第に寛容さを失いつつあるのでは、と気掛かりだ。国内では、自治体が対応に苦慮しているという埼玉県川口市のクルド人問題がクローズアップされている。それは極端なケースだとしても、ささいな出来事がきっかけで「外国人は理解できない、怖い」などという偏見や安易な決め付けが、インターネットを介して広がらないとも限らない。
サラダボウル。様々な種類の野菜が個性を保ったまま素敵な味わいを生み出すように、多様な人々がお互いを尊重する共生社会のことを例えて言うそうだ。そう遠くない未来、私たちのまちは、どうなっているのだろうか。最近、その姿に思いを巡らす日々だ。(薮)
先日、門司の出光美術館で肉筆浮世絵展を観た。菱川師宣・勝川春章・葛飾北斎など名だたる浮世絵師たちの緻密でいて伸びやかな筆くらべに心を奪われ、時間を忘れるほどだった。17世紀から19世紀初頭の作品だが、鮮やかな色彩が残り、着物や帯、植物などが浮き上がって見える。中でも遊女や芸妓、吉原を描いた作品に目がいくのは、大河ドラマの影響からか。
ドラマ「べらぼう」は、庶民の文化が花開く江戸中期の吉原が舞台。洒落本や浮世絵などを数多く世に送り出した江戸のメディア王、蔦屋重三郎(蔦重)が主人公。その魅力に惹かれつつ、仕事柄、気になるシーンも多い。
地本問屋の鶴屋は、吉原の親父達に対して「『吉原者』は卑しい外道、市中に関わらないでほしいと願う方々がいる」「皆様、吉原の方とは同じ座敷にもいたくないって具合で」と言い放つ。
吉原の楼主の一人、大文字屋は神田に大きな屋敷を買おうとするも一方的に取引を取り消される。奉行所に訴えると、「『今後見附内(江戸城外堀の内側)の土地を買わない』と証文を出すよう申しつける」と思いもよらない裁きが下り、さらに江戸中の名主に対しても「吉原者には見附内の土地は売らないように」とお達しがでることに。吉原に衝撃が走る。逆に、浄瑠璃の太夫達が、大雨の中、吉原大門からたたき出される場面もある。
浮世絵で描かれたきらびやかな吉原を再現すると同時に残酷さも併せて作り込まれたドラマだからこそ、当時の偏見や差別も表しているのだろう。蔦重の活躍を軸にこの時代の表と裏を学んでみようと思いながら、美術館を後にした。(北村)