ダイオキシン類は、ものを燃やすと、発生しやすい有機塩素化合物です。
平成11年7月に制定されたダイオキシン類対策特別措置法では、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナ-PCB)をあわせてダイオキシン類と呼んでいます。
図の数字の位置に塩素の付いたものがダイオキシン類です。塩素の数や付く位置によっても形が変わるので、ポリ塩化ジベンゾフランは135種類、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンは75種類、コプラナーポリ塩化ビフェニルには10数種類もの仲間があります。これらのうち毒性があると見なされているのは、29種類です。
これらは毒性の強さがそれぞれ異なっており、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンの2と3と7と8の位置に塩素が4つ付いた2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(2,3,7,8-TCDD)がダイオキシン類の仲間の中で最も毒性が強いことが知られています。
ダイオキシン類は種類によって毒性が大きく異なるので、ダイオキシン類の全体量を表すときには、2,3,7,8-TCDDの毒性を1として、他のダイオキシン類の毒性の強さを換算した係数(毒性等価係数)を用いて、それぞれの毒性を足し合わせた値(毒性等量(TEQ)という単位で表現)を用いています。
ダイオキシン類は、無色の固体で、ほとんど水には溶けませんが、脂肪などには溶けやすいという性質を持っています。また、ダイオキシン類は他の化学物質や酸、アルカリとは容易に反応しない安定した性質をもっていますが、太陽からの紫外線で徐々に分解されることがわかっています。
PCDFs
PCDDs
PCBs
※毒性等価係数(TEF:Toxic Equivalency Factor)
最も毒性が高い2,3,7,8-TCDDの毒性を1として他のダイオキシン類の仲間の毒性の強さを換算した係数
※2,3,7,8-TCDD
PCDD(ポリ塩化ジベンゾーパラージオキシン)のうち4つの塩素が構造図の2と3と7と8の位置についたもの。T(テトラ)は4つ、Cは塩素を意味する。なお、PeCDDのPe(ペンタ)は5つ、HxCDDのHx(ヘキサ)は6つ、HpCDDのHp(ヘプタ)は7つ、OCDDのO(オクタ)は8つを意味する。
ダイオキシン類は、意図的に作られることはありません。しかし、炭素・酸素・水素・塩素が熱せられるような過程で、意図せずにできてしまうのです。
ダイオキシン類は、ごみ、その他の物質の燃焼等で発生します。したがって、発生源としては、ごみ等の焼却や金属の精錬などが考えられており、現在の日本では約9割がごみの焼却炉から発生しているといわれています。また、かつて使用されていたPCBや一部の農薬に不純物として含まれていたものが底泥などの環境中に蓄積している可能性があるとも言われています。
我が国全体ではダイオキシン類の年間排出量は、平成21年で158~161g-TEQと推定されています。
また、ダイオキシン類は、自然界でも発生することがあり、例えば、森林火災、火山活動などでも発生します。なお、何種類かのダイオキシン類は、かなり以前から環境中に存在していたという報告があり、少なくとも1800年代にはダイオキシン類が環境中に存在していたことが明らかになっています。
日本におけるダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー)はこちら(環境省HP)
ダイオキシン類には多くの仲間がありますが、その中で最も毒性の強い 2,3,7,8-TCDDを用いて動物実験が行われており、強い急性毒性があることがわかっています。
しかし、ダイオキシン類は、ものの焼却などの過程で意図せずにできてしまうため、環境中には広く存在していますがその量はごく微量です。このため、ダイオキシン類は私たちの通常の日常生活では、急性毒性が生じるといった、事故が起こるようなことは考えられません。
世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)では、動物実験や人への影響の評価をもとに化学物質の人への発がん性の強さを分類していますが、平成9年2月、ダイオキシン類の中でも最も毒性が強い2,3,7,8-TCDDは、人に対する発がん性があるという評価を行なっています。
しかし、現在のわが国の通常の環境の汚染レベルでは、ダイオキシン類によりがんになることはないと考えられています。
ダイオキシン類の安全性の評価には耐容一日摂取量(TDI)が指標となります。耐容一日摂取量は、ダイオキシン類を人が生涯にわたって継続的に摂取したとしても、健康に影響を及ぼすおそれのない一日当たりの摂取量のことで、人の体重1kgあたり4pgと定められています。
私たちが体内に取り込んでいるダイオキシン類の総量の安全性の評価は、このTDIとの比較により行います。
TDIは、人が生涯にわたって摂取し続けた場合の健康影響を指標とした値として定められたものであり、一時的にこの値を超過する量の暴露を受けたとしても健康を損なうものではありません。
ダイオキシン類は、廃棄物の焼却炉など、物を燃やすところから主に発生し、大気中に出ていきます。大気中の粒子などにくっついたダイオキシン類は、地表に落ちてきたり、川に落ちてきたりして土壌や水を汚染します。さらにプランクトンや魚に食物連鎖を通して取り込まれていくことで、生物にも蓄積されていくと考えられています。
ダイオキシン類対策特別措置法に基づき、国及び地方公共団体は、全国の大気、水質(水底の底質を含む)、地下水質及び土壌のダイオキシン類に係る環境調査を実施しています。
全国の調査結果はこちら(環境省HP)
福岡市の調査結果はこちら