環調第589号
令和6年12月12日
福岡市長 高島 宗一郎 様
(環境局施設部西部工場再整備課)
福岡市長 高島 宗一郎
(環境局環境監理部環境調整課)
福岡市西部工場建替事業に係る環境影響評価準備書についての
環境の保全の見地からの意見について(送付)
令和6年7月8日に提出された、福岡市西部工場建替事業に係る環境影響評価準備書について、福岡市環境影響評価条例第19条第1項の規定に基づき、下記のとおり環境の保全の見地からの意見を述べます。
記
対象事業実施区域には福岡西陵高校及びため池が隣接しており、周辺は北西から南にかけて山林地域、北東から南東には主として住宅などの市街化区域が拡がっている。
本事業は、まず現西部工場(以下、「現工場」という)を稼働させながら、西部資源化センターを解体・撤去し、その場所に新たなごみ焼却施設を令和13年度頃までに建設・稼働させた後、現工場の解体工事を行うものである。また、既存の搬入道路に加えて、新たな車両の動線として、現工場と隣接する福岡西陵高校の間の工場敷地内に東側場内道路の設置が計画されている。解体・建設工事等の工事期間が約9年間に渡ることに加えて、施設の稼働に伴い、事業実施区域周辺への影響は長期間継続するものと考えられる。
これらの地域特性及び事業特性を踏まえ、今後の工事計画及び施設計画の策定、事業の実施にあたっては、周辺の生活環境及び自然環境に十分に配慮するとともに、環境保全措置を確実に実施することで、より一層の環境影響の低減に努めること。
さらに、評価書の作成、環境保全措置及び事後調査の実施にあたっては、以下に示す個別的事項を勘案し取り組むこと。
事業実施区域は住宅地に近接していることから、焼却前の廃棄物の悪臭対策に関する具体的な施設計画の検討にあたっては、利用可能な最良の技術を導入するなど、環境影響の低減に努めること。
工事の実施に伴う水質への影響について、近年の気象状況を考慮すると、予測条件を上回る降雨が考えられ、また、東側場内道路の工事範囲は傾斜地であることから、短時間でも予測結果を超える量の濁水が発生する可能性がある。
これらの濁水の放流先であるため池等は動植物の重要種等の生息・生育環境となっており、特に移動能力の低い種への影響が懸念されることから、環境保全措置を確実に実施した上で、工事中の濁水の処理状況など環境保全措置の効果について確認を行い、その結果に応じて、必要と判断したときには、汚濁防止膜の設置など追加の環境保全措置を検討すること。
東側場内道路の設置に伴い生育環境が消失するタシロランについて、移植後3年間の事後調査を行うとしているが、気候変動により定着への影響が生じる可能性があることから、事後調査の終了にあたっては、終了時期決定の妥当性を判断するため、専門家に意見聴取を行うこと。
ハヤブサについて、現地調査では事業実施区域及びその周辺で繁殖した可能性は低いとされているが、市街地のビルの窓辺や鉄塔等の人工的な環境に営巣することが知られている。環境保全措置として、現工場の稼働終了後、煙突で繁殖しないよう対策を講じるとしているが、対策の内容によってはかえって繁殖しやすい環境を創出する可能性があることから、対策の具体的内容については専門家の意見も踏まえて検討を進めること。
また、対策を講じた場合も、将来ハヤブサが現工場の煙突で繁殖する可能性があるため、現工場煙突の解体前には、煙突での抱卵や子育ての有無を確認すること。
福岡市地球温暖化対策実行計画では削減目標として、令和12年度に温室効果ガス排出量を平成25年度比で50%削減するとしており、また、福岡市では「2040(令和22)年度温室効果ガス排出量実質ゼロ」のチャレンジ目標を掲げている。
施設の建替により、一般廃棄物等1トンあたりの温室効果ガス等の排出量は現工場よりも低減されるが、今後の温室効果ガス削減に関する具体的な施設計画の検討に当たっては、二酸化炭素分離回収設備等の新技術の導入を検討するなど、温室効果ガス排出量削減に向けた更なる取組を推進すること。