環調第173号
平成28年12月20日
独立行政法人都市再生機構九州支社 支社長 内山 省吾 様
福岡市長 高島 宗一郎 様
(住宅都市局跡地活用推進部九大跡地計画課)
福岡市長 高島 宗一郎
(環境局環境監理部環境調整課)
九州大学箱崎キャンパス跡地等の基盤整備事業に係る
計画段階環境配慮書についての環境の保全の見地からの意見について(送付)
平成28年11月1日に提出された,九州大学箱崎キャンパス跡地等の基盤整備事業に係る計画段階環境配慮書について,福岡市環境影響評価条例第4条の6第1項の規定に基づき,下記のとおり環境の保全の見地からの意見を述べます。
記
事業実施想定区域(以下,「事業区域」とする)には九州大学箱崎キャンパス内で長い時間をかけて形成された緑地や貝塚公園があり,周辺には河川や干潟も存在する豊かな自然環境が残された地域である。また,周辺の土地利用は主に住居系である。
本事業は,九州大学箱崎キャンパス跡地利用計画等に基づき,南エリアで 独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が実施する開発事業と北エリアで福岡市が実施する土地区画整理事業の2つの事業を合わせて約59haの土地の造成を行うものであり,南エリアにおいては都市計画道路も整備される。また現在,事業区域では,九州大学が既存建築物の解体工事及び土壌汚染調査を実施しており,一部で土壌汚染対策法に基づく汚染区域の指定がなされている。汚染区域では本事業を行う前に土壌汚染対策工事を行う必要があるため,その付近では土地の造成,解体工事及び土壌汚染対策工事が同時期に施工され周辺環境に影響が及ぶことが想定される。現状では土壌汚染の状況がまだ全ては判明していないが,今後,汚染区域が増えれば,環境影響も増加すると考えられる。
上記の地域特性及び事業特性を踏まえ,本事業,解体工事及び土壌汚染対策工事が事業区域及びその周辺の環境に及ぼす影響について,九州大学と連携して検討し,事業計画に反映すること。
また本配慮書では,事業区域については,九州大学箱崎キャンパスの跡地利用と併せて,箱崎中学校の同キャンパス跡地への移転や,貝塚駅の駅前広場の整備,にぎわい・交流機能の導入とあわせた貝塚公園の再整理を行うとされているが,環境保全措置の評価を適切に行うため,方法書以降の環境影響評価 手続きにおいては,今後の土地利用計画を可能な限り具体的に示すことが重要である。
工事の実施や南エリアに整備予定の都市計画道路の存在及び供用によって,周辺の生活環境への大気質及び騒音・振動の影響が想定されることから,その影響を検討して事業計画に反映すること。
なお,本配慮書では,都市計画道路の整備に関して,現段階では将来交通量等の予測条件の設定が困難とされているため,方法書以降の環境影響評価手続きにおいては,計画交通量等を適切に設定し,調査・予測・評価を行うこと。
事業区域及びその周辺は地下水位が高く,土地の造成及び土壌汚染対策工事による影響を受けやすい地域であると考えられることから,工事の実施による地盤及び地下水への影響を検討して事業計画に反映すること。
なお,本配慮書では,現段階では施工方法等の予測条件の設定が困難とされているが,工法や使用する薬剤によっては地下水位や流況,水質に変化が生じる可能性があることから,方法書以降の環境影響評価手続きにおいては,地盤及び地下水への影響を想定して工法や薬剤を決定したのち,適切に調査・予測・評価を行うこと。
事業区域には長い時間をかけて形成された緑地等があり,周辺の豊かな自然環境も含め,多様な生態系が形成されている可能性があるため,当該緑地が持つ機能について十分に把握し,周辺環境との調和を図ることが重要である。また,既存の生態系は外来種等の侵入防止にも繋がるという専門家の意見もあることから,当該緑地の保全など周辺環境に調和した自然環境・生態系の保全を検討し,更に既存樹木の活用等による生態系への影響低減を図り,事業計画に反映すること。
なお,本配慮書では,事業区域及びその周辺の動植物の生息・生育状況について,主に福岡市環境配慮指針を既存資料として記載しているが,本指針では事業区域での調査はなされていない。事業区域においては過去に九州大学の複数の専門家が調査しているとの情報があることから,まずこれら専門家から十分に情報を収集し,必要に応じて生物種の適切な判別手法の導入について検討を行い,調査計画を設定して方法書に記載すること。
土地の造成のほか,解体工事及び土壌汚染対策工事の実施により発生する廃棄物等について,本配慮書では土砂や建設廃材等の建設副産物の分別を徹底し再資源化施設への搬入を予定しており廃棄物等の量を低減するとしているが,加えて,事業全体の環境負荷低減の観点から,事業区域での廃棄物等の発生量を把握し可能な限り再利用に努めるとともに,再生資材の積極的な利用についても検討し,事業計画に反映すること。
本配慮書では,事業の実施に係る放射線の影響について検討されていないが,九州大学箱崎キャンパスにおいてはアイソトープ総合センター等で放射性同位元素などが使用されていたことから,「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」等の関連法令の規定を遵守するとともに,環境影響評価法令の趣旨に鑑み,周辺住民の安心のためにも,使用履歴のある場所の空間放射線量率を事前に把握して放射線の量に係る調査・予測・評価の要否について検討を行い,方法書に記載すること。