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更新日: 2016年11月17日

平成28年度第1回福岡市環境影響評価審査会 議事の要旨
平成28年10月31日


日時

平成28年10月31日(月曜日)午後3時00分~午後4時20分

場所

福岡市役所 1504会議室

議題

  1. (仮称)福岡都市計画道路 1・4・3 号都市高速道路3号線延伸事業に係る環境影響評価方法書について 
  2. その他

出席者

浅野委員,尾崎委員,鬼倉委員,小野委員,尾本委員,川口委員,佐々木喜美代委員,
笹木委員,佐々木浩委員,田中委員,野上委員,藤本委員,二渡委員,山田委員(50音順)

会議資料

  • 資料1 福岡市環境影響評価審査会委員名簿・規則
  • 資料2 (仮称)福岡都市計画道路 143 号都市高速道路3号線延伸事業に係る環境影響評価方法書
  • 資料3 (仮称)福岡都市計画道路 143 号都市高速道路3号線延伸事業に係る環境影響評価方法書 論点整理資料
  • 資料4 (仮称)福岡都市計画道路 143 号都市高速道路3号線延伸事業に係る環境影響評価方法書に係る住民等意見の概要
  • 参考資料1 (仮称)福岡都市計画道路 143 号都市高速道路3号線延伸事業に係る環境影響評価の手続き
  • 参考資料2 (仮称)福岡都市計画道路 143 号都市高速道路3号線延伸事業に係る計画段階環境配慮書についての環境保全の見地からの国交大臣意見及び福岡市長意見
  • 参考資料3 (仮称)福岡都市計画道路 143 号都市高速道路3号線延伸事業に係る環境影響評価方法書の概要

【議事要旨】


議題1 (仮称)福岡都市計画道路 1・4・3 号都市高速道路3号線延伸事業に係る環境影響評価方法書について


会長

それでは,ただいま事務局から,全体についての問題点の整理がされておりまして,報告を受けましたが,まず,全体を通じて何かご意見なりご感想なりありますでしょうか。

委員

今回は方法書ということで,本来事業計画の詳細がある程度示されてから議論することだと思うのですが,類似の案件で,アイランドシティへの都市高速道路の延伸事業があったときに,この場合も,ジャンクションの線形であるとか,道路断面,工期,工程だとか,ある程度想定している工法や,建設機械・工事用車両の台数とか,そういった条件が示された上で何を調べるかということをやっていました。今回はほとんどそれがなくて,「道路事業についてはこのような項目について調べるのが決まっているのでこれでいいでしょう」という言い方になっています。事業計画が示されていませんので,本来なら方法書の審議に入れないのではないかと思いますが,いかがでしょうか。

会長

方法書をどの段階でつくるかについては,法律上規定がありません。事業計画がはっきりしていなければ方法書はそれだけ様々な場合を想定して細かくつくらなければいけないし,事業計画が明確であれば方法書は簡略なもので済むということになるだけのことですから,これでは方法書の審査ができないということはありません。むしろ,この前提ならば「この方法書でここまでやりなさい」と言う以外ないだろうと思います。

委員

そういう意味では,先ほどお話ししたアイランドシティ線の場合は, ジャンクションの形は何案か示されていて,その範囲内で予測するということでした。しかしこの事業では,例えば道路断面なども示されていません。もちろん会長のおっしゃるとおり,これは準備書の段階で,より事業計画がはっきりしてからそのときにしっかり示してもらえばそれでいいのかもしれませんが,意見としては,事業計画の情報があまりにも少ないのはどうなのかなということです。

会長

むしろ,詳細なことが決まってからよりも,方法書としてはこのほうが本来の姿に近いのです。方法書で実際調査してみて,何か問題があれば事業計画を変える必要も出てきますが,もう事業計画の内容を変えようがない段階での方法書というのは,方法書として意味を持たないと思います。
ただ,このように前提がはっきりしない部分について方法書をつくるのであれば,どの場合は何をやらなければいけないのか,はっきり示す必要が出てくるでしょう。ですから,こういう段階の方法書ならこの段階の方法書としての体をなしていないといけないというご意見については,私も同感です。
例えば,配慮書の段階で既にニッポンバラタナゴについて記載していて,事業者はこの方法書の中で,それについて考えますということを書いておきながら,調査の部分には何も書いていません。この方法書について強く指摘するべきことは,例えば希少種の生息・生育の状況について真っ先に調べるべきということです。準備書をつくる前にまずそれを徹底的に調べ上げて,問題がないことがわかったら問題がないことを前提にしてその後の調査をして,最終の準備書をつくるということになるはずですね。配慮書で記載しておきながら方法書の段階で何も書いていないのはどうか、ということも指摘できるかもしれません。
むろん,方法書の段階では現地調査をする義務はないのですが,わかっていることについて何も対応せず,方法書に何も書いていないのは,私も問題だと思います。希少種が出てきたときには工事のやり方自体変わってくる可能性があるでしょう。

今の点について事業者から,納得のできる説明をしていただけますか。

都市計画決定権者(以後,「都決権者」とする)

現地調査でニッポンバラタナゴ等の希少種が確認された場合はその段階で,どのような配慮をしていくか考えていく必要があると考えております。

会長

工法を決めてしまってから,例えばコストを考えて最も環境の負荷は高いだろうという工法を決めた後に,ニッポンバラタナゴが出てきたらどうしますか。工法を決める前にこれは,はっきりさせておかないといけないのではないでしょうか。特に生き物への影響について,河川改修などは,全体に響く大きな出来事でしょう。工法を準備書作成の途中で決められたら,準備書作成作業をやり直しということにもなりかねません。
それともう一つ気になっていることがあります。工法によっては,工事中の交通渋滞がすごくひどくなる場合と,ほとんどそれがない場合がありますね。交通渋滞が起こるかどうかは工法によって左右されますが,交通渋滞による影響の調査に関して,この方法書では何も触れていません。ですから,交通渋滞により,あの辺はものすごく交通渋滞が起こると,周辺環境に多くの影響を与える可能性も出てくるでしょう。そういうことも考えて工法を選ばなければいけないのであって,コストばかりを考えていてはいけないはずです。まず工法ありきではないはずですよね。

都決権者

工法の設定に関しましては,会長がおっしゃったように,コストだけではなく,その他,施工のしやすさや,交通渋滞の関係から交通管理者との協議,あとは,周辺の下水管や電線関係など,そういった地下埋設物などの管理者とも協議を進めていきながら,線形や工法について,どうすればコストも安く施工もしやすく,環境にも優しいのかなど,様々な観点から総合的に判断して,設定することになるかと思います。
それに当たりましては,線形や工法が決定してから方法書の手続をとりますと,そこから計画を変更することは難しくなってしまいますので,なるべく早い段階で,方法書の手続きに入ることとしたものです。
会長がおっしゃったように希少種が発見された場合には,それを踏まえ,工法などもどういった形にするのか,保全対策も含めて検討していくと思います。

会長

いずれにせよ,今回の方法書に対する市長意見は若干異例な意見書になる可能性があるということを,あらかじめ申し上げておきましょう。環境調査をするときの手順を少し厳しく要求しなければいけないかもしれません。「これとこれについては先に前もって調べるように」というようなことになるでしょう。手戻りが起こってしまうと問題ですから。

ほかに何か全般にわたってございますか。

委員

この方法書の中には,8-3ページに評価項目の選定理由がありますが,そこに温室効果ガスという項目が何も入っていません。一方で,資料4に,住民等からの意見が温暖化対策のことで,幾つか出ています。そういうことを考えて,この温室効果ガスあるいは温暖化対策について,方法書の中で触れる必要はなかったのでしょうか。

都決権者

環境影響評価の項目につきましては,国交省が出している道路の環境影響評価に係る項目や調査・予測の手法などを選定する指針,通常「主務省令」と言っておりますが,その指針の参考項目を参考にして選定しております。温室効果ガスは,その参考項目に載っておらず,福岡市や県の技術指針にも参考項目としては載っていないということがまず1点で,それから今回の事業特性や地域特性なども踏まえて項目の追加や削除をしております。
選定するという視点もあるかとは思いますが,今回の温室効果ガスに係る地域特性がほかの道路事業と比べて変わらないことと,工法などについても特別な工法を使うわけではないことから,選定はしておりません。また,温室効果ガスなどについては,広域的な検討なども必要になってくるため,今回は選定しておりません。

会長

いかがですか,よろしいですか。

委員

ご説明は理解できましたが,先ほどもご意見ありましたが,例えば工事中に渋滞するということは,それによって,COがそれまで以上に発生するということですのでそれについて述べる必要があるのではないでしょうか。

会長

今のご意見を,後で市長意見をつくるときに参考にさせていただきたいと思います。

ほかにございますか。

(「なし」の声あり)


会長

よろしければ,個別の項目についての検討に入りたいと思います。

では,資料3のうち,まず非選定項目について,この項目が選ばれなかったことについては特段の問題なしという事務局の考え方について,ご異論がございますでしょうか。

延伸区間には休憩場設置の予定がないので水質は調べません,重要な地形,地質が特にあるわけではないのでこれはいいでしょう,それから,バックグラウンドの放射線がどうかということは別として,特に配慮を要するような放射線量がここで工事によって出てくるとは考えられないのでこれはいいでしょう,ということですがこれらについては構いませんね。

(「異議なし」の声あり)


会長

「大気質」についてはいかがでしょうか。先ほどもご指摘がありましたが,工法によっては工事中の渋滞がありそうです。そうすると,工事車両の走行に伴う大気質への影響,騒音の影響だけを問題にしているのですが,これでいいかどうかということですね。

委員

私も渋滞のことは危惧しておりまして,今回は片側2車線,4車線のトンネルを造るわけですが,出入り口のところでかなりの車線を塞ぐことが危惧されます。似たような例ですと,やっと今年開通した,横浜の東名横浜町田インターのところの国道16号線と246号線が4車線で立体交差するところでは,車線が塞がっていて,もちろん工期も延びたのですが,実は3年前にもう1年早くできると言われていたところ,最後の段階で渋滞が激しくなったため,工事する時間を確保するために1年間工事期間を延ばした例があります。
このようにものすごく混雑している交差点で大きなものをつくるときには,かなり渋滞が危惧されますので,その場合は工事車両そのもの,工事中は建設機械そのものが出す汚染物質よりも,渋滞による汚染物質など,もちろん騒音なども非常に危惧されますので,その点はぜひ検討してもらえればと思います。

会長

他の委員は,何か特にご意見ございますか。 「騒音」についてはどうですか。

委員

質問ですが,資材と機械の運搬に用いる車両の運行に対する騒音と,供用後の自動車の走行について,いずれも車両の走行に係るものですが,予測の手法が,資材と機械の運搬は国交省の技術手法で,供用後の自動車走行は日本音響学会の一番新しいモデルでと,それぞれ違うモデルで予測するように書いてありますが,これは何か理由があるのでしょうか。二つとも,車が走って騒音がどうなるかという予測だと思いますが,同じ手法にしておかないと,同じところを同じように走行するのに,こっちの車ではこうでこっちの車ではこうでと異なるのはおかしいという気がします。

会長

これは予測手法を変えた理由は何かというご質問です。事業者,どうぞ。

都決権者

基本的には同じですが,方法が少し違って,供用後の自動車の走行につきましては,将来交通量をもとにして予測をするのでASJモデルで予測できるのですが,資材と機械の運搬に用いる車両の運行につきましては,既存の走行に追加する形で予測をするので,出典の書き方が違う形になります。国交省の道路環境影響評価の技術手法の中にも日本音響学会のモデルが書いてありまして,内容的には同じです。

委員

国交省の技術手法は,日本音響学会のモデルを受けて作成されているのではないでしょうか。国交省の方が内容的に古いのではないかと思いますが。

都決権者

確かに国交省の技術手法に掲載されているモデルは古いモデルですが,最新のものを使うように決められておりますので,国交省の技術手法でもモデル的には音響学会の新しいモデルで予測することになると思います。

委員

基本的には同じ手法で予測すべきだと思いますし,なるべく最新のものを使っていただきたいと思います。

会長

ありがとうございました。交通渋滞はどういう扱いをすればいいのでしょうか。渋滞を定量的に把握するのはかなり難しいと思うのですが,それをどうするかという問題があります。ですから,「極力,渋滞を最小化できるような工法を選択する」と書いてくれれば良いのですが,定量的に評価するのはかなり難しいです。

委員

渋滞の予測については,私はわかりません。渋滞の発生を予測した後の大気汚染や騒音などがメインにあると思うんですが,騒音は先ほど言いました新しいモデルで予測できますので,渋滞がどのように起きてどんな状況になるということがわかれば,騒音がどうなるかは予測できます。

会長

地下鉄のときのアセスでは渋滞の問題をかなり取り上げましたが,工法上からみてそのような問題が生じないということでしたから,あまり追及はしませんでした。しかし今回は工法がはっきりしませんので,全然状況が違います。渋滞についての定量化は難しいですが,定量化はしないまでも,渋滞についてどういう工法を選べばどの程度の渋滞が起こるかということについては検討して,それを工法選択の参考にするよう述べるべきでしょう。 
渋滞が起きた時の対応はしょうがないのでしょうが,この工法を使えば何車線,この工法を使ったら何車線というように,何車線規制する必要が出てくるかはわかるでしょう。それで,最悪の場合は時間帯を限って,朝夕の渋滞する時間帯は工事を一時中断してでも車線を確保するなど,そういったことが環境保全措置になるのではないでしょうか。

都決権者

交通管理者とも協議をしておりまして,実際の工法等を決める段階でも,おそらく工法を決めた後でも協議することになると思います。そこで,なるべく渋滞が起こらないような工法や工程を検討していきます。

会長

そうすると,その渋滞の少ない時間というのは夜間になりますね。

都決権者

そうなると思います。

会長

夜間工事は影響が大きくなりますよね。

都決権者

おそらく開削工法ですと,覆工板と申しまして,穴の上に蓋をしましてその下で掘っていくので,外に音が漏れるようなことは基本的にはないと考えています。ですので,最初に掘る段階,蓋をするまでは若干開放系にはなるかもしれませんが,基本的には覆工板をして工事をし,その上は車も通るような状態ですので,そういった工法をとった場合ですと,交通渋滞はあまり起こらないのではないかと考えます。

会長

わかりました。いずれにせよ,準備書の段階ではそういうことを全て書くことが必要です。滑走路増設事業のときは,工法を見ると,音が発生する場所が比較的短時間で移動していくので,周辺の住家に継続して被害が生ずることはなかったので,あまり強く言うことはありませんでした。同じように,この工法ではここでどのぐらいの期間音が出ます,それを過ぎたら音はあまり出なくなりますということがわかれば,それらの準備書を見た周辺の方々も納得なさるということがあるでしょう。要するにみんなに納得できるようデータをきちんと示すことが大事だということですから,かなり今までとは違うやり方でアセス図書に書いてもらわないといけない。つまり,国交省のマニュアルどおりに書くだけではいけません。

それでは次は,「水質」ですね。事務局は,工法によっては土壌凝固剤を使う可能性があるので,それによる水質影響について予測せよということを書いていますがこのことについて,いかがですか。

委員

凝固剤を使う工法をとるのであれば,例えばアルミニウム系ですとか無機ポリマーを使うことが考えられるので,その影響の調査が必要になると思いますし,あと,この近くには炭鉱もあったということも伺うと,石炭は黄鉄鉱――硫化鉄などと共存しやすいので,そういうところにヒ素が混ざっているという,よくトンネル工事でヒ素が流出したという話は聞きますが,今回のケースはどうなのかなというのは少し気になっています。
むしろそれよりも,水の濁りについて懸念されているようで,現地を見ましたら,トンネル工事をするところのすぐそばに湿地帯が広がっていて,その湿地帯は工事の下流側に位置するのですが,そうするとさらにその下流側が調査地点ですが,地下水のSSのバックグラウンドを最初に調べておいて,工事によってどう変わるかをつかんでおく必要があるのではないかと。他に,下流域での地下水の利用状況も,現在調査中と伺いましたけれども,大事なことではないでしょうか。
あとは,水理学的な水みちのことです。工事することによって水の流れがどのように変わっていくのか,地下水位が下がるかもしれないという懸念があるので,水理学的な影響を予測できるような調査が必要であると思います。

会長

農業用水や飲用井戸がないのであれば,地下水位はあまり問題ないような気もするのですが。

委員

地下水の利用の仕方が飲用かそうでないかということですね。

会長

農業用水や,地下水位が下がったとしても,そのことは,下がりますという事実は事実ですが,そちらを下げないような努力をしなければいけないということはないような気もしますが。

委員

そうですね,飲用や農業用等,人の口に入る水にならなければ,水質の問題はあまりないかと思います。水位が下がるということになると,利用できる量が今後変わってくるということになりますね。

会長

それはそうですね。水位が下がった場合に湿地帯が湿地帯じゃなくなってしまうとか,それはどうでしょうか。湧水量のほうがむしろ問題ありますね。

委員

あると思います。そうですね,湿地がもう水が見えない乾いた状態に変わると。そうすると生物への影響という……。

会長

はい,生態の先生方,あそこの湿地の重要性をどの程度に評価されますか。 

委員

あの湿地は,おそらく,かなり古い時期から一部田圃に利用されたという面はあるのでしょうが,非常に重要な湿地であるだろうという気がしています。ですから,あそこにどういう生き物がいるのか,現在の地下水がどうなのかということによって,トンネルの工法もひょっとして変わってくる可能性があるのではないかと。おそらく水を矢板か何かでとめてしまうというような工法は,あまりなじまない可能性もあるだろうという気がしています。
先ほどもご意見ありましたが,あそこの湿地の水の調査と生き物の調査を早めにやって,それを頭に置いておいて工法を選ぶ必要がある。オープンで掘削するところとトンネルに入るところをどこにするのかも非常に重要な問題になってくると思います。

委員

現地を,見た感じでは,ニッポンバラタナゴは,既存の生息情報がある川よりも,湿地に入ってすぐぐらいに,水面幅30センチぐらいの細い,自然度の高そうな細流が見えたのですが,そちらのほうが可能性はあると思うので,私もそういう意味であの湿地は,魚類の生息地という意味でもすごく大事に思っています。
水質について確認なのですが,いわゆる一般的な水質項目は,当然調査されるのですよね。これは,調査しないということですか。

都決権者

今のところは濁りのみを想定しております。

委員

水生生物で希少種が少なくとも昔出ていたという状況ですし,希少種が仮に出なかったとしても,工事中に魚が斃死したとかいう事件は起こり得ると思います。そういう意味では,一般的な水質項目はきちんと測定しておいたほうがいいと思います。そうしなければ,我々は空気がないと生きていけないように,魚もその魚に合った水の環境がないと生きていけないので,最低限の水質の情報は欲しいと思っております。

会長

市としては,あの辺の川の水質は測定を行われているのですか。

事務局

通常河川の調査は主立った川でやりますので,吉塚新川のような小さな川では通常はやっていないので,おそらくないと思います。

会長

わかりました。「植物」はどうでしょうか。

委員

湿地の部分ですが,既存の情報だと,コガマは出ていましたが,他にも何種類か水草,水に関わりの深い種類が出ていたので,私も非常に興味を持っています。もしかすると重要な種類が出てくる可能性もあると思っていますので,まず調査をきちんとやってほしいですね。調査範囲について,動物と生態系は250メートルで,植物が100メートルで切ってあって,そこがどうしてなのかなと。動物を調べるならどうせ植物も目に入ってくるでしょうから,同じ250メートルのほうがすっきりすると思いました。

委員

水界生態系で考えるときに,上下のつながり,湿地だけを調査するというのは,いささか不足する。上流はある程度カットしてもいいのかなという,どこかにコメントがついてカットするようになっていたようですが,しかし上流にニッポンバラタナゴの生息地が2カ所確認されている。
そうすると,この河川沿いに水界生態系をある程度調べないと,ニッポンバラタナゴがいた場合に,その保全措置というものを考えるに当たって,そこから下だけを考えてもなかなか難しいという話になってくるので,工事中にどのように水路を変えるかとか,そういったことも含めながら,全体的に河川をどう保全するかといった視点を取り入れていかないと,なかなか今後の施策というのは難しいのかなと。
さらに今,魚類だけの話になっていますけど,底生生物,マルタニシだとか,絶滅危惧2類ですか,そういったものも入っているので,底生生物を含めた水界生態系としてあの地域をどう保全するか,おそらく貴重な残された湿地と思いますので,そういう意味では福岡市にとっても非常に貴重な自然であり,今後どう生かすかを考えていく良いきっかけになる場所ではないかとも思います。

会長

どの工法をとるかということにもよると思いますが,地下水脈が変わる可能性があって,そうなると,湿地に影響が生ずる可能性があるかないかの問題ですね。あるとすればそこまで考えなければいけないということになりますから,まず最初にそれを調べるのが絶対必須の要件かもしれません。
湿地をどうするのか,湿地がどんなものなのかは見ておかないと,それを守る必要があるのかどうか,という議論にもう一度なるかもしれません。その評価を先にしないといけないでしょう。これが一番大きな問題でしょうし,配慮書の段階から環境大臣意見も出ていますから,これは逃げられないと考えてほしい。
ただし湿地を守る必要があるという場合には,保全のための責任は本来環境部局にあるので,事業部局の責任でどこまでやってもらうかは,環境部局と十分に協議してもらう必要があるでしょう。

委員

今,直前に発言された委員さんと同じ意見なのですが,ニッポンバラタナゴなどの動物の調査区域は,方法書を拝見させてもらうと250メートル程度の範囲と書かれておりますが,それだけでは,そこがもし異常な状況になった場合にはほかのもの,同じ水系ですから,そこで補填するなりいろいろな方法があると思いますので,もう少し調査域を。

平成何年から確認されていないとおっしゃいましたかね,ニッポンバラタナゴ。

事務局

事業実施区域の付近では,平成元年まで確認されています。

委員

元年まで確認されたということで,それ以降は……。

事務局

調査自体はその後も実施しておりますが,元年までしかニッポンバラタナゴは確認しておりません。

委員

平成元年以降も調査はされているということなんですね。これを機会に,この区域でバラタナゴがどういう生息状況なのかを把握しておかれるのも一つの考え方だと思いますし,非常に有用な地域だと思いますので,ぜひお願いしたいと思っています。環境省や市の意見を拝見すると,そこら辺のところを考慮して予測・評価を行うことと書かれていますので,予測・評価を行うためには,もう少し広範囲に調査なさったほうがいいと思います。

事務局

今のお話ですけれども,ニッポンバラタナゴに関しては平成元年が最後で,その後の調査に関しては見つかっていないということですが,福岡市としては,自然環境調査という形で,生き物の分類ごとに5年周期で調査を行っておりまして,5年に1回水生生物関係の調査をさせていただいております。その中で,調査は行いたいと思っております。

委員

わかりました。よろしくお願いいたします。

会長

事業者がどこまで調べるか,市がどこまで調べるかという仕分けはあるかもしれないけれども,もしいたときはという話があるでしょう。だから,これは多分他はほとんど問題無いけどこれだけは問題なんでしょうね。

地盤,地下水と関連することで今,動植物についてもご意見を伺いましたが,それ以外に動物,植物で何か特にご指摘ございますか。

委員

海とのつながりが吉塚新川はあるのかないのかというお話をして,堰がありますというお話でしたが,現地を上から見ていて,手のひらぐらいのサイズで泳いでいた魚は全部ボラでした。ということは,上がってこられているということなんです。そういうことを考えたときに,例えばボラがいたけどいなくなったときに,工事の影響でいなくなったのか,それとも下流側の堰に何らかのアクションが起こった結果として上ってこなくなったのかとか,そういう問題が発生してくる可能性があるわけですね。  
ですから,生き物を見るときにどうしても,生き物だけではなくて,それに関連するような物理場というか,そういうものの情報も常に集めておかないと,将来的な予測とか評価とかが,何が原因かわからないということになり得るので,生き物を南北方向に広目に見てもらうだけではなくて,その他それに関わるような物理場の情報はしっかりと集めておいていただき,ぜひ準備書の中にも書いていただくといいかと思います。
あと,それから,これもどこまでが方法書の中でお話しすべきことなのかはわかりませんけど,ニッポンバラタナゴがもし出たらというお話が先ほどから出ていますが,ニッポンバラタナゴがもし福岡市から出たら,もうそれは系統保存用に全部取り上げてというお話になると思う。
2006年(平成18年)から2008年(平成20年)に福岡市を流れる主要な河川5河川,多々良川,瑞梅寺川,那珂川,室見川,御笠川の200地点ほどを調査したのですが,その中でニッポンバラタナゴが出たのは2カ所か3カ所です。それがもう10年前です。
多々良川水系に限って言うと,もうタイリクバラタナゴが猪野川に入り込んできていたので,非常によろしくない状況で,水系的にはつながっていますから,もしそういう重要なものがここから出た場合は,ほかの支川にタイリクバラタナゴが入っているわけなので,もう隔離ですよね。そういうことをここに書き込めるかどうかはわからないですけど,だからそういう意味では,多分関連部署間協議とかそういうことをニッポンバラタナゴが出てきたらやらないといけないということも想定しておいていただきたいと思います。これは方法書の中で書くようなことなのでしょうか。

会長

そういうご意見があったことは記録に残して,保全措置を考えるときに考えるということになるでしょう。おそらく市役所の他の部局が責任を負わなければいけないけど,いずれにせよ環境局でやるということになりますね。「生態系」という項目で何かありますか。

委員

動物でいいですか。私もここでどこまでお願いできるのかよくわからないんですけど,イタチが福岡市ではおそらく,もう準絶滅危惧というよりも絶滅危惧の中に本当はしなければ,福岡市としてはほとんどいないと思うのでランクが高いと思うのですが,それを確実に検知できるような調査を。おそらくここからは出ないと思いますが,今はふんからDNAを抽出して種判別というのはすぐ簡単にできますので,そのようなことをきちんとやっていただきたい。今日タヌキの死体も見ましたけど,タヌキ,アナグマがあそこにいるかもしれないので,そういったことも含めてきちんとした調査をお願いしたい。

会長

調査をする以上はしっかりとやっていただきたいという趣旨のご発言だと思いますし,何しろあそこは,もとの状態ではないのですが,騒音対策で広大な空き地ができているわけですから,その後の30年,40年でものすごい自然が,回復したのかできたのかははっきりしませんが,福岡市では珍しい自然豊かな場所になってしまったんですね。ですから,それを無視して議論はできないだろうということだろうと思います。とりわけ地下水に影響を与える工事である可能性があるので,湿地は問題なので,下流については見ていく必要があるというのはおおよそ皆さんの一致したご意見ですね。

あとは,「人と自然との触れ合いの活動の場」の話,「景観」の話がありますが,このあたりはどうでしょうか。

委員

福岡市は環境配慮指針というのをつくられて,それこそ身近なところに自然が あって,自然のふれあいを大切にするまちというか,何かそういう自然とのふれあいにあふれるまちという目標を設定しています。そういう意味では,福岡市が環境に優しいまちというようなイメージを発信していく上でも,先ほどまで議論されていた現地調査が大切だと思います。私も今日初めて,あんなところに湿地帯があるのを知りました。こういうところにまさに自然の宝庫みたいなものがあったというのはある意味福岡市の財産だと思います。湿地帯も含め川も含め,全体に海から望むことも含め,海に近いということが福岡市の財産でもあるわけですので,ぜひこれを機会に現地調査をやって報告していただけると,私たちこんなに財産を持っていたんだというのを改めて気づけるのではないかと思いました。

会長

本当に湿地があるのなら湿地の保全を考えなければいけないということでしょうね。さきほども申しましたが,これは,少なくとも道路をつくる人に全部の責任を負わせるという話でもなく,本来環境局にも責任がある話でしょう。ですから,調査費をかけてもらって,わかった後の環境保全対策はかなりの部分は環境局が責任を持つということになりそうですね。

廃棄物はどうでしょうか。

委員

ヒ素が出る可能性がある土壌があるということでしたので,土地の履歴をしっかり調べていただいて,リサイクルする上でもそうですし,処分する上でも重金属が出てくるとその取り扱いは変わってきますので,そのあたりをしっかりしていただきたいなと思っています。

会長

では今の点,特に大事な点ですから,しっかり覚えておいてください。

いただいたご意見をもとに審査会の意見として,市長に対する審査会の意見書をまとめたいと思いますが,取りまとめについては,私にご一任いただけますか。

(「異議なし」の声あり)


会長

ありがとうございます。ではご一任いただきましたので,私のほうでこれを取りまとめて出すことにいたします。

それでは,ほかに何かございますでしょうか。

(「なし」の声あり)


会長

では後どうぞ,事務局から。

事務局

事務局からは特にございません。本日は,長時間にわたりまして,熱心なご審議を賜りまことにありがとうございました。



議題2 その他

特になし