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更新日: 2020年2月25日

その場所を想う気持ちが、ビジネスを成長させる<ナップカフェ 後編>

(2019年8月取材)

画像:ナップカフェ 店長 三嶋和仁

やりたいことが見つかるまで、直感と期間を決めて行動し、バーの経営という道を志した二見ヶ浦の「ナップカフェ」の三嶋さん。広島で培った技術をもとに、地元福岡での開業を目指した結果、数々の縁を経て、現在の店舗に落ち着き、今年15年を迎えました。糸島エリアのブームよりも前からこの地を見てきている三嶋さんならではの視点や、今後参入を検討している事業者への参考となる考え方を伺いました。


画像:ウニ玉の写真
お店の前の砂浜に流れ着いた「ウニ玉」。
オブジェとして飾っていたらお客さんが持って帰ったりするそう。目の前に手つかずの自然が広がっていることを日常的に感じ、楽しみながらカフェを経営していることがわかります。


糸島ブーム以前の二見ヶ浦


三嶋さんが「ナップカフェ」として現在の店舗をオープンさせたのは、2004年4月4日。実に15年の時が経っていますが、開業当時はどんな様子だったのでしょうか。


「その当時は、僕が店長をつとめていたムーンライトクラブカフェ以外はSUNSETとそののれん分けの店舗ばかりでした。つまりは林さんとそのお弟子さんの店ですね。だからだと思いますが、排他的な空気が流れることもなく、それぞれが自分の個性を出して好きにお店をやっているという意味では今も昔も変わっていません」


糸島の観光ポテンシャルが上がっていった2000年代

ナップカフェのオープンを挟む形で、2000年中盤から徐々に糸島ブームが興ります。ムーンライトクラブカフェの店長時代からこのエリアを見てきている三嶋さんの実感はいかがでしょうか。


「唐泊にカキ小屋ができたことがターニングポイントのひとつだったのではないかなと思っています。それまで夏場に遊びにくる需要はありましたし、もともとサーファーくらいしか通年で通う人はいませんでしたが、カキ小屋ができたことで、冬の需要が増えたのだと思います。結果的に、通年でのドライブコースのイメージがついていったのではないでしょうか」


二見ヶ浦=生活感のない土地


画像:インタビューの様子


なるほど。以前このサイトで「唐泊恵比須牡蠣」の取材をしましたが、2001年から牡蠣の養殖に着手されています。そういった地域ならではの相乗効果があって、北崎やいまの二見ヶ浦をはじめとする糸島エリアの盛り上がりがあるのですね。実際、地域的な関わりはあるのでしょうか。


「ブーム以前の4店舗はほどよい距離感でやってました。皆さん閉店したらうちでコーヒーを飲んで帰ったり。見てもらったら分かると思いますが、民家などの居住地がないでしょう?いい意味で、もともと生活感のない土地なんです。だからこそ、福岡から車で1時間以内にこれる非日常という特徴があるから、ドライブスポットとして定着したんだと思います。周辺の地域の皆さんからしても、もともと誰かが生活している場所でもないところに飲食店ができはじめた、ということでふんわり見守って下さりいまに至るのではと思います」


画像:カフェの風景
メニューには特段糸島産などの食材を謡ったものはない。
なぜなら地元のものを使うことも含め、それが「自然だから」という考え方が、三嶋流。



その土地への想いなしに、ビジネスは成り立たない


いい意味での生活感のなさや周辺地域からの理解があって今の盛り上がりがある、ということでしょうか。ではこれから、二見ヶ浦にこうなって欲しいなといった想いなどはありますか?


「どの地域にもある問題だと思いますが、人気が上がって観光客が増えると、店舗の駐車場に停めるけれど何も注文せずに帰っていくような人も増えてきます。停めたら御礼にコーヒーでも飲んで行こう、という意識がいまのお客さんにはあまりないし、うちは無断駐車を見つけたら僕が出て行って注意するけど、そういう空気がお店側も含め、お互いに欠けてきているなって思うんです。だから、コインパーキングが増えていく。それは仕方がないことだと思います。
ただ、観光地としてのポテンシャルが上がってきたからといって、コンビニができていいかというとたぶんそれではうまくいかないと思うんです。『お客さんが多いから儲かると思ったのに無断駐車ばっかりじゃないか』みたいな感じで。この課題は僕も意識していきたいと思うんですが、“この場所が好きで、ここにいたい、この場所の魅力を味わって欲しいからお店をやりたい”という気持ちを、これから事業を考えている人にも持ってもらえるようにしていきたいし、何かあれば協力したい。そしてお客さんにもそういう想いが伝わるようにしていきたいなと思っています。僕自身も、福岡に戻ってきたときは採算性と土地のことばかり考えていましたが、結果的にはブームになることすら予感せず、この場所に惚れ込んで店を構えました。お陰様で、ふらっと立ち寄って下さったお客さんとのコミュニケーションがつながって、常連さんもたくさんできましたし、ドライブに来たら寄ってくれる人も増えました。でもきっと、このエリアで勝算がありそう、という視点だけで店をやっていたら、こうはなっていなかったのではないかと思うんです」


ともすれば新規参入者に対し厳しい言葉ともとれそうな三嶋さんの想いですが、決してそうした排他的なニュアンスはなく、二見ヶ浦に魅せられた当事者としての素直な気持ちなのではないかと感じたことを最後に記しておきます。この地域の魅力を代弁してくれる存在のひとりとして、興味があればぜひ話を聞きに行ってみてください。コワモテに見えて、底抜けに優しい三嶋さんの人柄に触れると、二見ヶ浦のことを、今まで以上に好きになれるはずです。


(取材/後藤暢⼦)


<前編>


nap café(ナップ カフェ)

 住所:福岡県福岡市西区小田字外蒔2206
 電話番号:092-809-2692


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