(2019年2月取材)
漁師の⽣活や地域の雇⽤を⽀える北崎・唐泊の牡蠣養殖。前編では牡蠣養殖に着⼿した経緯や「唐泊恵⽐須牡蠣」の由来についてご紹介しました。後編では、漁協が運営するカキ⼩屋についてお話を伺います。
海釣り公園に隣接するカキ⼩屋。11 ⽉から春先にかけて、たくさんのお客さんでにぎわいます。今では当たり前になっている景⾊ですが、そもそもどういった経緯で始まったのでしょうか。
「もともとこの場所は、組合で獲れた⿂介類を売る朝市をしていたんです。地域はもちろん、福岡の街中の⽅も買いに来られていました。そしてカキの養殖をするようになって少し経った頃、『せっかくならここで⾷べたい』という声が相次ぎました。カキを焼いて出したところ、これがとても⼈気が出ましてね。次第に⼤きくなっていき、最終的にいまの形になりました」
朝市からスタートしたこの場所は、今でも漁協の組合員と地域の⽅々で完全運営しているそうです。
⻩⾊い壁が⽬印のカキ⼩屋。
近づくと焼き牡蠣の良い⾹りがしてきます
ここで森⽀所⻑が、ある雑誌を⾒せてくれました。
「これは台湾で発⾏されている雑誌なんですが、表紙と中の福岡の観光スポット特集で、カキ⼩屋を取り上げてもらったんです。その影響もあって、台湾からもたくさんのお客さんが⾷べにきてくださっています」
牡蠣⾷⽂化になじみのあることは前編でも伺いましたが、観光客⼈気に⽕が点き、地元メディアから取材されるまでとは驚きです。
実際の誌⾯。福岡特集の巻頭を飾っています
穏やかな海を眺めながら海鮮を頂く。このロケーションも⼈気のひとつ
こちらのカキ⼩屋の魅⼒は、⾙柱が⼤きいので⾝離れが良い牡蠣はもちろんですが、加えて「⽬の前に海が⾒える」ということも⼤きなポイントのようです。
「牡蠣の養殖って、⼊り江のような場所が多いので、その近くでカキ⼩屋をやると景⾊に期待できないことが多いんです。ただ、うちは朝市の場所でカキ⼩屋をやっているので、⽬の前は⼀⾯の海。これが『雰囲気が出てとてもいい』とお客さんにも喜んで頂けている理由のひとつです」
このカキ⼩屋のスタイルが始まったのは15 年ほど前。その頃、まだ全国的にもカキ⼩屋で成功しているケースは少なかったそうです。広島や宮城など、牡蠣の養殖で有名な地からも多く視察が訪れています。
「年間の⽔揚げ量は⾒込みで90 トンです。そのうち70%くらいは現地で、残りが量販店や輸出。カキ⼩屋は、だいたい毎年3〜4 万⼈の集客です。今でこそ全国的にカキ⼩屋は展開されていますが、始めた当時はまだ少なかったですね」
計画に合わせて、⽔揚げが多かった場合はPR に予算を使ったりと、森⽀所⻑が全体を把握しながら運営されている様⼦。漁港ではなく、朝市の場所で始めたことで、認知にかける労⼒があまり必要なかったことも成功の近道だったのかもしれません。その⼀つひとつの運営に無理と無駄がなく、しっかりと地域の営みに根付いているという印象を受けました。
丁寧に掃除され、出荷を待つマガキ
⽣でも⾷べられるマガキは、開いたらすぐに引っくり返して、ぷりっぷりの状態を頂きます
焼きガキ専⽤のポン酢も漁協で販売しているそうです
カキ⼩屋では、牡蠣をはじめとした⿂介のほかにパートのお⺟さんたちが作ってくれたおにぎりや牡蠣飯なども販売されています。醤油やポン酢などは常備されていますし、バターやレモンも販売されているので、味を変えたり焼きおにぎりにしたりと、様々な楽しみ⽅ができます。
よく「持込可能」というカキ⼩屋がありますが、ここではほぼすべてのものが揃っているので、「お腹が空いたからカキ⼩屋に⾏こう」と思い⽴ってふらりと⽴ち寄ることができます。
「地元のお⺟さんたちの気配り、⽬配り、⼼配りで運営しているので、⼤抵のものはありますよ。席は4 ⼈がけで80 テーブルあります。週末はかなりにぎわいますので、時間に余裕を持ってお越しください」
歴史ある漁港としての⽂化を守りながら、海外からの集客にも成功している唐泊漁港。しかもその雇⽤と運営をすべて地域で賄っているという素晴らしい地域循環型のビジネスモデルでした。ぜひ皆さんも、唐泊恵⽐須牡蠣を⾷べに⾏ってみてください。
(取材/後藤暢⼦)
営業期間:毎年11 ⽉初旬〜3 ⽉末
営業時間:[平⽇] 11時00分〜17時00分(オーダーストップ16時30分)、[⼟⽇祝] 11時00分〜18時00分(オーダーストップ17時00分)
店休⽇:毎週⽕曜⽇ ※祝⽇の場合は営業
HP:http://www.karatomari.jp/kakigoya/