移住して1年、28歳男性から見た福岡のリアル

平成25(2013)年12月に東京から移住し、福岡市民になってちょうど1年になるプランナー/ディレクターのカズワタベさん。ウェブに関わる企画・ディレクション・コンサルティング業務を中心に活動していますが、実は音大卒で、在学中から自身が結成したクラブジャズバンドのギタリスト兼リーダーとして活動していたという異色の経歴の持ち主でもあります。「福岡が気に入ったから」と移住して8ヵ月後の平成26年8月、ウミーベ株式会社(umeebe Inc.)を設立、代表取締役CEOに就任しました。そんなカズワタベさんに、リアルな福岡の姿を語って頂きました。

――まず福岡に移住した経緯について教えてください。

カズワタベ 経緯もなにも、ノリで決めましたからね(笑)。福岡に特別な“ツテ”があったわけでもなく、むしろ移住する前なんてほぼ無縁で、2泊3日で2回遊びに来たことがあるだけでした。その時に福岡のことをひどく気に入ってしまったのが移住のきっかけです。昨年11月に移住することを決めて、すぐに物件を探して翌月には福岡に住み始めました。

――フットワークが軽いですね。ちなみに不安はなかったですか?

カズワタベ それは全く!(断言)。子どもの頃から、親の都合で長野、新潟、山形、栃木、神奈川、東京と引っ越し、小学校だけで4つ通って育ちました。そのおかげか初対面の人ともすぐに打ち解けられるようになりましたし、どんな場所に行ってもやっていける自信がつきました。まぁ1日1杯牛丼を食べさせてくれる知り合いぐらいはいますし、食うには困らないだろうと(笑) 。個人的には、世の中の人たちは移住を大事にとらえすぎだと思ってます。やってみると意外と大したことないですから。

――移住先に福岡を選んだのはどうしてですか?

カズワタベ そうですね……福岡の人は地元がすごく好きで、外から来た人をもてなそうとする意識が強い。そういうところも福岡を選んだ理由のひとつですね。僕も移住してからは、地元の人たちに影響されたのか「訪れた人を、福岡を好きにさせて返す!」という妙な使命感を持つようになって、知人が来福したときにはいろいろと案内するようにしています。ただ、みんなその時は「福岡、いいところだね!」「移住したい!」とは言うんですが、なかなか移住に踏み切る人はいないんですよ。まさに“行く行く詐欺”で(笑)。

――行くって言ったのになんで来ないのかと(笑)。

カズワタベ もちろん僕の場合、当時はフリーランスで移住しやすかったわけですけど、「○○があるから行けない…」という考えだと、移住は出来ません。そういうときは先に期限を決めて「ここに移住をする」と決めた方がいい。例えば「1年後に福岡に行く」と決める。それから逆算して、何を解決すればいいのか、移住までの“障壁”をクリアしていく。先に移住することを期限付きで決めてしまって、その後生じる問題はその都度解決すればいいと思っています。

――実際に生活してみて、どんな点に、福岡で働くことのメリット、デメリットを感じますか?

カズワタベ 今のところ、福岡移住のデメリットは感じていません。街がコンパクトなので、移動のストレスがないのが特に魅力的ですね。僕は、東京にいたころは“人間が優先されていない街”に違和感を持って生活していました。例えば満員電車に乗りたいと思っている人は誰もいないのに、それがずっと存在し続けている。本来は需要がないものは、淘汰されていくはず。それにも関わらず、依然として満員電車が存在するのは、人間よりも経済合理性が優先されているからでしょう。国のことを考えれば必要悪ではあるものの、僕はそれが好きじゃなかったんです。福岡くらいの街だと、人間的で豊かな生活を送りつつ、経済活動も一定の水準で行うことができる。本当に、バランスの良い環境だと思います。

カズワタベさん

――福岡市はスタートアップ支援に力を入れ、日本の“シリコンバレー”を目指しています。

カズワタベ 福岡市がそういったポジションを目指そうとしているのは、とても面白い施策だと思っています。今日本でスタートアップの中心地である東京はアメリカで言えばニューヨーク的な都市なので、シリコンバレーがある西海岸っぽさはあまり感じません。西海岸でイノベーションを起こしてきたヒッピー・ムーブメントに端を発するオープンマインドな文化は、東京よりむしろ福岡と相性が良いように思えるんですよね。もちろん、まだまだ東京と比べても足りないものだらけですから、数年、もしくは数十年スパンで環境を整えていく必要があります。様々な施策を、正しい方向に継続してくことが求められますし、僕自身そこに貢献したいという思いが強いですね。

――福岡と言えば、“飲みにケーション”と言われますが、実際、どうでしょうか?

カズワタベ 福岡には限らないですが、もちろん重要です(笑)。こっちは飲むのが好きな人が多くて、平日から、3軒くらいハシゴすることが多いんです。移住して最初の3カ月は、毎晩飲み歩いて、意識して人と会うようにしていました。福岡で飲む楽しさのひとつに、物理的にもコミュニティ的にも狭いので、面白い人をすぐ紹介してもらえるということがあります。東京だと「渋谷で飲んでいるんだけど来ない?」と誘われても、自分が池袋にいたら遠くて合流できなかったりしますよね。福岡では、みんな中洲や天神あたりで飲んでいますから、「紹介したい人がいるから飲みに行こう!」と電話で誘えば「じゃあ、そっち行くわ」ということがよくあります。また、家賃が安いこともあり、中心部の近くに住んでいる人が多いので、終電を逃してタクシーで帰っても1000円や2000円くらいで済みます。だから、時間を気にせず飲めるんですよね。さらにはお店の価格も東京の68割くらいで、安く飲めるし、しかも美味しい!これ、重要なので太字にしといてください(笑)

 

[プロフィール]
カズワタベさん
http://kazzwata.be/
1986年4月生まれ。親の転勤で長野、新潟、栃木、山形、横浜、東京などを転々としながら育つ。ジャズ、音楽・音響デザインを専攻し、洗足学園音楽大学総合音楽科を2008年に卒業。在学中から音楽活動を行い、2009年にはアルバムをリリース。2010年、Grow株式会社を設立し取締役CCOに就任。2013年には独立し、フリーランスとしてウェブに関わる企画・ディレクション・コンサルティング業務を中心に活動。2013年12月に福岡に移住。2014年8月にはウミーべ株式会社(umeebe Inc.)を設立し、代表取締役CEOに就任。

 

[関連リンク]
ウミーベ株式会社(umeebe Inc.)
http://umee.be/
福岡市を拠点に、スマートフォンアプリ、ウェブサービスの開発・運営を行なう。名前の由来は『海辺』で、その名の通り、海が見える場所にオフィスを開設予定。カズワタベ氏曰く「せっかく福岡で起業するわけですから、環境を生かした自然を満喫できるエリアにオフィスを構えて、首都圏との違いをより顕著にしたかったんです」。