「フレイル」とは、加齢や病気によって心身の活力が低下し、要介護になりやすい状態のことです。早めに対策を行うことで、健康な状態に戻すことができます。いつまでも元気に過ごすために、できることから始めましょう。
健康な状態と要介護状態の中間の段階を「フレイル(虚弱)」といいます=下記。フレイルは、生活習慣病や加齢、孤立などによって心と体が衰えてしまうことで、進行すると考えられます。
フレイルを予防するためには、「栄養+口腔(こうくう)機能」「運動」「社会参加」の三つの柱を日常生活の中で意識することが重要です。糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防・重症化予防もフレイル対策につながります。
元気なうちから食生活を見直して運動を習慣化し、社会参加の機会を増やして、介護を必要とせず自立した生活を送れる期間(健康寿命)を伸ばしましょう。
健康
↓↑(予防の習慣化で元に戻れます)
フレイル
↓↑(戻りにくい)
要介護状態
フレイル予防のための三つの柱
栄養+口腔機能 元気な体は食事から
運動 楽しみながら続けよう
社会参加 人とつながろう
日本人の 「健康寿命」
男性
<平均寿命>81.05歳
<健康寿命>72.57歳
女性
<平均寿命>87.09歳
<健康寿命>75.45歳
出典:令和6年 健康日本21(第三次)推進専門委員会資料
「運動」と「栄養+口腔機能」
市は、福岡大学病院(城南区七隈七丁目)と連携協定を結び、フレイル予防に効果的な運動プログラムの開発を進めています。
福岡大学病院医師 藤見幹太さんの話
●自分の体を知ること
高齢になると、さまざまな要因で食欲が低下してしまうことがあります。栄養が不足し、体を動かさない状況が続くと、筋肉量が減ってしまい、フレイルにつながります。転倒してけがをすると、進行が早まる恐れもあります。
患者さんから「病気になる前に、もっと食事や運動に気を付けておけばよかった」という言葉をよく聞きます。元気であれば、旅行や趣味の活動をいつまでも楽しむことができます。
年に1回の健康診断で自分の体について知ることも大切です。健康なうちからフレイル予防に取り組みましょう。
福岡大学病院健康運動指導士 松田拓朗さんの話
●無理せず続けられる運動を
運動が大事だからと、急に思い立って始めても長続きしません。運動が苦手な人も、まずは座り続けている時間をほんの少し減らすことから始めてみてください。テレビを見ている時はCM中に立ち上がるなど、30分以上座ったままにならないことを心掛けてください。小まめに掃除機をかけるのもいいですね。歩いて買い物に行き、荷物を持って帰れば、それも立派な筋トレです。
積極的に外出して趣味を楽しむ時間をつくったり、公園まで散歩したりしてリラックスすることは、心の健康にも役立ちます。無理なく続けられる運動を、今日から始めましょう。
福岡県歯科衛生士会副会長 古賀直子さんの話
●健康の源はお口から
年齢を重ねると徐々に唾液の分泌量が減り、食べ物を飲み込む力が衰え始めます。食べられなくなると栄養が取れず、体力も衰えるという悪循環に陥ります。いつまでもおいしく食事が取れるよう、お口周りの筋肉を鍛えましょう。
人とおしゃべりをしたり、ぶくぶくうがいをするだけでも効果があります。お風呂の中で歌ったり、新聞の見出しを大きな声で音読したり、意識して声を出しましょう。舌や唇の筋肉を鍛える「パタカラ体操」もお勧めです。食事の前に行うと、飲み込む力が向上します。
噛(か)める力を維持することも大切です。定期的にかかりつけの歯科医院で健診を受け、虫歯や歯周病のチェック、口内の清掃をしてもらいましょう。
《パタカラ体操》
「パ」「タ」「カ」「ラ」と1音ずつ、また「パパパ…」「タタタ…」と10回程度連続して声を出してみましょう。
「パ」は唇の開け閉め、「タ」は舌の先、「カ」は舌の奥、「ラ」は舌を丸める力をそれぞれ鍛えます。
フレイル予防 市の取り組み
市は、▽元気な高齢者向けにフレイル予防に関する講話や実技を行う「フレイル予防教室」▽身体機能の低下がみられる高齢者向けに、自宅で継続できる運動を中心に低栄養予防や口腔ケアなどの講話や実技を行う「介護予防教室」―を、さまざまな場所で定期的に行っています。
詳しくは、市ホームページ(「福岡市 健康づくり介護予防」で検索)」で確認するか、各区地域保健福祉課へ。
また、市は市内在住のおおむね75歳以上の人の中から、医療・検診・介護のデータを基にフレイルのリスクが高い人を抽出し、健康状態の確認のために訪問する「フレイル予防ハイリスク者支援事業」を行っています。
詳しくは、地域包括ケア推進課(電話 092-711-4373 FAX 092-733-5914)にお問い合わせください。
《自宅でできる簡単トレーニング》
ふくらはぎの筋力アップ
つま先を床に着けたまま、かかとの上げ下げを繰り返す【10~20回】
かかと上げ
足腰の筋力アップ
足を肩幅に開きゆっくり腰を下ろし、ゆっくり立ち上がる【3~10回・1日3セット】
スクワット
出かけよう 人と話そう 参加しよう
人との交流や社会とのつながりが豊富な人ほど、健康度が高いといわれています。地域活動やボランティア、趣味、健康づくり、就業など、自分に合った活動に取り組んでみましょう。
よかトレ実践ステーション
市は、健康づくりに効果的な六つの体操を「よかトレ」と名付け、日々の生活に取り入れることを推奨しています。
これらの体操を実践し、主体的に健康づくりに取り組むグループを「よかトレ実践ステーション」として認定し、よかトレDVDの進呈や、理学療法士・健康運動指導士等の専門職派遣などの支援を行っています。1月現在で500を超える団体が登録し、活動しています。
●身近な施設でも「よかトレ」を実践しています
公民館や介護施設、薬局、医療機関などの施設でもよかトレが行われています。「よかトレ実践ステーション(施設版)」は1月末現在で市内に265カ所あり、皆さんの健康づくりを応援しています。
「よかトレ実践ステーション(施設版)」は原則無料で、予約も不要です。気軽にご参加ください。参加した人からは、「いつでも気軽に参加できるのがいいですね。顔見知りも増え、毎回来るのが楽しみです」「家から歩いて来るのもいい運動になります」「よかトレや習い事など、曜日ごとにスケジュールを決めて、できるだけ外出するようにしています」といった声が聞かれました。
よかトレについて詳しくは、市ホームページ(「福岡市 健康づくり介護予防」で検索)で確認するか、下記の各区地域保健福祉課にお問い合わせください。
介護支援ボランティア
65歳以上の人が介護施設等でボランティア活動を1日1時間以上行うと、200ポイントがもらえ、1ポイント=1円で換金または寄付ができます(年間5000ポイントが上限)。
ボランティアの内容は、▽レクリエーションの補助▽囲碁・将棋など趣味の相手▽施設内外での散歩の付き添い▽芸能披露▽食事介助の補助―などです。
問い合わせは、市社会福祉協議会ボランティアセンター(電話 092-713-0777 FAX 092-713-0778)へ。
生き活(い)き講座
保健師や健康運動指導士等の専門スタッフが、地域の公民館などに出向き、フレイル予防や健康づくりをテーマに無料で講座を行います。おおむね65歳以上の人が対象です。10人以上のグループでお申し込みください。問い合わせ・申し込みは下記の各区地域保健福祉課へ。
【問い合わせ先】
各区保健福祉センター地域保健福祉課
区 電話 ファクス
東 092-645-1088 092-631-2295
博多 092-419-1100 092-402-1169
中央 092-718-1111 092-734-1690
南 092-559-5133 092-559-5135
城南 092-833-4113 092-822-2133
早良 092-833-4363 092-833-4349
西 092-895-7080 092-891-9894
高齢者向け各種教室
市内7カ所にある「福岡100プラザ」や「老人いこいの家」で、さまざまな講座・教室を行っています。内容や申し込み方法など詳しくは、本紙6面をご覧ください。
市のフレイル予防への取り組みについて詳しくは、地域包括ケア推進課(電話 092-711-4373 FAX 092-733-5914)へ。
白十字病院(西区石丸四丁目)敷地内のサロン「いしまるしぇ」では、第1・2・4水曜日午前10時から10時20分によかトレを実施しています
施設によっては、体操後にウオーキングなどを行うこともあります
活動場所を提供します高齢者生き活(い)きパートナー事業
市は、高齢者が身近な場所で継続して健康づくりに取り組むことができるよう、事業者の協力を得て、運動施設や会議室等の場所を無料で提供しています。
現在、医療機関や有料老人ホームなど37の事業者を「高齢者生き活きパートナー」として登録しています。詳しくは市ホームページ(「福岡市 高齢者生き活きパートナー事業」で検索)に掲載しています。
●パートナー事業者を募集
「地域に貢献したい」「地域の健康づくり活動の場所に活用してほしい」という事業者を募集します。詳細は、ホームページで確認するか、地域包括ケア推進課(電話 092-711-4373 FAX 092-733-5914)へ。
フレイル予防啓発リーフレット
市は、フレイル予防について広く知ってもらおうと、「高齢者」「子世代」「孫世代」それぞれに向けたリーフレットを作成しました。フレイルのセルフチェックや、低栄養を防ぐ食事のポイント、簡単にできる運動などを紹介しています。
「高齢者」「子世代」向けは情報プラザ(市役所1階)や各区役所情報コーナー、入部・西部出張所等で配布するほか、市ホームページ(「福岡市 健康づくり介護予防」で検索)でも閲覧可能です。「孫世代」向けは市内の小学6年生にお渡ししています。
「食」×フレイル予防イベント
【日時】 3月6日(木曜日)午前10時から正午
【場所】 イオンショッパーズ福岡店地下1階(中央区天神四丁目)
【料金】 入場無料
【申し込み】 不要
低栄養を防ぐ10食品群を表す相言葉「さあにぎやかにいただく」について紹介します。来場者には管理栄養士が作成した「フレイル予防レシピ33」を差し上げます(1人1冊)。また、ガラポン抽選会も実施します(参加には要件あり)。
「運動」×フレイル予防イベント
【日時】 3月7日(金曜日)午前10時から午後2時
【場所】 ブランチ博多パピヨンガーデン1階北棟(博多区千代一丁目)
【料金】 無料
【申し込み】 不要
スポーツクラブの協力による体力チェックを行うほか、日頃から無理せず続けられる体の動かし方のこつをお伝えします。
■問い合わせ先/地域包括ケア推進課
電話 092-711-4373
FAX 092-733-5914
オンライン フレイル予防講座
市は、フレイル予防に役立つオンライン講座を無料で実施しています。
オーラルフレイル予防のため
~口トレ!はじめましょう~
【日時】 2月26日(水曜日)午前10時30分から11時30分
【講師】古賀直子氏
元気でいきいき!フレイル対策を続けましょう
【日時】 3月13日(木曜日)午前10時30分から11時30分
【講師】山田実氏(筑波大学 人間系 教授)
当日はウェブ会議システム・Zoom(ズーム)を使用します(各先着300人)。1人でもグループでも参加可。
■問い合わせ先/オンラインフレイル予防講座事務局
電話 050-1754-9280(平日午前10時から午後5時)
メール info@kaigo-frailty-yobo.net