福岡市は、水源のおよそ3分の1を筑後川に依存するなど、地理的に水資源に恵まれていないため、新たな水源開発とともに、各種の節水施策に積極的に取り組んでいます。また、昭和53年の大渇水を契機に、水源かん養機能を有する水源かん養林の重要性を再認識し、市内の本市水道専用ダムである曲渕、脊振、及び長谷ダムの集水区域1)内の山林等を取得・整備を行うことにより、水源かん養機能を高めるとともに、乱開発等による水質の汚染防止に努めています。令和3年3月末現在、3つのダムの集水面積の約3割(566.2ヘクタール)を本市水源かん養林として所有しており、この管理を適切に行うため、平成16年度に向こう60年間に亘る「福岡市水道水源かん養林整備計画」を作成し、間伐などの計画的な整備に取り組んでいます。
曲渕水源かん養林
脊振水源かん養林
長谷水源かん養林
森林の土壌は、落ち葉やミミズなどの土壌生物の働きによって、すき間の多いスポンジのような構造になっており、降った雨を浸透させ、また一時的に土壌内に貯水して洪水を抑制(洪水緩和機能)し、降雨のない期間でも河川などにゆっくりと流出(雨水貯留機能)する機能があります。また、流出する水は、濁りが少なく、下流の河川・湖沼の富栄養化の原因となる窒素やリンをわずかしか含まない(水質浄化機能)特徴があります。
間伐4)など、しっかりと森林の手入れを行い、様々な樹木や草などが生育している森林は、このような機能を効果的に発揮してくれます。これら3つの機能を十分発揮できる森林が、水源かん養機能の高い望ましい水源かん養林です。
一つには水源かん養機能を持つ森林ですが、また同時に、公有地として市民の理解と協力を得ながら適切な水源林を維持していくために、市民との関わり合いの機能を持つ森林をもう一つの理想像として掲げています。
(1)人工林
望ましい人工林(約50年生のスギ林)
(下層の広葉樹が大きくなり複層林化した人工林)
(2)天然林
(3)森林以外の土地
効率的かつ効果的な水源かん養林整備を進めるため、森林GIS12)を導入した管理システムの整備を図り、水源かん養林のデータを蓄積します。
(水源かん養林管理システム)
私有林(保安林指定林は除く)を対象に、現地の状況に応じた効率的な森林の取得に努めます。
間伐などで発生した木材の利用については、有効活用を積極的に推進します。
水源かん養林の役割や重要性を積極的にPRするとともに、身近な自然の場として、市民が水源かん養林とふれあう活動の拠点となるような森づくりを推進します。
(1)市民活動の推進
水源かん養林の整備にあたっては、育林活動などを行う市民ボランティアを育成するとともに、市民団体が水源地域において実施する植樹・育林等の活動に対し経費の一部を助成するなど、市民参加の森づくりを推進します。
(2)啓発活動の推進
福岡市のHP、広報紙などを通じ、水源かん養林の大切さについて広く周知・啓発を図ります。また、子どもたちを対象とした体験学習等を通じて、水源かん養林に関する認識を深めるなど森林に関する環境教育を推進します。