福岡市では、持続可能なまちづくりのための取組みとして、事業所から排出される「生ごみの堆肥化」を推進しており、また、生ごみ堆肥を活用した「コミュニティガーデン」をサポートしています。
生ごみ堆肥を活用した「コミュニティガーデン」に取組む、大丸福岡天神店を取材してきました。
大丸福岡天神店(中央区天神)
運営事業者:株式会社 博多大丸
福岡市の中心地、天神にある百貨店「大丸福岡天神店」。
そのエルガーラ・パサージュ広場の一角で、生ごみを資源に変え、食と農の循環を生み出すユニークな取り組みが行われています。
博多大丸の担当者の皆さんに、その思いと活動内容を伺いました。
株式会社博多大丸 営業統括部営業推進部 松木さん、髙宗さん
株式会社博多大丸 業務統括部業務推進部 藤原さん
-まず、コンポストに取り組もうと思われたきっかけを教えてください。
松木さん:以前から大丸の本社が東京でローカルフードサイクリング株式会社(以下、LFC)と連携したコンポストなどの取組みを行っており、本社から弊社にもLFCさんの紹介があったことから、社内プロジェクトが立ち上がりました。2022年の9月から始めたと記憶しています。
-具体的にどのように取り組まれているのですか。
松木さん: 10個のバッグ型コンポストを使って、従業員食堂の生ごみを堆肥化しています。従業員で当番制にして、2人1組か3人1組くらいで毎日コンポストに生ごみを投入しています。
入れる量は1つのバッグあたり400gから500gぐらい、だいたいスーパーのビニール袋の半分ぐらいの量を目安にしています。5つのバッグに毎日生ごみを入れ、もう5つは熟成中という形で運用しています。
コンポストでできた堆肥は、以前から渡辺通りの花壇での「一人一花運動」に活用したりしていました。
-従業員の皆さんの反応はいかがでしたか。
藤原さん:SDGsやサステナブルといった視点は、とっつきづらい部分もあるのですが、コンポストは生ごみが堆肥に変わっていく過程が目に見えるので、皆さん楽しそうに取り組んでいます。最初は「これは何だろう?」と思われた人も、やってみると楽しいと感じてくれており、個人的にコンポストを購入して始めた人もいます。
会社として環境の取組みをやる場合、どうしても「その担当者だけがやっている」という状態になってしまいがちです。
そのため、弊社では社内の各部署にサステナブルの推進担当がいて、社内横断のプロジェクトとして取り組んでいます。
-なるほど。そこからどのようにしてコミュニティガーデンへと発展していったのでしょうか。
松木さん:当初はガーデンを作る計画はありませんでしたが、コンポストだけでは資源を循環している実感が湧かず、社内の認知がなかなか上がっていかないと感じていました。また取組みの外への発信が十分にできていないという課題もあり、「じゃあ堆肥を使って野菜を育ててみよう」という話になりました。そこから社内で企画を通し、去年(2024年)10月にエルガーラ・パサージュ広場(以下、パサージュ広場)にコミュニティガーデンを開設しました。
-コミュニティガーデンを始められてから、何か変化はありましたか。
藤原さん:目に見えるものができたことで、お客様や従業員の関心が高まったと感じています。以前、ハーブとお花だけのプランターだった時はゴミを捨てられたりすることもあったのですが、コミュニティガーデンとして野菜を育てるようになってからは、そういったこともなくなりました。
-それは素晴らしいですね。お客様の反応はいかがですか。
松木さん:単に野菜づくりをやるのではなく、お客様に伝えることが大切だと考えています。そのため、「生ごみをコンポストで堆肥化できること」「堆肥を使って野菜づくりを行っていること」が目に見えるよう、コミュニティガーデンにコンポストの展示ケースや看板を設けました。実際に覗き込んでいかれるお客様も多く、収穫していた時にたまたま興味を持っていただいたお客様に野菜をお裾分けしたこともあります。インバウンドの外国人のお客様も興味深そうに見ていかれます。「ああ、こういうことをやっているんだ」と、グーサインを出してくださる方もいますね。
また、パサージュ広場では色んな場所にベンチを置いていますが、不思議とコミュニティガーデンの辺りに座っている方が多いと感じています。癒しの空間にもなっているのかもしれません。天神の中心部でそういった空間を提供できているのであれば嬉しいですね。
-今後の展望について教えてください。
藤原さん:パサージュ広場は意外と広いので、もっとプランターを増やしていきたいですね。
また、以前からパタゴニア福岡さんとは一緒に取り組んでいますが、他のテナントさんや企業さんとも連携して、この取り組みを広げていけたらと思っています。コミュニティガーデンについてホームページに載せたり、フードドライブの会合などでも紹介したりしていますが、結構たくさんの企業さんからお問い合わせをいただいています。天神のど真ん中でこういった活動をしているのを面白いと感じていただいているようです。
-そういえば、パサージュ広場で鍋をつくられた、という話も聞きましたが...
松木さん:はい、以前コミュニティガーデンで収穫した野菜を使ってパサージュ広場で従業員向けに鍋を作ったことがあるんです。その場で収穫してその場で食べる、というのを一度やってみたいと思っていました。まずは内輪で、こっそりと(笑)。
実際に食べてみることで、資源の循環をリアルに感じることができると考えています。
-それは楽しそうですね!
松木さん:4月にはお客様向けのイベントも予定しています。コミュニティガーデンでお客様と一緒に野菜を収穫して、サンドイッチを作って食べる予定です。そういったイベントも定期的に行っていきたいですね。