現在位置:福岡市ホームの中のくらし・手続きの中の人権・男女共同参画の中の男女共同参画の中の男女共同参画推進センター・アミカスの中のアミカス出版物からAmikas Voice vol.6
更新日: 2022年3月3日

Amikas Voice vol.6 
 2022 FEBRUARY  


「男ってなんで〇〇なの?」

その正体を探る


清田さんの写真

清田 隆之 Takayuki Kiyota

文筆業
恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表


PROFILE  
1980年東京都生まれ。文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。早稲田大学第一文学部卒業。これまで1200人以上の恋バナを聞き集め、「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオなどで発信している。朝日新聞beの人生相談「悩みのるつぼ」では回答者を務める。
2021年12月『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』(扶桑社)を出版。その他の著書に『よかれと思ってやったのに―男たちの「失敗学」入門』(晶文社)、『さよなら、俺たち』(スタンド・ブックス)など。



Column 私たちには「自分語り」が必要だ

ジェンダーの問題を考えるとき、必ず何かしら自分自身にはね返ってくるものがある。ジェンダーとは「社会的・文化的に形成される性差」と訳される言葉で、教育や環境、制度やルール、メディアから受け取るメッセージ、周囲からの扱われ方や身近な人たちとのコミュニケーション……など様々なものを通じて知らぬ間に内面化されていく規範や役割意識を指す。

いわゆる「男らしさ」とか「女らしさ」とか「男はこうあるべき」とか「女はこうあるべき」といったものが代表例で、誰しもその影響から逃れることは難しい。


清田さんがパソコンをタイプしている写真


■女性たちの恋バナに登場する男性像
私は普段、恋バナ収集ユニット「桃山商事」の一員として様々な人の失恋体験やお悩み相談に耳を傾け、そこから見える恋愛とジェンダーの問題をコラムやラジオで発信している。

話を聞かせてくれる人の大多数は異性愛者の女性で、語られるエピソードには彼氏や夫、上司や先輩、アプリや合コンで出会う人など様々な男性が登場する。彼ら自身が悩みや苦しみの原因になっているわけで、その発言や行動は基本的にネガティブなものだ。だからもちろん偏りはあると思う。しかし、すべて異なる男性の話であるはずなのに、同じ人なのかと疑いたくなるほど似通った言動を見せる。

女性たちも口を揃えて「男ってなんで○○なの?」と言う。この背景には間違いなくジェンダーの影響があり、それは異性愛者の男性である私自身にも深く突き刺さってくる。

その一方で、女性たちは「男の考えていることがよくわからない」とも言う。ケンカでも話し合いでも、ちょっとした雑談の中でも、「なぜそうしたのか」「あのとき何を思っていたのか」「これについてどう感じているのか」と問うても男性たちから具体的な言葉がほとんど返ってこない。感情や心の内側にあるものが見えず、モヤモヤを募らせているケースがとても多い。


女性からの恋愛相談に出てきた〇〇な男たち

●小さな面倒を押し付けてくる男たち
夫がバスタオルの置き場所をいちいち聞いてくる。

●何かと恋愛的な文脈で受け取る男たち
職場の男性を褒めたら好意があると勘違いされた。

●人の話を聞かない男たち
夫に愚痴ったら話も聞かず解決策を提案してきた

●プライドに囚われる男たち
面白い男友達の話をしたら、彼氏が不機嫌になった。

●上下関係に従順すぎる男たち
彼氏は先輩からの誘いを断れず、私との約束を何度もドタキャンした。

清田隆之『よかれと思ってやったのに―男たちの「失敗学」入門』より


■一般男性の“自分語り”から見えたもの
この冬、私は『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』(扶桑社)という長いタイトルの本を出版した。パッと見“普通の人”と思われそうなマジョリティの男性10人に身の上話を伺い、彼らが何を感じ、どんなことを考えながら生きているのか、その声にじっくり耳を傾けたインタビュー集だ。

一般的に男性は、ニュースやゴシップ、仕事や趣味のこと、あるいは自慢話や武勇伝のような話題に関してはわりと雄弁に語ったりする。しかし、もっとプライベートな領域の、恥ずかしい部分や弱い部分を含めた自分の話を語ってくれる機会は意外に少ない。そういう語りを聞いてみたいと思ってスタートしたのがこの企画だった。

企画の立ち上げから本の完成までおよそ2年の時間を要した。最も苦労したのは人探しの部分で、個人的な価値観や思想信条、またプライバシーに関わるセンシティブな情報などを含むため、そう簡単に語ってもらえるものではもちろんない。そして様々な縁をたどり、10人の男性と出会う機会に恵まれた。

先行きの見えない不妊治療の苦しみを吐露してくれた男性もいたし、DV(ドメスティック・バイオレンス)をしてしまった過去を語ってくれた人もいた。数々の不倫体験を赤裸々に話してくれた人もいたし、うつ病の体験から得たものについて教えてくれた人もいた。もちろん身バレのリスクを少しでも抑えるため、彼らの名前や職業はもちろん、語られるエピソードにも様々な加工を施してある。

しかし、そこには男性たちが苦手とされる「感情の言語化」や「弱さの開示」に満ちていて、バラエティ豊かな人生録でありながら、同時に典型的かつ普遍的な男性問題が随所に染み込んでいるような本になったと思う。



本の表紙の画像

自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと
清田 隆之/著 扶桑社

「男の考えていることはよくわからない」のか?
「感情の言語化」と「弱さの開示」の先にあるものとは?
劣等感、権力欲、マウンティング、ホモソーシャル、処女信仰、ED、DV etc.
見たくなかった自分と向き合った男たちの、切実な「自分語り」の記録。



■自分の話をするのはダメなことなのか
ジェンダーの問題を考えるとは自分の中に深く潜っていくことでもある。だから私たちは、もっともっと自分の話をするべきではないだろうか。

人に気を遣い、空気を読むことが是とされるこの社会では「自分語り」は慎むべきものとされる傾向にある。でも、自分の話をする中で自分のいいところや悪いところ、あるいはその背景にあるものがいろいろ見えてきて、自己理解が深まる。そして誰かに自分のことを知ってもらうきっかけにもなるし、誰かのことを知るきっかけにもなる。それらが積み重なることで人間関係や社会構造の問題が解きほぐれていく……。

今必要なのは「自分の話をすること」なのではないかと感じる執筆体験だった。



お子さんと一緒の清田さんの写真

現在、双子の子育て中。




#アミカスに相談してみた #この人と結婚していい? #happy #lifestyle

お悩み:
20代女性。同棲している彼が家事をしません。2人ともフルタイムで働いており、疲れて帰ってきますが、なぜ自分だけが食事を作らないといけないのか、なぜ彼はゲームをしているのか、わかりません。家事分担を決めたのに、彼はすぐにやらなくなります。この人と結婚していいのか悩んでいます。

お答え:
仕事で疲れて帰宅したら、次は彼の分まで食事作り。なのに、彼は自分だけゲームをしている。疑問を感じるのももっともですね。

彼が同じように疑問を持たないのは、彼の中に「男は仕事、女は家庭」という、男女の固定的役割分担の意識があるからかもしれません。現在は、個人の能力を性別で決めつけず、その人らしさを発揮していくことが求められています。女性が家事をするのは当たり前のことではないと彼に理解してもらわなければ、この問題が終結することは難しそうです。

また、家事に意識がいかない人は、実際にどんな家事労働があるかを分かっていないこともあります。家事分担をする時には、あらゆる家事を項目にして書き出してみてください。それぞれ得意なこと、苦手なこともあるでしょう。偏りがないか、無理がないかを確認して、納得がいくまで話しあってみるといいですね。

結婚後、彼がすぐに家事をできるようになるとは言えません。この同棲生活で、結婚後の生活を見極めることもあなたにとっては大切かもしれませんね。
 相談員



アミカス相談室の案内。毎日10時から16時30分まで。電話番号 092-526-3788





明日はもっといい日





画像:須藤美香さん

須藤 美香
コラムニスト、コーディネーター


PROFILE
米国発のポジティブ心理学を学び、独立。
「自分らしく生きる」をテーマに、執筆やイベントのコーディネートを行う。
須藤美香ブログ
Podcast「須藤美香の今日も待ってたよ」



みなさん、最近、「モヤモヤ」しましたか?
日常生活のなかで、「モヤモヤ」することってありますよね。わたしたちは、自分が納得いかないできごとに直面したとき、そしてその原因や違和感を明確に言語化できないときに「モヤモヤ」を感じます。あまり気持ちのいいものではありませんが、別の視点からみれば、この「モヤモヤ」の裏側には、あなたが大切にしている価値観が隠れていたり、「あなたは本当はこう思っているんだよ」と本音を気づかせてくれる存在でもあります。

例えば、

「なんで、わたしばかりお茶を淹れてるんだろう」
「なんで、僕ばかりリードすることを求められるんだろう」

そんな個人的なことから、

「なんで、『子どもが熱を出した』って早退するのはお母さんばかりなんだろう」
「なんで、男性が育休を取ると理由を聞かれるんだろう」

りますよね。

すべて、その裏側には「何故?」という疑問と、それに納得がいっていない自分、「本来もっとこうじゃない?」と思う自分がいるのです。そして、この「本来もっとこうじゃない?こうしたほうがよくない?」とあれこれ考え出すところから、自分のあり方を変える「自己改革」、そしてコミュニティや社会を変える「社会改革」がスタートするのです。


「モヤモヤ」は未来への希望
「モヤモヤ」は、未来につながる「タネ」です。あなたの感じたその違和感を飲み込むのではなく、友だちと愚痴を言い合って終わるのではなく、そこから自分や社会の未来を変えるために、何ができるか考えてみませんか?