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更新日:2024年7月30日

Amikas Voice vol.11 
 2024 AUGUST  

目の前のモヤモヤをワクワクに変える社会起業家


中村 路子 
Michico Nakamura

一般社団法人umau. 代表
まちびと会社 visionAreal 共同代表



PROFILE 
1981年久留米市生まれ。大学2年と高校3年の2児の母。女性が好きなことを仕事にするコワーキングスペースや、小さなエリアで地域を考える「くるめ10万人女子会」などを展開。2020年子育て拠点「じじっか」を立ち上げ、一般社団法人umau.(ウマウ)を設立。久留米市を中心に地域活動のプロデューサーとして、コミュニティを育み続ける。「『できること』が増えるより『楽しめること』が増えるのが、いい人生」が自分理念。気さくな性格から、みんなに「みっちゃん」と呼ばれている。




Interview
ないものは自分たちでつくる

久留米市でさまざまな地域活動を立ち上げ、地域が抱える課題をビジネスの手法により解決する事業(コミュニティビジネス)を展開している中村路子さんにインタビューしました。





■はじめに立ち上げたプロジェクトは?
26歳で離婚しましたが、その時子どもが1歳と3歳でした。ひとり親家庭に対していろんな支援があったけど、子どもを預けてもっと働こうという制度ばかりに思えました。ありがたいのは大前提ですが、選択肢が1つしかないのは生きづらいし、子連れでも母親たちのスキルを生かせる機会をつくりたいと思いました。
また、母親になると自分を制限してしまう人が多いことに気付きました。子どもがいるから、お金がないから、夫が許さないからって、やりたいことがあって能力もあるのに最初からあきらめているんです。母親になっただけでできなくなるなんてもったいないと思い、はじめに女性のためのコワーキングスペース「Mellicore social base(メリコア・ソーシャル・ベース)」をオープンさせました。そこではヨガやメイクなど、フリーランスの母親たちが資格や好きなことを生かして仕事ができるようにしました。


■2020年に始めた「じじっか」とは?
「実家よりも実家」が合言葉の子育て拠点です。ひとり親家庭を中心に約300世帯が所属し、無料で提供する親子食堂や、寄付でいただいた食材や洋服などを必要な人に届ける活動、個別学習や生活支援などを行っています。久留米市の受託事業、民間団体からの補助金、企業からの寄付などで運営しています。
元々はシングルマザーの集まりからスタートしました。母子家庭というと「貧困、かわいそう」と同情されることに疑問を持ちました。離婚したからって、1人で育てているからって、不幸じゃない。手が足りないなら、みんなで育てればいい。当事者だからこそ見える視点があるし、社会に足りないものを自分たちでつくっていかない限り、これは変わらないと感じました。





■これらの活動を続けられた理由は?
小さくても何かしらのビジネスにつながって、暮らしを維持することができたからです。コンセプトに共感した人が集まると、可能性が広がってビジネスが膨らんでいきます。地域社会やまちづくりには何かしらの隙間があって、その隙間を埋めていけば、きっと誰かの助けになるということが、私のモチベーションになっています。そして、そこにビジネスチャンスがあると思っています。


■活動する上で大切にしていることは?
第三者に思いをうまく伝えることです。事業は一人ではできないし、ビジネスチャンスを生かすためには、同じ志を持った仲間が必要です。そのためには、抱いているモヤモヤをワクワクに変えて人に伝える必要があります。共感を生み出し、関われる幅を広げて、仲間やスポンサーを見つけていきます。周りの人に一緒にやりたいと思ってもらうため、目的や思ったことを言語化し、コンセプトやキャッチコピーなど、共通言語をつくるようにしています。
共通言語をつくるためには、まず、何を大事にしたいのか、何を解決したいのか、目的を考え、その目的全てに結びつくような言葉を考えます。案が浮かんだら、誰がどんなふうにそれを使っているのか場面を想像してみて、その言葉で3時間語れるような言葉がいいと思います。「じじっか」もその一つです。



「じじっか」の親子食堂。主に週末に開催。無料で食事を提供し、必要な人には配達もしている。





■地域活動をしていてよかったことは?
ありすぎる~!(笑) とにかく感動する数が超増えます! 例えば、「じじっか」に来ている小1の男の子で、歌がめちゃくちゃ上手な子がいるんですよ。「イベントの時に歌ってみない?」って声かけたら、相当練習して、緊張しながらも本番は見事に歌い上げました!みんな拍手喝采で、感動しました。子どもたちがまだ気付いていない自分の能力を引き出してやれるのは、周りの大人たちなんだと思います。こういった地域活動の上に、その子との関わりが生まれて、地域みんなで一緒に子どもをみていく環境が生まれます。
他人のことでこんなにうれしくなれる。1人だけ、自分の家族だけだったら絶対無理なことです。感動が増えるってことは、結局人生が豊かになるってことですからね。




「じじっか」内の寄付で集まった洋服やランドセル。お店のようにレイアウトしていて、必要な人に届くシステム。




■これから何か始めたい人へのメッセージ
私の「こういうのがあったらいいなぁ。ないなら、自分たちでつくってみよう」という発想は、大好きだった祖母の影響です。祖母は「すでにでき上がった土台に花を咲かせるのではなく、人のため、社会のため、後に続く後輩のための礎となりなさい」とよく言っていました。この精神は、私が関わる全ての活動に共通しています。
こんなのあればいいなと思い付いたら、頭の中で100%完成してから動くんじゃなくて、私はいつも60%の段階で動くようにしています。これがプロジェクトを生み出す秘訣です。とにかく実験的にやってみて、改善していく。私の活動は、ほぼその実験の積み重ねです。
そして、できない理由は探さない。できる理由しか探さない (笑) 。できないって言ってる人を見ると、そこだけ見てたらもったいないよって思うし、できる理由を一緒に探したくなっちゃう。最初から完璧を目指すとか、条件が整ってからやるとかって言ってたら、いつまでもできませんから。


みっちゃんの原動力


  • 母からいつも「みっちゃんを信じる」と言われて育ったので、自分を信じることができた。
  • 「目の前に起こることは、すべてベストタイミング」と考えるようにしてから、イヤなことがあっても「結果的によかった。別な意味があるんだ」と思うようになった。焦る気持ちや人を責める気持ちがなくなった。
  • 好きな音楽をかけながら、ドライブする。誰にも邪魔されない、最高に気分のいい時間を、1日5分でもいいからつくる。



#アミカスに相談してみた #母と娘 #過干渉 #「あなたのため」は誰のため?

お悩み:
20代女性、独身。離れて暮らす実家の母との関係で悩んでいます。幼いころから褒められた記憶はなく、進路や就職も「あなたのため」といろいろ言われて育ちました。母の期待に応えようと頑張ってきましたが、いまだに彼氏や結婚についても持論を押し付けてきたり、近所の人の愚痴を言ってきたりするので、もう疲れました。あまり会いたくないけれど、無視するのも罪悪感があります。


お答え:
お母様との関係に悩んでおられるのですね。大人になっても無視できないのは、自分の母親だからでしょうか。お母様も他人に同じことはしないのに、娘だからそうなるのかもしれません。
女性は時に、女性として社会から期待される役割を押し付けられ、女性であるために思い通りにならないことがあります。そうした人生を母が娘に重ねる時に、過剰な期待や過干渉になりやすいのかもしれません。
その近さゆえに境界線があいまいなまま、子どもをコントロールしようとする親もいます。そのような親は、子が親の言葉から外れることがあれば罪悪感を植え付け、非合理なことも感情に訴えて動かそうとするのです。しかし、親と子は別々の人格です。子どもであっても自分の思考・感情・生き方があり、それを尊重されていいのです。
あなたは今、お母様に会いたくない自分と、それに罪悪感を持つ自分がいて、迷っているようです。これまでも、お母様の期待に応えようと頑張っていた自分とは別に、他の進路や就職を望んでいた自分がいたかもしれません。どの自分でいることが本当に「あなたのため」なのか考えてみると、お母様との関係の取り方が見えてくるのではないでしょうか。お母様と距離を置く自分もいいし、お母様の話を聞き流す自分、思い切って自己主張してみる自分でもいいと思います。あなたが出した答えがどんな自分であっても、それは尊重されるべきものです。   相談員










写真とことば
ジェンダー・デザイン・コンテスト
作品紹介





2022年 最優秀作品 
山下千恵




これは20年前の私と息子の写真です。母親になり仕事を探したこの20年間で、全て実際に面接官から言われた言葉です。

私の人間性や能力、個性は全く問われていません。この質問は、母親にしかされない。なぜそれが当たり前になっているのだろう?
世の中、女性より稼いでいる男性が多い。「女性は稼ぎが少ないから、子育ても家事もちゃんとやるべき」という呪縛がありませんか?
 
男性はその特権を享受していること、女性はもっと自由になっていいのだということを、それぞれがもう一度考えてみませんか?



福岡市と九州大学芸術工学研究院 社会包摂デザイン・イニシアティブが連携し、ジェンダー平等について考えるきっかけをつくるポスターを募集。全国から160点が寄せられた。