「コロナ禍の家庭に起きる暴力~DVと児童虐待~」 (350kbyte)
(講師プロフィール)
ドメスティック・バイオレンス及び児童虐待防止などに関する講演多数。
福岡県同和問題をはじめとする人権問題に係る啓発・研修講師、県内自治体の男女共同参画審議会委員などを努める。
民間団体「こどもCAPふくおか」代表。西南女学院大学人文学部教授、九州大学基幹教育「男女共同参画」非常勤講師。
専門はジェンダー論、社会学、家族社会学、福祉社会学。
7月の「福岡県同和問題啓発強調月間」に合わせて、人権を尊重し多様性を認め合うまちづくりを目指して毎年「城南区人権を考えるつどい」を開催しています。
今年は、認知症を患う父親とその家族の姿を描いた映画「長いお別れ」の上映会を実施しました。
(文責 城南区生涯学習推進課 岩瀬 賢治)
父親の70歳の誕生日に集まった2人の娘たちに母親から告げられたのは、厳格な父親が認知症になったということでした。
思いもよらない事態にそれぞれの生活に悩みを抱えながらも、次第に記憶を失くしていく父親との関わりも大切に、試行錯誤しながら進んでいく家族。
シリアスな問題の中にもコミカルに描かれているところもあり、思わずクスっと笑ってしまう場面もありました。そういうこともあってか、上映が2時間を超える映画でしたがとても短く感じました。
映画の内容では、認知症の父親を母親や2人の娘が支え、理解しようとしている姿に感心させられました。
実際、自分の身に置き換えてみて、身内が認知症になったら、果たしてこの映画の登場人物のように優しく振舞えるかというと、とても難しいのではないかと思いました。
(c)2019『長いお別れ』製作委員会(c)中島京子・文藝春秋
劇中で、この父親が何度も「家に帰る」と口にする場面が出てきました。
家族は「ここ(今住んでいる家)が、あなたの家ですよ」と説明したり、生まれ育った実家に連れて行ったりします。
しかし、どこも違うようです。映画の中ではその応えは『ここだ!』という場面はありませんでした。
また、父親の寿命が近づいた時、人工呼吸器をつけるかどうかという選択をする場面で、母親と2人の娘が話をします。
娘たちは「お父さんだったら、『余計なことはするな!』って言うと思うよ」と言います。母親は「私の心はもう決まってますよ」と毅然と答えます。いつも穏やかな母親とは違う姿に娘2人は驚いたように顔を見合わせます。ただ結論は描かれていませんでした。
この2つの場面について、作者はわざと答えを描かなかったのでしょうか。私は観る側の心に何かを投げかけたかったのかなと思いました。会場で一緒に鑑賞された後に「自分はこう思ったよ」「私は違った感想を持ったよ」などと意見交換をされた参加者の方もいらっしゃったのではないでしょうか。
他にも色々と考えさせられる場面がとても多い映画で、鑑賞後は何とも言えない充実感がありました。
(c)2019『長いお別れ』製作委員会(c)中島京子・文藝春秋
認知症の症状は周囲の人の関わり方で悪化のスピードが違ってくるそうです。認知症のことを正しく理解し、可能な限り受容できるようになれればと思いました。そうすることが認知症の方にとっても、周囲の方にとってもプラスになるのではと思います。
厚労省によると近い将来、高齢者の20%前後が認知症になると言われています。今までに経験したことのない超高齢社会のひとつの事象です。他人事では済まされない問題になりえます。
今後、身近な生活の中で出会うであろう様々な問題にしっかりと向き合っていくため、そして認知症の人が尊厳を保ちながら生活していくため、私たちは今からできる準備をしておく必要があると痛感しました。
(c)2019『長いお別れ』製作委員会(c)中島京子・文藝春秋
様々な人権課題についての資料を掲載しております。下記よりダウンロード可能です。研修会などでご活用ください。