西南学院大学院生で、小説『ゲーテはすべてを言った』で第172回芥川賞を昨年1月に受賞した鈴木結生さん(24歳)に同作の誕生秘話や芥川賞受賞時の思いなどについて聞きました。3回にわたる連載の第2回です。
●着想は実体験から
本作は、大学生の頃に両親と行ったイタリア料理店での出来事に着想を得ました。料理店で出されたティーバッグに印字されたドイツの詩人・作家であるゲーテの名言を見たときに「本当にゲーテがこの名言を言ったのか」という疑問が生まれ、それが物語の核になっています。
私はゲーテの研究者ではないので、執筆を始める前にゲーテについて知ることから始めました。春休みの1カ月間を利用して「ゲーテ全集」を全て読みました。この「読む」過程は創作活動の半分を占めていて、一番大変でしたが、ゲーテの言葉が物語の鍵を握る本作を執筆するためには必要不可欠でした。
●受賞時の思い
芥川賞を受賞した時は、「うれしい」というより、支えてくれた両親やパートナーを安心させることができて「ほっとした」というのが率直な気持ちでした。実は、芥川賞候補になった時が一番うれしかったです。自分の作品が芥川賞という文学の中心に届き、読まれているということが何よりの喜びでした。
●小説を書くということ
事実について思ったことを書くエッセーや書評とは違い、小説は、目的がなくても成立する不思議なジャンルです。全く存在しなかったものを世界に生み出し、素晴らしい作品だと読者の心の中に残ります。それが面白さであり、難しさでもあります。本作は一つ一つの言葉を真剣に選んで執筆しました。読んだ後に「本を読むことは面白い」「他の本も読んでみたい」と思ってもらえたらうれしいです。
次回は、早良区の思い出の場所などについて聞いた内容を掲載します。
【問い合わせ】
早良区企画課
電話 092-833-4307
FAX 092-846-2864
◆鈴木結生(ゆうい)◆
福岡県生まれ。令和6年『人にはどれほどの本がいるか』で第10回林芙美子文学賞佳作を受賞してデビュー。

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