市内では、さまざまな伝統工芸や伝統芸能が長い歴史の中で人々に愛され、育まれてきました。現在も、「博多織」「博多人形」「博多曲物(まげもの)」「博多張子(はりこ)」などの伝統工芸や、「博多芸妓(げいぎ)」による芸事が脈々と継承されています。伝統を未来につなごうと、研さんに励む皆さんを紹介します。
博多曲物
曲物は、スギやヒノキの板に熱を加えて曲げ、それを桜の皮でとじて作られます。お祝い用の曲物に松竹梅や鶴亀などの絵付けが施されるのは、博多だけの特色です。

曲物は抗菌性に優れ、くぎなどを一切使わないため非常に軽いのが特徴です。通気性が良く、余分な水分を吸収するため、ご飯は冷めてもおいしく、弁当箱や米びつなどに重用されています。木目の美しさや、正しく手入れをすれば長く愛用できる機能性などから近年その良さが見直され、国内はもちろん、海外でも人気を集めています。
■博多曲物 柴田佳吾さん(24)の話
柴田家は博多曲物を家業として400年以上受け継ぎ、日用品から神社仏閣品まで幅広く制作しています。私も、平日は勤めに出ながら、休日に兄と共に母(十八代目・柴田玉樹氏)から制作の指導を受けています。二人とも「ものづくり」が好きなので、作る時はいつも没頭して、時間を忘れてしまいます。
小さい頃から母の作る姿を見てきたので、手順は分かっていても、一つ一つ素材に合わせて調整しながら手作りするため、感性を磨いて体で覚えていくしかありません。兄弟ともども、早く一人前になれるよう制作に取り組んでいます。
●曲物のこれから
母は、茶の湯道具で曲物の新たな分野を切り開きました。私も、伝統的な作風は残しつつ、インテリア用品など自分たちならではの物を作っていきたいです。弁当箱や米びつとしてはもちろん、小物入れやワインクーラーなど、博多曲物を自由に使ってほしいですね。

博多曲物の良さをもっと多くの人に知ってもらうために、東区箱崎三丁目にショールームを開いています。ワークショップなども行っていますのでぜひお越しください。もっと博多曲物の認知度を上げて、兄弟で足りないところを補い合いながら、力を合わせて伝統を守っていきます。

博多張子
張子は、型に和紙や新聞紙を何層も重ね、のりで貼って成形し、天日で乾かしてから手描きで色付けして作られます。
江戸時代に上方(大阪)から技術が伝わり、独自に発展したのが博多張子です。鮮やかな色彩が特徴で、虎、だるま、干支(えと)飾りのほか、十日恵比須(えびす)の鯛(たい)の飾り物や、どんたくの「にわか面」など、博多の行事に欠かせない縁起物として親しまれています。
■博多張子 三浦智子さん(40)の話

5年前に、義父(博多張子の五代目・三浦隆氏)の手伝いを始めました。作業を手伝っていくうちに、張子が博多の行事や生活に密に関わっていることを知り、その奥深さにどんどんのめり込んでいきました。

一つ一つの工程はとても手間がかかりますが、その昔ながらの手作業に心を奪われ、もっと教えてほしいと弟子入りを志願しました。実は私は美術があまり得意ではなく、細かな作業は苦手だと思っていたのに、やってみたら本当に面白くて―。何かを始めるのに年齢は関係ないのだと思います。
●今の時代に合った物を
義父から「とにかく何百個も作って覚えなさい。そして、今の人の心に響く作品を作りなさい」と言われ、自宅のダイニングテーブルに材料を広げ、張子をひたすら作り続けました。
現代的なデザインのネコ、手すき和紙を使った優しい色合いのだるま、小さな虎など、新たな作品も次々に生まれています。一昨年の秋に、自分の工房を立ち上げました。私の作品をきっかけに博多張子の歴史を知ってもらえるとうれしいです。

張子は、なくしてはならない博多の文化だと思っています。縁起物なので、買ってくださった方の夢がかないますようにと心を込めて手作りしています。
まだまだ修業中の身。これからも伝統的な張子はもちろん、今の時代に寄り添った新作を作り続けていきます。
記事に関する問い合わせは、地域産業支援課(電話 092-441-3303 FAX 092-441-3211)へ。
未来の伝統工芸士を育成
市は、博多人形・博多織の後継者育成のために支援を行っています。
●博多人形師育成塾
現役の博多人形伝統工芸士が、1年かけて原型作りから彩色まで博多人形作りの基礎を直接指導します。修了時には、はかた伝統工芸館で作品発表会と審査会を行います。※毎年4月に受講生を募集。詳しくはホームページ(「博多人形師育成塾」で検索)で確認を。
■問い合わせ先/博多人形商工業協同組合(博多区奈良屋町)
電話 092-291-4114 FAX 092-291-8007
●博多織デベロップメントカレッジ
博多織の製織技術や歴史等を2年間でしっかり学びます。卒業生は「博多織手機技能修士」の資格を取得し、織元で働いたり、自立して工房を構えたりするなど活躍しています。※随時募集を受け付けています。詳しくはホームページ(「博多織DC」で検索)で確認を。
■問い合わせ先/博多織デベロップメントカレッジ(博多区比恵町)
電話 092-472-5102 FAX 092-472-5103
博多芸妓
博多芸妓(げいぎ)は、「芸どころ・博多」の伝統文化を今に伝える担い手として、料亭のお座敷や、祭り、催事、宴席など、さまざまな場所で芸の披露を行います。また、文化事業等のイベントで「おもてなし」をするのも、芸妓の大事な仕事です。

昨年12月6日に博多座(博多区下川端町)で行われた公演「博多をどり」では、演奏や唄を担当する地方(ぢかた)4人、舞を踊る立方(たちかた)11人(うち見習いの半玉(はんぎょく)が4人)、総勢15人の芸妓が総出演し、あでやかな踊りや三味線、長唄を披露しました。
■博多芸妓 半玉 柚月(ゆづき)さんと櫻(さくら)さんの話

―芸妓を志したきっかけは
柚月さん 以前巫女(みこ)として働いていた時に、祭事で年に数回神社に来られる芸妓の姐(ねえ)さんたちの姿に心を奪われ、ずっと憧れていました。
櫻さん 私は日本語教師をしていました。留学経験もあり、日本の文化をもっと広めたいと思い、この世界に飛び込みました。
―芸妓の仕事について
柚月さん 昨年秋から、姐さんたちに付いてお座敷に立つようになりました。「おもてなし」が私たちの仕事です。芸事はもちろん、細かな気配りなど所作の一つ一つを学びながら稽古を積んでいます。
櫻さん 日々学ぶことばかりです。姐さんたちからも「一生修業よ」と言われます。
―皆さんにメッセージを
柚月さん 幅広い年代のお客様に気軽に来ていただけるよう、毎月定期公演も行っています。ぜひお越しください。
櫻さん 最近インスタグラムを始め、たくさんの反響をいただいています。もっと多くの皆さんに博多芸妓を知ってもらえるよう、これからも励みます。
■問い合わせ先/博多伝統芸能振興会(福岡商工会議所内)
電話 092-441-1118 FAX 092-441-1149
博多伝統芸能館
博多の総鎮守・櫛田神社前にある博多伝統芸能館(博多区冷泉町)で、月に2回博多芸妓による定期公演が行われています。

約50分間の公演では、唄や舞、お座敷遊び体験など、博多の伝統文化に間近に触れることができ、国内外から多くの観光客が訪れています。
【今後の定期公演】
【日時】 2月12日(木曜日)午後4時~、2月28日(土曜日)午後1時~、3月12日(木曜日)午後4時~、3月28日(土曜日)午後1時~
【定員】 各回20人(先着)
【料金】 3,000円
開催日の3日前までに、ホームページ(「博多伝統芸能館」で検索)から申し込むか、電話(電話 092-441-1118)で博多伝統芸能振興会へ。※空きがあれば当日電話(電話 080-2705-5462)での申し込みも可能です。
伝統文化に触れてみませんか
市は、次の施設で伝統工芸品の紹介や展示・販売のほか、制作体験等を行っています。
■はかた伝統工芸館

職人たちによって受け継がれてきた福岡・博多の伝統工芸品や、若手作家が生み出す新たな工芸品を展示・販売しています。
展示会やワークショップなどを随時開催するほか、伝統工芸に気軽に触れられる「工芸体験コーナー」も開設しています。
詳しくはホームページ(「はかた伝統工芸館」で検索)でご確認ください。
【場所】 博多区博多駅前一丁目 パークフロント博多駅前一丁目 1階 電話 092-409-5450 FAX 092-409-5460 開館時間 午前10時から午後6時(入館は5時30分まで)
【料金】 入場無料
【休館日】 水曜日(祝休日の場合は翌平日)
■「博多町家」ふるさと館

明治・大正時代を中心に、博多の暮らしと文化を広く紹介しています。
展示棟では、伝統工芸品の展示のほか、博多張子、博多独楽(こま)、博多曲物、博多人形の制作の実演を日替わりで実施。工芸士に教わりながら絵付け体験もできます(有料)。町家棟では博多織の手織りの実演を見学できます(体験もあり)。また、工芸品や銘菓を販売する物産棟には、日本茶などが楽しめるカフェコーナーを併設しています。

実演・体験等のスケジュールはホームページ(「博多町家」で検索)でご確認ください。
【場所】 博多区冷泉町 電話 092-281-7761 FAX 092-281-7762
【開館時間】 午前10時から午後6時(入館は5時30分まで)
【料金】 ▽展示棟=一般200円、中学生以下無料▽町家棟・物産棟=入場無料
【休館日】 第4月曜日(祝休日の場合は翌平日)
福岡市 観光情報サイト YOKA NAVI(よかなび)
市は、観光情報サイト「よかなび」で、博多の伝統工芸・伝統芸能の情報を発信しています。
各種イベント情報や施設情報、博多の伝統文化を感じられる博多旧市街エリアの街歩きモデルコースなども紹介しています。
また、「博多町家」ふるさと館の館長・長谷川法世氏など、博多の歴史や伝統文化に精通する人たちのインタビュー記事も掲載しています。
■問い合わせ先/観光マーケティング課
電話 092-711-4355 FAX 092-733-5901