【発行号】令和7年1月1日号【掲載面】市政特集面【カテゴリー】お知らせ

新春鼎談「NEXT(ネクスト)」 次のステージへ

 明けましておめでとうございます。博多座(博多区下川端町)では、平成11(1999)年の開業以来、毎年歌舞伎公演が行われています。新年に当たり、歌舞伎俳優の松本幸四郎さんと尾上(おのえ)松也さん、高島市長が未来への思いを語りました。

 

●新たな可能性への挑戦
 
市長 2月に松本幸四郎さん、尾上松也さんのダブルキャストによる歌舞伎NEXT『朧(おぼろ)の森に棲(す)む鬼』が博多座で上演されます。幸四郎さんは1年ぶり、松也さんは8カ月ぶりの博多座での舞台です。今回の歌舞伎NEXTとは、どのようなものですか。
 歌舞伎俳優の松本幸四郎さんと尾上(おのえ)松也さん、高島市長の写真
幸四郎 私自身が「劇団☆新感線」(3面参照)の作品にいくつか出演していたことがきっかけで、生まれた歌舞伎です。新感線の世界観と歌舞伎を組み合わせて、新しいものを創り出そうと始めました。
 
市長 松也さんは、新感線の舞台で演じる幸四郎さんを客席から何度もご覧になったそうですね。
 
松也 新感線は、私も大好きな劇団です。新しいことに挑戦される幸四郎さんが本当に格好よくて、いつか自分も出演したいと熱望していました。新感線の別の演目で主役を務める機会をいただき、今回の出演にもつながりました。
 
市長 福岡市では平成27年から、次のステージに発展させるためのチャレンジをする「福岡NEXT」という取り組みを行っています。
 
幸四郎 本当ですか。歌舞伎NEXTが始まったのも同じ年です。ネクストつながりとは、驚きました。
 
市長 例えば、スマートフォンの普及で、私たちはいろいろな新しいサービスを受けられるようになりました。世の中がアップデートされていく中、行政だけが旧態依然というわけにはいきません。人口減少や少子高齢化を見据えて、行政サービスやまちを変えていくチャレンジが必要だと考えました。
 高島市長の写真
幸四郎 歌舞伎NEXTにも、新しい可能性を探りたいという思いがあります。400年前に生まれた歌舞伎が今も生き続けているのは、先人たちが時代に合わせて変化させてきたからです。私たちがやるべきことは、お客様に舞台を見て感動してもらうこと。時代に敏感になって、工夫しながら新しいものをつくっていくことは、とても大事だと思います。
 松本幸四郎さんの写真
松也 「最近、歌舞伎はよく新作をやっているね」と言われますが、そうではありません。古典と呼ばれる演目も、元々は新作でした。その時代その時代で何を求められているのか、どんなふうに変化しなければならないのかを先人たちが考え、伝統を守りながら攻め続けてきた結果、今の歌舞伎があります。後世に残る作品を生み出すことは、俳優の大きな願望ですので、そのためにも常に挑戦をしていきます。歌舞伎NEXTには、そんな思いが込められています。
 
市長 行政も同じです。このまちをさらに住みよくして次の世代に引き継いでいくためには、良いものは残し、変えるべきところは変えていかなければなりません。新しい価値を創っていきたいという思いは、歌舞伎と共通しています。

 

●これまで見たことがないものを
 
幸四郎 歌舞伎NEXTには、ロックバンドと歌舞伎の音楽のコラボレーションや派手なアクションがあり、いい意味で歌舞伎の概念を裏切ることになるでしょう。疾走感のあるストーリー展開はとても刺激的です。
 
松也 新感線の舞台音楽のベースは、ロックです。何事にも挑戦していくロックの精神と歌舞伎は似ていると思います。この二つが合わないはずがありません。これまで聴いたことがないような音楽、見たことがないような演出にご期待ください。
 松本幸四郎さんの写真
市長 なんだかわくわくしてきました。公演が待ち遠しいですね。
 
幸四郎 博多座は、舞台の奥行きが広く高さもあり、大道具を使った場面の転換がスムーズにできます。博多座ならではの演出で、いろいろな作品を生み出せる素晴らしい劇場です。
 尾上(おのえ)松也さんの写真
松也 博多座の舞台に立てることは、本当に光栄で役者冥利(みょうり)に尽きます。舞台と楽屋がすぐ近くにあり、使い勝手が良いと俳優の間でも評判です。
 
市長 博多座が開場して25年、お二人にそう言ってもらえてうれしいです。ところで、市民の皆さんは観劇はもちろん、食事なども楽しみに来場されているようです。お二人にとって滞在中の楽しみは何ですか。
 
幸四郎 福岡にはおいしいものがたくさんあるので、行きつけの店も多いですね。今日は空港に着いてホテルに荷物を置いてから、速攻でラーメンを食べに行きました(笑)。
 
松也 私は以前、舞台で頻繁に福岡に来ていたので、多くの友人がいます。彼らと一緒にご飯を食べたり、お酒を飲んだりするのも楽しみの一つで、福岡に来ると、ふるさとに帰ってきたような感覚になります。
 
幸四郎 母の出身地でもある福岡は、私にとっても第二のふるさとです。
 
市長 きっと市民の皆さんも喜んでいることでしょう。ぜひ福岡での滞在を楽しんでください。

 

●このエネルギーを皆さんに
 
市長 最後に、公演を心待ちにしている皆さんにメッセージをお願いします。
 
幸四郎 『朧の森に棲む鬼』は、うそと欲望に支配される男の物語です。17年前に劇団☆新感線の俳優たちと一緒に、東京の新橋演舞場で演じました。今回は、歌舞伎俳優のみで演じます。個人的にも、同じ作品に再び出られることや、歌舞伎NEXTが博多座に初上陸することなど、感慨深いものがあります。主役のライを演じない回は、ライと対峙(たいじ)するサダミツ役で出演し、大量の水を使った滝の中での立廻(たちまわ)りや宙乗りなどの見せ場もあります。一丸となって取り組んでいますので、一致団結すると大きなエネルギーが生まれるんだということを感じ取ってほしいですね。
 
松也 歌舞伎NEXTというからには、公演を見終わった時に、次の作品も見てみたいと思っていただけるよう、一座で毎日懸命に汗を流してお稽古をしています。この熱量を一度といわず何度でも劇場で感じて、私たちと一緒に盛り上げていただけるとうれしいです。
 「博多座でお待ちしています」と話す、松本幸四郎さん (右)と尾上松也さん
市長 お二人の熱い思いに触れ、私も刺激を受けました。これからの歌舞伎界が楽しみです。2月の公演も大いに期待しています。
 
【プレゼント】
 2月11日(火曜日・祝日)午後4時30分開演の歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』(ライ役・松本幸四郎、サダミツ役・尾上松也)の観劇券をペアで3組に差し上げます。はがきに住所、氏名、年齢と、新年の抱負を書いて、1月10日(必着)までに広報課「博多座」係(〒810-8620住所不要)へ。当選者に1月17日ごろ直接招待券をお送りします。

 

●松本幸四郎さん
昭和48(1973)年生まれ。54年に初舞台。56年に七代目市川染五郎を襲名。平成30(2018)年に高麗屋三代襲名披露公演『壽初春大歌舞伎』で十代目松本幸四郎を襲名

 

●尾上松也さん
昭和60(1985)年生まれ。平成2(1990)年に初舞台。ミュージカルやドラマ・映画などにも出演するほか、新作歌舞伎『刀剣乱舞月刀剣緑桐(つきのつるぎえにしのきりのは)』では演出も務めた

歌舞伎NEXT

 

●朧(Oboro)の森に棲む鬼

同作品のチラシ
 〈あらすじ〉いつとも知れぬ戦乱の世。オボロの森にライが分け入ると、魔物が現れライの欲望を呼び覚ます。王座に就くため、ライは悪を貫き通し、ついに王座に手を掛ける。それは破滅の始まりだった―。
 
【日時】 2月4日(火曜日)から25日(火曜日) 

【料金】 A席1万6,500円、B席1万500円、C席6,500円 

【問い合わせ】 博多座電話予約センター 

電話 092-263-5555(午前10時から午後5時) 

FAX 092-263-3630

 

●劇団☆新感線とは
 ど派手な照明と音響でハードロックなどの音楽を多用し、歌やダンスをふんだんに取り入れた、疾走感のある演出が特徴の劇団。博多座では、『けむりの軍団』(2019年)『バサラオ』(2024年)の公演を行った。

 

●「歌舞伎NEXT」に寄せて

 『朧の森に棲む鬼』は、平成27(2015)年に東京・新橋演舞場で上演され好評を博した『阿弖流為(アテルイ)』に続く、歌舞伎NEXT第2弾作品です。劇団☆新感線主宰の演出家・いのうえひでのり氏と、同劇団の座付き作家・中島かずき氏(ともに福岡県出身)に、本作の見どころを聞きました。

 

作 中島かずき

中島かずきさんの写真

1985年に座付き作家として参加。歴史や神話をモチーフに、複雑に絡み合う伏線が効いた脚本で人気を博す。

日々進化していく作品

 僕らが「歌舞伎っぽい」と思っていたものを歌舞伎俳優さんが演じることで、本物の歌舞伎になる気がしています。歌舞伎NEXTは、自分たちがやってきたことの総決算でもあるし、そこに伝統的な手法が入っていく面白さがあります。
 今回はダブルキャスト、しかも、主役ではない時も敵対する役で出演するということで、二人とも大変ですが、だからこその化学変化が生まれ、日々進化していく作品になると期待しています。劇場でしか見られない、最高のエンターテインメントが博多座にやって来ます。ぜひ博多座にお越しください。

 

演出 いのうえひでのり

いのうえひでのりさんの写真

1980年に劇団☆新感線を旗揚げ。疾走感あふれる演出で、演劇界に「新感線」というジャンルを確立した。

さらなるチャレンジを

もともと劇団☆新感線の芝居には、荒唐無稽な展開など歌舞伎に通じる要素があります。そこから「いのうえ歌舞伎」と銘打って、これまでさまざまな演目を行ってきました。
 新感線の演目を歌舞伎俳優が演じるのが今回の「歌舞伎NEXT」です。前回公演の『阿弖流為』の時に歌舞伎俳優さんから出てくるアイデアが刺激的で、とても効果的でした。今回はより積極的に歌舞伎の要素を取り入れ、さらにチャレンジしたいと思っています。歌舞伎好きの人も、新感線が好きな人も楽しめる舞台です。花道で見せる「飛び六方」にもご期待ください。

 

●博多座 令和7年公演予定

 令和7年も豪華演目が並びます。各公演の詳細は、博多座ホームページ(「博多座」で検索)でご確認ください。

博多座 令和7年公演予定の表

日程 演目
1月5日から7日 ミュージカル『next(ネクスト) to(トゥ) normal(ノーマル)』
1月11日から13日 『天保十二年のシェイクスピア』
1月18日から26日 『松平健芸能生活50周年記念公演』
2月4日から25日 歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』
3月8日から30日 『宝塚歌劇花組公演』
4月6日から30日 ミュージカル『レ・ミゼラブル』
5月4日から5日 ミュージカル『ボニー&クライド』
5月9日から18日 ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』
5月22日から29日 ミュージカル『ウェイトレス』
6月 『六月博多座大歌舞伎』
7月 ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』
8月 歌舞伎『刀剣乱舞』
9月 『水谷千重子50周年記念公演』
10月 演目調整中
11月 ミュージカル『マタ・ハリ』
11月 ミュージカル『SPY(スパイ)×FAMILY(ファミリー)』
 
■問い合わせ先/博多座 

電話 092-263-5555 

FAX 092-263-3630
 

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