【発行号】令和6年12月1日号 【掲載面】市政特集面【カテゴリー】お知らせ

市人権尊重週間~多文化共生を考える~共に生きる社会へ

 近年、スーパーや飲食店等で働く外国人が増え、生活の中で外国人に接するのが当たり前になりました。12月4日から10日は、福岡市人権尊重週間です。グローバル化が進む社会で、私たちはどのような意識で暮らしていけばよいのでしょうか。多文化共生について考えます。

 アジアに開かれたまちづくりを進める福岡市では、年々在住外国人が増加し、現在約5万1千人が暮らしています(今年10月末現在)。国籍は、中国、ネパール、ベトナム、韓国または朝鮮の順に多く、留学生がその約3割を占めています。就労目的の外国人も、令和4年10月末の7025人から2年間で1万1144人まで増加し、1.6倍になりました。

留学生と高校生によるキャンパス内まち歩きイベント
 どの国や地域から来た人であっても、福岡市で安心して生活できるよう、環境を整えていくことが重要です。互いを認め合い、対等な関係を築きながら地域社会を構成していくことが求められます。

■九州大学大学院比較社会文化 研究院 松永典子教授の話
 九州国際学生支援協会の理事長を務める松永教授
日本の人口に占める外国人の割合は2%程度ですが、福岡市は3%を超えました。特に留学生の比率は全国的にみても高く、優秀な人材が巣立っています。
 しかし、福岡で就職したいと思っていても、なかなかマッチングがうまくいかず、大都市圏に就職先を変更する学生や就職を諦めて母国に帰ってしまう人も少なくありません。
 企業は、日本語が話せて日本人の感覚が理解できる外国人を求める傾向にあります。優秀な留学生が福岡を離れてしまうのは、残念でなりません。ぜひ、彼らが持つ能力を見てください。福岡市で仕事がしたいという彼らの希望をかなえられるよう、解決策を見出していく必要があります。
 市内には、日本語教室を開いている地域もあり、外国人のために長年尽力している人たちがいる一方で、同じ地域で生活することに、不安を感じている人もいます。文化の違いはあれど、話してみると、私たち日本人となんら変わりありません。
 福岡市は全国に先駆けて、小中学校での日本語教育体制を整えました。進んでいるとはいえ、増え続ける外国ルーツの子どもたちへの対応に苦慮している現場もあります。就学前の幼児の保育環境など、新たな課題も生まれています。
 ヨーロッパでは、複数の言語文化を持っている人たちを社会資源だと捉えています。多言語を操る多くの子どもたちが、福岡で活躍してくれる未来に期待しています。
 まずは、存在を受け入れるマインドで接してみてください。互いを知ることで安心して暮らせるようになります。福岡市を、全ての人にとってさらに住みよいまちに進化させていきましょう。

いっしょにつくってやってみよう!外国人と日本人の交流ワークショップ
 
外国人と日本人が互いの文化や生活習慣への理解を深めながら活動できる場を設けようと、南区は昨年から「みんなでグロウアップ!~南区共生プロジェクト~」を行っています。
 その関係性を継続させ、地域での交流を広げていけるように、今年は参加者がみんなで一緒にイベントをつくり上げるワークショップを、9月から3回にわたり開催しています。
 参加者は、在住外国人を含む区民など15人です。2回目のワークショップでは、12月に行うイベントの内容を具体的に決定し、参加者それぞれの役割分担を行いました。
 
南区企画振興課の吉崎謙作課長に話を聞きました。
 企画から実施までのプロセスを楽しみながら、主体的に活動します
南区では、以前からそれぞれの地域で外国人との交流が行われていました。それがコロナで途切れてしまい、再開のきっかけをつかめずにいました。地域の交流を促す機会になればと、昨年プロジェクトを立ち上げ、在住外国人や地域住民と意見交換を行い、地域向けの「多文化共生ガイドブック」などを作りました。

 今年度は、交流イベント開催に向けて日本人も外国人も関係なく意見を出し合い、目標達成のために取り組んでいます。皆さん、楽しそうな表情で、回を追うごとに信頼関係が芽生えているように感じます。

多文化共生ガイドブックは地域での交流の手引き書として活用

 地域で安心して暮らしていくためには、外国人であろうとなかろうと、分かり合おうとする気持ちが大切なのではないでしょうか。多くの在住外国人は、簡単な日本語であれば理解できます。気軽に声を掛け合える関係を築いていきましょう。
 イベントの出し物は、「各国の料理を楽しもう」「母国の歌を歌おう」「古紙でスリッパを作ろう」に決まり、班に分かれて準備を始めました
■問い合わせ先/南区企画振興課 

電話 092-559-5016 

FAX 092-559-5014

【参加者の皆さんに聞きました】

宮竹校区自治協議会会長 酒井澄彦さん
 宮竹校区自治協議会会長 酒井澄彦さん
外国人の皆さんと積極的にコミュニケーションを取り、楽しく活動しています。外国人転入者に地域の活動をうまく伝えられるように、ここで学んだことを生かしていきたいと思います。

コイララ・カマルさん(ネパール)
 コイララ・カマルさん
スーパーで働いています。会社の上司が「自分も学びたい」と一緒に参加してくれました。日本に来たばかりの外国人は、不安の中で生活しています。地域でも交流の機会がもっと増えればいいですね。

樋口浩徳さん
 樋口浩徳さん
以前は警察官として、罪を犯した外国人と関わっていました。彼らは、正しく導いてくれる人が身近にいたら、犯罪者にならずに済んだのではないかと思い、自分にできることがあればと参加を決めました。

 

認め合い学び合う場所「福岡多文化共育スペース」
 
福岡国際市民協会代表理事のブイ テイ トウ サンゴさんの話
 カナダ人の夫・子ども2人と暮らすベトナム人のサンゴさん
国籍に関係なく子どもが安心して学び合える居場所をつくりたいと、ベトナムやネパール、インド、カナダ、中国にルーツを持つ保護者と日本語教師が集まって、昨年、福岡国際市民協会を立ち上げました。
 それまでは、それぞれのコミュニティで活動していましたが、継続が難しく、場所や人材など共通の課題を抱えていました。一緒に活動することで、支援が集まりやすくなり仲間も増えました。
 今年7月に、博多区の吉塚商店街にあるアジアンプラザで週3回、「福岡多文化共育スペース」をスタートさせました。生活・学習支援を必要とする親子が対象で、毎回30人程度が参加しています。
 「将来は母国との架け橋になりたい」と話す子どもたち。中央は英語の先生
ここは、国際交流の場であり、さまざまな背景を持った子どもや保護者が、異文化の理解を深め、互いを尊重し学び合う場所です。漢字が苦手だったり、学校の授業に付いていけなかったり、日本で生まれ育ったために母国語があまり話せなかったり―。一人一人、日本語の習得状況や家庭環境も違うため、支援の仕方もさまざまです。中高校生には、オンラインでも進学や就職の相談に乗っています。保護者が手続き等で不安な時は、通訳として同行することもあります。

「同じ悩みを持った子どもがいるので、安心して過ごせるようです」と語る、インド人で理事のガックラ・マベンダーさん(写真右)

 子どもたちがグローバルに活躍できるよう、英語教育にも力を入れています。母国の言語や文化を継承しながら、日本語と英語を学び、社会に貢献してくれると信じます。
 福岡は、暮らしやすく多様性を受け入れてくれるまちです。この先、この子たちが元気に活躍できる素敵な場所であってほしいと思います。皆さん、どうか子どもたちに優しく接してあげてください。
 防災勉強会など、誰でも参加できるイベントも不定期で開催しています。ぜひ遊びに来てください。

【ある日の多文化共育スペース】
 <午後3時過ぎ>

「ただいま!」。小学校低学年の子どもたちが、ランドセルを背負ったままやって来ました。宿題をしたり本を読んだりして思い思いに過ごします。その後、中・高学年の小学生も加わり、にぎやかに。一つのテーブルに大人が1人付き添い、分からないところがないか、困っていることがないかを確認します。

 <午後5時>英語講師をしている保護者によるレッスンが始まり、中学生や高校生も集まってきました。日本語が分からない子どもには、日本人ボランティアが個別に教えます。この日は、ネパールの祭りを紹介する催しがあり、きれいな衣装を着ている子どもや日本人の小学生もいます。お祭りの後、みんなで唐揚げとカレーをいただきます。

誰もが安心して働けるように「よるごはんミーティング」
 多文化共育スペース
毎週水曜日、留学生等を対象にした「よるごはんミーティング」が、博多区の冷泉荘など市内の会場で開催されています。外国人自らがGiver(ギバー)(与える人)となって、地域や企業の役に立てるような活動を行っています。
 これまで30カ国、延べ千人以上が参加し、空港の入国時のサインが外国人に分かりやすいかをチェックしたり、外国人観光客のためのお薦めマップを制作したりしました。
 
留学生の就職支援を行う「YOU(ユー) MAKE(メイク) IT(イット)」代表の楳木(うめき)健司さんに話を聞きました。

 2018年、日本語学校から依頼され、ベトナム人留学生16人の就職支援を行いました。全員、上場企業に見事就職し、彼らが福岡を出発する前に、居酒屋に招待してくれました。彼らを前に自然と涙があふれ、この仕事を続けていこうと決意しました。
 お茶を飲みながら近況報告をした後、この日のテーマ「動画制作」について話し合い、それぞれ作業を進めます
就職率は、日本人大学生の約98%に対して、留学生は約44%です。厳しい現状の中で、彼らは懸命にビジネス日本語や日本的なコミュニケーションを学んでいます。自らが望む場所で、安心して働くことができるよう、サポートしています。

「先日結婚式に招待されインドに行ってきました」と語る楳木さん
 コロナの最中、留学生に食料を提供し、仕事と健康の相談会を行いました。県内の留学生361人が参加し、その中に「もっと地域と関わりたい」「何か手伝いたい」という思いを持っている留学生がいることを知りました。彼らの思いを形にしようと始めたのが「よるごはんミーティング」です。外国人を支援される人と決めつけていたのは、私たちの方でした。
 福岡に来てくれた以上は、このまちを好きになってほしい。これからも、国籍に関係なく目の前にいる人に一生懸命向き合います。毎日多くの人に関わりながら、昔の「しょうゆの貸し借り」のような温かい関係を築いていきたいと思います。
 特集記事に関する問い合わせは、国際政策課(電話 092-711-4022 FAX 092-733-5597)へ。

留学生のチャン・ミン・ヒエウさんの話
 進行役のチャンさん
短大2年生でベトナム出身です。よるごはんミーティングの運営を手伝っています。ここは仲間がいて安心できる場所です。夢は福岡でビジネスをすること。このまちが好きなのでずっと住み続けたいです。

福岡(ふくおか)に住(す)む外国人(がいこくじん)の相談窓口(そうだんまどぐち)
 
福岡市国際会館(博多区店屋町)1階にある「福岡市外国人総合相談支援センター」は、外国人住民を対象に、生活に関わる相談を対面または電話・メールで受け付けています。
 
●23の外国語に対応
 
心理カウンセリングや行政書士・弁護士による無料の専門相談も行っています。
 
【福岡外国人総合相談支援センター】
 
【開館時間】 月曜日から金曜日午前9時から午後6時(祝休日、年末年始を除く) 電話 0120-66-1799※無料電話が利用できない場合は、福岡よかトピア国際交流財団(電話 092-262-1799 FAX 092-262-2700)へ。

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