魚を食べよう~福岡の「食」を支える鮮魚市場~

 福岡市は、玄界灘や日本海、東シナ海などの豊かな漁場で取れた新鮮な魚介類が集まる「魚のおいしいまち」として全国的に知られています。日本有数の水揚げ高を誇り、福岡の「食」を支える市鮮魚市場(中央区長浜三丁目)を紹介します。
鮮魚市場市鮮魚市場会館2階デッキで旬のタイ
 市鮮魚市場(通称・長浜鮮魚市場)は、年間約300種類もの魚介を扱う、全国屈指の鮮魚市場です。市場には、新鮮な魚介類が、博多漁港をはじめ九州・西日本各地から集まります。生鮮水産物の取扱量は約9割を占め、全国平均の約5割を大きく上回ります。
 市鮮魚市場では、国内の市場で一番早い午前3時に「せり」が始まります。せりは、複数の買い手(仲買人などの業者)が買い取り価格を競い合い、一番高い値段を付けた人が買い取ることができる仕組みです。市場では、「せり人」が出荷者(漁師など)に代わって売り手となり、最も良い条件を示した業者に販売を行います。
 市鮮魚市場でせり人として働く、中村友海(ゆうみ)さん(25)と永村まどかさん(28)が、「魚の魅力」について市長と語り合いました。
中村友海さん糸島市出身。福岡中央魚市場株式会社勤務。2020年せり人登録永村まどかさん長崎県壱岐市出身。株式会社福岡魚市場勤務。2022年せり人登録
 市長 せり人は、豊富な知識や経験、そして瞬時の判断力が必要な仕事だと思います。二人がこの仕事を選んだきっかけを教えてください。
 中村 子どもの頃、漁師の父に連れて行ってもらった市場で見たせりが本当に格好よくて、ずっと憧れていました。自分もせり人になって父や兄が取った魚を売りたいと、水産高校で市場の仕組みなどを学び、卸売業者に就職しました。鮮魚市場で3年間実務経験を積んで、せり人として登録されました。
 永村 私も、父が漁師をしていることもあって魚が好きで、今の会社に入社しました。事務員として採用され、入社後の説明会でせりの動画を見た時に、「この仕事をしたい!」と思い、志願してせり人になりました。
 市長 やりたいことに向かって突き進む姿が素晴らしいです。せりでは、どのような種類を担当しているのですか。
 中村 貝類やウナギなどを取り扱うグループで、私はアカガイが専門です。これまで図鑑でしか見たことのなかった魚を間近で見るたびに感動します。
 永村 私は近海ものの魚介全般を扱っています。活気ある職場で働くことができて、毎日充実しています。この仕事を始めて、ますます魚が好きになりました。
 市長 今の時期にお薦めの魚介類を教えてください。
 中村 アサリとホタルイカです。ホタルイカは、ゆでて酢みそで食べるのが一般的ですが、包丁でたたいて、みそや薬味と混ぜる「なめろう」にしてもおいしいですよ。
 市長 いいですね。今度、挑戦してみます。
 永村 旬のタイがたくさん入ってきています。市長は、おいしいタイの見分け方をご存じですか。
 市長 目が透き通っていて、身が厚いものでしょうか。
 永村 私がせり人になって教えてもらったのは、まず「色」でした。赤々としたものより、べっ甲あめのように金色がかっている方が、甘みがあっておいしいです。身も表面と同じようにあめ色をしています。
 市長 二人の魚への愛が伝わってきます。
 永村 私のたんぱく源は、ほとんど魚です。
 市長 永村さんの体は魚で出来ているんですね!
 永村 はい(笑)。ずっと昔から、日本人は魚をたくさん食べてきました。健康のためにも、ぜひ魚を日々の食事に取り入れてほしいです。
 中村 魚は生で食べられますし、煮たり、焼いたり、蒸したり、さまざまな調理法があります。種類もたくさんあるので、今まで食べたことのない魚も試してみてください。きっとおいしいですよ。
中村さんは県内初の女性せり人。永村さんは昨年、秋篠宮皇嗣殿下が臨席される中、魚食普及貢献者として大日本水産会から感謝状を受賞
 市長 二人は、鮮魚市場で定期的に開催している市民感謝デーで「模擬せり」を行うなど、市民の皆さんに魚の魅力を伝えています。
 中村 水揚げされた魚を自分が売って、良いせりができた時に喜びを分かち合える、せりはやりがいのある仕事です。男女関係なく、一緒に働く仲間が増えるとうれしいです。
 市長 漁師さんが一生懸命取ってきた魚を消費者に届ける、素晴らしい仕事ですね。
 永村 第一次産業の漁師さんたちと消費者の皆さんの橋渡しとなる「物流」に携わる仕事ができることが、とても楽しく、喜びを感じています。
 市長 市場で働く皆さんたちの力で、私たちもおいしい魚を食べることができます。最近は「魚離れ」という言葉もよく聞かれますが、魚は日本、そして福岡が誇れるブランドです。若い力で、これからも魚の魅力を伝えてください。
昨年の市民感謝デーの際に市場会館1階ロビーで行われた「模擬せり」

鮮魚市場はこんなところ
 鮮魚市場内の卸売場
昭和30(1955)年、市は中央区長浜三丁目に市鮮魚市場を開設しました。市民の食生活の安定を図り、公正に取引が行われるよう、市が業務の指導監督を行っています。
 市鮮魚市場は、全国2777の漁港の中で特に重要と国が定めた13漁港の一つである「博多漁港」を有します。取れたての水産物を取り扱う「産地市場」の機能と、大消費地である福岡都市圏に水産物を供給する「消費地市場」の機能を併せ持つ、全国的にも珍しい市場です。
 また、市場内の卸売場は、衛生的・能率的な設備を備え、徹底した管理の下、安全で新鮮な水産物を提供しています。

■鮮魚市場に行ってみよう
 
卸売場には、卸売・仲卸業者や買い出し人など、登録された業者しか出入りすることができません。市は、市場を身近に感じ、「魚食」への関心を高めてもらうためのさまざまな取り組みを行っています。
 
●せりの見学
 
卸売場で午前3時から1時間程度行われるせりの様子を、2階の見学者用通路から見ることができます(予約不要)。 ※案内等の対応はありません。
 
●市場会館内の施設
 
鮮魚市場に隣接する「市場会館」1階には、魚料理等を提供する飲食店などが並び、昼食時には多くの人でにぎわいます(営業時間・定休日は店舗によって異なる)。
 また、2階には魚について学べる「魚(うお)っちんぐプラザ」、13階には博多湾や天神の街並みが見渡せる「展望プラザ」があり、誰でも自由に利用できます。
 開館時間 午前10時~午後4時(展望プラザは午後10時まで) 料金 入場無料 休館日 日曜日・鮮魚市場休場日
 ※せりの見学および市場会館内施設を利用の際は、市ホームページ(「福岡市 鮮魚市場休開場日カレンダー」で検索)で開場日を確認の上お越しください。
 市場会館は13階建て。3階~12階には卸売業者など市場関係者の事務所が入居
●市民感謝デー
 
普段は入ることのできない市場の一部を開放し、新鮮な魚介類や冷凍品・加工品などを市民の皆さんに直接販売する「市民感謝デー」を、年に6回開催しています(下記事参照)。

■より身近な鮮魚市場を目指して
 
魚の魅力を広く伝えていくために、市場関係者と市が連携し、市民の皆さんが気軽に訪れることができる新しい施設「魚食スポット」の工事を進めています。
 素材の良さを生かしたさまざまな魚料理が楽しめる施設です。今年秋の完成を目指します。
 市鮮魚市場
■問い合わせ先/鮮魚市場業務係 

電話 092-711-6414 

FAX 092-711-6099

魚を食べよう
 
魚介類は、良質な動物性たんぱく質やビタミン・ミネラルをはじめ、動脈硬化の予防が期待されるDHA(ドコサヘキサエン酸)など、健康維持に役立つ成分を含んでいます。

【タイとアサリの白ワイン蒸し】
タイとアサリの白ワイン蒸し
 手軽にできる魚料理を紹介します。
 <材料(2人分)>
タイ(切り身)…2切れ アサリ…150g
ミニトマト…10個程度 ニンニク…1片
白ワイン(または料理酒)…70ml
オリーブオイル…大さじ1
塩・こしょう・粗びき黒こしょう…適量
パセリ(または小ネギなど)…適宜
 <作り方>
 <1>タイの両面に塩・こしょうを振り、10分程度置いたら水分を拭き取る。
 <2>フライパンにオリーブオイルと薄くスライスしたニンニクを入れて弱火で加熱する。香りが立ったら中火にして、タイを皮目から入れ、両面に焼き色が付くまで焼く。
 <3>アサリ、ミニトマト、白ワイン(または料理酒)を入れ、ふたをして中火で加熱する。
 <4>アサリの殻が開き、アサリとタイに火が通ったら、塩・こしょうで味を調える。黒こしょうを振り、パセリを散らす。

5月11日(土曜日)開催長浜鮮魚市場 市民感謝デー
 
市鮮魚市場で5月11日(土曜日)午前9時から正午に「市民感謝デー」を開催します(入場無料)。
 
●鮮魚等の販売
 
玄界灘、壱岐、対馬、五島など九州近海の漁場で取れた、旬のマダイ・イサキ・マアジ・サヨリ・メバル・ヒラマサ等の鮮魚や、冷凍品・加工品の販売を、仲卸売場棟で行います(午前11時まで)。
 ※天候(時化(しけ))により、魚が少ない場合もあります。また、商品が完売し予定より早く閉店する店舗もあります。
 
●本マグロの解体ショー・即売
 マグロを大包丁でさばく姿は迫力満点
午前9時30分から、仲卸売場棟内の「マツウオ」で恒例の本マグロ解体ショーを開催。解体したマグロの即売を行います。
 このほか、▽お魚さばき方体験▽こどもお寿司(すし)握り体験▽模擬せり―などのイベント(いずれも当日受け付け)や、水槽の中の活魚に触れられるコーナーもあります。
 また、市場会館前のフードコーナーでは、揚げかまぼこ等の加工品などを販売します。
 イベントの詳細は、市ホームページ(「福岡市 市民感謝デー」で検索)で確認するか、福岡魚食普及推進協議会(電話 092-711-6414 FAX 092-711-6099)にお問い合わせください。
 今後の市民感謝デーは、6月8日、10月12日、11月9日(仮)、12月14日のいずれも土曜日に開催します。 ※11月は同時開催の市農林水産まつりの日程が決まり次第、期日を決定します。

【定例イベント】こどもおさかな料理教室
 前回の料理教室
「イサキの煮付け」を作ります。
 
【日時】 5月11日(土曜日)午前10時から午後1時 

【場所】 市場会館2階料理講習室

【対象】 小学3年生~中学生と保護者のペア 

【定員】 10組(抽選) 

【料金】 1人500円 

【申し込み】 5月8日(水曜日)までに市場ホームページ(「福岡市 こどもおさかな料理教室」で検索)から申し込みを。 ※当選者にのみ連絡します。





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