令和6年度予算のテーマは強くてやさしい福岡

 福岡市は、昨年公表された総務省の調査で人口増加数全国1位を記録し、今年度の市税収入も過去最高額が見込まれるなど成長を続けています。都市の成長によって得られた市税収入を生活の質の向上に循環させる「強くてやさしい福岡」の実現に向けた予算を編成しました。

■安心して暮らせる「やさしいまち」
 
●保育の機会をより広く
 市は、保育園に通っていない生後6カ月から2歳までの子どもを保育所等に預けられる「こども誰でも通園制度」を大幅に拡充します。国の基準に上乗せし、毎週1回定期的に月最大40時間まで預けられる市独自のモデル事業です。令和6年度は利用人数を千人以上に、施設を30程度に増やして実施します。
 また、保育士の負担軽減とブランクのある保育士の現場復帰を支援するため、保育所等に保育補助者を雇用する費用を助成します。
 保育園で元気に遊ぶ子どもたち
●多子世帯を応援
 市は現在、第2子以降の保育料を無償化しています。今年度から、3歳に達する年度の、幼稚園の「プレ通園」も無償化の対象となります。双子や三つ子など多胎児の家庭も、2人目以降が無償化の対象です。
 また多胎児の2人目以降を半額免除していた産後ケア料金を、全額免除します。産前・産後ヘルパーの利用回数については、家事・育児支援(40回)に加え、外出支援として20回増やします。多胎児を育てる家庭の負担を軽くして孤立を防ぎ、安心して産み育てられる環境を整えます。
 市は、子育て世帯を応援するさまざまな施設を開設しています(写真は南市民センターに併設している「南区おおはし子どもプラザ」)
●サポートを必要とする子どもたちへの支援
▽障がい児の一時預かり等
 障がいのある子どもが通う児童発達支援センターは、市立が5カ所、民間が6カ所あります。市立のセンターで、療育終了後の午後3時から6時まで一時預かりを実施し、働く保護者を支えます。一時預り開始が難しい民間のセンターに通う子どもは、当面の間、市立のセンターで一時預かりを実施します。
 また、幼稚園や保育園に通いながら、地域の身近な場所でも療育を受けられるよう「児童発達支援事業所」の設置を進め、今年度中に現在の6カ所から14カ所に増やし、令和8年度までに29カ所の設置を目指します。
 
▽不登校児童・生徒の学びの場の確保
 市でも不登校または不登校傾向にある子どもが増えています。現在、学校には行けても教室に入れない子どもを対象にした「ステップルーム」を、全ての中学校に設置しています。今年度から、学校に行きづらさを感じる子どもをサポートする「教育支援センター」を、現在の4カ所から全区7カ所に増設し、学校生活の再開に向けた支援や学びの場づくりを進めます。
 併せて、教室に入りづらさを感じる児童を支援するため、不登校や長期欠席児童が多い小学校に、児童の登校支援や学校生活を見守る「教育支援員」を新たに配置し、子どもの状況に合わせてきめ細やかなサポートを行います。
 
●豊かな心を育む
 市美術館で、ガイドと対話しながら作品を鑑賞する小学生
 アートに触れる機会を増やし、子どもたちに豊かな感性を育んでもらおうと、市美術館・福岡アジア美術館・市博物館で対話型のアート鑑賞を実施します。アーティストが小学校に出向き、子どもたちと一緒に大きな紙で自由に表現したり、思い思いに絵を描いたりする「アートワークショップ」も行います。
 地元食材への理解と愛着を深め、地産地消を推進するため、小中学校の給食に「博多あまおう」や「博多和牛」などの市内産農水産物を提供し、併せて生産者による出前授業などを行います。
 また、食品廃棄物を発生させないよう、小学校のモデル校で食品ロスに関する出前授業を行うほか、調理くずを堆肥化して花壇等で使用します。さらに、給食から出る食品廃棄物を有効活用するために、メタン化施設で資源化する取り組みも試行します。
給食の時間にも、材料や産地、栄養素などについて楽しく学んでいます

●優しさを伝える 認知症ケア技法「ユマニチュード」の輪を広げる
 市は、他の自治体に先駆けて平成28(2016)年から認知症の人のケア技法「ユマニチュード(マルアール)」を取り入れました。ユマニチュードは、フランス語で「人間らしさを取り戻す」という意味です。
 相手が理解できるように「あなたのことを大切に思っています」と優しさを伝えることで、▽認知症の人の緊張が和らぎ穏やかになった▽発語しなかった人が話すようになった―などの実例が報告されています。
 市は今年度、さらに周知を進めるため福祉局に「ユマニチュード推進部」を新設し、市内全ての校区や小学校での講座開催を目指します。また、高齢者施設等での導入を推進するため、事業者向けの説明会を開催するなど日本ユマニチュード学会の認証取得も支援します。
 ユマニチュードに関する問い合わせは、ユマニチュード推進課(電話 092-707-3117 FAX 092-733-5587)へ。
地域の集会所でも講座が行われています
〈ケア技法の例〉
「見る」
 認知症の人と接する時は、同じ目の高さで正面から顔を近づけて見つめる。
「触れる」
 下から支えるように、広い面積で優しく触れて安心感を与える。

■成長を続ける「強いまち」
 
●ソーシャルスタートアップ
 スタートアップ(創業)支援を続ける市は、ビジネスで地域や社会の課題解決に取り組む「ソーシャルスタートアップ」を支援します。ふるさと納税のメニューに、ソーシャルスタートアップが取り組むプロジェクトを加え、集まった寄付金が財源となり、補助金として交付される仕組みです(上限は個人版300万円、企業版750万円)。
 
●世界から選ばれるまちへ
 生まれ変わる天神の街並み
 天神ビッグバンや博多コネクティッドによってまちが生まれ変わるこの機会に、企業の本社機能などビジネスの集積を目指し、国内のみならず世界の企業に向けた誘致活動を進めます。
 また、産学官が連携して国際金融都市を目指す「TEAM(チーム) FUKUOKA」の一員として、国内外の金融機関等の誘致にも積極的に取り組んでいきます。
 
●歴史と文化の核として
 福岡市は、城下町・福岡と、商人のまち・博多が共に発展してきたまちです。その古き良き文化や歴史を生かしながら、さらに魅力的な街へと進化します。
 
▽福岡城ライトアップ・鴻臚館復元=福岡城で実施している「幻の天守閣」ライトアップを来年も行います。また、舞鶴公園内の鴻臚館(こうろかん)についても、復元・整備に向けて取り組みます。
 
▽博多旧市街=歴史ある寺社が点在する博多旧市街で、歴史・文化に配慮した趣のある道づくりや、観光拠点の検討に取り組みます。
 
▽アジ美の拡充=世界で唯一アジアの美術作品を収蔵する福岡アジア美術館は、すでに作品数が5000を超え、展示スペースの不足が課題でした。現在の博多リバレイン(博多区下川端町)7・8階に加え、廃止予定の警固公園地下駐車場を有力候補地として展示施設の拡充を検討します。
 
●もっと便利で快適に
 地下鉄七隈線の通勤時間帯の混雑緩和に向けたダイヤ改正を行い、3月に予備車両を投入して運行本数を増やしました。今後さらに乗客数の増加が見込まれるため、令和8~9年に車両を4編成(16両)増やす準備を進めます。
 
●災害に強いまちへ
▽公的備蓄の拡充=避難所に設置する簡易トイレを52台から304台に増やし、災害発生直後から使えるよう、各校区に2台ずつ配置します。また、水のいらないシャンプーやボディソープのほか、寒さ対策として使い捨てカイロを追加で備蓄します。
 
▽給水車=災害発生時の迅速な給水活動を可能にするため、給水車を4台から6台に増やします。
 
▽ツナガル+=「ツナガル+(プラス)」は、被災者が車中泊など避難所以外の場所に避難している場合でも市に支援を求めることができる防災アプリです。支援物資や避難所の状況などを把握し、適切な支援につなげます。


●ボートレース福岡にスケートボード場を整備
 初心者から上級者まで楽しめるスケートボード場に
 市は、全天候型スケートボード場の整備事業に着手します。ボートレース福岡(中央区那の津一丁目)の約9千平方メートルの場所に、大規模大会の開催が可能なスケートボード場やイベント広場等を設ける計画で、令和8年の開業を目指します。








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