博多の伝統芸能博多をどり

 かつて、商人の町・博多は、人々が芸事をたしなみ多くの客人をもてなしたことから「芸どころ博多」と呼ばれました。時代の移り変わりとともに伝統芸能の担い手が減少する中、伝統を大切に守り続ける博多芸妓(げいぎ)衆を紹介します。
定期公演で三味線や唄、舞踊を披露した芸妓の皆さん。芸能館前で
 「博多をどり」は、東京新橋の「東(あずま)をどり」、京都祇園の「都をどり」と並ぶ日本の伝統芸能の一つです。芸妓は、三味線などの演奏や唄を担当する地方(ぢかた)と舞を踊る立方(たちかた)で構成されています。現在、15人の博多券番芸妓が博多の芸妓文化を継承しています。
 
●博多券番
 
券番とは、芸妓の取り次ぎや花代と呼ばれる芸妓の出演料の精算などを行う事務所のことです。博多に初めてできた券番は、明治22(1889)年、現在の博多区旧奈良屋小学校付近に開設された相生(あいおい)券番でした。続いて、中洲券番、水茶屋券番が設立され、大正時代に新券番と南券番が加わり五つになります。昭和12(1937)年には884人の芸妓が中洲界隈を行き交い、東京の築地や日本橋と並ぶにぎわいを見せていました。
 戦時中、券番は消滅しますが、戦後いくつかの券番が復活し活気を取り戻します。昭和60年に市内の券番が一つにまとまり、博多券番が誕生しました。九州で現在も券番が残っているのは、長崎と博多だけです。
 
●一本立ちの日に
 
芸妓の見習いのことを半玉(はんぎょく)と呼びます。稽古を積んだ後、晴れて一本立ちした日から、単独のお座敷出演や客からの指名が受けられるようになります。

 10月に一本立ちした芸妓・こ蝶(ちょう)さんに話を聞きました。
正装姿であいさつ回りをするこ蝶さんの写真
 小学生の時、日本舞踊の師匠だった祖母に連れられて鹿児島から博多座に「博多をどり」を見に来ました。それが博多芸妓との出会いです。小さい頃から舞踊が好きで、踊りを仕事にしたいと思っていましたが、祖母や両親に言い出せずにいました。
 高校3年生のお正月、祖母のところに挨拶に訪れた博多芸妓のこまこ姉さんに声を掛けてもらい、家族の許しを得て卒業式の2日後に芸妓の世界に飛び込みました。それから稽古を重ね、大好きな博多の街で憧れだった芸妓になることができました。
 一人でも多くの人に、博多にはこんなに魅力的な場所があり、私たち伝統芸能を受け継ぐ芸妓がいることを知ってもらいたいです。「博多一の芸妓さんやね」と言ってもらえるよう精進したいと思います。
 三味線と唄の地方3人、立方3人の舞台の写真
●博多券番代表・こまこさんの話
 こ蝶さんの晴れ姿に目を細めるこまこさんの写真
どんな世界でも一人前になるまでの道のりは、決して簡単ではありません。今頑張っているこ蝶さんには、周りを引っ張っていける、博多を代表する芸妓になってほしいと思います。時代とともに形は変わっても、伝統を守り次につないでくれることを期待しています。
 芸妓には、踊りのほかに三味線や唄などの地方も必要です。踊りが好き、楽器が好き、舞台が好き、そんな「好き」を磨いて一緒に仕事をしませんか。芸妓は、人々を喜ばせられる素晴らしい仕事です。ぜひ、博多券番の門を叩いてみてください。
 博多券番は、随時芸妓を募集しています。一本立ちするまで、博多伝統芸能振興会が着物やかつら等の支援を行います。詳細は、下記問い合わせ先へ。

博多芸妓の始まり
 
博多に芸妓が登場したのは江戸時代の中期ごろといわれています。当時、大阪の芸妓が長崎の茶屋に招かれ、客人をもてなしていました。長崎での滞在は100日までと定められていたため、芸妓たちは一時的に博多に滞在し再び長崎に戻っていました。次第に博多に定住する芸妓が現れ、それが博多芸妓の始まりだといわれています。
 明治・大正時代になると、博多の芸妓はにぎやかにお座敷を盛り上げる芸に加え、おおらかなきっぷの良さが評判となり、全盛期には二千人を超える芸妓が活躍しました。

博多伝統芸能館で定期公演
 黒の裾引きに献上博多帯が博多芸妓、立方の正装
博多の伝統芸能に気軽に触れてもらおうと、平成29年、博多の総鎮守・櫛田神社の向かいに博多伝統芸能館(博多区冷泉町)が、オープンしました。博多券番の稽古場・事務所を兼ねた施設で、伝統文化に触れられる場所として、開館以来、市民のみならず国内外から多くの観光客が訪れています。
 現在、50分間の公演が月に2回行われ、博多芸妓による唄や舞を間近で見られるほか、お座敷遊び体験や質問タイム、記念撮影もあります。定員は各回先着20人で参加費は3000円です。開催日の3日前までに、ホームページ(「博多伝統芸能館」で検索)か電話でお申し込みください。 ※空きがあれば、当日電話での申し込みも可能(当日 電話 080-2705-5462)。
 舞台の写真
■問い合わせ・申込先/博多伝統芸能振興会 

電話 092-441-1118 

FAX 092-441-1149

12月の博多座は市民檜(ひのき)舞台の月
 
●「博多をどり」を博多座で
 
博多座では毎年12月を「市民檜舞台の月」として、市民の皆さん等によるさまざまな演目が上演されます。そのオープニングを飾るのが「博多をどり」です。博多座の開場以来、年の瀬の風物詩として定着してきました。
 4年ぶりの開催となる今年は、30回目を迎える特別記念公演で、公演時間を150分に拡大し、12月2日(土曜日)、3日(日曜日)の2日間に4公演を行います。博多券番の芸妓衆が総出演し、博多ならではの唄と踊りを余すところなく楽しめます。
 会場では芸妓がプロデュースしたグッズも販売されます。普段見られないあでやかな芸妓衆の舞台を、ぜひご堪能ください。
 ※今後は隔年に公演される予定です。
 「檜舞台の月」のチラシ
●その他の演目
 
12月4日(月曜日)から6日(水曜日)には、世界が認めた腹話術師・いっこく堂が博多座に登場します。2体の人形を同時に操る腹話術は必見です。
 ほかに、日本舞踊の花柳流現家元を中心に九州各県の名取が出演する、二世宗家家元花柳壽輔(じゅすけ)50回忌・三世宗家家元花柳壽輔13回忌「追善舞踊会」や、和太鼓を中心に三味線や創作舞踊などの伝統芸能を融合・進化させた「福岡和の祭典」、西区フィルハーモニーオーケストラの演奏に乗せて三大クラシックバレエの一つとされる「くるみ割り人形」全幕をスガイバレエスタジオが上演します(下記事参照)。
 記事に関する問い合わせは文化施設課(電話 092-733-5113 FAX 092-733-5537)へ。
博多をどりSS席(1万1,000円)を購入すると会場で博多おはじきがもらえます
チケットプレゼント
 博多芸妓、和可奈さん
12月2日(土曜日)、3日(日曜日)に博多座で行われる「博多をどり」A席のチケットをペアで10組にプレゼントします。はがきに住所・氏名・年齢と「あなたが最近幸せを感じたこと」を書いて11月20日(必着)までに広報課「博多をどり」係(〒810-8620住所不要)へ。当選者に直接チケットをお送りします。

博多伝統芸能振興会
 
博多の伝統芸能の振興と、地域経済や観光の発展に寄与するため、福岡商工会議所と財界が平成3(1991)年に「博多伝統芸能振興会」を設立しました。
 同振興会によって、昭和61(1986)年以降途絶えていた「博多をどり」が平成3年に復活します。博多券番のほか、博多松囃子(まつばやし)振興会、博多仁和加振興会、筑前博多独楽(こま)など、博多の伝統芸能を伝承する団体の活動や後継者の育成を支援しています。
 問い合わせは、博多伝統芸能振興会事務局(電話 092-441-1118 FAX 092-441-1149)へ。

12月「市民檜舞台の月」ラインナップ

■第三十回 博多をどり
 第三十回 博多をどり
【日時】 2日(土曜日)、3日(日曜日)午前11時から・午後3時から 

【料金】 SS席11,000円、S席8,800円、A席5,500円、B席3,300円※チケットぴあ(Pコード520-751)、ローソンチケット(Lコード82110)、カンフェティ(電話 0120-240-540)で販売 

【問い合わせ】 博多伝統芸能振興会 

電話 092-441-1118 

FAX 092-441-1149

■いっこく堂ボイスイリュージョン(スーパー腹話術ライブ)
 いっこく堂ボイスイリュージョン(スーパー腹話術ライブ)
【日時】 4日(月曜日)午後6時30分から、5日(火曜日)貸し切り、6日(水曜日)午後2時30分から 

【料金】 A席5,000円、B席3,000円、C席2,000円※チケットぴあ(Pコード521-738)、ローソンチケット(Lコード82537)で販売 

【問い合わせ ふるさと青少年劇場 

電話 090-9591-4686 

FAX 092-502-0053

■二世宗家家元 花柳壽輔五十回忌 三世宗家家元 花柳壽輔十三回忌 追善舞踊会
 二世宗家家元 花柳壽輔五十回忌 三世宗家家元 花柳壽輔十三回忌 追善舞踊会
【日時】 9日(土曜日)午後4時30分から、10日(日曜日)午前11時から・午後4時から 

【料金】 7,000円全席自由※チケットについては問い合わせ先へ。 

【問い合わせ】 花柳流花柳会九州支部(桜紫会) 

電話 095-827-4338

■福岡和の祭典2023
 福岡和の祭典2023
【日時】 17日(日曜日)午後2時から 

【料金】 特別席3,800円、一般席3,300円、未就学児膝上無料 

【申し込み】 ラインに「友だち登録」して申し込みを。 

【問い合わせ】 福岡和の祭典実行委員会 

電話 092-738-2677 

メール fukuoka.saiten@gmail.com

■西区フィルハーモニーオーケストラ&スガイバレエスタジオ「くるみ割り人形」全幕
 スガイバレエスタジオの公演の写真
【日時】 24日(日曜日)午後2時から 

【料金】 A席6,000円、B席5,000円、C席4,000円 ※チケットについては下記問い合わせ先へ。 

【問い合わせ】 同公演実行委員会 

電話 092-884-3178 

メール sugaiballetstudio.proax@gmail.com







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